これだけは知っておきたい品質工学用語


SN比
機能の安定性を図る尺度で、通信工学などで使用する信号対雑音比と同じ意味を持つ。測定したデータが、理想とする入力と出力の直線関係にどれだけ近いかを示したもの。
実際には、ばらつきの大きさを信号の大きさで割ったもの逆数をSN比と呼ぶ。その対数の10倍がデシベル単位のSN比である。品質工学ではdb単位を使う。

SN比の求め方
各実験ごとのSN比の求めかたは、まず信号と測定データから理想とする1本の直線を引く。 理想となる直線の直線の傾きは後で調整すればよいので、その直線は、測定データから直線までの出力のばらつきが最小になるゼロを通る直線である。(ゼロ点比例式の場合)
そしてそのばらつきσの2乗和を、直線の傾きβ(感度)の2乗で割ったものの逆数をもとに対数をとる。直線からのばらつきだけで判定すると傾きが小さいほどSN比がよくなってしまう。感度との比をとることにより傾きが違うデータも同じように比較できる。制御因子ごとのSN比は、各実験のSN比を足しあわせて平均値をとったもの。

感度
入力信号により出力がどのように影響を受けているのかを表す尺度で、入出力の直線関係の傾き。例えば、入力に変形量・出力に荷重をとった場合、「感度が高い」という意味は、変形量が増えると荷重が大きく変化すること。品質工学ではdb単位を使う。
基本機能
品質工学では製品やシステムを開発する時に、故障や不具合現象などの品質特性を追い求めず、入力されたエネルギと出力の比例関係を考えることを推奨する。例えば、フックの法則に基づく変形量と荷重値、オームの法則に基づく電流と電圧などである。このような目的を達成するための技術的な手段やメカニズムの入出力の関係を基本機能と呼ぶ。
制御因子
設計者が自由に、その中心値や水準を決める事ができる変数。例えば、設計した回路の抵抗値を10Ωにするか20Ωにするかは、設計者が自由に決められる。安定性のよい条件を選択するために、実験では、中心値となる候補をいくつか用意し、その候補を選択することによりそのシステムの安定化を図る。たいていの因子は制御因子である。
誤差因子
機能をバラつかせる原因の総称で、ノイズとも呼ぶ。誤差因子は、環境条件のバラつき・劣化によるバラつき・品物間のバラつきの3種に分類できる。誤差を取り入れて実験することで、安定性のある制御因子の条件を効率よく選択できる。誤差因子の定性的傾向がわかる場合は、調合して2水準か3水準にするのが効率的な良い方法である。
信号因子
あらゆる機能はエネルギの変換であるといわれている。出力を変化させようとするための入力信号を信号因子という。基本機能の直線性を評価するためには、入力信号を変化させた際の出力のデータを測定する。信号因子は、直線性の乱れを評価するため、通常3水準以上必要である。
直交表
直交表とは、わりつけられたある制御因子の特定水準に着目した場合、他の制御因子の水準がすべてしかも均等に組み合わされるよう作成された表のこと。
品質工学では制御因子をできるだけ取り上げ、直交表の組み合わせに従って実験を行い、それぞれの制御因子ごとに最もSN比の高い条件を選んで、最適条件を求める。最適条件は、それぞれの制御因子が他の因子の影響を受けずに,単独で安定性を高くできるような因子の水準の組み合わせである。最適条件による改善度合いは、計算による推定だけでなく、確認実験と呼ぶ最適条件を用いた実際の試験により検証する。改善度合いが確認実験で再現すれば、各制御因子の組み合わせによる影響(交互作用)が少なく下流への再現が高いことが証明される。実験では、市場や大規模生産など条件が変わっても再現する最適条件を求めることが重要である。直交表を用いることにより、その再現性をチェックすることができる。

※ この用語集は、日経メカニカル(1997.11)にも掲載。


はじめての品質工学セミナールーム
第一回・・・パラメータ設計のための特性値

第二回・・・因子の分類と一般的な実験の組み方

第三回・・・SN比とその種類

第四回・・・効率的な設計開発を行うために

第五回・・・SN比に変換する前に

第六回・・・動特性それとも静特性?

第七回・・・最適条件を推定してみよう(1)

第八回・・・最適条件を推定してみよう(2)

第九回・・・確認実験は必ず実施しよう

第十回・・・品質評価のためのSN比

第十一回・・・欠測値の処理

第十二回・・・わりつけ(ダミー法と多水準作成法)

第十三回・・・望目特性とゼロ望目特性

第十四回・・・誤差因子の調合

第十五回・・・直交表とその役割

用語集・・・これだけは知っておきたい品質工学用語


品質技術支援サイト ≪HOME≫
RDE