最適条件を推定してみよう(2)

前回は、平均値とばらつきを総合したSN比から最適条件を決める場合を、望小特性を例にご説明しました。

今回は、平均値とばらつきを別々に解析し、最適条件を求める手順を、望目特性の例題を使用してご説明したいと思いますと思います。

例題2・・・望目特性

ビデオテープのバックテンション調整機構部の最適化をはかるため、次のような制御因子を取り上げ、理論式で計算を行なった。 このバックテンション調整機構では、テープの巻状態が変わってもテープテンションが変化せず、一定(24.5g)に保たれることが、理想である。

制  御  因  子 第1水準 第2水準 第3水準
A.テープガイドとテープの摩擦係数 0.19 0.27
B.BTバンドとリール台の摩擦係数 0.09 0.125 0.16
C.テープガイドへのテープ巻付角(°) 62 72 82
D.リール台へのBTバンド巻付角(°) 128 143 158
E.リール台の制動部半径(mm) 10.5 11.5 12.5
F.BTレバーの長さ(mm) 11.8 12.3 12.8
G.BTバンド取付部のの長さ(mm) 1.4 1.6 1.8
H.バネによるBTレバーモーメント(g-mm) 178 222 266

誤差因子 リールへのテープの巻半径 リール台の無負荷トルク
21(mm) 20(g-mm)
13(mm) 40(g-mm)
・・・テープテンションが小さくなる方向
・・・テープテンションが大きくなる方向

《わりつけとデータ》
15.74 21.78
18.57 24.44
21.28 26.94
24.22 31.63
17.97 21.47
20.56 25.36
27.60 33.53
18.65 22.68
22.54 26.08
10 16.67 21.22
11 15.15 20.67
12 21.85 26.73
13 21.85 27.21
14 25.26 29.49
15 14.45 17.58
16 24.80 27.99
17 26.55 30.82
18 15.36 18.39

望目特性の場合、SN比と感度Sについて、分散分析、工程平均、要因効果図を出力して、最適条件を決定します。

SN比は最適設計のための測度であり、感度Sは必要なときに、出力の平均値を目標値に合せるための調整因子を選ぶために使用します。

この例題で、「RQE」の出力から最適条件を求めてみましょう。

「RQE」の出力(SN比)

分散分析表(分散2.5以下をプーリング)
Source f S V F0 S' ρ(%)
A 1 6.8091 6.8091 6.00 5.6742 6.17
B 2 52.3043 26.1522 23.04 50.0344 54.45
D 2 5.9501 2.9751 2.62 3.6803 4.01
G 2 15.4788 7.7394 6.82 13.2089 14.37
e 10 11.3493 1.1349 - 19.2938 21.00
T 17 91.8917

91.8917 100.00

工程平均
因子名 水準1 水準2 水準3
A 16.1771 17.4072

B 14.6428 16.9214 18.8123
C 16.2107 16.8719 17.2939
D 16.1213 16.7297 17.5255
E 16.1225 16.8724 17.3816
F 16.5118 16.8031 17.0616
G 17.9860 16.6654 15.7251
H 16.3794 16.8556 17.1414

要因効果図

「RQE」の出力(感度)

分散分析表(分散1.5以下をプーリング)
Source f S V F0 S' ρ(%)
B 2 5.4760 2.7380 6.25 4.5995 9.60
C 2 3.9237 1.9618 4.48 3.0472 6.36
H 2 33.7126 16.8563 38.46 32.8361 68.50
e 11 4.8206 0.4382 - 7.4501 15.54
T 17 47.9329

47.9329 100.00

工程平均
因子名 水準1 水準2 水準3
A 27.2223 26.7415

B 26.2687 27.0650 27.6121
C 27.5833 26.9173 26.4452
D 26.6702 27.0021 27.2735
E 26.7290 26.9672 27.2496
F 27.2201 26.9703 26.7553
G 27.2845 27.0115 26.6498
H 25.2538 27.0912 28.6007

要因効果図

望目特性の場合、はじめは目標値にこだわらないで、SN比を改善します。

SN比に関して最適条件は要因効果図から、A,B,C,D,E,F,G,Hであることがわかります。

この条件での感度Sと目標値が一致すれば問題はないのですが、差がある場合は、SN比に関係がより少ない要因で、感度Sを調節することになります。

感度Sを推定してみましょう。

ここでは、分散分析表(感度)から、効果の大きい3個の要因、B,C,Hを選び計算を行います。

−2 =27.6121+26.4452+28.6007−2×26.9819=28.6941(db)

目標値は、24.5gであるので、目標値に対するデシベル値との差

28.6941−10log(24.5)=28.6941−27.7833=0.9108(db)

だけ感度を下げる必要があります。

さいわいなことに、この場合SN比にあまり影響がなく感度Sに影響の大きい因子

H.バネによるBTレバーモーメント(g-mm)

があるので、この因子により、テンションを目標値に調節します。

最適条件

,B,C,D,E,F,G,H3〜2

※ Hは確認実験(計算)をして決定します。(調整因子)

最適条件のSN比の推定は、分散分析表(SN比)から、効果の大きい4個の要因を選び計算を行なった場合、

−3

=17.4072+18.8123+17.5255+17.9860−3×16.7922

=21.3545(db)

になります。

推定値は要因効果図の水準値をマウスでクリックすることにより、要因効果図の下に表示されます。

ここでは最適条件の説明のため、工程平均から推定値を計算をしましたが、実際の作業では、要因効果図の推定に採用する因子の水準値をマウスでクリックすることにより、要因効果図の下に表示されますので、その値を使用します。

採用を取り消すときは因子名をクリックしてください。


はじめての品質工学セミナールーム
第一回・・・パラメータ設計のための特性値

第二回・・・因子の分類と一般的な実験の組み方

第三回・・・SN比とその種類

第四回・・・効率的な設計開発を行うために

第五回・・・SN比に変換する前に

第六回・・・動特性それとも静特性?

第七回・・・最適条件を推定してみよう(1)

第八回・・・最適条件を推定してみよう(2)

第九回・・・確認実験は必ず実施しよう

第十回・・・品質評価のためのSN比

第十一回・・・欠測値の処理

第十二回・・・わりつけ(ダミー法と多水準作成法)

第十三回・・・望目特性とゼロ望目特性

第十四回・・・誤差因子の調合

第十五回・・・直交表とその役割

用語集・・・これだけは知っておきたい品質工学用語


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