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欠測値の処理 |
実験者としては、行った実験に対して全てのデータが得られることを期待するわけですが、実際には、試料の紛失・実験機の故障等で、データが予定通りに得られない場合があります。
そのような場合、どうしたらよいでしょうか?
いくつかのデータが欠測しているからといって、せっかくのデータを無駄にすることはありません。
とりあえず欠測値の推定を行い、最適条件を推定し、確認実験をしてみることをおすすめします。
最適設計と現行(初期)条件の差分である利得の推定値と確認実験の値はほぼ一致すれば、下流への再現性が確認でき、欠測値がある場合でも、最適条件を決定することが可能です。
欠測値の処理方法には逐次近似法という汎用性の高い方法があります。
今回の講座では、逐次近似法を用いた欠測値の処理方法と欠測値の推定の例題をご紹介したいと思います。
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逐次近似法の手順 |
「悪すぎて計測できなかった」は欠測値? |
「物ができなくて測定ができなかった」「反応がうまく起こらなかったので測定できなかった」など、技術的な理由でデータが得られなかったときは欠測値とは呼びません。 物ができなくて測定ができなかったということは、悪いという貴重な情報だからです。 そのような場合は、他のSN比の平均値を使用するのではなく、SN比の中で一番低いSN比にさらにマイナス3db(分散で2倍悪いと仮定)を第0次近似値として逐次近似法を使用するとよいでしょう。 手順は欠測値の処理と同じです。
補足ですが、 その制御因子の組み合わせが理想状態ということなので、解析をするまでもなくその条件を最適条件を決めてもよいのですが、各因子の主効果の傾向を一応解析して確認実験を行ってみてください。 その場合は、その実験bフデータを異なった値に修正し、SN比に変換したあと、各実験bフ中で一番高いSN比にさらにプラス3db加えた値を第0次近似として、逐次近似法にて処理をするとよいと思います。
ただし、生データを見て、誤差因子に定性的傾向があるかをもう一度確認してください。
誤差因子の効果がない場合は、実験を見直す必要があります。
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例題1 |
小型化を目指した新方式のストロボ回路は、充電時間の長さが問題となっている。
充電時間の短縮化のため、次のような制御因子を取り上げ実験を行い、充電時間(秒)を測定した。
制御因子 | ||
---|---|---|
A.トランス | ・・・ | 3水準 |
B.コンデンサ | ・・・ | 3水準 |
C.ダイオード | ・・・ | 2水準 |
D.オンタイム | ・・・ | 3水準 |
電源電圧の劣化に対して、ばらつきをできるだけ減らしたいため、 誤差因子として、新品電池と末期相当の電池を取り上げた。
N1=新品電池
N2=末期相当
ダイオードは2種類しか用意できなかったため、ダミー法を用いて、第3水準に第1水準を重複させてわりつけを行った。
《わりつけとデータ》
\ |
A | B | C | D | N1 | N2 |
1 | 2 | 3 | 4 | |||
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2.30 | 3.06 |
2 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2.01 | 2.67 |
3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 2.15 | 3.12 |
4 | 2 | 1 | 2 | 3 | 2.35 | 3.52 |
5 | 2 | 2 | 1 | 1 | − | − |
6 | 2 | 3 | 1 | 2 | 2.17 | 3.04 |
7 | 3 | 1 | 1 | 2 | 2.76 | 4.10 |
8 | 3 | 2 | 1 | 3 | 2.69 | 4.69 |
9 | 3 | 3 | 2 | 1 | 2.06 | 2.69 |
実験bTは、計測データを紛失してしまったため、データが記入されていない。
充電時間を望小特性として最適条件を求めよ。
解析手順
L9を選択します。
メニューバーから【ファイル(F)】→【新規作成(N)】を選択します。
ファイル名を入力します。(ここでは「flash」というファイル名にしました。)
ひとつの実験bフデータ数を入力します。
この場合、誤差因子が2水準なので、各実験bフデータ数は2になります。 OKボタンをマウスでクリックし、わりつけを終了します。
ワークシートにデータを入力します。
実験bTには、SN比に変換できる適当な値を入力してください。
データ数が多い場合などは、他の実験bフデータをコピーするとよいでしょう。
ここでは実験bSの値をコピーしました。
データの入力が終了したら、データを保存します。
メニューバーから【SN比(S)】→【ファイル変換(C)】を選択します。
ここでは望小特性(SN比)を選択します。
実験bTに、他のSN比の平均値を代入します。 (実験bP,bQ,bR,bS,bU,bV,bW,bXの平均値を代入します)
[オプション]メニューから[欠測値の処理]を選択します。
欠測値の処理をする実験ナンバーを指定します。
欠測値に代入するデータを指定します。(ここでは平均値を代入するを選択します)
「OK」ボタンをクリックすると、実験bTに他のSN比の平均値が代入されます
ここでは、直交表の実験bTの水準組み合わせのなかで、推定に使用する効果の大きな要因「A2,B2,C1,D1」をクリックしました。
実験bTの推定値が要因効果図の下に表示されますので、それを第1次近似値とします。
[工程平均]メニューから[推定値をコピー]を選択し、その値をコピーし、実験bTに貼り付けます。
直交表の実験bTの水準組み合わせのなかで、推定に使用する効果の大きな要因「A2,B2,C1,D1」をクリックします。
実験bTの推定値が要因効果図の下に表示されますので、それを第2次近似値とします。
実験bTに、第2次近似値を代入します。
ここでは2次近似値「−9.1574」を用いて分散分析表と要因効果図を作成しました。
あとは、これまでの講座で説明した通りです。はじめての品質工学セミナーを参照してください。
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