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確認実験は必ず実施しよう |
前回、最適条件の推定の仕方をご説明しました。私たちは主効果のみを直交表にわりつけ、最適設計を決定し、最適条件のSN比の工程平均を求めます。また同様に現行(初期)条件の工程平均も求めて、その差分(最適条件に対する利得)を計算します。利得が大きければ現状からの大きな改善を期待してもよいでしょう。
しかし、利得の計算でよい値が出たからといって安心してはいけません。この利得は、あくまでも計算上の値です。主効果に対して交互作用が大きいと、計算上の利得が再現しない場合があります。SN比は安定性の測度です。安定性のよい水準は他の制御因子の水準が変わっても再現性がある方向にいきますが、交互作用が主効果に比べて小さいという保証はありません。
よい製品を製造したと思っても出荷前の検査で不良品を発見する場合があります。パラメータ設計でも最終的な再現性の検査が必要です。それが確認実験です。
確認実験では絶対値ではなく利得の再現性のチェックを行います。絶対値は、各種要因により、ともに上下する可能性はありますが、主効果の加法性が十分あるとするならば、最適設計と現行(初期)条件の差分である利得の推定値と確認実験の値はほぼ一致することになります。
信号因子と誤差因子はパラメータ設計時と同様にして、最適条件と現行(初期)条件の組み合わせを作成しデータを計測して下さい。その確認実験での利得と推定した利得がほぼ一致すれば、下流への再現性が十分にあると考えてよいと思います。
RQEでは、確認実験用の解析を行うため、L2(一元配置の水準2)や完備型という選択肢を用意しています。
直交表の選択コンボボックスを見てください。下の方に、L2、L1、完備型と表示されるのがわかると思います。
現状のSN比と最適条件のSN比の比較を行いたい場合は、L2というモードが便利です。
下記の例題は、バーコードのペンスキャナの最適化を行い、最適条件を求めた後、確認実験として最適条件と現行(初期)条件の組み合わせを作成し、データを計測したものです。 L2を使用して、2つのSN比の比較を行ってみましょう。
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例題1 |
バーコードのペンスキャナはスキャンしたバーコードの線幅と光学系で処理され出力されるTTL幅の比例関係が要求されている。
バーコードの線幅がゼロのときは、光学系で処理され出力されるTTL幅もゼロである。
以下は確認実験時のデータである。線幅とTTL幅のデータから現状の製品と最適設計後の比較をせよ。
現状のペンスキャナーのTTL幅 | |||
---|---|---|---|
信号因子 誤差因子 |
M1
(0.1mm) |
M2
(0.2mm) |
M3
(0.3mm) |
N1 | 0.1273 | 0.2504 | 0.3638 |
N2 | 0.1384 | 0.2721 | 0.3934 |
最適条件のペンスキャナーのTTL幅 | |||
---|---|---|---|
信号因子 誤差因子 |
M1
(0.1mm) |
M2
(0.2mm) |
M3
(0.3mm) |
N1 | 0.1637 | 0.3168 | 0.4665 |
N2 | 0.1692 | 0.3329 | 0.4871 |
信号は、バーコードの線幅
M1=0.1mm
M2=0.2mm
M3=0.3mm
誤差因子は使用条件を考慮し、
バーコード面からの浮上距離とスキャナー時の角度を調合した。
N1=TTL幅をマイナス側にシフトさせる組み合わせ
N2=TTL幅をプラス側にシフトさせる組み合わせ
この例題では、パラメータ設計はすでに終了して、最適条件はすでに求めてあります。
ここで実施しなければいけないことは、最適条件と現行(初期)条件の利得を確認実験から計算することです。
コンボボックスにL2(確認実験用)というモードがあるのを確認して下さい。
L2は1元配置の水準2と同じです。 直交表による解析ではなく2組のデータのSN比による比較を行いたい場合にこのモードを選択します。
SN比変換の手順は、直交表を使用した場合とまったく同様です。
直交表を使用していないので、SN比変換後の分散分析や要因効果図の作成は必要ありません。
一応、解析の手順を以下にまとめておきます。
メニューバーから【ファイル(F)】→【新規作成(N)】を選択します。
ファイル名を入力します。(ここでは「pensk」というファイル名にしました。)
ひとつの実験ナンバーのデータ数を入力します。
この場合、信号因子が3水準、誤差因子が2水準なので、各実験ナンバーのデータ数は6になります。
OKボタンをマウスでクリックし、わりつけを終了します。
ワークシートにデータを入力します。
データの入力順序は誤差因子の水準より信号因子の水準を、単純な反復より誤差因子の水準を優先して入力して下さい。
信号因子が3水準、誤差因子を2水準の場合の入力順序は
M1N1,M1N2,M2N1,M2N2,M3N1,M3N2
となります。
データの入力が終了したら、データを保存します。
メニューバーから【SN比(S)】→【ファイル変換(C)】を選択します。
この確認実験での利得と推定した利得がほぼ一致すれば、下流への再現性が十分にあると考えてよいと思います。
最適条件と現行(初期)条件の比例項の変動や誤差分散に関する情報が必要であれば、チェックリストを参照してください。
ゼロ点比例式の詳しい分散分析表を参照することができます。
また、最適条件と現行(初期)条件の2つのをデータをモニタリングしてみると改善度合いが視覚的に確認できます。
報告書などに利用するとわかりやすいと思いますのでぜひ利用してください。
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