2015年の英国旅行報告記(WH通信臨時増刊号No.2)

 本号は、2015年8月31日(月)から9月9日(水)にかけて実施したファンクラブ主催の「続・アガサ・クリスティの足跡を訪ねる英国旅行」(参加者11人)の記録である。
 この旅行はクリスティ・ファンクラブ機関誌「WH通信」の終刊を記念して企画したものの続編に相当する。つまり今回の旅行の目的は、数々のクリスティ作品に登場するデヴォン州の景観地、ダートムアやバー島、サルコム、ダートマス、グリーンウェイなどを訪問することと、前回は断念したクリスティの本宅ウィンタブルック・ハウス(本機関誌の表題の由来となった家)の外観とその裏手にあるテムズ川をじっくり観察することにあったからだ。幸い今回も天気に恵まれ、大満足の旅行であったが、この旅行記が、これまで紙上やTVでクリスティ作品を楽しんできたファンに、多少とも新たな興味を持って貰えるなら、大変嬉しいことである(S)。
なおインターネットで公開するにあたり、文章はWH通信臨時増刊号に掲載したものと同じだが、写真は大幅に増やしている(S)。


参加者分担執筆の報告記
(1)どしゃ降りのち晴天(前泊・1日目) ……………………………………戸塚美砂子
(2)後の祭り! 城塞都市エクセター(2日目) ……………………………清水貞子
(3)ダートムアを満喫(3日目)………………………………………………永嶋郁子
(4)ダートマスからバー島まで(4日目前半) ………………………………川本敬子
(5)バー島からサルコムまで(4日目後半)…………………………………木村仁
(6)ダートマスにて(5日目)…………………………………………………竹村モモ子
(7)Greenwayと保存鉄道(6日目) …………………………………………井口真理子
(8)ダートマスからロンドンへ(7日目)………………………………………野村恭子
(9)クリスティのお墓からウィンタブルック・ハウスを経てテムズ川散策へ
                        (8日目:チョルジー班)……………蓮田あき

(10)ロンドン・アイからのパノラマ絶景
                    (8日目:ロンドン自由行動班)……………中田キヨシ

(11)ひとりスコットランド・ヤード探索
                  (8日目:ロンドン警視庁班)…………………木村仁

(12)無事帰国へ(9・10日目) ………………………………………………数藤康雄
担当係の苦労話
日程・行動表
 下記の日程表は実際に行動したことの記録である。訪ねた場所の正確な住所は英語表記にしたので、それらの情報を元にGoogle Mapなどから地図を入手すれば、将来の英国旅行の参考になると思われる。
1日目(2015年8月31日(月)) 羽田からヒースローへ
 集合場所・時間:羽田国際線ターミナル 3階 出発ロビー Z団体カウンター9・10番 日本時間 7時00分。
 成田出発旅客機・時間:ブリティッシュ・エアウェイズBA008便 日本時間8時50分。
 ヒースロー到着時間:現地時間13時25分。空港到着後に、オイスター・カードの購入や入金、ヒースロー・エクスプレスの切符(往復)を購入し、Paddington駅へ。スト中であったが、切符売場でなんとか長距離切符を購入。
 ホテルDORSETT SHEPHERDS BUSH(58 Shepherds Bush Green)は、地下鉄Hammersmith & City 線で6つ目Shepherd's Bush Market駅から徒歩5分程度。16時半頃到着。チェックイン後、全員が近くのスーパーMorrisonsで飲み物、食料などを購入。ホテルの一室でサンドイッチ・パーティ。20時30分過ぎに解散。
2日目(9月1日(火)) エクセターへ
 ホテルを9時半過ぎに出発。Paddington発11時06分の列車でExeterへ。Exeter St. Davis駅には13時28分に到着し、タクシーに分乗してホテルJURYS INN HOTEL(Western Way)に行く。チェックイン後にロビーに再集合し、エクセター市内を徒歩で観光した。主な観光スポットはエクセター大聖堂とThe Quay。夕食はエグゼ川沿いにあるパブSamuel Jones Smoke & Ale House(The Quay)に入り、午後8時過ぎにホテルに戻った。
3日目(9月2日(水)) ダートムア散策
 ミニ・コーチ(マイクロバスを英国ではこう呼ぶ)に乗ってホテルを9時出発。10時少し過ぎにヘイトア観光案内所の駐車場に到着。ここではクリスティに関係のあるHaytor RocksとMoorland Houseを訪ねた。
@ Haytor Rocks:観光案内所から徒歩30分程で行ける岩山。1916年Moorland Houseに宿泊していたクリスティが『スタイルズ荘の怪事件』の執筆に疲れたときに、気分転換にこのあたりを散策した。
A Moorland House:『スタイルズ荘の怪事件』を完成させるために泊まったホテルで、当時の名称はMoorland Hotel。1960年代に火災で一部が焼失し、その後Moorland Houseとして再建された。当時の面影は一部に残っているらしい。クリスティの肖像写真から模写したと思われる彼女の肖像画が暖炉の上に飾ってある。
 昼食はMoorland Houseに併設のカフェDandelion Cafeでとり、午後2時半に再びミニ・コーチに乗る。予定ではWidecombe in the Moor (かつてはセント・メアリー・ミード村のモデルと言われた村)や刑務所のあるPrincetownを通過して今日の宿泊ホテルMOORLAND GARDEN HOTEL(Yelverton)に向かう計画であったが、道路事情の影響でWidecombe in the Moorは回避し、午後4時前にホテル到着。チェックイン後、予約していたアフタヌーン・ティーを午後4時半から開始し、夕食の代用とした。
4日目(9月3日(木)) バー島を制覇し、サルコムへ
 前日と同じ運転手のミニ・コーチで9時半にホテルを出発。10時半前にバー島対岸の公共無料駐車場に到着。当日の満潮は午前10時頃であったため、都合よく来たシー・トラクターに乗ってバー島に上陸した。
B Burgh Island:クリスティが『そして誰もいなくなった』や『白昼の悪魔』の舞台を決める際にインスピレーションを与えた島。クリスティはこの島のホテルに一回以上宿泊したのは間違いないが、このホテルに滞在して『そして誰もいなくなった』などを執筆したという事実はない。
 島の頂上をきわめた後、本土のThe Bay View Cafe and Bistroで遅い昼食をとる。午後2時半に駐車場を出発。3時半過ぎにSALCOMBE HARBOUR HOTEL(Cliff Road, Salcombe)に到着。
C Salcombe:『ゼロ時間へ』に登場するソルトクリークのモデルになった土地。この点についてクリスティは何も述べていないが、夫マローワンが彼の自伝の中で触れている。
 チェックイン後に街を散策し、夕食はパブ風レストランFortescueでとり、午後8時過ぎにホテルに戻る。
5日目(9月4日(金)) ダートマス散策
 10時にホテルをチェックアウトし、3日間同じ運転手のミニ・コーチでダートマスへ出発。1時間も経たないでDART MARINA HOTEL(Sandquay Road)に着いたが、荷物を預かって貰えることは事前に確認していたので早く着いても全く問題はなかった。荷物を預けた後、昼食の予約をしていたRoyal Castle Hotelに行く。
D Royal Castle Hotel:短編「レガッタ・デーの事件」(短編集『黄色いアイリス』に収録)に登場するロイヤル・ジョージ亭のモデルになったダートマスでは名門のホテル。
  昼食後はダートマス散策の自由時間としたが、多くの人は市の中心部から徒歩30分程で行けるダートマスの古城を見学。再び街の中心部に戻ってからは、各自が夕食を適当にテイクアウトで購入し、ホテルの一室に集まってのパーティーは実施しなかった。
6日目(9月5日(土)) グリーンウェイ見学とグリーンウェイをひと巡り
 午前9時半にホテルを出発し、10時発のグリーンウェイ行きフェリーに乗る。グリーンウェイの波止場には10時20分に到着し、10時半のグリーンウェイ開園時間に間に合う。ほとんど待たずに入園。
E Greenway House:マローワン夫妻が夏の別宅として使用していたジョージアン朝形式の建物。前回に比べると外壁は白に塗りかえられ、また室内での写真撮影もフラッシュを利用しなければOKであった。
 邸内と庭園をじっくり見学後(昼食は園内カフェテリアでのテイクアウト)、Greenway Houseの門前からShuttle Bus(15:00)に乗り、15:15にChurstonに到着。その後同駅を15:30出発の蒸気機関車でPaigntonへ(15:45に到着)。さらにPaignton出発16:15の列車で終着駅のKingswearへ(16:45に到着)。そこからフェリーでDartmouthへ戻り、グリーンウェイを一巡することができた。
 夕食はダートマスのKendricks(29 Fairfax Place)でシーフード料理を堪能。午後8時過ぎにホテルに戻る。
7日目(9月6日(日)) ロンドンのクリスティ写真展
 前日予約のタクシーで、午前9時にホテルを出発。すぐにダート河を渡るフェリーにタクシーごと乗込み、Paignton駅へ。駅構内で全員集合写真を撮り、10時58分発の始発列車に乗車、Paddington駅に14時30分に到着。NOVOTEL PADDINGTON HOTEL(3 Kingdom Street, Paddington)に直行し、全員Bankside Galleryのクリスティ写真展へ。その後は自由行動となり、夕食はホテルに近いUnion Bar & Grillでとり、21時過ぎに戻った。
8日目(9月7日(月)) ウィンタブルック・ハウスとテムズ川散策(希望者のみ)
 Winterbrook House見学組(6名)とロンドン観光組(5名)に分かれて行動。前者はPaddington駅9時27分発の列車でCholseyへ。Winterbrook Houseの外観を見た後、テムズ川のフットパスを散策。夕食は3組に分かれ、4人はTredwell's in Seven Dials、他の4人はGarfunkel's再訪、3人はレバノン料理店へ。
F Winterbrook House:1934年12月に購入したクリスティ夫妻の本宅。クリスティはこの家で亡くなった。夫マックスが相続したが、マックスの死後は再婚したバーバラが住んでいた。しかし今ではクリスティに無関係な人の手に渡り、玄関脇には私設のブルー・プラークが取り付けられている。近くには説明板もある。
G Tredwell's in Seven Dials:『チムニーズ館の秘密』の執事トレッドウェルの名が付くレストラン。料理長はTVの有名人で、クリスティ・ファン。室内にはクリスティ関連の飾り物はなかったが、グルメのポアロなら絶対に喜びそうな料理が出た!
9日目(9月8日(火)) 再び羽田へ
 8時過ぎにホテルを出発し、ヒースロー・エクスプレスでHeathrow空港へ。その後英国航空の団体チェックイン・カウンターで手続き。11時40分発BA007便で羽田へ飛び立つ。
10日目(9月9日(水)) 羽田着
 予定通り日本時間7時20分に羽田着。その後も順調に推移し、荷物を確認できた段階で解散。今回も「そして誰もいなくならなかった」英国旅行であった。


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