ダートマスからロンドンへ(7日目)   野村恭子

 今日も心地よい風が吹く、抜けるような青空の中、リゾート・ホテルの眺めの良いレストランで「幸福な朝食」を済ませ、前日予約したタクシーも定時に迎えにきて順調にペイントン駅に着いた。
 駅に併設の鉄道ticket officeの奥のショップでお土産を買い、駅前のお店でお昼のサンドウィッチを買い(ここらへんは日本の私鉄の駅前にそっくり)、お決まりの駅名を入れた全員集合写真を若くて親切な駅員に撮ってもらった。
 ロンドンへの行き方は、ペイントン駅始発の普通列車に乗り、ニュートン・アボットでグレート・ウェスタン鉄道に乗り換え、一路パディントン駅へというルート。すぐにあのトーキー駅を過ぎ、2年前の懐かしさがよみがえってきた。ところがニュートン・アボットでの乗り換え時間が5分しかなく、おまけに隣のホームで、エレベーターに並んでいるうちにロンドン行き列車が到着して、座席の予約もしてあったので、みんな焦ったが、なんとか無事乗り込むことができた。
 ロンドンのホテルは近代的なビジネス街にあるノボテル・ロンドン・パディントン。


ペイントン駅                     ノボテル・ロンドン・パディントン・ホテル

 今年はクリスティの生誕125年にあたり、ちょうど「Agatha Christie Unfinished Portrait」という写真展がテート・モダンの隣のBankside Galleryで開かれており、全員で鑑賞することに。
 テート・モダンが改築中で探すのに少し手間取ったため遅くなったが、会場は混んでいて、みんな熱心に見入っており、クリスティ人気にうれしくなった。クリスティ・ファンがよく知っている彼女の写真ばかりでなく、初めて見る写真もあり、家族でくつろぐ様子や飼っていたワンコ達の写真など心和んだ。


Bankside Gallery                写真展のポスター

 個人的には22歳のクリスティが、愛する母の忠告も聞かず、恋につっぱしったアーチボルトはどんな顔だったか知りたいと思ったが、トレンチコートを着た姿(アガサと一緒に写ってはいるが顔ははっきりせず)、大英帝国博覧会の宣伝使節となって世界一周旅行でハワイでのサーフィンの2人の水着姿の写真、それと軍服ポートレイトの3枚だけだった。やはりマックス・マローワンとのその後の生活を大事にしたい思いがアーチ―の写真を少なくさせたのだと思う。
 展示は、写真の下にその時出版されたペーパーバックがあり、アガサの生涯と重ね合わせて、ああこういう心境の時、この本を書いたのだと感無量だった。
 アガサの愛すべき、のたくったようなあの筆跡の手紙やディクタフォンもあり,ゆっくり見たため、ミュージアム・ショップまで回れなかったが、そこでいろいろ買ったメンバーもいた。また記帳もあり旅の思い出にとサインした人もいた。世界各国から来ているようだった。
 この後「マウストラップ」の劇場を見るグループと、目の前のミレニアム・ブリッジを渡って正面のセントポール・カテドラルへ行くグループの2グループに分かれた。私は後者のグループに入り、夕方だったので閉まる前にと急いだおかげで、信者席には入れなかったものの、故ダイアナ妃の結婚した時に中継されたあの荘厳な雰囲気は味わえた。あんなに幸せそうだったダイアナ妃のその後の悲しい運命を誰が予想しただろうか?
 アガサとダイアナ妃、2人のイギリス女性の生涯に思いをはせた2時間だった。
 夕食はかなり時間が遅くなったので、ノボテル・ホテルの近くのレストラン「Union Bar & Grill」で済ませたが、オーダー・ストップが8時とかで窓辺に席を取ったら外はさすがに暗くなり照明が届かず、闇鍋のようになってしまった。懐中電灯で照らし、みんなでシェアした。タイ・カレーがおいしく、ラム・ステーキとチキン・ステーキ・プレートは野菜がついていて、定番のポテト・スティックもおいしかった。
 暗闇の夕食も、旅の一興かと印象に残っている。


元に戻る