ダートマスにて(5日目)   竹村モモ子

 9月4日、今日もよい天気。10時にミニ・コーチでサルコム・ハーバー・ホテルを出発、11時前にダートマスのダート・マリーナ・ホテル到着。荷物をホテルに預けてから町に向かった。


ロイヤル・キャッスル・ホテル(ランチ)              ダート・マリーナ・ホテル(宿泊)

 ダートマス(Dartmouth)はその名が示すようにダート川の河口近くに位置し、十字軍の時代から港町として栄え、中世〜エリザベス朝時代の建物が並ぶ美しい街並みを持つ。町の北のはずれにあるダート・マリーナ・ホテルから徒歩10分ほどで中心部に到着。観光案内所に立ち寄ってから2、3グループに分かれ散策、その後、旅行前にメールで予約していたロイヤル・キャッスル・ホテルでランチを取った。ロイヤル・キャッスル・ホテルは古いホテルで、ダートマスを舞台にしたクリスティの短編「レガッタ・デーの事件」のロイヤル・ジョージ亭はこのホテルとのこと。ちなみにダートマス・レガッタは現在も毎年8月末に開催され、ヨットだけでなく帆船や手漕ぎボートのレースも行われる華やかなイベントとのこと。ロイヤル・キャッスル・ホテルのグリルルームはダート川を望む2階の明るい部屋で、料理はシェパード・パイ、フィッシュ・アンド・チップス、カンバーランド・ソーセージ、バターナッツかぼちゃ入りリゾット等々イギリスらしい料理にパンもポテトもたっぷりでなかなかおいしかった。そして食後には木村さんの前に誕生日ケーキが……。実は今日9月4日は木村さんの誕生日ということで直前にホテルのフロントで相談して準備してもらった。ハッピーバースデーの歌、ろうそくを消して……と儀式を済ませて、ケーキを人数分に分けてもらいおいしくいただいた。
 1時40分頃ホテルを出てダートマス城に向かった。ダートマス城は町の中心部から南に2kmほどのところにある。右にダートマスの街並み、左にダート川や対岸のキングズウェアを眺めながら歩いた。港には信じられないほど沢山のヨットが係留され、色々な船が行きかい、川を望む斜面にはクリーム色やピンク、水色など淡い色とりどりの家々が美しい。風景を楽しみながら快適なウォーキングであった。1時間弱で着いたダートマス城は河口の岬の突端、海を見渡す位置にある。最も古い部分は14世紀に建てられたとのこと。城に隣接する教会St. Petrox Churchの建物と墓地に挟まれた細い道を進むと城のエントランスがあった。入場料は成人£5.70、学生と60歳以上は£5.10。城は海からの脅威に備えた要塞の作りで、16〜19世紀の色々なタイプの大砲を備えた塔(Gun Tower)、オープンな砲台、弾薬庫、火薬庫等々があった。日本の城とは異なる分厚い石造りであるが、塔の各階の床は木製、急な木の階段は日本の城を思い出させ、壁には大砲を撃つための開口部のほかに日本の城にあるような鉄砲狭間(鉄砲を打つための内側が広く外側が狭い窓)があるなど日本の城との類似を感じ興味深かった。対岸にはキングズウェア城が見え、北の方にはダート・マリーナ・ホテル西方の高台にある王立海軍兵学校の茶色の建物を見ることができた。最後に教会内部を見て3時50分頃帰途についたが、二名は城から町の桟橋まで行くフェリーに乗るとのことで分かれて川に降りて行き、他のメンバーはほぼ同じ道を歩いて帰った。


ダート川の河口とダートマス城                     城内の大砲

城から見たダートマスの町と王立海軍兵学校

 午後4時半頃町に着いたが、翌5日の夕食の予約という重要な用事が残っていた。ダートマスには沢山のレストランがあるので簡単だろうと楽観していたが、リストアップしたレストランを永嶋さんと訪ねて5日が土曜であることの重大性に初めて気付いた。週末のレストランは予約で満席なのである。数軒で断られ、やや意気消沈してホテルへ向かい、ホテルの手前のレストラン「The Floating Bridge」の前でここはどうかしらと立ち止まったとき、レストランから出てきたのが何とロイヤル・キャッスル・ホテルのフロントの女性ヴェリティだった。ヴェリティは本日のランチについて旅行前に問い合わせメールを送ったときに迅速に親切な返事を送ってくれたので、ランチ後に挨拶したところだった。永嶋さんと窮状を説明したところレストラン・ケンドリックス(Kendricks)を勧めてくれたので、即ケンドリックスに行き無事予約できた。ケンドリックスは比較的大きな店なのでまだ余裕があったようだった。そして翌日実際に夕食に行って分かったことだが、味も値段も大いに満足のいくレストランであった。
 「ヴェリティ」はクリスティの『復讐の女神』で姿を見せない重要登場人物であるが、"ダートマスのヴェリティ"は私にとって忘れられない人となった。


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