目次
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↓推定相続人に対する財産処分
>公正証書遺言の注意点
↓特定財産の定め
>秘密証書遺言の注意点
「遺産分割方法の指定」と「遺贈」の違い
「自分の特定の財産」を「特定の推定相続人」に引き継がせる方法の注意すべき点
「〜〜の土地を妻に引き継がせたい場合」 「〜〜の土地を妻に相続させる」(遺産分割方法の指定)という遺言処分と 「〜〜の土地を妻に与える・贈与する」(遺贈)という遺言処分の2つの方法があります。 厳密に言うと、両者は異なります しかし、どちらの方法でも、上の例で妻が土地を引き継ぐことに違いはなく、付随的な点でのみ違いがあります。 付随的な相違点としては・・・・ @不動産登記の移転手続きの際・・・・ 「遺贈する」の場合には受遺者と全相続人または遺言執行者との共同申請をする必要があります。 「相続させる」の場合には受益者が単独で申請が可能。 A以前は不動産登記の際の登録免許税が異なっていましたが、現在ではどちらでも同じになりました・・・ココを参照 B相続人が財産を受けたくない場合 「遺贈する」の場合・・・・・・・・・・・その財産の遺贈のみを放棄できる(986条の放棄) また、938の放棄をしても、遺贈のみを受け取ることができる。 「相続させる」の場合・・・・・・・・・その財産の遺贈のみの放棄はできない。938に基づく相続人としての地位を相続放棄するしかない したがって、例えば、被相続人において特定の財産を相続財産の範囲から除外し、特定の相続人が相続を承認すると否とにかかわりなく(たとえばその相続人が相続を放棄したとしても)、その相続人に取得させようとするなど特別な事情がある場合には遺贈を勧めますが・・・・ 通常は、単独で登記申請できるメリットがあるので「相続させる」旨の遺言の作成をお勧めします。 特別な事情があり、あえて遺贈の方法をとりたい場合 前提として両者の相違点を詳しく知りたいココ 遺贈を選択 |
「遺産分割方法の指定」の注意点
@相続分との関係を明らかにしておく
相続分との関係で下記の三つの場合が考えられるため下記のいずれかであるかをハッキリさせておいた方が望ましい。 例えば、長女が老後の世話をよくやってくれたので、土地を他の相続人より余分に与えたい場合・・・・・先取的な趣旨をはっきり遺言書に記載していないと、中立的な趣旨と解されてしまう可能性もあります。 したがって、・・・・・例@「長女には〜〜の土地を相続させる。残りの財産は、妻・長男・長女が法定相続分に従って相続するものとする」と定めていれば先取的であることが明らかになります。 また、限定的にする趣旨であれば、・・・・「長男には〜〜の土地のみを相続させ、残りは妻と次男が半分ずつ相続させる」と定めておけば長男の相続分は土地に限定されるのは明らかです。 いわゆる「割付遺言」をすれば、限定する趣旨であることは明らかです(割付遺言とは、全財産について、個々に誰々に相続させると定めておく遺言です) @対象に指定した財産だけを相続させたい場合 (相続分もそれに限定される。いわゆる限定的)。 Aその財産を他の相続人より余分に相続させたい場合 (相続分にそれだけ追加される。いわゆる先取的)。 Bその財産を含めて法定相続分だけを相続させたい場合 (相続人が取得するのは相続分と一致する。いわゆる中立的)。 ハッキリさせておかないと、どうなるのか 他の制度への影響(主に寄与分との関係)。 ・割付遺言を行なえば、「遺産分割方法の指定」・「遺贈」により、当該遺産は被相続人の死亡時に直ちに承継・移転されるため、相続財産はないことになり、遺産分割手続は不要になります。したがって、特別受益や寄与分の制度は問題となりません。遺留分の制度は関係する可能性があります。 ・限定的な場合、すなわち「長男には〜〜の土地のみを相続させ、残りは妻と次男が半分ずつ相続させる」と定めている場合・・・・・・・土地以外の財産について、妻と次男が分割協議を行なう事になります。その協議の際、長男は関係しませんので、長男の特別受益や寄与分は考慮されません。例・・・・長男が父の事業など手伝っていた事情、あるいは、長男が土地以外のモノを生前に贈与をされていた事情があっても、それらの事情は妻と次男の分割協議では考慮されません。また、土地は相続財産から離脱しているので、仮に次男に寄与分があっても、長男の相続分には影響が無く、妻と次男の分割協議の際に考慮されるに止まります。遺留分の制度は関係する可能性があります。(私見) ・先取的な場合・・・・「長女には〜〜の土地を相続させる。残りの財産は、妻・長男・長女が法定相続分に従って相続するものとする」と定めている場合・・・・・・・・・・・残りの財産について遺産分割協議が必要でありますが、その際、先取的趣旨ということは結局、特別受益の持ち戻しの免除している趣旨であるから、土地については、特別受益として考慮する必要はありません(私見)。残りの財産の分割協議に際しては、他の事情・・・長女が土地以外のモノを生前に贈与をされていた事情などあれば考慮されます。また、遺留分の制度が関係する可能性があります。 ・中立的な場合・・・・・・・「長女には〜〜の土地を相続させる。ただし、妻・長男・長女の相続分は法定相続分に従うものとする」。「遺産分割方法の指定」は特別受益として考慮されます。したがって、長女は長男より多く相続できるわけではありません。山口家裁萩支審平成6・3・28は、「相続させる」旨の遺言による特定の遺産の承継についても、民法903条1項の類推適用により、特別受益として持戻計算の対象と判断しました。 A遺留分を考慮する 遺留分とは、相続人に保証された、最低限の取り分の事です。 例えば、推定相続人として妻・長男・長女いる場合。 夫が、生前に愛人に多額の贈与をし、また、残りの財産を長男に全て相続させる旨の遺言を残している場合 妻・長女は全く相続できない事になりますが、それでは気の毒なので、遺留分の制度が定められているのです。 なお、兄弟姉妹が相続人となる場合、その者には遺留分はありません。 遺留分が問題になる場合には、上記の例のように遺言による「遺贈」「相続分の指定」を行なった場合の他、遺留分の計算にあたっては生前の贈与も考慮されます。 生前贈与・死因贈与・遺言が無かったと仮定した場合の推定相続人の取り分を100として 生前贈与・死因贈与・遺言により、50を下回る場合に、遺留分が問題になる可能性があります。 推定相続人の取り分を大幅に変更したい場合・・・・ココをクリック B遺言執行者を定めておくべきか?・・・・・詳しく知りたい 遺言執行者を定めるには、どのようにすればよいのか?・・・・ココ C条件等を付けたい場合 ・期限・条件(例・・・・長男が医師の国家試験に合格したら〜〜の土地を与える) ・負担付(例・・・・・長男には〜〜の土地を与えるが、妻に毎月10万円支払う)このような定めをしたい・・・負担付遺産分割方法の指定は、条文はありませんが、負担付遺贈の条文が準用されると思われます(私見)。 詳しく知りたい |
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マンションの場合 |