「相続させる(遺産分割方法の指定)」と「遺贈」の違い

★異なる点・・・・・・・・・・・・・・

@不動産登記の移転手続きの際・・・・
「遺贈する」の場合には受遺者と全相続人または遺言執行者との共同申請をする必要がある。
「相続させる」の場合には受益者が単独で申請が可能。

A相続人が財産を受けたくない場合
「遺贈する」の場合・・・・・・・・・・・その財産の遺贈のみを放棄できる(986条の放棄)
                    また、938の相続の放棄をしても、遺贈のみを受け取ることができる。
「相続させる」の場合・・・・・・・・・その財産の遺贈のみの放棄はできない。938に基づく相続人としての地位を相続放棄するしかない

B遺言執行人の権限の範囲
「相続させる」の場合・・・・・・最判平成7・1・24×  最判平成10・2・27 最判平成11・12・16

C登記と第三者
「遺贈」・・・・・・・・受遺者は登記がなければ第三者に対抗しえない(最判昭和39・3・6
「遺産分割方法の指定」・・・・・・・・・・登記なくして第三者に対抗できる(最判平成14・6・10判時1791号×)

D農地の場合・・・・・・・・・遺贈であれば、県知事の許可を必要とするようにも思えるが、相続人に対する遺贈であれば承諾は不要と解されている(最判昭和52・7・19×)。もっとも、登記実務では受遺者が相続人であっても知事の許可書が必要としている(先例昭和43・3・2−170)




★同じ点・・・・・・・・・・

@所有権の移転時期
 特定物遺贈・・・・・・・遺言の効力が発生すると同時に、所有権は移転する。
 特定物の遺産分割方法の指定・・・・・遺贈と同じ(最判平成3・4・19) 

A以前は不動産登記の際の登録免許税が異なっていましたが、現在ではどちらでも同じになりました・・・ココを参照

B遺留分を侵害している場合・・・・・「相続させる(遺産分割方法の指定)」は「遺贈」と同順位で減殺の対象となる(判タ668号347p)。

C借地権・借家権の場合・・・・・・遺贈であれば、賃貸人の承諾を必要とするようにも思えるが、相続人に対する遺贈であれば承諾は不要と解されている。よって、違いはない。




★未解決な問題点・・・・・・

@負担付の「遺産分割方法の指定」である場合で、負担が履行されなかった場合
 遺贈の規定を準用し取消しうるとする説 と 取消はできず履行・損害賠償のみ請求できるとの説 などの対立がある

A名宛人が遺言者より先に死亡した場合・・・・・・・・・
 「遺贈」・・・・・994条により、遺贈は効力を生じない
 「遺産分割方法の指定」・・・・・遺贈を準用するとする説 と 受益者が子の場合には代襲相続が行なわれるとの説 の対立がある
(札幌高決61・3・17) 東京地裁平成6・7・13×特定の遺産を相続させる旨の遺言をした場合 被相続人の死亡以前に死亡したときは、当該遺言は当然に失効すると判断した