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「遺産分割方法の指定」と遺言執行者
★不動産の場合・・・・例「〜〜の土地は長男に相続させる」との遺言がある場合
結論
執行行為は通常は不要であり、顕在化しない場合がほとんどであるが、執行行為が必要となる場合も稀にある。

引渡し・登記移転等で紛争が予想されるので遺言執行者を定めておきたい場合には
「遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする」旨を明記しておいた方がよいでしょう。

・相続登記との関係

不動産の相続登記において、遺言執行者による申請は認められません
「登記研究」(平成3年8月号140頁。テイハン刊から抜粋)
「【7200】遺言執行者からする登記申請の可否
 〔要旨〕 特定の不動産を「相続人Aに相続させる」旨の遺言に基づくAのための相続を原因とする所有権移転の登記の申請は、遺言執行者からすることができない。
  特定の物件を「相続人Aに相続させる」旨の遺言がされた場合には、相続を原因として所有権移転の登記をすべきものと思いますが、この場合の登記の申請は、遺言執行者が選任されている場合であっても、相続人Aから申請すべきものと考えますが、いかがでしょうか。
  所問の遺言がされた場合には、遺言者の死亡により直ちに当該物件がAに相続により承継されたものと解すべきである(平成3年4月19日最高裁第二小法廷判決)から、遺言執行者は、Aへの相続を原因とする所有権移転の登記を申請をするについての代理権はないものと考えます(質疑応答別89、6220参照)。」
最判平成7・1・24×判時1523も、遺言執行者には遺言の執行として登記手続きをする義務はない判断しました。


ただ例外的に執行が必要になる場合もあります
例「〜〜の土地は長男に相続させる」との遺言があるにもかかわらず、次男が法定相続分の相続登記をおこなった場合・・・・最判平成11・12・16 


・登記以外の執行(不動産の維持管理など)

遺言執行者の職務権限は、「相続させる」遺言によって相続人が取得した不動産の維持管理についても、特段の事情がない限り遺言執行者の権限は及びません。
最判平成10・2・27は当該不動産の所有に伴う維持管理などの責任もその相続人に帰属し、当該遺言書にその不動産の占有・管理を遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情がない限り、遺言執行者はそれらの義務を負わないと判断しました。

・・・・・以上から、不動産の場合には遺言執行者をあえて指定する必要性は乏しいとも思われます。
なお、最判平成14・6・10× 特定遺贈と異なり、相続された者は登記なくして第三者に対抗できる。この点からも、執行人を指定する実益は乏しいです。


★不動産以外の場合
「〜〜の動産は長男に相続させる」との遺言・・・・ケース@
「〜〜の銀行預金は妻に相続させる」・・・・・・・・・ケースAなどの遺言
不動産以外の場合には、執行行為が必要です。
すなわち、例えばケース@の場合・・・・・当該動産を、長男以外の相続人や第三者が占有している場合には、その物件の引渡しを受けて、長男に移転させ執行行為が必要です。
ケースAの場合・・・・銀行預金という債権を債務者たる銀行から当該相続人に移転させる手続、例えば、払戻しを受けて妻に引き渡す、あるいは妻名義の預金に書き換えるなどの執行行為を行わなければなりません。

↑↑本当か????????????????????????????????不動産と同様に、遺言執行者の職務でないと考えるべきでは?との疑念があるので

したがって、例えば、銀行預金を「相続させる」場合で遺言執行者を定めておきたいケースでは、
遺言執行者は○○銀行〜〜口座番号の解約・払戻・名義書換請求をする権限及びその他執行のために必要な一切の権限を有する・・・と明記しておくべきであると思います。