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↓配偶者
内縁配偶者
(1)相続関係は法律上の形式に基づき画一的に処理すべきであるという考え方から、内縁配偶者には相続権は認めないのが通説・判例である。
(2)しかし内縁配偶者の保護の観点からいくつかの法解釈が個別具体的ケースにおいて提唱され、個別具体的内容に従い、内縁配偶者の保護がはかられているが、 内縁配偶者を相続人として認めているわけではない。★相続人不存在の場合・・・・ココ
@ 夫婦共有財産の規定(民762U)を準用して死亡による内縁関係の解消の場合にも内縁配偶者(家業の共同経営者)に共有持分を認める(大阪高判昭57・1・30 家月36−ト139)。
A 財産分与の規定(民768)を類推通用して死亡による内縁関係の解消の場合にも内縁配偶者(被相続人医師、20年余の内縁)に財産分与請求権を認める (大阪家審昭58.3.23 家月36−6−51)。762・2項 768条を 類推適用した審判あり もっとも768財産分与の類推適用については最決12・3・10は否定している
B 賃借権の相続に関し、賃貸人からの明渡請求に対して、内縁配偶者に相続人の賃借権の援用を認め、明渡請求の拒絶を認めている(最判昭42・2・21民集21−ト155)。
i判例は、相続人が存在する場合でも、内縁配偶者や事実上の養子は、相続人の取得した借家権を援用し、家主に対し居住の継続を主張しうるとする援用理論に立つ(事実上の養子につき、最判昭37.12.25 民集16−12−2455。内縁の妻につき、最判昭42.2.21民集21−1−155)。
ii判例の援用理論については、相続人が賃借権を放棄した場合に援用でき ないとの批判があるが、そのような放棄は共同生活を営んでいる者との関 係では、その生活をくつがえすもので、無効とされている(大阪地判昭3・3.30 判時338−34)。しかし、内縁の妻は賃料支払債務を負わないとされ ている(最判昭42.2.21民集21−ト155)ので、相続人の賃料不払いによる契約解除の場合は内縁配偶者の保護に欠けることになると言われている。なお、内縁配偶者に対する相続人からの明渡請求に対しては、判例は権利濫用として退けている(最判昭和39・10・13)
(3)労働者災害補償保険法等に基づく遺族補償や厚生年金保険法等に基づく遺族年金については、内縁配偶者にも受給権が認められ、立法的に解決されている。