★祭祀財産
★祭祀財産とは?
民法897条は祭祀財産として、系譜、祭具、墳墓をあげている。
系譜とは、家系図であり、
祭具とは位牌、仏壇等の礼拝の用に供するものであり、
墳墓は遺体や遺骨を葬っている設備(墓石、墓牌など)である。
裁判例は墓地も祭祀財産としている(
広島高判平成12・8・25 判タ1072号229頁 判時1743号79頁)
また、所有権だけでなく墓地使用権などの用益権も含まれる。
★相続性の有無
系譜、祭具、墳墓などの祭祀財産は相続財産とは別個の財産として
祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する。
つまり、
相続財産とはなりません。したがって、例えば長男が祭祀承継者である場合、たとえ長男が相続放棄をしていても長男が祭祀財産を引き継ぎます。
★だれが祭祀承継者となるのか?
@被相続人の指定がある場合には、その指定された者が祭祀承継者になる。
被相続人の指定は生前行為でも遺言でもよく、口頭、書面、黙示、明示を問わない。
A指定がない場合には地方の習慣によって決められる。
B習慣も明らかでない場合には家庭裁判所の調停もしくは審判で決められる(民897T、U)。
また、承継者は必ずしも相続人に限られずまた同氏たるを要しない。2人以上の者が分割承継することも可能である。
なお家庭裁判所が承継者を決める場合の一般的判断基準として「被相続人との血縁関係、被相続人の意思、承継者の意思及び能力、職業・生活状況」等を挙げている(鳥取家審昭42.10.31家月20−5−129)。
被相続人との親密度によるべきであり、長男ではなく配偶者を審判で承継者に定める例も多い。
★ 遺体・遺骨
(1)被相続人自身の遺体や遺骨は、1個の有体物として所有権の客体となる。
これが相続財産にあたるかどうかについては、肯定説、否定説及び民法987条に準ずる説があるが、判例は、結論的には、祭祀主宰者が承継するとするものが多い〈最判平1.7.18家月41−10−128、東京高判昭62・10・8家月40−3−45 大阪家判昭52.8.29 家月30−6−102)。
なおすでに墳墓に納められている祖先の遺体や遺骨は墳墓と一体となっており、従ってその承継者である祭祀主宰者が承継することになろう。
(2)臓器移植
平成9年10月施行の「臓器の移植に関する法律」は、「医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ)から摘出することができる」と規定し(6条)、本人の事前承諾と遺族の拒否がないことを要件としている。
なお、これに基づき角膜及び腎臓の移植に関する法律は廃止されたが、経過規定があるので注意を要する。