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相続財産の保全

一部の相続人が、相続財産である現金を使ってしまったり、相続財産である動産を勝手に売却したり、通帳・印鑑を使い銀行預金をおろす、などの危険がある場合。

なお、調停をしないまま、いきなり審判を申立てても、裁判所はいつでも職権で調停に付することができ、審判申立をしても調停に回付されることが多いが、この場合でも保全処分の審判はできます。



★調停前の仮の措置

「調停委員会は、調停前に調停のために必要であると認める処分を命ずることができる」(家審規133T)。
 これは調停の成立を図るためにその妨げとなるような事態の起こるのを防ぐ措置であって、当事者の申立を要件とはせず、調停委員会または家事審判官が、その職権をもって命ずるものである○当事者の仮の措置の申立は調停委員会の職権発動を促すに過ぎない。
 その内容について特に制限はないが、遺産の原状の保存・管理的措置、当事者の一方の財産上の地位または権利関係に対する侵害の排除・防止を目的とする措置、特定の相続人に遺産である家屋に居住しあるいは賃料等遺産からの収益をその生活費に充てることを認める措置などが考えられる。
 この措置は執行力を有しないが(同V)、調停委員会により調停前の措置として必要な事項を命ぜられた当事者又は参加人が正当な事由がなくその措置に従わないときには10万円以下の過料に処せられる(家審法28V)。
調停前の仮の措置は、結局のところ、当事者の誠意ならびに自発的な抑制に期待するほかないのであり、当事者がこの措置に明らかに従わないと予想される場合には無意味である。そのような場合には、強制力を有する審判前の保全処分を用いるのが適切である。実務上も、調停前の仮の措置が命じられた件数は僅かである。



★審判前の保全処分

(1)家事審判の実効確保を期するため、執行力を有する審判前の保全処分の制度がある(家審法15の3)。この手続は非訟事件に属する家事審判手続の保全的措置であるから民事訴訟の保全措置である民事保全法上の保全処分とはその性質を異にする、

(2)求めることができる保全処分の種類

  家事審判上の保全処分は、保全処分の種類と保全処分が認められる審判事件が法定されている。
  遺産分割協議に対して認められている保全処分は、@財産管理者の選任(家審規106T、23T)、A財産管理に関する指示(同106T、47、98V)、B仮差押、仮処分その他の必要な保全処分(同106T、47、48V)である。

(3)保全処分の申立

  審判前の保全処分は、家事審判手続に強く付随した手続であり、審判申立前に申立をすることはできない(本案審判の係属が要件)。ただ、審判申立があれば、それが調停回付中であっても保全処分の審判をすることは可能である。
   申立書には「求める保全処分」及び「保全処分を求める事由」を記載する必要がある(家審親15の2T)0このうち、「求める保全処分」は民事保全法上の保全処分の「申立の理由」にあたるものである。「保全処分を求める事由」としては、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を記載し、これを疎明する必要がある(同V)。

(4)保全処分の裁判
  保全処分を命ずる場合に、裁判所はこれに担保を提供させることができる(家審法15の3Z、民事保全法14)。
  ただし、財産管理者の選任、指示の処分については明文で担保を立てさせないこととされ(家審親23T)、また、後見命令、保佐命令については、この処分が本人のために為されるものであることを理由に担保を立てさせるべきではないと解する見解が多数のようである(最高裁事務総局編家庭裁判所資料第121号、改正民法及び家事審判法規に関する執務資料06頁)。従って、担保を立てるのは、事実上仮差押、仮処分その他必要な処分の場合に限られよう。
  保全処分の審判に対しては、即時抗告の方法により不服申立をすることができる。