(1)分割された財産に瑕疵があった場合には、各共同相続人は他の共同相続人に対し売主と同じく担保責任を負担する(民911)。売主担保責任の内容は代金減額、解除及び損害賠償であるから、これらが遺産分割にどのように反映されるかが問題となる。
(2)第1に減額請求は、瑕疵ある財産を現物分割によって取得した相続人が、金銭による代償分割を得た相続人に対して請求しうるものである。例えば平等の相続分を有する甲乙丙3名の相続人がいて、そのうちの甲が時価6000万円の不動産を相続し、乙丙に対し各2000万円の代償金を支払った場合に、後に物件に隠れたる暇庇が発見されて時価が4500万円と評価された場合には、乙丙に射し各500万円の減額を請求することとなるのである。
(3)第2に解除については、分割の遡及効(民909)の趣旨に基づき、遺産分割を相続のときに遡って、相続人らの財産上の権利の帰属を創設的に認める処分的合意であり、財産法上の契約とは異なるとして否定する見解が多数のようである。
判例も民法541条との関係に関してであるが、遺産分割協議の解除を否定する最判平元.2.9判時1308−118)。
(4)第3に損害賠償であるが、例えば(1)において挙げた例において、甲が相続した不動産が建物も含んでおり、その建物に隠れたる暇庇があって補修費用が600万円かかったとすると甲は乙丙に対し各200万円ずつの損害賠償を請求することができることになる。
(5)912条 債権を取得した者、例えば、被相続人の有していた売掛債権300万円をAが相続により取得したが、債務不履行があった場合、他の相続人BCがいると、BCはそれぞれ100万円ずつ担保することになる。
(6)913条 (5)の例でBが無資力であり、Aに100万円支払えない場合、AとCがBが負担すべき100万円を50万円ずつ負担することになり、結局AはCに912条と913条により150万円請求できる。