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 「相続分の指定」と「包括遺贈」の違い
遺産を、相続人に分数的割合で相続させるという処分がなされている場合には、原則として「相続分の指定」となります。
つまり、相続人が妻・長男・長女である場合
法定相続分は妻2分の1、長男・長女各4分の1ですが、
妻・長男・長女各3分の1と「相続分の指定」をすることにより、法定相続分を変更できるのです。

この点、「長男には3分の1を相続させる」とだけ定め、妻・長女について「相続分の指定」をおこわない場合、長男に対する包括遺贈と解する余地がないでもありません。
しかし、包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有する(九九0条)以上、実質的には相続分の変更と変わりがなく、相続人については包括遺贈をみとめる実益がありません。

また、例えば、先取的に一定割合を与えるが負担付の場合など特殊な事情があるケースでは推定相続人に対する包括遺贈も考えられなくもありません。しかし、負担付の条文が準用されると解すれば「相続分の指定」と解しても「包括遺贈」と解しても結論は同じと思います(私見)。

ただ、不動産登記実務では、「妻・長男・内縁配偶者(すなわち推定相続人以外の者)各3分の1を遺贈する」と定めているケースでは、登記原因は「相続」ではなく「遺贈」となります。
以上から、割合で定める場合であっても、「遺贈」ではなく、「相続させる」との文言を用いた方がよいでしょう。


「相続分の指定」の注意点
@部分的指定
一部の相続人に対して全財産の一部の指定があるが、他の相続人については定めていない場合・・・・・・他の相続人の相続分は法定相続分の規定に従います(902条2項)

例@・・・・推定相続人として3人の子がいる場合で、子Aには2分の1を相続させると定めているが、子BCには定めがない場合・・・・・・子BCの相続分は各4分の1となります。
例A(配偶者がいるケース)・・・・推定相続人として妻と3人の子がいる場合、子Aには三分の一と定めているが、他の相続人の相続分は定めていない場合・・・・妻の相続分は(1−1/3)×1/2=1/3となるはずですが、異論もありますので配偶者がいるケースでは、配偶者の相続分を指定しておきましょう。


他の制度への影響。
相続分の指定・・・・・相続人は長男と次男のみである場合で「長男の相続分は10分の2とする」とだけ定めてあるケース。長男・次男の相続分は2対8で分割協議が行なわれることになる。その際、長男・次男の特別受益や寄与分は考慮されます(私見)。例・・・・長男が父の事業など手伝っていた事情、あるいは、長男が土地以外のモノを生前に贈与をされていた事情があれば、それらの事情は分割協議では考慮され具体的な相続分は必ずしも2対8になるとは限りません。また、先取り的趣旨とは解されないので、相続分の指定自体は特別受益と無関係です。遺留分の制度は関係する可能性があります。






B遺言執行者を定めるべきか?
・・・・・・遺言執行者がおこなう仕事はなく不要と考えられます。
なお、最判平成5・7・19



C条件等を付けたい場合・・・・・・・・
期限・条件(例・・・・長男が医師の国家試験に合格したら〜〜の土地を与える)・負担付(例・・・・・長男には〜〜の土地を与えるが、妻に毎月10万円支払う)このような定めをしたい・・・・・・・・・詳しく知りたい




A遺留分を考慮する
遺留分とは、相続人に保証された、最低限の取り分の事です。

例えば、推定相続人として妻・長男・長女いる場合。
夫が、生前に愛人に多額の贈与をし、また、残りの財産を長男に全て相続させる旨の遺言を残している場合
妻・長女は全く相続できない事になりますが、それでは気の毒なので、遺留分の制度が定められているのです。
なお、兄弟姉妹が相続人となる場合、その者には遺留分はありません。

遺留分が問題になる場合には、上記の例のように遺言による「遺贈」「相続分の指定」を行なった場合の他、遺留分の計算にあたっては生前の贈与も考慮されます。

生前贈与・死因贈与・遺言が無かったと仮定した場合の推定相続人の取り分を100として
生前贈与・死因贈与・遺言により、50を下回る場合に、遺留分が問題になる可能性があります。
推定相続人の取り分を大幅に変更したい場合・・・・ココをクリック


C条件等を付けたい場合
・期限・条件(例・・・・長男が医師の国家試験に合格したら〜〜の土地を与える)
・負担付(例・・・・・長男には〜〜の土地を与えるが、妻に毎月10万円支払う)このような定めをしたい・・・負担付遺産分割方法の指定は、条文がなく、また、負担が重く放棄したい場合であっても、相続放棄(938条)しか選択できないとするのは妥当ではないので、負担付を定める場合には、遺産分割方法の指定ではなく負担付遺贈を選択した方がよいと思います(私見)。
期限・条件付の遺産分割方法の指定はOKです。
詳しく知りたい



 サンプル
記載例@

遺言者は、各相続人の相続割合を以下のとおり指定する。

妻は5分の3
長男は5分の1
長女は5分の1

記載例A

遺言者は、各相続人の相続割合を下記のとおり指定する。
妻は全財産の4分の3
他の相続人は残りを平等に相続するものとする。