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■このページは、「文部省内国語問題研究会(編). ローマ字教育の指針とその解説. 東京都, 三井教育文庫, 1947, 113p. (ja, B6よこがき)」を全文転記したものの一部です。■注意がきを無視しないでください。
—以下転記部分—
[p.92-100]
(転記者注: みだしの「III」は「IV」の誤植とおもわれる。)
ここで「符号の使い方」というものは、いままで、「標しの使ひ方」ともいわれ、また「句読法」ともいわれていた。かいつまんでいえば、ローマ字書きの場合の句読法だといってもいい。が、もともと句読法とはわが国では漢字かなまじり文を主体とした文章に用いられる書記上の手段・慣習である。漢字かなまじり文ではふつう分ち書きはしない習慣があるが、ローマ字文では分ち書きをつかう。そのため漢字かなまじり文の句読法の一部は、ローマ字文では分ち書きによって明らかにされている。また、ローマ字文で用いられる符合の全部が句読法に関係したものであるとはいえない。たとえば、長母音をあらわすには「^」の符号をつけるという規則があるが、この符号はいうまでもなく句読の便宜のための手段ではない。また、「はねる音を表わす n の次にすぐに母音字または y がつづく場合には、n の後に切るしるし「’」を入れる。」という規則があるが、これも符号ではあるが、漢字かなまじり文の句読法では取り扱わない種類のものである。このように漢字かなまじり文の句読法とローマ字文の場合のそれとでは、取り扱う内容にもかなりちがいがあるから、漢字かなまじり文をつかう場合の手段として一般に呼びならわされている句読法という表現を、ローマ字文の場合にも用いると混乱をきたすおそれがあるので、「符号の使い方」という名称を用いることになった。
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音声言語では、音声の休止、つよめ、音調などによってあらわされているものを、文字言語をつかう場合、文字以外の手段で補うときに用いるのが符号である。符号をつかわずに文字で補う方法として、ローマ字書きの場合には斜字体(イタリック)や、大文字ばかりを用いる方法も行われている。
上にあげたのはローマ字文の中につかう符号のうち主なものだけであって、この外にもいろいろの符合がある。例えば、省略などをあらわすしるしとして「……」(転記者の注釈: 原典では下つきの3点リーダが2個つかわれているようだが、ローマ字列中においては、ピリオド6個(......)におきかえることにする)、少数以下と整数とを分つ符号として「.」(3.14)、必要に応じて三けたずつの数字を分つ符号としての「,」(10,000,000)、各項が等しいことを示す「=」(a=b)、とくにその部分に注意をはらわせるための「 」(アンダーライン)など。
主な用法によって符号を分けてみる。
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かっこや引用のしるしの中でも、それで文が終っていれば、とめを用いるが、短い引用語にはとめをつかわない。
Kore ga yûmeina "Gekkô no kyoku" desu.
〔注意〕 「.」は、また略語を示す場合にも用いる。 N.H.K. (Nippon Hôsô Kyôkai) 日本放送協会。 |
略語が文の終りにくるときには、文としての終りをあらわすとめははぶく。
Tae-dae ni kikoeru S.O.S.
略語のうち、記号にはとめを用いないのが普通である。
H2O
mm
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文の形としては終っていても、その文意がつづく場合には「くぎり」をつかう。ただし、それがあまり長いときは「とめ」をつかうこともある。
Titi mo yorokonda, haha mo yorokonda.
「引用のしるし」の中で文としては完結していても、そのあとに「といって……」などの文がくる場合には「くぎり」をつかうことが多い。
"Sore wa boku no desu," to sakenda.
一つの語を修飾する形容詞が二つ以上あるとき、各形容詞の間に「くぎり」をつかう。
Sizukana, akarui, tanosii kôgen no haru desu.
誤解をふせぐため (しかも他の符号は用いられない場合) 「くぎり」をつかう。
ローマ字文では分ち書きを用いるから、このような場合は漢字かなまじり文の場合よりよほどすくなくなる。
Zitu wa sono tukue ga hosii no desu.
Zitu wa sono, tukue ga hosii no desu.
直接に呼びかける名詞や間投詞のあとにつかう。
Masao San, asobimasyô.
Oi, mate!
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「;」「:」が文の中で一番多く用いられるのは次のような場合である。
Tarô ga itta; "Yukiko, kite goran. Kirei na tuki da yo."
Seisyo ni iu: Nanzi no tonari o aisubesi.
このような場合、会話や引用の部分を中間にして、Tarô ga, "......" to itta のようにも表現するが、上のような表現をとるならば、「;」「:」を用いることによって文の形が美しくひきしまってくる。
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必要によっては、「といのしるし」と「つよめのしるし」とを同時に用いることもある。
Dare ga sonna koto o itta?! (!?)
「つよめるしるし」を二つまたはそれ以上用いることも行われている。
Tasukete kurê!!
漫画の説明文またはくだけた文などには、無言で疑問や感動の意味を示すため、「といのしるし」や「つよめる」を単独で用いることも行われている。
"?"
"!"
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注意書きや署名などを文の前後におく場合に用いることがある。
(Dai ni kai) ......
...... (owari) [tuzuku]
..... (Nakamura M.)
箇条書きの場合、その番号をかこむことがある。
(3) [3] ......
[a] (a) ......
符号を名称として用いたことを示す場合、その符号をかこむことがある。
Rômazi-bun de tukau hugô niwa, (.) (?) (!) (') nado ga arimasu.
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図書の標題・題目をあらわすとき、船名、外国語を文中に引用するとき、地の文とわけて特に目立たせたいと思う語があるときなどにもつかわれる。
"TYÛÔÔ KÔRON"
"TATUTA MARU"
Demokurasii (democracy) towa girisyago no 'demos' no 'autocrasy' to iu koto desu.
Gakkô o 'saboru' nowa huryô-syônen da.
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そえられた説明の語句の前後につかうこともある。
Itiban atarasii yôhuku--Konoaida tukutta bakari no--o kite dekaketa.
話頭をかわすときにも用いる。
Sore wa ne, -- iya, mô yosimasyô.
前言を改正するときにもつかう。
50 ni--iya, 60 nin mo ita ka na?
いいさして余韻をもたせるときにもつかう。
"Mâ, hontoni okawaisô ni, --"
「引用のしるし」でかこむほどでもない語句を地の文と分けるときにもつかう。
Kore dewa narumai--to itte, tatiagatta.
時間的・空間的な経過をあらわす。
Gohun--zyuppun--zyûgohun
Sizuoka--Hamamatu--Nagoya
「……から……まで」の意味をあらわすときにも用いる。
3--5 syûkan no noti.
Ueno--Hibiya no densya.
地名や人名などの頭文字だけをかいて、あとは省略するときにも用いる。
Sinano no yamaoku ni K-- to iu mura ga aru.
また頭文字さえも省略するときがある。
--Ken
--San
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その他、
"A'!" to sakende taoreta.
"Hayaku kaere' te ie yo."
のような場合も「きるしるし」がつかわれる。
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「’」「^」については「つづり方」の項を見よ。
—転記はここまで—
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