ケース1、・・・松田 太郎さんの場合

生命保険募集員をしている松田太郎さんは、ギャンブルや趣味の車・バイクにお金をつぎ込んだ事が原因で自力では返済できないほどの借金(500万円)をつくってしまいました。
なんとかしなければと思い、「借金問題解決システム」という怪しげなサイトを見て、そこのフローチャートを読み進めていたら、資格制限により破産の方法はマズイと分かりました。また、せっかく手に入れた車やオートバイを手放したくありませんでした(守りたい財産がある)。
そこで、太郎さんは個人再生手続を検討しました。

このケースは車・オートバイのローンがない事を前提としていますが、ローン支払い中の車である場合にはどうなるのですか?
免責不許可事由があっても・・・・
例えば「浪費や賭博などで過大な債務を負担した場合」がありますが、浪費が原因で多重債務者になる人が多く、それでも一部弁済や少額管財により免責される可能性が高い事を考えると、よほど信じ難いほど過大な浪費以外は破産を選択した方がよいと思われます。太郎さんの場合も仮に資格制限がなかったら、破産を選択してもよいと思います。



太郎さんの基礎データー

仕事 保険募集員であり固定給と歩合給が混在しているが、年収は20%以上の変動はないとする(民再241UFイ参照)
手取り月給→約30万円  ボーナスあり とする。
家族構成 申立人・太郎さん(14年11月16日現在33歳)→(15年4月1日には、34歳になる)
その妻・花子さん(30歳)→(30歳)
子   ・ヨウイチ(4歳)→(5歳)
の3人家族とする
・・・年齢は再生計画案を提出した日以後の最初の4月1日における年齢を基準にする
住まい 横浜市内の
賃貸のアパート(家賃月8万円)に住んでいるとする
借金総額 500万円程度

 
以下、給与所得者のここのページを補足します。


@まず、
太郎さんは、度胸がなかったのでサラ金業者に「今までの取引経過を開示しろ!」と言えませでしたが、通帳の記載などを手がかりにおおよその計算をしたところ利息制限法で引き直したら500万円から100万円の間と計算できました。
そこで、下の表から最低100万円弁済すればよいと分かりました。
債権者一覧表には、自分で引き直し計算をした額を記載しなければいけないのですか?

債務額(借金の総額のこと)
利息制限で引き直した額
分割弁済しなければならない総額
(最低弁済基準額)
3000万円〜1500万円以上 300万円
1500万円未満〜500万円以上 5分の1
500万円未満〜100万円以上 100万円・・・・←太郎さんのケース
100万円未満〜  0円 総額(カットなし)・・・・この場合





A次に、自分の資産を調べる
1、まず、太郎さんは清算価値チェックシートをダウンロードしました。
  精算価値チェックシートをダウンロードする
2、次に、自動車の中古屋に行って、車・バイクの時価を査定してもらいました。
4、また太郎さんは保険にも入っているので保険会社に電話で解約払戻金計算書を出してくれるように頼みました。
3、その結果、↓のチェックシートの記載のとおり資産総額は113万5373円になりました。
太郎さんの精算価値チェックシートの見本ダウンロードする


Bさらに、太郎さんは給与所得者でさらに、収入も安定しているといえるので

可処分所得2年分を調べる必要があります。

人様が作ったソフトウェア(松尾さんのHP→ソフトウェアのおもちゃ箱→個人債務者再生支援
を利用させてもらうのも良い方法ですが、ここでは政令の表を見ながら実際に計算していきます。
 

1、まず、必要な資料をそろえる!!
  @可処分所得額算出シートをダウンロードして印刷する。・・・・・・可処分所得算出シートをダウンロードする
  A説明もダウンロードして印刷する。・・・・・・・・・・・・可処分所得算出シートの説明をダウンロードする
  B太郎さんの可処分所得算出シートの見本をダウンロードして印刷する
  C源泉徴収票 過去2年分(源泉徴収票は重要アイテムなので必ず用意しましょう)
  D区役所などで発行してもらえる課税証明書 または 徴収税額通知書を用意する(過去2年分)。
  E民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令を別ウインドウで開いておきます(フレームで左右に分かれていますが、フレームを右にづらして左のページを広くしておきましょう・・・ここがポイント)

2、これで、必要な材料は揃いました。いよいよ可処分所得算出シートに記入していきます。
  源泉徴収票を利用し・・・・
  シートの@〜Eの空欄を埋めましょう・・・・・・・・・・・・・・・・・

  @源泉徴収票の「支払金額」を2年分合計した額を記入する
  A源泉徴収票の「源泉徴収額」を2年分合計した額を記入する
  B課税証明書の市民税・県民税を合計し2年分を合計した額を記入する
  C源泉徴収票の「社会保険料等の金額」を2年分合計した額を記入する
  DとE・・・計算すればよいだけ


3、居住地域の区分の欄があります。政令のhpの左のページにある「別表第一 居住地域の区分の表」をクリックします(左のページを広くしておくのがポイント)。クリックすると右のページにずらずら地名がならんだ表が出てくるはずです。太郎さんは横浜市に住んでいるので第一区と分かりシートに「第一区」と記入しました。

4、次にFの個人別生活費を記入しましょう。まず、政令hpの左ページの「別表第二の一 第一区における個人別生活費の表」をクリックします。
クリックすると年齢とそれに対応する生活費が出てきます。それを見ながら自分と家族の年齢に対応した額とシートに書き込んで下さい。注意・・・・・・・年齢は再生計画案を提出した日以後の最初の4月1日における年齢です。
太郎さんのケースでは・・・・太郎さん→49万9000円 花子さん→49万9000円 ヨウイチ→39万8000円となりました。

5、さらに、Gの世帯別生活費を記入しましょう。まず、左ページの「別表第三の一 第一区における世帯別生活費の表」をクリックします。
太郎さんの場合は三人家族であるので64万7000円と分かりました。

6、Hの冬季特別生活費用もまったく同じ方法で調べます。太郎さんのケースでは2万4000円になります。
第一区以外の場合、「第一級地」から「第六級地」の区分があります。
その場合には、「別表第五 冬季特別地域の区分」をクリックして「第?級地」か調べて下さい。


7、@次に、Iの「住宅費の額D」を書く前に政令の住居費の額を調べましょう。
   左ページの「別表第六 住居費の表」をクリックして、対応する欄を見てください。
   太郎さんの場合は横浜で第一区で3人家族なので83万5000円となりました。
  A次に、シートの「はい」、「いいえ」の質問に答えていきましょう。
    太郎さんの場合、アパートの家賃を月々8万円払っているので一年間の弁済見込額は12倍の96万円になりました。
  B政令で定めた額のほうが低いので、Iの住宅費の額 D の欄には83万5000円と書き込みます。

8、最後にJの勤労必要経費の額を記入しましょう。政令のhpの左のページにある「第一区及び第二区における勤労必要経費の表」をクリックしましょう。上欄にある金額は「@過去2年間の収入合計額」を2で割った金額です。
太郎さんは250万円以上の年収があるので勤労必要経費は55万5000円になりました。

9、あとは、電卓で足し合わせればよいだけです。
   結局、太郎さんのケースではN計画弁済総額の最低基準額」は58万6564円になりました。


C以上から、@〜Bで求めた金額で、一番多額なのは、Aの清算価値113万5373円であるので、今後、この金額を3年間、場合によっては5年間で分割して返済していけばよいのです。
計算は一見、複雑なように思えますが、実に簡単でしょ?
太郎さんのように精算価値が最も多額になるケースでは、その金額を分割して弁済することが可能であるならば、破産より個人再生手続を選択したほうがよいと思います。


Dちなみに、太郎さんのケースでは約113万円となりましたが、独身で親元で生活している人のケースでは、自分以外の生活費や住居費が0円であるので可処分所得額が異様に多額(400万円ほど)になってしまうケースもあります。
そのような場合、債権者に反対され再生手続を潰されるのを覚悟して小規模個人再生手続をするか、特定調停・任意整理をするか、あるいは破産するか、なかなか悩ましいケースになってしまいます。