■旅券法、旅券法施行規則—引用

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■以下は、

から一部分を転記して引用したものに、補足説明をくわえたものです。最後の「引用者の注釈」を無視しないでください。

—以下は引用部分—

昭和二十六年法律第二百六十七号
   旅券法

(略)

 (旅券の記載事項)
第六条 旅券には、次に掲げる事項を記載するものとする。
 一 旅券の種類、番号、発行年月日及び有効期間満了の日
 二 旅券の名義人の氏名及び生年月日
 三 渡航先
 四 前三号に掲げるもののほか、外務省令で定める事項
 前項第三号の渡航先を地域名をもつて包括記載する場合の地域の範囲は、外務大臣が官報で告示するところによる。

(略)

令和四年外務省令第十号
   旅券法施行規則

 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)に基づき、及び同法を実施するため、旅券法施行規則の全部を改正する省令を次のように定める。
 旅券法施行規則(平成元年外務省令第十一号)の全部を次のように改正する。

(略)

 (旅券の記載事項)
第九条 法第六条第一項第二号の氏名は、戸籍に記載されている氏名(戸籍に記載される前の者にあっては、法律上の氏及び親権者が命名した名)について国字の音訓及び慣用により表音されるところによる。ただし、旅券の発給を受けようとする者(以下この条において「発給申請者」という。)がその氏名について国字の音訓又は慣用によらない表音を申し出た場合において、公の機関が発行した書類により当該表音が発給申請者により通常使用されているものであることが確認され、かつ、外務大臣又は領事官が特に必要であると認めるときは、この限りでない。
 発給申請者から、法第六条第一項第二号の氏名に加え、戸籍に記載されている氏名以外の呼称を併記することを希望する旨の申出があった場合において、我が国又は外国の政府機関又は地方公共団体の発行した書類その他これに準ずる書類により当該申出に係る呼称が社会生活上通用しているものであることが確認され、かつ、外務大臣又は領事官が当該申出に係る呼称の併記が渡航の便宜のため特に必要であると認めるときは、当該申出に係る呼称を記載することができる。
 第一項の氏名及び前項の規定による呼称は、ヘボン式ローマ字によって旅券面に表記する。ただし、発給申請者がその氏名又は呼称についてヘボン式によらないローマ字表記を希望し、外務大臣又は領事官が、出生証明書等により当該表記が適当であり、かつ、渡航の便宜のため特に必要であると認めるときは、この限りでない。
 前項の規定に基づき旅券面に記載されるローマ字表記は、外務大臣又は領事官が特に必要と認める場合を除くほか、変更することができない。
 法第六条第一項第四号の外務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
 一 旅券の名義人の性別、国籍(国籍のコード(国際民間航空機関が定めるコード。第三号並びに次条第二号及び第三号において同じ。)を含む。)及び本籍の都道府県名(戸籍に記載される前の者にあっては、本籍となると推定される都道府県名)
 二 一往復用の旅券の効力
 三 旅券の発行国のコード及び発行官庁
 四 第二項の規定による呼称

(略)

—引用部分は以上—

引用者の補足

「旅券法施行規則」については、日本法令索引で沿革をたどると以下のようになっています。

以上のとおり、旅券の氏名のローマ字つづりに「ヘボン式ローマ字」をつかうことが指定されたのは、

が最初のようです。

それ以前はというと、昭和12年9月21日内閣訓令第3号で、いわゆる訓令式のつづりが交付された直後の昭和12年9月27日に、「旅券の氏名のローマ字つづりも昭和13年1月1日からこの訓令にしたがうように」との内容の通帳が外務事務次官からだされています。さらに、昭和13年1月12日におなじ外務次官からと、昭和13年1月20日にもおなじ外務次官と外務省亜米利加局長からも通牒がだされています。亜米利加局長からの通牒は、この訓令によるつづりで支障を生ずる場合の例示であり、現行の昭和29年内閣告示のまえがきにある、「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合」のルーツともいえそうです。

以下、

から転記:

米三普通合第一四三號
  昭和一三年一月十二日

外務次官 堀内謙介

樞密院書記官長 村上恭一 殿

旅券ニ使用スル國語ノ「ローマ」字綴方統一ニ關スル件

本件ニ關シ別紙寫ノ通客年九月二十七日付各地方長官(警覗總監ヲ含ム)及關東州廳長官宛通牒致置タルニ付公用旅券ニ關シテモ右ノ趣旨ニ依リ御取計相成度此段申進ス

(写)
米三普通合第四二一三號
  昭和一二年九月二七日

外務次官 堀内謙介

旅券ニ使用スル國語ノ「ローマ」字綴方統一ニ關スル件

國語ノ「ローマ」字綴方ニ關シテハ本月二十一日附内閣訓令第三號ヲ以テ別紙寫ノ通公示セラレタルニ付旅券關係上使用スヘキ國語ノ「ローマ」字綴方モ原則トシテ右訓令ノ趣旨ニ據リ昭和十三年一月一日ヨリ之ヲ實行スルコトト致度尤モ個人ノ姓名及商社名ニシテ從來特有ノ綴リヲ用ヰ居ル爲右訓令ノ綴方ニテハ支障ヲ生スル者ニ對シテハ例外トシテ其ノ特有ノ綴リヲ使用セシムルモ差支ナキニ付右様御了知ノ上此ノ旨豫メ貴管下一般ニ周知方可然御取計ヒ相成度依命此段申進ス

追テ從來の諸通牒中本通牒ノ趣旨ニ牴觸スル部分ハ廢止セラレタルモノト御承知相成タシ

(写)
◎内閣訓令第三號

各官廰

國語ノローマ字綴方ハ從來區々ニシテ、其ノ統一ヲ缺キ使用上不便尠カラス、之ヲ統一スルコトハ敎育上、學術上將又國際關係其ノ他ヨリ見テ極メテ必要ナルコトト信ズ。仍テ自今左ノ通「ローマ」字綴方ヲ統一セントス。各官廰ニ於テハ漸次之ガ實行ヲ期スベシ。

昭和十二年九月二十一日

内閣總理大臣 公爵 近衞文麿

一、國語ノローマ字綴方ハ左表ニ依ル

ローマ字綴方表
a     i    u    e    o
ka   ki   ku   ke   ko
sa   si   su   se   so
ta   ti   tu   te   to
na   ni   nu   ne   no
ha   hi   hu   he   ho
ma   mi   mu   me   mo
ya    i   yu    e   yo
ra   ri   ru   re   ro
wa    i    u    e    o
ga   gi   gu   ge   go
za   zi   zu   ze   zo
da   zi   zu   de   do
ba   bi   bu   be   bo
pa   pi   pu   pe   po
 kya   kyu   kyo
 sya   syu   syo
 tya   tyu   tyo
 nya   nyu   nyo
 hya   hyu   hyo
 mya   myu   myo

 rya   ryu   ryo

 gya   gyu   gyo
 zya   zyu   zyo
 zya   zyu   zyo
 bya   byu   byo
 pya   pyu   pyo 

二、前號ニ定ムルモノノ外ニ付テハ概ネ左ノ例ニ依ル

  1.  長音ノ符號ヲ附スル場合ニハ okāsama, kūsyū, Ōsaka ノ如ク「¯」ヲ用フルコト
  2.  撥音ハ總ヘテ n ヲ以テ表ハスコト
  3.  撥音 n ト其ノ次ニ來ル母音 ( y ヲ含ム) トヲ切離ス必要アルトキハ hin-i, kin-yōbi, Sin-ōkubo ノ如ク「-」ヲ用フルコト
  4.  促音ハ gakkō, happyō, tossa, Sapporo ノ如ク子音ヲ重ネテ之ヲ表ハスコト
  5.  文書ノ書始及固有名詞ハ Wagakuni no………, Sizuoka, Masasige ノ如ク語頭ヲ大文字トスルコト尚固有名詞以外ノ語頭ヲ大文字トスルモ差支ナシ
  6.  特殊音ノ表記ハ自由トス
米三普通合第二七一號
  昭和一三年一月二十日

外務次官 堀内謙介

樞密院書記官長 村上恭一 殿

旅券ニ使用スル國語ノ「ローマ」字綴方統一ニ關スル件

本件ニ關シ別紙寫ノ通付警覗總監、各地方長官及關東州廳長官宛通牒致シタルニ付委細右ニテ御了悉ノ上 公用旅券ニ關シテモ右ノ趣旨ニ依リ可然御取計相成度此段申進ス

 本信送付先 内閣書記官長、法制局長官、賞勲局總裁
  企劃院總裁、對滿事務局次長、樞密院書記官長、各省次官、
  會計檢査院長、貴族院書記官長、衆議院書記官長、
  内閣恩給局長、内閣統計局長、内閣印刷局長

(冩) 米三普通合第二七〇號
  昭和一三年一月二十日

外務省亜米利加局長 吉澤清次郎

旅券ニ使用スル國語ノ「ローマ」字綴方統一ニ關スル件

本件ニ關シテハ曩ニ客年九月二十七日付米三普通合第四二一三號ヲ以テ通牒致置タル處右通牒中該訓令ニ依ル綴方ニテ支障ヲ生スル場合ヲ例示スレハ左記ノ通ニ有之尚旅券下付ノ際ハ旅券所持人自署(欧文)ト旅券面記載ノ姓名ト綴方相違シ居ラサル様注意方可然御取計相成度此段申進ス

  1. 個人ノ姓名ニシテ「ローマ」字綴一定シ居リ訓令ノ綴方ニテハ入國及渡航上其ノ他ニ支障ヲ生スル者
  2. 商社名等ニシテ從來「ローマ」字綴一定シ居リ訓令ノ綴方ニテハ支障ヲ生スルモノ
  3. 再渡航者ニシテ再入國許可證、登録證書、永住権證書等ヲ有シ右ニ從來特有ノ「ローマ」字綴を以テ其ノ姓名カ記載セラレ居ルモノ
  4. 初渡航者ニシテ入國許可證若ハ從業員許可證ヲ有シ右ニ從來特有ノ「ローマ」字綴ヲ以テ其ノ姓名カ記載セラレ居ルモノ

以上

外務省のサイトの以下のページ、

と、このページからリンクされている、 というPDFファイルによると、

1866年(慶応2年) 日本で初の海外渡航文書が発給された
1878年(明治11年) 海外旅券規則が制定された

とのことです。

明治時代の旅券の申請書類をみると、最初のうちはカタカナでフリガナがかいてあり、ローマ字は旅券を下付するがわで記入していたようです。

1885年(明治18年) 羅馬字会が設立され、『羅馬字にて日本語の書き方』を刊行。
1887年(明治20年) ヘボンの『和英語林集成 第3版』が刊行される。
1894年(明治22年)〜1895年(明治28年) 日清戦争
1904年(明治37年) 日露戦争はじまる
1905年(明治38年) 日露戦争がおわり、「ローマ字ひろめ会」が設立される。

(PCのかたは、以下のリンクさきの画面の右上のボタンで[PDF]を選択したほうがみやすくなります。スマホからはJPEGしかみられないので、リンクさきをJPEGにしています。)

翌1906年(明治39年)に、陸軍で、

に、三、氏名 振仮名及羅馬字綴付記ノ事の記述がみられます。その後、陸軍関係の申請書類にはローマ字つづりが記入されるようになったようですが、文部省関係はフリガナだけのようです。

このころのローマ字つづりをみると、いろいろあっておもしろいです。

引用者の注釈

  1. この文書は、デジタル庁が[e-Gov法令検索]で公開した法令データを引用者(この文書の著者)がウェブブラウザーで閲覧し、それを引用者が機械可読形式でHTMLをもちいてコンピューターに入力したものです。マークアップのしかたは、引用者の解釈によるものです。
  2. この文書の引用もととしての原典は上記の[e-Gov法令検索]の法令データですが、法令としての原典は官報です。[e-Gov法令検索]の法令データと官報のちがいなどについては、[e-Gov法令検索]の「ヘルプ」をご参照ください。
  3. 強調表示は引用者によるものです。
  4. 句読点のうちかたは、引用者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  5. 漢字・ひらがな・カタカナのつかいわけと、おなじよみかたの漢字のつかいわけは、引用者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  6. おくりがなのおくりかたは、引用者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  7. 段落のあたまに全角1文字分の空白がはいっているところは、原典のとおりです。
  8. 番号つきリストの番号は、原典では漢数字の場合があります。
  9. 以下のものは、ソフトウェアの仕様や設定、ハードウェアの表示域の幅など、この文書をご覧になる環境に依存します。かならずしも原典どおりにはなりません。
    1. 段落内の改行位置
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    8. そのほかいろいろ
  10. 上記のほかは、できるだけ原典に忠実に転記していますが、原典との、この文書をご覧になるかたにとって意味があるちがいがないことを保証するものではありません。ご心配のむきは原典を参照してください。
  11. この文書は、インターネット上の著者のウェブサイトのなかの、著者の著作物、の理解をたすけるための参考資料、としての目的で原典を引用したものであり、それ以外の目的でもちいられるべきものではなく、原典が意図している目的でもちいられるべきでもありません。

変更記録

第1.1版 (2024年5月15日)
新規作成
第1.1.1版 (2024年5月19日)
書式微修正
第1.2版 (2024年5月22日)

版:
第1.2版
発行日:
2024年5月22日
最終更新日:
2024年5月22日
著者:
海津知緒
発行者:
海津知緒(大阪府)

KAIZU≡‥≡HARUO