■この文書は、
から転記したものです。最後の「転記者の注釈」を無視しないでください。
—以下は転記部分—
◎内閣告示第一号
国語を書き表す場合に用いるローマ字のつづり方を次のように定める。
昭和二十九年十二月九日
内閣総理大臣 吉田 茂
ローマ字のつづり方
まえがき
- 一般に国語を書き表わす場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。
- 国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつてもさしつかえない。
- 前二項のいずれにおいても、おおむねそえがきを適用する。
第1表 〔( )は重出を示す。〕 a i u e o ka ki ku ke ko sa si su se so ta ti tu te to na ni nu ne no ha hi hu he ho ma mi mu me mo ya (i) yu (e) yo ra ri ru re ro wa (i) (u) (e) (o) ga gi gu ge go za zi zu ze zo da (zi) (zu) de do ba bi bu be bo pa pi pu pe po kya kyu kyo sya syu syo tya tyu tyo nya nyu nyo hya hyu hyo mya myu myo rya ryu ryo gya gyu gyo zya zyu zyo (zya) (zyu) (zyo) bya byu byo pya pyu pyo
第2表 sha shi shu sho tsu cha chi chu cho fu ja ji ju jo di du dya dyu dyo kwa gwa woそえがき
前表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。
- はねる音「ン」はすべて n と書く。
- はねる音を表わす n と次にくる母音字または y とを切り離す必要がある場合には、n の次に ' をいれる。
- つまる音は、最初の子音字を重ねて表わす。
- 長音は母音字の上に ^ をつけて表わす。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。
- 特殊音の書き表わし方は自由とする。
- 文の書きはじめ、および固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いてもよい。
◎内閣訓令第一号各官庁
ローマ字のつづり方の実施について
国語を書き表わす場合に用いるローマ字のつづり方については、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号をもつてその統一を図り、漸次これが実行を期したのであるが、その後、再びいくつかの方式が並び行われるようになり、官庁等の事務処理、一般社会生活、また教育・学術のうえにおいて、多くの不便があつた。これを統一し、単一化することは、事務能率を高め、教育の効果をあげ、学術の進歩を図るうえに資するところが少なくないと信ずる。
よつて政府は、今回国語審議会の建議の趣旨を採択して、よりどころとすべきローマ字のつづり方を、本日、内閣告示第一号をもつて告示した。今後、各官庁において、ローマ字で国語を書き表わす場合には、このつづり方によるとともに、広く各方面に、この使用を勧めて、その制定の趣旨が徹底するように努めることを希望する。
なお、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号は、廃止する。
昭和二十九年十二月九日
内閣総理大臣 吉田 茂
—転記部分は以上—
「そえがき」のなかの、"前表に定めたもののほか、おおむね次の各項による"の「おおむね」については、文化庁、第2期国語審議会、第18回総会(昭和28年(1953年)3月12日)の議事録、"議事 ローマ字つづり方について(1)"に、
そえがきは第1表・第2表に共通するものであるが,書き表し方の細目を定めたものである。どうしてもこの各項にもれるものがあるので,「おおむね」ということばを入れたわけである。
とあり、議事 ローマ字つづり方について(2)には、
はねる音の「すべて」はなくてもいいということだが,標準式で,b,m,pのまえでは「ン」にmを書く習慣があるので,これをnにするという意味で「すべて」を入れた。しかし標準式の人がそれでもmを書くという場合のために,「おおむね」を入れたのである
とあります。「標準式」とは、ローマ字ひろめ会の「標準式ローマ字書き日本語の書き方」のことだとおもわれます。
この第18回総会で可決した建議書、"ローマ字つづり方の単一化について(建議)"(文調国第76号)に添付されている別紙が昭和29年12月9日内閣告示第一号の原案とおもわれますが、この「まえがき」は内閣告示の「まえがき」とことなっており、「おおむね」の記載はありません。じっさいに交付された内閣告示では、"3. 前二項のいずれにおいても、おおむねそえがきを適用する"となっています。
けっきょく、現行の内閣告示は、2か所の「おおむね」により、
などのつづりを排除しないものになっているとおもわれます。
っ
>(ちいさい<つ
>)が<つ
>(ふつうの<つ
>)になっているところは、原典のとおりです。© 著作権 海津知緒 1999, 2024. All Rights Reserved.
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