2002年10月7日 月曜日 午後4時57分:
会社で名刺作成の担当をしておりますが、住所の表記で教えていただきたいことがあります。一応、「道路標識のヘボン式ローマ字綴り一覧表」(http://www.kictec.co.jp/inpaku/iken%20keikai/syasin/hebon/romaji.htm)を参照させていただいたのですが・・・。
A. 入居しているビルの名前ですが、大文字小文字の区分の基本頭1文字は大文字以下小文字となると、「JRセントラルタワーズ」は、
「Jr Cetntral Towers」
と表記するのがよろしいのでしょうか?
それとも通常JRと表記される会社ですので、
「JR Central Towers」
と表記するのがよろしいのでしょうか?
B. また、どこで区切ればよいのか教えていただきたく。
会社名にからんだビル名 商工中金・GEエジソン福井ビルの場合、
- Shokochukin・GEedisonfukui Building
(GEは JR同様通常大文字表記されているので。エジソンをedisonとするのは企業サイトのURLの表示が右記の表記だったため。)
- Shokochukin・GE Ejisonfukui Building
(エジソンはそのままローマ字ヘボン式のほうがいいのか?)
- Shokochukin・GE-edisonfukui Building
(GEエジソンはひとつの会社のため空白で見やすくするのではなく−ハイフンを入れる)
- Shoko chukin・GE edisonfukui Building
(商工中金を見やすくするため商工と中金の間一文字あけるもしくはハイフンを入れる。全部つづけたものと一文字あけたもの両パターンは企業サイト(http://www.shokochukin.go.jp/)でも確認できましたがどちらがよいのか?
C. 英語名詞の場合
「ヴィサージュ」の表記は,
- VISAGE (大文字表記か?)
- Visage (1文字目大文字2文字目以下小文字でいいか?)
D. 地名+会社名が組み合わさった場合
「津第一生命ビル」
- Tsu-Daiichiseimei Building
- Tsu-Daiichi-seimei Building
- Tsu Daiichi-seimei Building
- Tsu-Daiichiseimei Building
- Tsudaiichiseimei Building
すみません。わかりにくいかもしれませんが、もし 回答に引用されるなら、この相談メールも皆様にわかりやすいように訂正してください。
おといあわせありがとうございます。おことばにあまえて、書式や文言を一部修正させていただきました。
固有名詞や複合名詞のローマ字表記というのは、ちょっとやっかいな部分でして、人名はまだいいのですが、地名、さらに組織名やたてもののなまえなどになると、ローマ字論者のあいだでも定説はありませんし、わたくしもなやむところが多々あります。
参照された、「道路標識のヘボン式ローマ字綴り一覧表」も、ビルのなまえのような複合名詞的なものや、おといあわせのなかにある「ヴィサージュ」のように外来語的なものや、「マンション」のように和製英語的なもののあつかいまでは記述がなく、地名やビルのなまえ、組織名など、一般に適用しようとするとなやむ部分が多々あるとおもいます。
問題点を整理すると、以下の4点かとおもいます。どこでくぎってかくかという、わかちがきの問題ですが、そもそも、日本語のローマ字表記に関しては国際規格や英米規格や内閣告示がありますが、わかちがきの規則についてはほとんど記述されていません。
ローマ字論者のなかでもゆれがおおきいのは、いわゆる複合名詞のたぐいで、たとえば、「物理学」は、<buturi gaku>か、<buturigaku>かとか、「物理学部」は<buturi gaku bu>か<buturigaku bu>か、<buturi gakubu>か、「理学部」は<ri gaku bu>か、<rigaku bu>か、<ri gakubu>かとか…。
「株式会社」も、<Kabusikigaisya>、<Kabusiki-gaisya>、<Kabusiki Gaisya>、<Kabu Siki Gaisya>などのどれにするか、定説はありません。さらに、「会社」のよみを、連濁を無視して「カイシャ」として<kaisya>とかくというかんがえかたもあります。個人的には、たとえば「株式」と「会社」にわけて、それぞれ単語としてなりたち、「株式会社」においてもその意味をもったまま「株式会社」の意味を構成しているなら、わけてかくべきだとおもいます。しかし、じゃあ<株>と<式>はわけられないのかといわれると、なやむところです…。個人的には、<式>は接尾語とみなし、接尾語や接頭語はつづけてかくべきだとおもうのですが…。
さらに、スペースをいれるか、つづけてかくかということだけでなく、ハイフンをいれるかどうかということもありますが、これも、ローマ字論者のあいだでも定説はありません。まよったときにはハイフンでつなぐとするひともいますし、まよったときにはスペースをいれて、はなしてかくというひともいます。
人名の場合は、戸籍にかかれている文字列がそのひとの氏名であるのとおなじように、会社やビルのなまえの場合は、本来は登記簿にかかれている文字列がそのビルのなまえであるはずです。
ということは、たてもののなまえには、人名の姓と名のようなものはないので、それ全体でひとつの固有名詞ということにならないでしょうか。
たとえば、第一生命なら、「第一生命保険相互会社」がそのなまえであり、これ全体でひとつの固有名詞のはずです。(http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/outline/gaiyou_f.htmlを参照。)
これをローマ字でかけば、国際規格版の海津式なら、
Daiitiseimeihokensougogaisya
となります。しかし、やはりこれではながすぎるのでくぎってかくとすれば、
Dai Iti Seimei Hoken Sougo Gaisya
となります。ただ、これはあくまでわたくしがかくならばということです。
わかちがきについて、公的な機関がだしたてびきとしては、文部省内国語問題研究会によるローマ字教育の指針とその解説があります。資料室内の「■ローマ字教育の指針とその解説―2-3」をご参照ください。
たいていの会社は、「英語名」というのをかかげていて、第一生命なら、
THE DAI-ICHI MUTUAL LIFE INSURANCE COMPANY
のようです。(http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/outline/gaiyou_f.htmlの最下行の著作権表記を参照。)
これにしたがえば、
Dai-ichi Seimei Hoken Sougo Gaisya
となるのでしょうか。要は、会社名・組織名・たてもののなまえなどを固有名詞と固有名詞以外の語の集合体とみるときに、どの部分を固有名詞とみなすかということです。「第一」を固有名詞とみるかどうかということです。英語名が、"The First Mutual Insurance Life Company"となっていないということは、「第一」の部分を、助数詞ではなく、固有名詞とみなしているわけです。
「第一」を固有名詞とみなした場合、<Daiichi>、<Dai-ichi>、<Dai Ichi>、<Daiiti>、<Dai-iti>、<Dai Iti>などのどのつづりにするかということも、定説はありません。なにしろ固有名詞なので。これは、その固有名詞の所有者がきめることだとおもいます。
日本語の一般の文章のローマ字表記でも、カタカナの部分、つまり外来語のローマ字表記については、海津式ではカナにしたがってローマ字に翻字しますが、http://www.halcat.com/roomazi/com/soudan/200209162102.html にもかきましたとおり、原つづりのとおりにかくというむきもあります。
たとえば「ヴィサージュ」ですが、これもおなじような問題があります。ただ、固有名詞だとすると、固有名詞は翻訳できないはずなので、<Visaazyu>、あるいは英米規格に準拠するなら<Visaaju>としかかけないはずですが、江崎玲於奈さんがアメリカで<Leo Ezaki>となのっていたように「英語名」の概念を導入すると、<Visage>もありということになります。
また、<VISAGE
>か<Visage
>かということですが、ふつうのローマ字がきの日本語の文章のなかに外国語をまぜる場合は、その部分が外国語であるということがわかるように、字体をイタリックにしたり、二文字め以降をスモール・キャピタルにしたり、字体がかえられない場合はすべて大文字でかくということをしますが、固有名詞の場合は、1文字めを大文字でかくということ以外は、はっきりとした規則や慣習はありません。ただ、人名で、姓と名を区別するために、姓の部分をすべて大文字でかいたり、2文字め以降をスモール・キャピタルでかいたりという慣習はあります。パスポートでは、姓も名もすべて大文字です。
ただ、ここではっきりさせておきたいのは、「英語でかく」ということと「ローマ字でかく」ということはちがうということです。
人名の場合は、戸籍にかかれている文字列がそのひとの氏名であり、これをローマ字でかく場合は、海津式ではふりがなにしたがってローマ字に翻字しますし、いわゆる訓令式やヘボン式の場合は発音にしたがってローマ字にかきうつします。英訳ではありません。
すなわち、「白木」は<Siraki>や<Shiraki>となり、<plane wood>にも、<White Tree>にもなりません。
つまり、たとえば「日本銀行」のローマ字表記は<Nippon Ginkou>であって、<Bank of Japan
>ではないということです。
「商工中金」の英語名は、
THE SHOKO CHUKIN BANK
のようです。(http://www.shokochukin.go.jp/ を参照。なお、ドメイン名にはスペースをいれることはできませんので、ドメイン名の<shokochukin
>はわかちがきの参考にはなりません。)
英語表記はわたくしの専門外ですので、英語の専門家におたずねいただいたほうがいいとおもいます。
ただ、おせっかいながら、英語でかくなら、なぜ英語でかくかということを確認しておいたほうがいいとおもいます。英語は国際語ではなく、民族語のひとつにすぎませんから、英語でかくことが「国際的」であるということではないはずです。
たとえば、「○○ビル」を<Maru Maru Biru>とかかずに<Maru Maru Building
>や<Maru Maru Bldg.
>とかくなら、「アパート」、「ハイツ」、「マンション」、「コーポ」などはどうしますか。それぞれ、もとの英語とはかなり意味あいがことなっていますが…。「ビル」にしても、英語の"building"とは多少意味がことなるようにおもいます。
もっとも、これは英語表記のときの問題であって、ローマ字表記では問題になりません。国際規格準拠の海津式なら<Apaato>、<Haitu>、<Mansyon>、<Koopo>のようにかけばよいのです。英米規格に準拠するなら、<Apaato>、<Haitsu>、<Manshon>、<Koopo>です。
基本的に、以下のことをおさえておきたいとおもいます。
まとめますと、以下のようになるかとおもいます。
ということで、おといあわせのなかにあるたてもののなまえのローマ字表記ですが、わたくしがかくとすれば、以下のようになります。
■JRセントラルタワーズ
JR Sentoraru Tawaazu
一般の日本語の文章をローマ字表記するとき、もともとローマ字でかいてある部分は、操作の必要はありません。その慣習にしたがえば、<JR
>は<Jr
>とならず、上記のとおりになります。
「英語で」かくなら、"JR Central Towers Bldg."か…?
■商工中金・GEエジソン福井ビル
Shoko Chukin GE Edison Hukui Biru(国際規格版)
Shoko Chukin GE Edison Fukui Biru(英米規格版)
「福井」が「福井市」や「福井県」のことである場合は、「福井市」や「福井県」が自分のサイトで<Fukui
>とかいていますので、それにならえば、
Shoko Chukin GE Edison Fukui Biru
になります。
また、中点(・)は、ローマ字では一般にもちいられず、意味あいによってスペースや、ハイフン、コンマなどにおきかえらるのが普通です。
「英語で」かくなら、"Shoko Chukin GE Edison Fukui Bldg."か…?
■ヴィサージュ
これが固有名詞だとすると、日本語のローマ字表記としては、<Visaazyu>(国際規格準拠版)か、<Visaaju>(英米規格準拠版)。
英語の普通名詞では"visage"。普通名詞なので普通は大文字なし。
蛇足ならがら、「ヴィサージュ」は、英語ではなく、フランス語よみとおもわれます。英語での発音をむりやりカタカナでかくと、「ヴィジジ」/「ヴィジッジ」/「ヴィズィジ」/「ヴィズィッジ」など…。最後の「ジ」を「ヂ」でかくのもありか…。
■津第一生命ビル
Tsu Dai-ichi Seimei Biru
「英語で」かくなら、"Tsu The Dai-ichi Mutual Life Insurance Company Bldg."か…?(これはかなりあやしい…。「Tsu」の位置が「Bldg.」のまえにくるかも。確実なのは津第一生命ビルのオーナーにたずねること。これはほかの例でもおなじ。)
以上ですが、この領域はわたくしもまよっている部分が多々あり、なかなかすっきりとした回答ができません。この回答も、あまりきちんとかけたとはおもっていません。したがって、今後改定の可能性が大です。
そのためにも、なにかご不明な点などございましたら、またメールをください。
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