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相続問題トップ遺言の有効性遺言の意味・効力



質問

被相続人は生前、遺言を撤回または撤回とみなされる行為をしましたか?

遺言を撤回(遺言をなかったことにする)行為の例
例@ 被相続人が遺言書を焼き捨てた
例A 被相続人が遺言の内容と矛盾することを行なった



質問の補足説明

遺言を作成した被相続人が、自分が作成した遺言の全部または一部を作成しなかったことにしたい場合(撤回したい場合)以下の5つ方法があります。


方法@
第千二十四条 前段  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。

被相続人である遺言者が生前、作成した遺言書を破り捨てたような場合です。
なお、遺言者以外の者(例えば相続人の一人)によって、遺言書が破棄された場合、遺言は撤回したことにならず、他の証拠(例えば遺言書のコピーなど)によって民法の要求する適式な遺言書であったと推認できる限りは、適式、有効な遺言書として有効(東京高判平成9・12・15 判タ987号227ページ)。つまり、遺言はなかったことにならず、立証の問題になります。


方法A
第千二十二条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
遺言書(前の遺言書)を作成したが、作成しなかったことにしたいので、前の遺言書を撤回する内容を記載した別の遺言書(後の遺言書)を作成した場合です。
なお、前の遺言書と後の遺言書は同じ遺言方式でなくてもよい。つまり、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。

方法B
第千二十三条 一項  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
前述しました



方法C
第千二十四条 後段  
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする(破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす)。


方法D
第千二十三条 二項  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する(遺言を撤回したものとみなす)。

遺言と矛盾する行為を生前、遺言者がした場合です。
「遺言後の生前処分」の典型例・・・・Aに土地を遺贈する旨の遺言を作成。その後、生前その土地をBに贈与。
その他の「法律行為」の例・・・協議離縁が遺言に抵触するとされた判例・・・最判昭和56・11・13  寄付行為・・・最判昭和43・12・24