遺産の評価
1 遺産評価の必要性
遺産分割は、全遺産の価値的分割であるから、当事者間の協議による場合であっても、家庭裁判所における調停・審判による場合であっても、合理的かつ適正な分割のため、その前提として、全遺産の価値を知る必要があり、遺産の評価が適正に行われなければならない。
遺産の評価額の認定をせずになした遺産分割審判が違法であるとした決定(大阪高決昭26.3.23 家月5‐4−96)があるが、これは単に「各事項を考慮し各鑑定の結果を併せ考えた」とした原審の分割審判では、相手方に分与する財産の評価額が遺産の3分1に当たっているか否か不明で、理由不備の違法ありとしたものである。
従って、遺産を評価せずとも各相続分に相当する財産が各相続人に帰属したことが明らかである場合、遺産の評価の必要はないこととなる。
例えば、相続人が3人、相続分各3分の1、遺産は不動産(土地・建物)、現金300万円、株券3銘柄300株ずつ合計900株である場合に、不動産は相続人3名の共有(持分各3分の1)とし、現金は各100万円ずつとし、株券は各銘柄100株ずつ合計300株ずつの分割とする場合、遺産の評価をせずとも問題は生じないと言えるが、このようなケースはごく稀であろうから、一般の共同相続では遺産の評価が必要となろう。
2 評価の基準時
1.評価の基準時
相続人が多数存在する遺産分割では、相続が開始して実際に遺産の分割が終了するまで相当の期間が経過するケースが多く見られ、例えばその間に株式などはその価格が日々変化し、また不動産と貴金属では価値が上昇する時でもかなりの差が生ずる。そこで、このような場合に、いつの時点で遺産を評価するかにより、分配の内容も変化し、相続人間に不公平をもたらすこととなるため、評価の基準時が問題となる。
3.現実に遺産を分割する場合の評価の基準時(分割時)
実際の分割時における評価を基準に分配を行うのが、公平かつ合理的であると考える(実務上多数の裁判例あり)。
よって以下の記述はイラナイ
現実に遺産を分割する場合の評価については、分割するまでの間に遺産の評価に変動があっても相続の開始の時点の評価によるべきであるとする相続開始時説(大阪高決昭31.10.9 家月8−10−431、新潟家審昭36.12.21家月4−10−132)
現実に分割する時点の評価によるべきであるとする分割時説(札幌高決昭39.11.21家月17−2−38、福岡高決昭40.5.6 家月17−10−109、福岡高決昭46.8.18 家月24−6−47、大阪高決昭58.6.2 判夕506−186ほか多数)
相続開始時説は、民法903条及び904条が「相続開始の時」あるいは「相続開始の当時」と規定していること、909条が遺産の分割は「相続開始の時」にさかのぼって効力を生ずると規定していること等を理由にしている。しかし、民法903条及び904条は、具体的な相続分を算定するための規定であって、遺産を現実に分配する場合の評価時期を定めたものでないことは明らかである。また、民法909条は、被相続人の死亡によって相続人へ権利義務が承継される場合、死亡と実際の分割までの間に、法的な空白期間が生じないように設けられた技術的な規定にすぎないと解されている。そこで、遺産をいつの時点で評価するかということは、このような規定の文言からでなく、相続人間の公平妥当な分割の実現の見地から考えるべきである。
例えば、相続開始の時点では同額の3000万円であった土地と株式について、遺産分割までの間に土地は4000万円に値上がりする一方、株式は2000万円に下落したような場合、相続開始時説では土地を取得した者と株式を取得した者を等しく扱い、ともに3000万円を取得したものと考えることになる。しかしながら、その結果が極めて不公平なことは明らかである。分割時説によれば、土地を取得した者は、4000万円、株式を取得した者は2000万円と評価されるから、両者の相続分が等しい場合には、前者が後者に代償金を支払うことになる。
以上のように、
実際に、ほとんどの学説及びが、分割時説を支持しており、東京家庭裁判所も分割時説に従っているようである。
評価方法・・・・・・
遺産を評価する場合、実際の取引価額、すなわち時価によるべきである。これが当事者間の公平に適うからである。
すなわち、遺産の評価といっても、父の愛蔵した本、先祖から伝わった家具・什器など、客観的価値はなくても、相続人が被相続人に対する愛情から高い主観的価値を感ずるものがある。
協議分割や調停では、このような主観的価値を尊重してもよいが、しかし、裁判所の行う審判分割では、遺産の客観的価値を確定せずに、相続分に相応する正しい分割はできない。
遺産の評価の認定をせず、遺産の価額を明示しない遺産分割の審判を違法とした判例がある。
また、審判で、分割に際し、相続人の特定の遺産に対する主観的価値を考慮して分割することは可能でも、この主観的価値を客観的価値として扱うことはできず、これはあくまで評価の問題ではなく、分割の基準の問題となる。
(2)動産の評価
(3)不動産の評価
(4)株式の評価
(5)会員権の評価・・・ゴルフ会員権など
(2)債権の評価
5.同族会社の営業権の評価