株式の価額は、その発行法人の規模、資産内容、収益力、配当の状況、これらの将来への期待などを反映して決定される。証券取引所に上場されている株式(「上場株式」)は、このような事情を反映して売買取引が行われ、それが市場価格を形成しているので、その取引価格によって評価することができる。

 しかし、証券取引所に上場されていない株式〈「非上場株式」)は、売買されることがきわめて少なく、発行法人の規模も比較的小さく、なかにはその規模等が零細で個人事業とそれほど変わらない会社もある。そこで、非上場株式については、その規模の大きさによって、大規模の会社については、業種が類似する会社の上場株式取引価格を基準にして、資産内容、収益配当の状況の三要素によって評価額を求めるのが慣習となっている。このような評価の方法を「類似業種比準方式」という。
 小規模の会社については、個人事業とあまり変わらないので、会社の純資産を発行株式数で険して一株当りの評価額とする。このような評価の方法を「純資産価額方式」という。
 大規模と小規模の中間にあるいわゆる中規模の会社については、類似業種比準方式と純資産価額方式との両方の評価額を求め、その中間値で評価されるのが一般的である。相続税が課税される場合は、上記の考え方に基づき、以下に述べるような内容の税務通達によって評価されるが、遺産分割協議の際にもこれは参考になろう。

(1)上場株式の評価

  上場株式の評価は、証券取引所で公表されている取引価格によるが、この取引価格は常時変動する要素があるので、若干の評価の安全性をみて、つぎのうち最も低い金額で評価をすることとされている。
 @ 評価日における最終の取引価格(その日の取引価格がないときは、その直近日の最終の取引価格)
 A 評価日の属する月における毎日の最終の取引価格の平均額
 B 評価日の属する月の前月における毎日の最終の取引価格の平均額
 C 評価日の属する月の前々月における毎日の最終の取引価格の平均額

(2)気配相場のある株式の評価
 気配相場のある株式の評価は、次の分類により評価される。

 @日本証券業協会における登録銘柄及び店頭管理銘柄
 次のいずれか低い額(負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものについてはイによる)

  イ 日本証券業協会の公表する課税時期の取引価格
  口 課税時期前3ケ月間の取引価格の各月ごとの平均額の最低額

A公開途上にある株式
 公開に際して公募等が行われる株式の価額は、その公開価格。公募等が行わ れない株式の価額は、課税時期以前の取引価額等を勘案して評価する。

 B国税局長が指定する銘柄の株式
  次のいずれか低い額(負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものについてはイによる)
  イ 日刊新聞に掲載されている課税時期の取引価格
  口 日刊新聞に掲載されている課税時期の取引価格と類似業種比準価額との平均額

(3)取引相場のない株式の評価
 上場株式および気配相場のある株式以外の株式については、その株式の発行会社の規模に応じて次のように評価することとされている。
 @ 大会社
  イ 規模分類の区別基準
  i従業員数が100人以上の会社
 ii直前期末の総資産の帳簿価格が10億円(卸売業は20億円)以上の会社
   (いずれも従業員50人以下の会社は除く)
 iii直前期末以前1年間の取引総額が20億円(卸売業は80億円)以上の会社
 口 許価方法
 類似業種比準方式を原則とするが、純資産価額方式を選択することもできる。
A 中会社 −その1−
 イ 規模分類の区別基準
 i直前期末の総資産の帳簿価格
 卸売業…14億円以上20億円未満(従業員50人以下を除く)
  卸売業以外・・・7億円以上10億円未満(従業員50人以下を除く)
 ii直前期末以前1年間の取引金額
  卸売業…50億円以上80億円未満
  小売・サービス業…12億円以上20億円未満
  上記以外の業種…14億円以上20億円未満
 口 許価方法
  類似業種比準方式の90%と純資産価額方式の10%の合計額を原則とするが、純資産価額方式を選択することができる。
B 中会社 −その2−
 イ 規模分類の区別基準
 i直前期末の総資産の帳簿価格
  卸売業…7億円以上14億円未満(従業員30人以下を除く)
  卸売業以外…4億円以上7億円未満(従業員30人以下を除く)
ii直前期末以前1年間の取引金額
  卸売業…25億円以上50億円未満
  小売・サービス業…6億円以上12億円未満
 上記以外の業種…7億円以上14億円未満

C 中会社 −その3−
 イ 規模分類の区別基準
 i直前期末の総資産の帳簿価格
  卸売業・‥8,000万円以上7億円未満(従業員10人以下を除く)
  卸売業以外…5,000万円以上4億円未満(従業員10人以下を除く)
 ii直前期末以前1年間の取引金額
   卸売業…2億円以上25億円未満
  小売・サービス業…6,000万円以上6億円未満
  上記以外の業種…8,000万円以上7億円未満
 口 許価方法
  類似業種比準方式の60%と純資産価額方式の40%の合計額を原則とするが、純資産価額方式を選択することができる。
D 小会社
 イ 規模分類の区別基準
   大会社と中会社以外の会社
 口 許価方法(選択可)
  純資産価額方式を原則とするが、純資産価額方式の50%と類似業種比準方 式の50%との合計額を選択することができる。
E 上記の例外
 なお、会社保有資産に一定以上の片寄りがある場合には、純資産価額方式を 採用しなければならない。
 イ 土地保有特定会社
  会社保有資産の70%以上が土地である場合
 口 株式保有特定会社
  大会社において会社保有資産の25%以上、中小会社において会社保有資産  の50%以上が他社の株式である場合

(4)取引相場のない株式の小株主の特例
  取引相場のない株式は、市場性がないうえ、小株主の場合にはその発行会社に対する支配権や発言権も弱く、少数の大株主や役員によって支配や運営が行われることが多く、株主ではあるが、その実態は投資というよりも果実を受ける単なる資金運用とも考えられる。
 したがって、小株主の所有する取引相場のない株式については、その評価は既往の配当の状況により、配当額を資本還元したものをもって評価(「配当還元方式」)することにしている。すなわち、配当率が年10%の場合は額面額より、年20%の場合は額面の倍額、配当がまったくない場合は額面の1/2相当額によって評価することにしている。もちろん、純資産価額方式によって評価した額の方が低いときは、その低い方の評価額によることになる。
  ところで、ここでいう小株主とは、同族株主(ある株主とその親族、その他特殊な関係にある者の有する特殊割合が30%以上である場合をいう)がいる会社にあっては、その同族株主以外の株主を、また、同族株主がいない会社にあっては、その者およびその者の親族その他特殊な関係にある者の有する持株割合が15%未満である株主をいう。
  これらの評価は、公認会計士に鑑定させることが多い。