■海津式ローマ字番外編(音素行列版)(旧版)

注意: この版はふるくなっています。最新版はこちら

< 海津式ローマ字 < トップ

■海津式ローマ字はカナにしたがったローマ字表記方式ですが、以下は、番外編として、発音にしたがった日本語のローマ字表記をかんがえたものです。

目次


はじめに

発音にしたがったローマ字表記方式は、まず標準発音をさだめなければいけないという難点がありますが、それでも、もしつくるとしたらどうなるか、強引につくってみたのが、したの表です。社団法人日本ローマ字会の機関紙、"Rômazi Sekai"の1995年12月号で発表したものに、さらにてをくわえたものです。発音とカナの関係は、わたくしの独断によるものです。

便宜上、カナ文字はカタカナ、ローマ字は小文字だけでかいてありますが、ひらがなや、大文字のローマ字についてもまったく同様にあつかいます。

変換表

凡例:

*
従来の五十音図になかった表記で、平成3年(1991年)内閣告示二号『外来語の表記』の第1表のなかにとりいれられ、外来語や外国語の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名とするとされているカナ文字つづり。
**
「従来の五十音図こなかった表記で、平成3年(1991年)内閣告示二号『外来語の表記』の第2表のなかにとりいれられ、外来語や外国語の地名・人名を原音や原つづりになるぺく近く書き表そうとする場合に用いる仮名とするとされているもの。
( )
平成3年(1991年)内閣告示二号『外来語の表記』にも、昭和61年内閣訓令・告示『現代仮名遣い』にものっていないカナ文字つづり。


表1-1. 海津式ローマ字番外編(音素行列版) 3表のうち1表め(基本音と口蓋化音)


基本音(直音)
口蓋化音(-y-)
母音


a


i


u


e


o



ya

(イィ)
(yi)


yu
**
イェ
ye


yo
声門
/硬口蓋
摩擦 無声
h-
(注)



ha

(ヘィ)
(hi)


hu


he


ho


ヒャ
hya


hyi

ヒュ
hyu

(ヒェ)
(hye)

ヒョ
hyo

注: 母音字のあとでは<'h->とする。

軟口蓋 破裂 無声
k-



ka

(ケィ)
(ki)


ku


ke


ko


キャ
kya


kyi

キュ
kyu

(キェ)
(kye)

キョ
kyo
有声
g-



ga

(ゲィ)
(gi)


gu


ge


go


ギャ
gya


gyi

ギュ
gyu

(ギェ)
(gye)

ギョ
gyo
歯茎 鼻音
n-


na
(ネィ)
(ni)

nu

ne

no

ニャ
nya

nyi
ニュ
nyu
(ニェ)
(nye)
ニョ
nyo
弾音
r-


ra
(レィ)
(ri)

ru

re

ro

リャ
rya

ryi
リュ
ryu
(リェ)
(rye)
リョ
ryo
破裂 無声
t-



ta
*
ティ
ti
**
トゥ
tu


te


to


(テャ)
(tya)

(ティィ)
(tyi)
**
テュ
tyu

(ティェ)
(tye)

テョ
tyo
有声
d-



da
*
ディ
di
**
ドゥ
du


de


do


(デャ)
(dya)

(ディィ)
(dyi)
*
デュ
dyu

(ディェ)
(dye)

(デョ)
(dyo)
摩擦 無声
s-



sa

(セィ)
(si)


su


se


so


シャ
sya


syi

シュ
syu
*
シェ
sye

ショ
syo
有声
z-



za

(ゼィ)
(zi)


zu


ze


zo


ジャ
zya


zyi

ジュ
zyu
*
ジェ
zye

ジョ
zyo
破擦 無声
c-

*
ツァ
ca
**
ツィ
ci


cu
*
ツェ
ce
*
ツォ
co


チャ
cya


cyi

チュ
cyu
*
チェ
cye

チョ
cyo
有声
dz-


(ヅァ)
(dza)

(ヅィ)
(dzi)

(ヅゥ)
(dzu)

(ヅェ)
(dze)

(ヅォ)
(dzo)


(ヂャ)
(dzya)

(ヂィ)
(dzyi)

(ヂュ)
(dzyu)

(ヂェ)
(dzye)

(ヂョ)
(dzyo)
両唇 破裂 無声
p-


pa
(ペィ)
(pi)

pu

pe

po

ピャ
pya

pyi
ピュ
pyu
ピェ
pye
ピョ
pyo
有声
b-


ba
(ベィ)
(bi)

bu

be

bo

ビャ
bya

byi
ビュ
byu
(ビェ)
(bye)
ビョ
byo
鼻音
m-


ma
(メィ)
(mi)

mu

me

mo

ミャ
mya

myi
ミュ
myu
(ミェ)
(mye)
ミョ
myo
歯唇 摩擦 無声
f-


(fa)

(fi)

(fu)

(fe)

(fo)






有声
v-

**
ヴァ
va
**
ヴィ
vi
*

vu
**
ヴェ
ve
**
ヴォ
vo


(ヴャ)
(vya)

(ヴィィ)
(vyi)
**
ヴュ
vyu

(ヴィェ)
(vye)

(ヴョ)
(vyo)


表1-2. 海津式ローマ字番外編(音素行列版) 3表のうち2表め(円唇化音と口蓋円唇化音)


円唇化音(-w-)
口蓋円唇化音(-j-)
母音

(ウァ)
wa
**
ウィ
wi

(ウゥ)
wu
**
ウェ
we
**
ウォ
wo


(ウャ)
(ja)

(ウィィ)
(ji)

(ウュ)
(ju)

(ウィェ)
(je)

(ウョ)
(jo)
声門
/‪両唇‬
/硬口蓋
摩擦 無声
h-
(注)

*
ファ
hwa
*
フィ
hwi

(フゥ)
hwu
*
フェ
hwe
*
フォ
hwo


(フャ)
(hja)

(フィィ)
(hji)
**
フュ
hju

(フィェ)
(hje)

(フョ)
(hjo)

注: 母音字のあとでは<'h->とする。

軟口蓋 破裂 無声
k-

**
クァ
kwa
**
クィ
kwi

(クゥ)
kwu
**
クェ
kwe
**
クォ
kwo


(クャ)
(kja)

(クィィ)
(kji)

(クュ)
(kju)

(クィェ)
(kje)

(クョ)
(kjo)
有声
g-

**
グァ
gwa

(グィ)
gwi

(グゥ)
gwu

(グェ)
gwe

(グォ)
gwo


(グャ)
(gja)

(グィィ)
(gji)

(グュ)
(gju)

(グェ)
(gje)

(グョ)
(gjo)
歯茎 鼻音
n-

(ヌァ)
nwa
(ヌィ)
nwi
(ヌゥ)
nwu
(ヌェ)
nwe
(ヌォ)
nwo

(ヌャ)
(nja)
(ヌィィ)
(nji)
(ヌュ)
(nju)
(ヌィェ)
(nje)
(ヌョ)
(njo)
弾音
r-

(ルァ)
rwa
(ルィ)
rwi
(ルゥ)
rwu
(ルェ)
rwe
(ルォ)
rwo

(ルャ)
(rja)
(ルィィ)
(rji)
(ルュ)
(rju)
(ルィェ)
(rje)
(ルョ)
(rjo)
破裂 無声
t-


(トゥア)
twa

(トゥィ)
twi

(トゥゥ)
twu

(トゥェ)
twe

(トゥォ)
two


(トゥャ)
(tja)

(トゥィィ)
(tji)

(トゥュ)
(tju)

(トゥェ)
(tje)

(トゥョ)
(tjo)
有声
d-


(ドゥァ)
dwa

(ドゥィ
dwi

(ドゥゥ)
dwu

(ドゥェ)
dwe

(ドゥォ)
dwo


(ドゥャ)
(dja)

(ドゥィィ)
(dji)

(ドゥュ)
(dju)

(ドゥィェ)
(dje)

(ドゥョ)
(djo)
摩擦 無声
s-


(スァ)
swa

(スィ)
swi

(スゥ)
swu

(スェ)
swe

(スォ)
swo


(スャ)
(sja)

(スィィ)
(sji)

(スュ)
(sju)

(スィェ)
(sje)

(スョ)
(sjo)
有声
z-


(ズァ)
zwa

(ズィ)
zwi

(ズゥ)
zwu

(ズェ)
zwe

(ズォ)
zwo


(ズャ)
(zja)

(ズィィ)
(zji)

(ズュ)
(zju)

(ズィェ)
(zje)

(ズョ)
(zjo)
破擦 無声
c-


(ツゥァ)
cwa

(ツゥィ)
cwi

(ツゥ)
cwu

(ツゥェ)
cwe

(ツゥォ)
cwo


(ツャ)
(cja)

(ツィィ)
(cji)

(ツュ)
(cju)

(ツィェ)
(cje)

(ツョ)
(cjo)
有声
dz-












両唇 破裂 無声
p-

(プァ)
pwa
(プィ)
pwi
(プゥ)
pwu
(プェ)
pwe
(プォ)
pwo

(プャ)
(pja)
(プィ)
(pji)
(プュ)
(pju)
(プィェ)
(pje)
(プョ)
(pjo)
有声
b-

(ブァ)
bwa
(ブィ)
bwi
(ブゥ)
bwu
(ブェ)
bwe
(ブォ)
bwo

(ブャ)
(bja)
(ブィィ)
(bji)
(ブュ)
(bju)
(ブィェ)
(bje)
(ブョ)
(bjo)
鼻音
m-

(ムァ)
mwa
(ムィ)
mwi
(ムゥ)
mwu
(ムェ)
mwe
(ムォ)
mwo

(ムャ)
(mja)
(ムィィ)
(mji)
(ムュ)
(mju)
(ムィェ)
(mje)
(ムョ)
(mjo)
歯唇 摩擦 無声
f-












有声
v-


(ヴゥァ)
(vwa)

(ヴゥィ)
(vwi)

(ヴゥ)
(vwu)

(ヴゥェ)
(vwe)

(ヴゥォ)
(vwo)


(ヴゥャ)
(vja)

(ヴゥィィ)
(vji)

(ヴゥュ)
(vju)

(ヴゥィェ)
(vje)

(ヴゥョ)
(jvo)


表1-3. 海津式ローマ字番外編(音素行列版) 3表のうち3表め(長音・促音・撥音)
長音 h
ただし、つぎの文字のまえでは h'
a, i, u, e, o, y, w, j, h
(これらの大文字についても同様)
促音 q
撥音 n
ただし、つぎの文字のまえでは n'
a, i, u, e, o, y, w, j, n
(これらの大文字についても同様)

解説

  1. ア列に注目すると、ちいさい<>でかきあらわされる、いわゆる拗音は、ほかのなんらかの音が口蓋化したものとみなせる(例: /力/→/キャ/、/サ/→/シャ/)。またヤ行はア行が口蓋化したものとみなせる。したがって、この口蓋化するまえのア行、カ行、サ行などを「基本音」のグループとし、ヤ行や拗音の行を「口蓋化音」のグル一プとした。
  2. ヤ行のイ列のカナは、工列の<イェ>にならい、<イィ>とした。
  3. 「口蓋化音」のグループの表記は、カナについては内閣告示にならい、イ列のカナにヤ行のカナのちいさいものをつけたものとし、エ列については、内閣告示の<イェ><シェ><チェ><ジェ>の表記にならい、イ列のカナにちいさい<>をつけたものとした。口ーマ字については現行のISO3602の拗音のつづりにならい、「基本音」のクループの表記の母音と子音のあいだに<y>をいれたものとした。
  4. <テャ><テュ><テョ>は、従来のキャ行、シャ行などの拗音のつづりである「イ列のカナ+ちいさい<><><>」という規則からすると、<ティャ><ティュ><ティョ>となるが、内閣告示の<テュ>の表記にならってこのようにした。<デャ><デュ><デョ>と<ヴャ><ヴュ><ヴョ>も同様。
  5. 「基本音」のグループの子音のローマ字表記は1文字とした。なぜなら、ほかのグループでもう1文字くわわるためである。したがって、ツァ行には<ts>をもちいずに<c>をもちいた。
  6. ア列に注目すると、ちいさい<>がついたつづりの音は、ほかの何らかの音が円唇化したものとみなせる(例: /ハ/→/ファ/、/カ/→/クァ/)。また、ワ行はア行が円唇化したものとみなせる。したがって、「基本音」、「口蓋化音」にくわえて、「円唇化音」のグループをつくった。
  7. 「円唇化音」のグループの表記は、カナについては内閣告示にならい、ウ列のカナにア行のカナのちいさいものをつけたものとし、ローマ字については現行のISO3602のワ行表記にならい、「基本音」のグループの表記の母音と子音のあいだに<w>をいれたものとした。ただし、ツァ行の円唇化のグループのカナについては、内閣告示で<ツァ><ツィ><ツェ><ツォ>がすでに基本音のグループのつづりとしてつかわれているため、<ツゥァ><ツゥィ><ツゥェ><ツゥォ>のようにした。
  8. 平成3年(1991年)内閣告示二号『外来語の表記』でしめされているカナ文字つづりのなかに、「基本音」、「口蓋化音」、「円唇化音」のどのグループにもはいらないものがひとつだけある。<フュ>である。この発音は、<>の発音が口蓋化した<ヒュ>がさらに円唇化したものとかんがえ、「口蓋円唇化音」のグループをさらにくわえた。
  9. 「口蓋円唇化音」のグループの表記は、カナについては内閣告示にならい、ウ列の力ナにヤ行のカナのちいさいものをつけたものとし、ローマ字については、口蓋化音の表記として、<y>とならんで世界的におおくつかわれている<j>を母音と子音のあいだにいれることにした。
  10. 各行の順番は、母音を先頭に基本音の調音点が奥のものからならべた。
  11. 調音点がおなじ音韻の行は、呼気に対するストしスのすくないものから順にならべた。
  12. ハ行の調音点は声門だが、口蓋化音のグループのヒャ行になると口蓋になり、円唇化音のグループのファ行になると両唇になるが、便宜上この位置においた。
  13. 従来の五十音図のイ列の発音(/イ/、/キ/、/シ/、/チ/…)は、ほかの列の音に対してあきらかに口蓋化しており、この表では「口蓋化音」のグループにうつした。つまり、/キ/は力行のイ列ではなくてキャ行のイ列であり、/シ/はサ行のイ列ではなくてシャ行のイ列である。
  14. 基本音のイ列のおとは、ア列のおとの子音のかまえから/イ/の母音を発するもので、つづりとしては、基本音のエ列のつづりにちいさい<>をくわえたものとした。
  15. 基本音のイ列の発音は従来の日本語の音節にはなかったたので、口蓋化音のイ列と区別する必要がなかったからここに口蓋化音のイ列をまぜることができていた。しかし/ツィ/の出現でもはやこれはできなくなった。ツァ行だけは、基本音のイ列の/ツィ/と口蓋化音のイ列の/チ/を区別するのである。これにあわせて従来のイ列はすべて口蓋化音のグループにうつした。しかし、ローマ字つづりの実運用面をかんがえると、これまでのつづりとの互換性をかんがえてツァ行のみを例外とし、ほかの口蓋化のイ列は従来どおり基本音のグループのイ列にくみいれて<y>をいれずにかくか、あるいはいっさいの例外をみとめずこの表のように口蓋化のグループのイ列として<y>をいれてかくかは、考慮の余地があるとおもう。間題は、ツァ行以外の基本音のイ列の発音が、将采の日本語の音韻のなかにあらわれるかどうかである。
  16. チャ行は、タ行が口蓋化したものではなく、ツァ行が口蓋化したものとかんがえる。なぜならば、チャ行とツァ行はおなじ破音であるが、タ行は破音だからである。
  17. タ行が口蓋化したものは、/ティ/、/テュ/をふくむテャ行となる。
  18. 現行の夕行は、/夕/、/テ/、/ト/が従来どおり夕行、/ツ/がツァ行のウ列、/チ/はツァ行が口蓋化したチャ行のイ列となる。タ行のイ列は、/ティ/の非口蓋化の/テェィ/、タ行のウ列は/トゥ/である。
  19. <ヴァ><><ヴェ><ヴォ>と<ヴィ><ヴュ>は、つづりとしては平成3年(1991年)内閣告示二号『外来語の表記』にふくまれており、英語の/v/音に由来するものであるところから「歯唇音」としてローマ字のつづりには<v>をあてたが、じっさいにこのカタカナのつづりが歯唇音で発音されているかどうかは疑問である。
  20. この表のようにかんがえると、まだぬけてもいるところはたくさんあるが、日本語の音韻は、くみあわせとしては5母音×15子音(母音もふくめて)×4グループで300音韻あることになる。これに撥音、促音、長音をそれぞれひとつの音韻とかんがえてくわえると、303音韻ということになる(ただし、/v/の音韻があるとしてであるが)。
  21. 将采、/l/、/f/などの子音があらたにくわわったとしても、この5母音x4グループというワクのなかにおさまる範圍で、あらたな行がふえるだけで対応できるものとおもう。
  22. 口蓋化、円唇化、口蓋円唇化のローマ字表記は、字上符などの付加記号はいっさいつかわないという前提で、この表のように<y><w><j>をもちいてかきあらわしたが、従来の世界的慣例からすると、ウムラウトなどの付加記号を母音につけて表記するほうが自然であろう。

変更記録

第1.1版 (2003年3月16日)
初版
第1.1.4版 (2023年2月7日)
表1-1の<声門>を<声門/硬口蓋>に修正、表1-2の<声門>を<声門/‪両唇‬/硬口蓋>に修正
第1.2版 (2023年2月xx日)
  1. 「■海津式ローマ字(音素行列版)」第1.1.4版を「■海津式ローマ字番外編(音素行列版)」第1.2版とした。
  2. <墓本>を<基本>に訂正。
  3. 「はじめに」に、発音とカナとの関係は独断によるものであることを追記した。
  4. 母音字のあとの<h->は<'h->とかく注をくわえた。
  5. 解説を箇条がきにした。

版:
第1.2版
発行日:
2023年3月8日
最終更新日:
2023年3月8日
著者:
海津知緒
発行者:
海津知緒 (大阪府)

≡‥≡