5.分割後に別の相続人がいることが判明した場合の取扱い

(1)遺産分割は相続人がすべて確定していることをその前提としており、誰が相続人かは法定されているが、時として分割後に相続人が判明する場合がある。例えば、

 @ 遺産分割後に胎児が出生した場合
 A 失踪宣告を受けた者が遺産分割後に生存していることが明らかとなった場合
 B 死後認知又は遺言による認知によって、遺産分割後に相続人が出現した場合
 C 父を定める訴によって遺産分割後に相続人であることが確定した場合
 D 離婚、離縁の無効が遺産分割後確定した場合
                                                                                                                                  
  である。これらの場合にどのように処理すべきであろうか。

(2)上記各場合のうち、民法が明文を以てその処理を定めているのは、死後の認知の場合だけである、すなわち民法910条は死後認知によって相続人となったものが遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他処分をしたときは価額のみによる支払の請求権を有する旨を定める。



(3)問題は、死後認知以外の場合に、同条を類推することができるかである。
@遺産分割協議は無効であり排除されている相続人は改めて分割を請求しうるとする見解
A遺産分割協議は有効とし排除されている相続人に対しては民法910条を類推適用して価額請求のみを認めるという見解がある。

 A説は、取引に入った第三者がいる場合には妥当な結論を導き得るが、その結果除外された相続人から現物取得の機会を奪うことになり遺産分割の理念に沿わないと言わざるを得ない。実務家には@説を支持する見解が多い。判例も、「民法910条は、取引の安全と被認知者の保護との調整を図る規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整を図る規定であって、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかった場合における当該相続人の保護を図るところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになった場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である」(最判昭54.3.23)として、@説を採用している

 したがって、協議は無効であるので・・・・・・・
協議書があったとしても、まだ、ココの段階ということ。
ただ、長期間経過した場合・・・・884条の時効が問題になりうる