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遺留分の要件>遺留分の効果・・・・理解できたらページを消して戻ってください。
減殺請求権行使の効果
遺留分権利者の減殺請求権により、贈与・遺贈などは遺留分を侵害する限度において失効します。 失効する結果、遺留分権利者は贈与・遺贈された目的物を取り戻すことができます。 いまだ履行(引渡・登記移転)がなされていない贈与・遺贈については、履行を拒絶することができます。 |
説明
以下で、贈与・遺贈の目的物にしたがって説明しますが、
1つの贈与・遺贈で複数の目的物を処分している場合・・・・・こちらをクリック 例1 被相続人が生前、愛人に土地と建物の2つの物を贈与した場合 例2 全部包括遺贈の場合(相続財産として土地・建物・株式・預金など複数の財産がある場合、遺贈の目的物は複数です) ★遺贈・贈与の目的物が金銭の場合 被相続人はAに1000万円贈与・遺贈した場合のケースで説明します。 相続人である長男はAに対して1000万円分の減殺請求がある場合 贈与がいまだなされていないならばAは相続人らに1000万円請求できるが 長男が減殺請求すればAは請求できなくなる。 既に1000万円の贈与がなされている場合には長男は減殺請求をして1000万円をAに請求できる。 なお、利息 1036 請求の結果1000万円を長男が受け取っても、その1000万円は遺産分割の対象とならない。 上の例で相続人である長男はAに対して500万円分の減殺請求がある場合 贈与がいまだなされていないならばAは相続人らに1000万円請求できるが 長男が減殺請求すればAは500万円しか請求できなくなる。 既に1000万円の贈与がなされている場合には長男は減殺請求をして500万円をAに請求できる。 請求の結果500万円を長男が受け取っても、その500万円は遺産分割の対象とならない。 ★遺贈・贈与の目的物が物(不可分物・・・不動産・動産・株式)である場合 被相続人はAに土地(1000万円)贈与した場合のケースで説明します。 相続人である長男はAに対して1000万円分の減殺請求がある場合 登記移転・引渡がいまだなされていないならばAは相続人らに登記移転・引渡を請求できるが 長男が減殺請求すればAは請求できなくなる。 既にAに登記移転・引渡がなされている場合には長男は自己に対し登記移転・引渡をAに請求できる。 請求の結果土地の所有者は長男になるが、その土地は遺産分割の対象とならず長男の固有財産となる。 上の例で相続人である長男はAに対して500万円分の減殺請求がある場合 登記移転・引渡がいまだなされていないならばAは相続人らに登記移転・引渡を請求できるが 長男が減殺請求すればAは持分2分の1の所有権の登記移転しか請求できない。 すなわちAと長男の共有になる。その土地は遺産分割の対象とならない。 また、上の例で次男も減殺請求を500万円分有しており、減殺請求権を行使した結果、長男と次男の共有となる場合もあるが、その土地は遺産分割の対象とならない。 既に登記移転・引渡がなされている場合には長男は減殺請求をして持分2分の1の所有権の登記移転を請求できる。 請求の結果持分2分の1の所有権を長男が受けても、その持分は遺産分割の対象とならない。 以上のように遺留分が侵害されている限度で目的物を取り戻すのが原則ですが・・・ 受贈者Aが土地を返したくない場合→Aは土地の価格を弁償して返還しないことを選択することもできます・・・返還のかわりに価格での弁償をしたい・ 1041 Aが土地を第三者に譲渡している場合→この場合 例・・・Aは土地の贈与を受けたが、Bに売ってしまっている場合 Aが土地を第三者に権利を設定した場合→この場合 例・・・Aは土地の贈与を受けたが、抵当権などの担保物権を設定したり、対抗力ある賃借権などの用益権を設定した場合 なお、遺留分減殺請求に対して、相手方が取得時効を援用し請求を拒むことが考えられるが、時効取得は認められない(最判平成11・6・24 最判平成9・3・14)。 ★可分物・・・単位株制度の適用のある株式の共有物分割において、新たに単位未満株式を生じさせる現物分割を命ずることはできない(最判12・7・11)。 ★遺贈・贈与の目的物が債権である場合 ★遺贈・贈与の目的物が条件つき権利である場合(存続期間の不確定な権利でも同様)1032条 被相続人がAにAが死亡するまでに毎年500万円を与えるとの遺贈をおこない、 1029条2項の規定により右遺贈が5000万円と評価されたケースで説明します。 長男がAに対する遺贈に対して5000万円分の減殺請求権がある場合 長男が減殺請求すればAは請求できなくなる。 既に給付している部分があれば長男はその全部を返還するよう請求できる。 長男がAに対する遺贈に対して1000万円分の減殺請求権がある場合 長男が減殺請求すれば毎年500万円の遺贈は失効するが、 長男はAに5000万円−1000万円=4000万円を支払う必要がある。 ★不相当な対価でなされた有償行為を減殺する場合 1038条 1039条 |
解決方法
以上のような権利を遺留分権者はもっていますが、請求しても任意に義務を履行してくれない場合には 最終的には家庭裁判所ではなく地方裁判所などの通常の裁判所で判断してもらうことになります。 例えば、遺留分権利者が減殺請求により土地の持分を取得したのであれば、受贈者・受遺者に対して土地の持分権の確認や持分移転請求訴訟をおこすことになります。 ただ、話し合いにより解決する余地があるならば、調停を申立てることも可能です。 相続人以外に請求するケースでは遺留分減殺の調停を利用するのもよいでしょう。 また、長男に多大な贈与・遺贈等がなされて次男の遺留分が侵害されているような、相続人の間で問題となっているケースでは遺産分割の調停を利用するのもよいでしょう。 |
遺贈(特定遺贈)・・・・最判昭和51・8・30
相続させる旨の遺言
遺贈(包括遺贈・・・・全部)・・・最判平成8・1・26 最判平成8・11・26
生前贈与・死因贈与