BACK | NEXT

魔王さまと僕

ハロウインの悪魔

「こういうのも、なかなか楽しいな」
 僕は涙がにじんだ目でラキエを見る。快感と羞恥と罪悪感がまじった涙。
「こんなの―――ひどい」
「ひどい? 良さそうだったじゃないか」
 ラキエは舌が届かないところは指ですくいとってうまそうになめた。
「こんなにたっぷり」
 ラキエは濡れた手を見せつけた。白いものが彼の指を伝い、掌を通り、手首にまでつたっている。それをなめあげる仕種がとんでもなくエロティックで視線をはがすのに苦労した。
「聖域で、こんなこと………」
 服の裾をおろそうとするとラキエが僕の下腹部に顔を近づけた。

「聖域なんてものが、人間の世界にあるか。こんなに欲望に弱いくせに」
 そう言いながら濡れている僕のモノを舐めはじめる。ラキエの頭が邪魔で裾をおろせなくなり、僕は服を握ったまま震えた。
 チュッチュッと、残ったものを吸い出すように繰り返し吸いながら、手は尻を撫でていく。
「あ………っん、んっ」
 いったばかりのところをなめあげられ、また快感がたまっていく。服の裾はもうしわになっているだろう。こんなところにしわができるなんてどういいわけすればいいんだろう。
 でも、祭壇の上で神父服を着た悪魔に辱められているというイメージが、ひどく卑猥で僕を興奮させた。
 カツンと固い音がした。ラキエの首からさげた十字架が祭壇を叩いたのだ。それに気付き、ラキエは顔をあげた。首から外し、指先に引っ掛けて僕に見せる。
「これだって、ただの飾りだ」
 ラキエは十字架に歯をたてて咥えた。
 どきりとした。
 十字架がラキエの唇を汚しているように見えて。
 まったく逆なのに………。
 僕の精で濡れた顔で、唇で、十字架を口の中で弄ぶ悪魔。
 すごく卑猥で………でも………とても魅力的だ。
 僕の思いに気づいたのか、口から取り出して、見せつけるように舌を伸ばして舐めあげる。
 ぞくりと背筋にはしったのは………快感? 悪寒?

 ラキエは十字架を持ったままの手を僕の足の間にいれた。舐められ、吸われて硬くなったモノよりさらに奥に、指とそれよりも硬いものが触れる。
「ラ、ラキエッ、なにを………!」
 僕はあわてて起き上がろうとした。
 グッと、指とは違う硬さと温度のものが押し入れられる。
「ラキエッ、やめろっ!」
 先端は細いが十字部分がはいるはずもない。ラキエはひっかかった場所でグルっと回した。
「あっ、ィッ………ッ」
 さすがに擦れて痛い。僕は祭壇に倒れ、悲鳴を上げた。
 ラキエもそれ以上いれるのはあきらめたらしくすぐ抜いてしまった。
「使えないな」
「バ、バカ………ッ」
 痛みよりあまりの冒涜に罵る。
「こっちなら大丈夫か」
 ラキエは僕の罵倒を意にも介さず、今度は首にかける部分のチェーンをあてがった。チェーンと言っても金属の鎖ではなく、大小の丸いビーズのようなものでつなげられている。
「ラキエ!」
 上半身を起こした僕を片手で簡単に押さえつけると、ラキエはビーズを一つずつ中へと入れはじめた。

「いや………っ」
 痛みはないが中に異物をいれられるのは耐えられない。僕は押さえているラキエの手を叩いたり引っかいたりして暴れた。
 ラキエはその僕の腕をひとまとめにすると、自分の金色の髪を一本抜いた。聞き取れない言葉を呟くとその髪が生き物のように動いて僕の腕を拘束する。そのまま頭上に引っ張られ、そこで動けなくなってしまった。力をいれても髪が腕にくいこむだけで切ることができない。
 その状態で僕の両足を自分の肩にかけ、顔を伏せた。ビーズの鎖を舐めながら舌で奥に押し込め始める。
「あ………っ」
 ラキエの薄い舌を感じて動きが止まる。唾液と一緒につるりつるりと丸いビーズが押し込まれる。
「い、いや………」
 丹念に舐めて濡らした玉を押し入れながら、舌先が浅い部分をかき回す。
 それをされるといつもひどく乱れてしまう。
「あっ、あっ」
 ラキエの肩の上にのせられた僕の足が神父服の背中を擦る。
 ビーズは音もなく中にはいっていく。狭い内側でからまってほつれて伸びて蠢く。
 時折大きな部分が擦れて刺激する。
 何度もそれを繰り返し、大きなビーズも小さなビーズも………
「全部はいったぞ」
 ラキエは顔をあげて唇をなめた。
「孔から十字架が垂れ下がってて………いやらしいな」
 カツンと小さな音がしたのは十字架を爪で弾いたのか。
 僕ははあはあと荒い呼吸≪いき≫をしながら悪魔を見上げた。
「アシュ」
「………」
「この玩具は気に入ったか?」
 金色の瞳にゆらゆらと視線をあわせる。
「玩具じゃない」
 そう言うのが精一杯だった。
「こんなこと………しちゃ………だめだ」
「そうか?」
 ラキエは唇で笑って軽く十字架を引っぱった。
「ア」
 中で動く。まるで蛇、みたいに。
 ラキエは自分の裾をたくしあげると、ビーズが垂れ下がった部分に、自分のモノを押し当てる。
 硬い。硬くて熱い。
「ヤ………だ」
 指で広げながらゆっくりとビーズごと中に埋め込んでいく。十字架に触れるとしびれるって言ってたのに平気なのか? と一瞬思う。
「ほ、ほんとうにここで………?」
「ここまできて、そんなにイヤか?」
「だって………」
 周りには聖人達、マリア像、キリスト像、天井に天使。目眩がする。
「あんまり………罰当たりだと………」
「どこのどいつがオレサマに罰をあてられる」
 ラキエは愉快そうに笑った。
「………」
 僕はあきらめた。ラキエはやるといえばやる。せめて飾られた像たちを見ないように目を閉じる。

「―――そんなにイヤなら、考えてやってもいい」
 不意に優しい声が聞こえた。
「えっ」
 びっくりして目をあけるとにやにやした意地の悪い笑みが目の前にある。。
「なんだ、やっぱりイヤじゃないのか?」
「いや、イヤじゃなくてそうじゃなくて………」
 まさかラキエが途中でやめてくれるなんて考えてもいなかったから、もしかして何か悪巧みをしているんじゃないかと。
 ラキエは困惑している僕をよそに、腰を引いた。圧迫がなくなりホッとする。
 だが、一緒に引き出されたビーズの玉をまた指先が押し入れてることに不安を感じた。
「ラキエ………」
 ラキエが僕の腕に触れると、腕を拘束していた髪がするりとほどける。
「ここじゃイヤなら、場所を変えるぞ」
「えっ」
 やめるんじゃないの? と言いかけた言葉をのみこむ。
「オマエの望みなんだからな、ちゃんと歩けよ」

 背中を支えられて起こされ、床に足をつけた。体が縦になると中でビーズが重みで動いたような気がする。
「………っ」
 震える足を支えるようにラキエは腰に手を回した。
「歩けよ」
「ラキエ………」
 僕はうろたえてラキエを見上げる。いつもは抱いてくれるのに………やっぱり意地悪する気なんだ。
「なんだ? ここでするか?」
「………!」
 僕はラキエにしがみついて首を振った。ここではいやだ。
 仕方なく一歩踏み出す。
「う………っ」
 ざらり。と。
 ビーズが中で動く。
 蟲が中ではいまわっているみたいな感触。
「ん―――ぅん」
 ラキエの腕に顔をすりつける。感じるところを刺激され、思わず立ち止まってしまう。
 まだ祭壇を降りたばかりの所で立ち止まると、ラキエが僕の顔を覗き込むようにして聞く。
「ここでいいのか?」
「ダ――ダメ」
 僕はよろめきながら進んだ。
 ラキエの舌でゆるめられた場所に鎖がうねっているみたい。
 額にも背中にも足にも―――じっとりと汗をかく。
 ラキエは僕が倒れないようにと注意しながらも、中の物に反応する様をじっと見ている。金色の目が僕の快感と不快感と恍惚と嫌悪をじっと見ている。
 神父の服の下で十字架を使って辱められている僕を。
 立ち上がった乳首が服に擦れるのも感じてしまう。

「あ―――もう………っ」
 ようやく講堂から中庭にでた。地面に足がついたところでところでがくんと膝が折れ、その場にズルズルとしゃがみ込んでしまう。
「もう限界なら、ここでだな」
 地面に手をついてはあはあと息をつぐ。涙で滲んだ視界に、星の光がチラチラと揺れる。それから月光に照らされた金色の悪魔。
 側にしゃがんで足から上へと手を這わせる。それだけで身体が震えてイキそうになる。
「この服、また自分でどうにかしろよ」
 ラキエの言葉にはっとして顔を見る。
「………なに」
「さっきみたいに、自分で気をつけてやれってことだ。汚れようとどうなろうと、俺はしらないからな」
 ラキエは裾から手を入れて、十字架を指ではじいた。そのわずかな刺激が中でビーズを動かす。
「ぬ、抜いて………」
 息がつまってそれだけ言った僕に、ラキエはわざとらしく目を大きく見開いた。
「このまま?」
「まっ………」
 指先が十字架を引っ張る。僕は首を振った。今のこの状態でビーズを抜かれたらどうなるか―――たちまちいってしまうだろう。僕は膝をついて腰をあげるとそろそろと裾をたくしあげた。
「………んっ」
 下半身をラキエに………月の光にさらして。

 ラキエはクククと喉を鳴らした。
「こんないやらしい神父は見たことがないな」
「………な…っ」
「自分で裾を引き上げて、こんな玩具を入れてるのを見せつけておねだりか」
 舌を出して唇を下品なしぐさでなめる。
「たまらないな」
「僕は………神父じゃ………」
 言いながらでも自分の姿を思い描くと死ぬほど恥ずかしい。しかもただ恥ずかしいだけでなく罪悪感もある。
「格好で、キモチが変わってる。いつもよりイイんだろ?」
 ラキエは言いながら腿の内側から前へと手を滑らせた。
「ア」
 触れられて僕は体を震わせた。
「興奮してる」
「し、神父の格好してるだけだ………っ、キモチなんて………」
「色で分かる。いつもより感じて、恥ずかしくて、別の何かに揺らいでる」
 ラキエは身体を寄せて耳元で囁いた。
「あ………っ」
 その途端、後ろがしまって中でビーズが蠢く。ぞくぞくする。
「楽しいな。アシュ」
「た、楽しくなんか………っ」
 ラキエは僕の反論にただ笑った。笑ったまま、ビーズを一気に引き抜いた。
「うあああっ」
 中がいっきにすりあげられ激しい快感が僕を襲う。僕は全身を震わせて闇の中に射精してしまった。

「あ、あ、あ………」
 ガクリと腕の力が抜けて地面に倒れ込む。僕が飛び散らせた精の上に。
 地面に伏せて、息を喘がせている僕の顔の横に、ラキエは引き抜いた十字架を垂らした。
「こんなモノでイって、そんなに良かったか?」
「………っ」
 僕は濡れた十字架から視線をそらした。
「せっかく引き上げといたのに、汚れちまったな」
 ラキエはくすくす笑った。
「ついでだ。ドロドロに汚してやろう」
「え」
 僕はぎょっとしてラキエを見あげた。
「なに………言って………」
「汚したくない。汚れた。汚してやりたい」
 起き上がろうとした背中を優しく押さえつけながらラキエが歌うように呟く。
「アシュ、自分のと俺とのでこの服を汚したオマエが見たくなった」