魔王さまと僕
ハロウインの悪魔
「―――」
僕を見つめる神父服のラキエの顔がひどく扇情的で、一瞬、自分もこの服を着てめちゃくちゃに汚して欲しいと思ってしまう。
この服を着た自分を、この服を着たラキエが………汚す。
「だ―――だめ………っ」
汚されたいって一瞬でも思った心もラキエにわかってしまうのが恥ずかしく、僕は弱々しく抵抗した。
「もう―――これ以上は」
「アシュ。どうせまた、すぐだ」
「な、なにが?」
十字架を持ったままのラキエの手が腰を引き上げ前を扱く。
「やめ………っ」
「オマエがイクのが」
感じやすい自分を笑われているようで、僕は思わずその手を押さえた。
「い、いやだっ」
「そうか? だったらしょうがない」
ラキエは邪魔をする僕の手を片手で掴むと、もう一方で手に掛かっていたビーズの紐を滑らせ、ひねり、僕のモノを縛り上げてしまう。
「な…っ、なにをするんだ!」
半ば立ち上がったものを締めつけられ、僕は痛みに悲鳴を上げた。
「オマエがイクのがイヤだと言うからだ。親切だろ?」
見下ろすと半立ちしているものにぎゅっとビーズが巻きつけられ、先に十字架が下がっている。すごく破廉恥なその景色に目眩がするかと思った。
ラキエはビーズの上から握りこみ、こすりあげる。ラキエの手の感触と、動きにあわせて回転するビーズがこすれる感触がたまらない。
「い、やぁ………っ」
僕は身をよじった。腰だけ持ち上げられ、服は背中までめくれあがっている。
「オマエのは諦めて、後は俺ので汚してやる」
「―――」
何をされるのか、逃げたいのに体が動かない。汚される? どこかで期待している―――違う、ダメだ………!。
ラキエが僕の後ろに腰を強く押し当てる。布地で隔てられていても、その熱さと硬さが伝わる。ラキエの興奮と、欲望の強さが伝染しそうなくらいだ。抵抗する気力が萎えてゆく。
前を握っていた手が離れ、僕の胸元をべっとりと濡らすようにまさぐってから、そこにあった僕の十字架を頭から外した。
顔の前にシャラリと十字架がさがってくる。
「アシュ、キスを」
「え………」
ラキエの指先が顎を押さえ、顔を固定する。
「ア、―――」
目の前に光る十字架。顔を引こうとしてもアクマの力がそれを許さない。
「これから与えられる恵みを願って、こいつにキスを」
笑みを含んだラキエの声。これからのことを想像させるように、押し付けた腰を動かし、擦り付けてくる。これから与えられる恵み………これから与えられるのはラキエの………
「………」
心臓がどきどきする。罪悪感のせいか、これからの期待のためかわからない。
「神父なんだろ?」
そうだ、僕は神父だ。神父の格好をしている。ラキエがこの遊びを楽しんでいる。そして僕も興奮している。罪悪感、背徳感、倒錯感、子供じみたごっこ遊びへの羞恥。
そんなものがいつもより僕を感じさせる。
汚されたい―――汚したい。
清浄なものを汚し、傷つけたいというのは人の昏い本能なのか。
(………)
僕は胸の中で許しを乞うた。誰に対してかはわからないけれど………。
目を閉じて十字架に唇を寄せる。ひんやりと唇に固い感触。
キスを受けてゆらゆらと揺れる十字架を見て、ラキエが満足そうに笑う。僕の気持ちも感じ取ったのかもしれない。ジャラリと手の中に収めて言った。
「与えられるのは、悪魔の恵みだけどな」
十字架を持ったままラキエの手が後ろへと回る。ビーズを押し当てられる感触。もう一度最初からラキエは繰り返した。指でビーズを中に押し込む。
「あ…っ、あぅ……っ」
獣のような姿勢で僕はそれを受け入れた。つぷ………、つぷ………、とビーズが中にはいってくる。その形もラキエの指も、触れるたびにため息がでるほどキモチイイ。
数個押し入れたところで、ラキエは自分の裾をたくし上げた。
十字架がぶら下がった場所に、ラキエのモノが押し当てられる。教会では中途で終わった行為が再現される。
「あっ、ああっ」
僕は前のめりに倒れてひじをついた。地面に爪を立て、泥を握りしめる。
細かな粒で擦りあげられ、大きなもので突かれる。最初のビーズで疼いていたところをこすられて甘い声がでてしまう。
ラキエは奥まで入った所で一度動きを止め、長い息を吐いた。僕の中と、ビーズに締め付けられ、擦られて気持ちがいいのだろう。
ラキエを満たしているのだと思うと余計に快感が増した。
「アシュ……」
名前を呼びながら、僕の背中に唇を当てる。服の上から牙を立て、軽く噛む。甘えるようなその仕種に僕は感じて背をよじった。
前をしめつけている鎖が食い込んで痛い………。
「ラ、ラキエ………」
僕は土のついた手で胸を抱いているラキエの手に触れた。ラキエはその手を握って馴染ませるように腰を使い始める。
「あ―――あぁ、」
腰が動いてしまう。ビーズのせいでいつもより重い。中がかき回される感じがたまらない。
神父の格好で獣の姿で外で月の光を浴びながら………思い描くイメージにより刺激される。
「ラキエ―――ラキエ、お、お願い………」
僕は喘ぎながらラキエの手を股間に導いた。
「ほ、ほどいて………解いて………」
「いいのか?」
十字架が締めつけているモノを指先で撫でる。その間も腰の動きを徐々に大きく、早くする。
「罰当たりにも神父の服を汚さないための、カミサマの戒めだろ?」
「………っ」
もう息が荒くなっているくせに、まだそんなことを言うラキエが憎たらしい。僕は黙って睨みつけた。でも涙目になったいるから威力なんてない。
「それとも、悪魔にお願いするか? この玩具を解いて、汚して欲しいと」
「う………」
さらに突かれる。もうだめだ。全身がしびれる。
「お、お願い………」
僕はうつむいて頬を地面にすりつけた。
「と、解いて」
「何を?」
「じゅ、十字架―――」
ようやく言ったのにラキエは黙っていっそう激しく突き上げた。
「あっ、い、いや………っ」
ぎりぎりと鎖が食い込む。
「十字架! 十字架を………外して、解いて! お願い」
僕の快感と苦痛の感情に煽られたか、ラキエはハァっと熱い息を吐く。それに反して、吐かれる言葉は冷たい。
「玩具だろ?」
その言葉に涙の溢れた目で振り返る。ラキエは目をギラギラさせて獰猛な笑みを見せた。
「それに、お願いの仕方がなってない」
先端に下がる十字架を揺らし、爪がビーズを辿って動く。
「汚して欲しい、だろ?」
「………」
ラキエの言いたいこと―――言わせたいことがわかった。さっきのは彼が望む言葉を言わなかったお仕置きなのだ。
「あ、悪趣味………っ」
「遊ぼうぜ、アシュ」
ラキエが笑う。
「お前も楽しんでるんだろ」
そうだ、僕も感じてる。楽しんでいる。
このコスチュームに反する行為を、この服で、このシチュエーションで悪魔に犯されることを。
ぞくぞくするくらい楽しんでいる。
「こ、………このお、おもちゃ、を………とって………」
僕はラキエの手を握りしめた。
「僕を汚して…この服を着た僕を………どろどろに汚して―――お願い………っ」
その瞬間、ビーズをつなぐ糸がラキエの爪で切られ、バラバラと散って転がる。
「あふ………、ぁ」
僕は解放感に全身で息をついだ。でもまだ。まだ放たない。
ラキエはズルリと自身を引き抜くと、再び一息に貫いた。先端から根元までで中をするように奥を突く。
「あああっ」
僕は地面につっぷし土をかきむしる。
ラキエはそのままの勢いで、激しく中をかき回した。
「あっ、うあ………っ、い…っ………」
揺すられる。突かれる。えぐられて広げられて。
ラキエの勢いについていけない。呼吸をあわせられない。振り回される。
「ラ、ラキエ………い、い………っ、ちゃう、も………っ」
「俺も………すごく、イイ」
切羽詰まったようなラキエの声が上から降ってくる。
「気持ちよくて………びりびりして……っ」
やはり十字架がラキエを刺激するのだ。痛みもあるだろうにそれも快感に変わるのか。
「あ………っ、も、…だ、め……い、―――!」
前も後も激しい快感でエクスタシー。ラキエと一緒にイきたかったけど、体が浮き上がるかと思うくらいの絶頂感が僕を掴みあげ、ほとばしらせる。
「あああ………っ」
永遠かと思うくらいの快感と射精の解放感。僕は長く長く体を震わせ続けた。
ラキエはきゅっと眉を寄せるといったん腰を引いた。このまま中でいくのはむずかしいと思ったのかもしれない。
自分の出したものの上に伏せた僕を反転させ、濡れた腹部に手を這わせる。ベタベタと汚れを広げながら、片手で僕の手を取り、自分のモノを握らせる。
「………」
僕は快感で朦朧としながらラキエを見あげた。手の中に脈打つ硬くて熱いもの。僕の中に入って快感を与えてくれたもの。
ラキエは僕の手の上から握り、自分のものを上下に扱いた。
「っ、くぅ……」
小さくうめくと手を添えたまま、僕に向かって吐き出す。
「あっ………」
びしゃびしゃとかかるぬるい感触にぞくぞくする。僕の下腹部から胸までたくしあげられた服にかけて、白いものがたっぷりまき散らされた。
宣言どおり、ドロドロになった服を着て横たわる僕を満足げに見下ろす。
「………ひどい」
「お願いしただろ」
手で胸を触るとぬるりと滑る。
「どろどろだ………」
「俺はこれが見たかったし、オマエも望んだことだ」
ラキエは僕を抱き起こし、汚れるのもかまわずぴったりと体を寄せて抱きしめた。
「すげぇゾクゾクする」
熱のこもった声で囁かれる。
僕はため息をついてラキエの耳に唇を触れさせた。
「君がコスプレにはまるとは思わなかったよ………」
尖った部分をちょっと噛んでやる。
「こすぷれ?」
「なんでもない」
ラキエは知らない言葉だ。知らなくていい。こんな快感は何度も味わってはいけない。戻れなくなってしまうよ。僕は笑って彼の背中に手を回した。
「動けないよ………部屋に連れて行って」
あっさりと抱えあげられる。
「そのお願いはきいておいてやる」
僕はラキエの胸にもたれて精一杯の皮肉を言った。
「………ありがとうございます、お優しい神父さま」
するとラキエはにやりと笑ってお返ししてくれた。
「どういたしまして、いやらしい神父さま―――」