2008年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『震えるスパイ』(ウィリアム・ボイド)
(2)『フロスト気質』(R・D・ウィングフィールド)
(3)『ダルジールの死』(レジナルド・ヒル)
(4)『処刑人の秘めごと』(ピーター・ラヴゼイ)
(5)『ランポール弁護に立つ』(ジョン・モーティマー)

本年の特徴
今年の後半は「百年に一度の金融危機」ということで急に不景気になったが、英国ミステリーの出版点数は例年とほぼ同じで、60冊を少し越えた。来年は不況の影響で出版点数が減るのか、あるいは円高のために翻訳権料が相対的に安くなる関係でかえって増えるのか、興味のあるところだ。閑話休題。今年のトップは本格的なスパイ小説『震えるスパイ』にしたが、さほど期待せずに読み始めたので、かえって強い印象が残ったのであろう。あまりに面白いので、未読であった『グッドマン・イン・アフリカ』にも手を出したが、広義のミステリーに入ると判断して[その上面白いので]リストに追加してしまった。彼の第二作『アイスクリーム戦争』も読んだが、さすがにこの作品はミステリーとは言えないので[あいかわらず面白いものの]リストには入れていない。[2]から[5]までは、ベテラン作家の作品ばかりで新鮮味に欠けるものの、安心して楽しめることが保証されたような作品ばかりだ。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『プリズン・ストーリーズ』 ジェフリー・アーチャー 永井淳 新潮社 ★★★
『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』 ギルバート・アデア 松本依子 早川書房 ★★★★
『グリーン・サークル事件』 エリック・アンブラー 藤倉秀彦 東京創元社 ★★★★
『腕利き泥棒のためのアムステルダム・ガイド』 クリス・イーワン 佐藤耕士 講談社 ★★★
『霧と雪』 マイケル・イネス 白須清美 原書房 ★★
『終わらない悪夢』 ハーバート・ヴァン・サール編 金井美子 論創社 ★★★
『灰色の女』 A・M・ウィリアムスン 中島賢二 論創社 ★★
『千の嘘』 ローラ・ウィルソン 日暮雅通 東京創元社 ★★
『フロスト気質』 R・D・ウィングフィールド 芹澤恵 東京創元社 ★★★★
『犯罪王カームジン』 ジェラルド・カーシュ 駒月雅子 角川書店 ★★★
『イスタンブールの群狼』 ジェイソン・グッドウィン 和爾桃子 早川書房 ★★
『哀れなるものたち』 アラスター・グレイ 高橋和久 早川書房 ★★★
『黒衣の処刑人』上下 トム・ケイン 佐藤耕士 新潮社 ★★★
『フェイス』 マルティナ・コール 嵯峨静江 早川書房 ★★
『還らざる日々』 ロバート・ゴダード 越前敏弥 講談社 ★★★
『老検死官シリ先生がゆく』 コリン・コッタリル 雨沢泰 ヴィレッジブックス ★★★
『或る豪邸主の死』 J・J・コニントン 田中富佐子 長崎出版 ★★★
『1/2の埋葬』 ピーター・ジェイムズ 田辺千幸 ランダムハウス講談社 ★★★★
『会員制殺人サイト』上下 ピーター・ジェイムズ 田辺千幸 ランダムハウス講談社 ★★★
『野良犬の運河』 スタヴ・シェレズ 松本 剛史 ヴィレッジブックス ★★
『死者覚醒』 T・M・ジェンキンズ 熊谷千寿 早川書房 ★★
『残虐なる月』 クリス・シムズ 延原泰子 小学館 ★★★
『チャイルド44』 トム・ロブ・スミス 田口俊樹 新潮社 ★★★★
『サーズビイ君奮闘す』 ヘンリー・セシル 澄木柚 論創社 ★★
『13番目の物語』 ダイアン・セッターフィールド 鈴木彩織 NHK出版 ★★★
『ケンブリッジ大学の殺人』 グリン・ダニエル 小林晋 扶桑社 ★★★
『知りすぎた男 ホーン・フィッシャーの事件簿』 G・K・チェスタトン 井伊順彦 論創社 ★★
『名画消失』 ノア・チャーニイ 山本博 早川書房 ★★★
『ウォリス家の殺人』 D・M・ディヴァイン 中村有希 東京創元社 ★★★
『地中海の海賊』 リンゼイ・デイヴィス 矢沢聖子 光文社 ★★★
『大統領の遺産』 ライオネル・デヴィッドスン 小田川佳子 扶桑社 ★★★
『陸の海賊』 コナン・ドイル 北原尚彦・西崎憲編 東京創元社 ★★
『教会の悪魔』 ポール・ドハティ 和爾桃子 早川書房 ★★
『神の家の災い』 ポール・ドハティ 古賀弥生 東京創元社 ★★
『イスタンブールの記憶』 バーバラ・ナデル 高山 真由美 アップフロントブックス ★★★
『地獄 英国怪談中篇傑作集』 南條竹則編 南條竹則・坂本あおい メディアファクトリー ★★★
『ポドロ島』 L・P・ハートリー  今本渉 河出書房新社 ★★★
『紳士たちの遊戯』 ジョアン・ハリス 古賀弥生 早川書房 ★★★
『消せない炎』 ジャック・ヒギンズ、ジャスティン・リチャーズ 田口俊樹 理論社
『聖なる比率』 デヴィッド・ヒューソン 山本やよい ランダムハウス講談社 ★★
『ダルジールの死』 レジナルド・ヒル 松下祥子 早川書房 ★★★★
『猿の手を持つ悪魔』 セバスチャン・フォークス、イアン・フレミング 佐々木紀子 竹書房 ★★★★
『アフガンの男』 フレデリック・フォーサイス 篠原慎 角川書店 ★★★
『刈りたての干草の香り』 ジョン・ブラックバーン 霜島義明 論創社 ★★★
『審判』 ディック・フランシス&フェリックス・フランシス 北野 寿美枝 早川書房 ★★★★
『ポッターマック氏の失策』 オースティン・フリーマン 鬼頭玲子 論創社 ★★
『猿の肖像』 R・オースティン・フリーマン 青山万里子 長崎出版 ★★
『ネームドロッパー』 ブライアン・フリーマントル 戸田裕之 新潮社 ★★
『アメリカン・スキン』 ケン・ブルーウン 鈴木恵 早川書房 ★★★
『優しいオオカミの雪原』 ステフ・ペニー 栗原百代 早川書房 ★★★
『震えるスパイ』 ウィリアム・ボイド 菊地よしみ 早川書房 ★★★★★
『待ちに待った個展の夜に』 ジェイニー・ボライソー 安野玲 東京創元社 ★★
『国境の少女』 ブライアン・マギロウェイ 長野きよみ 早川書房 ★★★★
『壁に書かれた預言』 ヴァル・マクダーミド 宮本もと子 集英社 ★★★
『ワトスンの選択』 グラディス・ミッチェル 佐久間野百合 長崎出版 ★★★
『タナスグ湖の怪物』 グラディス・ミッチェル 白須清美 論創社 ★★
『踊るドルイド』 グラディス・ミッチェル 堤朝子 原書房 ★★
『ランポール弁護に立つ』 ジョン・モーティマー 千葉康樹 河出書房新社 ★★★★
『反撃のレスキュー・ミッション』 クリス・ライアン 伏見威蕃 早川書房 ★★★
『処刑人の秘めごと』 ピーター・ラヴゼイ 山本やよい 早川書房 ★★★★
『サラマンダーは炎のなかに』 ジョン・ル・カレ 加賀山卓朗 光文社 ★★★
『シミタールSL−2』 パトリック・ロビンソン 伏見威蕃 角川書店  
『ナポレオン艦隊追撃』 ジュリアン・ストックウィン 大森洋子 早川書房  

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