邦題 『十二枚のだまし絵』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 Twelve Red Herrings(1994)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1994/12/25
面白度 ★★★
主人公 著者の第三短編集。12本の作品を集め、意外な結末を用意するスタイルは前二作と共通だが、今回はより洗練されたテクニックを駆使して、”赤い鰊”を巧みに泳がせている。
事件 その典型例が「焼き加減はお好みで…」。男が一目惚れした女性に嘘ついて近づき――という物語に対して、後半は読者の好み(甘辛どちらの味が好みか)によって、4つの結末を用意したというもの。どんな結末も自由自在というわけである。また「高速道路の殺人鬼」や「海峡トンネル・ミステリー」にも、作者のシテヤッタリの顔が思い浮かぶような、見事な赤い鰊が泳いでいる。
背景 不満を言えば、すべての短編が一定の型にはまっていること。短編こそ、より自由で多様性に富んだ形式だと思うのだが……。

邦題 『わたしだけの少女』
原作者 トーマス・アルトマン
原題 Kiss Dady Goodbye(1980)
訳者 松本みどり
出版社 東京創元社
出版年 1994/7/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ブラック・クリスマス』
原作者 トーマス・アルトマン
原題 Black Christmas(1983)
訳者 松本みどり
出版社 東京創元社
出版年 1994/12/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『悪夢の八月』
原作者 ティモシー・ウィリアムズ
原題 Black August(1992)
訳者 小西敦子
出版社 扶桑社
出版年 1994/2/28
面白度 ★★★
主人公 イタリア人警視ピエーロ・トロッティ。10年前に『自転車に乗った警視』でデビューし、シリーズ3冊目となるこの作品は6年ぶりの邦訳。
事件 事件は、トロッティが以前の事件で知り合った女性学校長が殺されたというもの。彼は密かに彼女に関心を抱いていたこともあり、上司の命令を無視して勝手に捜査を始めた。ところが学校長の妹も行方不明になり――。
背景 プロットはそれなりに意外性を秘めているものの、本書の魅力は、前二作と同じくトロッティや脇役陣の人となりと日常生活が丹念に描写されている点にあろう。特にトロッティが名付け親となった娘と婚約する警部補の個性はユニークで、楽しませてくれる。

邦題 『クリスマスのフロスト』
原作者 R・D・ウィングフィールド
原題 Frost at Christmas(1984)
訳者 芹澤恵
出版社 東京創元社
出版年 1994/9/30
面白度 ★★★★
主人公 デイトン市の警察署犯罪捜査部のジャック・フロスト警部。頬に傷のある中年男性。妻をガンで亡くしている。現場の仕事には熱心だが、事務仕事は苦手。下品な冗談は大好き。
事件 デイトン市はロンドンから70マイル以上離れた田舎町。そこではクリスマスだというのに、8歳の少女がが行方不明になったり、森の中から死体が出てきたりと、さまざまな事件が起きていた。フロストはロンドンから赴任した新人エリート刑事とコンビを組んで、事件に取り組むが……。
背景 イギリス・ミステリーにしては実に読みやすい。フロストは見掛けはドーヴァー警部のように嫌味な人物だが、実際は人間味豊かな警部。この人物造形がいい。浪花節的でもあり、日本人向きのキャラクター。プロットはモジュラー型警察小説だが、事件の絡ませ型がこれまた上手い。

邦題 『氷の家』
原作者 ミネット・ウォルターズ
原題 The Ice House(1992)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 1994/4/25
面白度 ★★★
主人公 首席警部ジョージ・ウォルシュと部長刑事アンディ・マクロクリン。
事件 古いカントリー・ハウスにある氷室から、性別不明の死体が見つかった。屋敷の現在の持ち主は中年女性のフィービで、さらに女友達二人と一緒に生活している。フィービの夫は10年前に行方不明になっていたが、検死の結果、その死体は数ヶ月前のものであったのだ。
背景 1992年のCWA賞の最優秀新人賞を取った評判作。確かに評判になるだけに、登場人物の描写はしっかりしている。旧式の邸宅に住む三人の中年女性(レズと言われている)が巧みに描き分けられている。それに対して謎の設定にはご都合主義も目立ち、解かれてみると、ナーンダという感じ。ただし動機は現代的で興味深い。

邦題 『ハングマン 処刑のシナリオ』上下
原作者 ヴィクター・オライリー
原題 Games of the Hangman(1991)
訳者 諸井修造
出版社 扶桑社
出版年 1994/8/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『屍肉』
原作者 フィリップ・カー
原題 Dead Meat(1993)
訳者 東江一紀
出版社 新潮社
出版年 1994/11/1
面白度 ★★★
主人公 モスクワ中央内務局調査部の中佐である<私>。
事件 私はサンクトペテルブルグに派遣された。警察とマフィアとの癒着を密かに探ることであったが、早速事件にぶつかった。政・官の腐敗を追及していた大物ジャーナリストが車の中で射殺され、トランクからはマフィアの死体が見つかったのだ。
背景 ポスト・ペレストロイカの現代ロシアを舞台にした警察小説。サンクトペテルブルクを選ぶ着眼点の良さに感心する。現地取材をしたそうだが、ロシア・マフィアの情報はわかりやすく書かれている。ただ<私>は単なる観察者になって行動はしないので、小説としてはいまいち盛り上がりに欠ける。風俗小説としてみれば、今回の設定も悪くはないが。

邦題 『ミソサザイ作戦 準備完了』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Win Lose or Die(1989)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1994/10/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『富豪ガラティの陰謀』
原作者 ピーター・カニングハム
原題 All Risks Mortality(1987)
訳者 宇野輝雄
出版社 新潮社
出版年 1994/1/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『謀略のボルドー・ワイン』
原作者 ピーター・カニングハム
原題 The Snow Bees(1988)
訳者 斉藤伯好
出版社 新潮社
出版年 1994/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『扉のない部屋』
原作者 スティーヴン・ギャラガー
原題 Oktober(1988)
訳者 高橋健次
出版社 角川書店
出版年 1994/10/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『パーフェクト・キル』
原作者 A・J・クィネル
原題 The Perfect Kill(1992)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1994/1/25
面白度 ★★★★
主人公 マルタ島で暮らす元傭兵のクリーシィ。
事件 クリーシィの妻子が乗った飛行機がテロリストによって爆破され、全員死亡した。クリーシィは復讐に立ち上がった。女優レオーニと偽装結婚して、孤児マイケルを養子にもらい、マイケルを徹底的に鍛え上げて、自分の仲間に加えようとしたのである。その計画を察知したパレスチナ解放戦線派も、逆にクリーシィを狙うが……。
背景 『燃える男』に登場したクリーシィの久し振りの再登場だが、これがシリーズ第一作のような作品。マイケルを人間兵器に育てるのがメインの話で圧巻。復讐にも、陰謀にもそれほどの重きを置いていない。どうせならレオーニとのトリオの方がよかったのだが。

邦題 『コッツウォルド毒殺事件』
原作者 アン・グレンジャー
原題 Say It with Poison(1991)
訳者 清水久美
出版社 福武書店
出版年 1994/8/11
面白度 ★★★
主人公 ユーゴーストラビアの英国領事に勤めるメレディス・ミッチェル。35歳の魅力的な独身女性。事件担当の警部ピーター・ラッセルにしだいに惹かれていく。
事件 メレディスは、いとこの娘の結婚式に招待され、久しぶりに英国に戻ってきた。式は田舎の牧師館で行なわれることになったが、近くに住む陶芸家が毒殺されたのだ。それ以前にメレディスに対する嫌がらせもあった。花嫁の付き添いをする予定のピーターが捜査を始めた。
背景 英国の田舎を舞台にし、主人公らの恋愛を隠し味にして展開される”コージー”派ミステリー。シリーズ一作目。登場人物の紹介が冗長過ぎて前半は退屈だし、警部の捜査も冴えないが、後半も三分の二を過ぎる頃からはメレディスが活躍しだして救われる。

邦題 『ブラックウォーター湾の殺人』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 The Body in Blackwater Bay(1992)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1994/9/30
面白度 ★★★★
主人公 ストライカー警部補。『モンキー・パズル』から書き出したシリーズ物の第3弾。
事件 ストライカーは恋人ケイトの招待で、彼女の両親の別荘に滞在することになった。別荘は五大湖のブラックウォーター湾に浮かぶパラダイス島にあるが、この島にはわずか十戸しか別荘は立っていない。この島で、妻を脅していた別居中の夫が殺されたのだ。
背景 ゴズリングはサスペンスを盛り上げるために、ややもすると「幽霊の正体見たり枯尾花」式の安易な手法を使うことがある。本書にもその弱点がみられるが、全体としては古い皮袋(古典的な舞台設定)に新しい酒(環境問題などの今日的テーマ)を無理なく入れているし、終盤の展開もEQ101号に載った著者の近影に恥じない(?)迫力のあるものに仕上がっている。

邦題 『さよならは言わないで』上下
原作者 ロバート・ゴダード
原題 Take No Farewell(1991)
訳者 奥村章子
出版社 扶桑社
出版年 1994/10/30
面白度 ★★★★
主人公 新進気鋭の建築家ジェフリー・スタッドン。人妻コンスエラと恋に落ちながらも、結局は彼女を棄ててしまったため、12年後に殺人事件に係わることになる。
事件 ジェフリーは、かつて愛したコンスエラが夫の毒殺を計画し、誤って姪を殺したらしいという事件を新聞で知る。そして彼女は殺人犯として逮捕された。ジェフリーは建築家としての野心のためにコンスエラを棄てたという罪の意識もあり、彼女を助けるために奔走するが……。
背景 ゴダードの邦訳二冊目(原書では四作目)。建築家の目を通して語られる一人称小説なので、ミステリーとはいえ、捜査小説というよりロマンス小説に比重を置いている。主人公の設定は上手いものの、イマイチ魅力に欠けているのが弱点か。ただし語り口は一級品。

邦題 『ダーティ・ウィークエンド』
原作者 ヘレン・ザハーヴィ
原題 Dirty Weekend(1991)
訳者 真野明裕
出版社 新潮社
出版年 1994/6/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『密告者』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 The Journeyman Tailor(1993)
訳者 東江一紀
出版社 福武書店
出版年 1994/6/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『フェニックス・ドリーム』
原作者 ボブ・ジャッド
原題 Phoenix(1992)
訳者 伊多波礼子
出版社 扶桑社
出版年 1994/12/30
面白度 ★★★
主人公 元F1レーサーのフォレスト・エヴァーズ。シリーズ4作目。
事件 フォレストは、アメリカ・グランプリの記事を書くためフェニックスを訪れた。亡き母はこの地の出身で、母から相続した土地を見るのも今回の訪問理由の一つだった。ところがその土地は、地元経済界の大物に合法的に奪われていることがわかったのだ。その上情報を教えてもらった新聞記者が爆殺されてしまったのだ。誰が背後にいるのか?
背景 私は車の免許さえ持ってない人間だが、本シリーズは意外に好きである。主人公が冒険小説にふさわしい、ジョンブル的な人間なのが好ましい。この作品のプロットはたいしたことはないが、兄が見つかったりと、シリーズ物を意識した書き方になっている。次もあるのか?

邦題 『熱砂の三人』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Cry Wolf(1976)
訳者 田中靖
出版社 文藝春秋
出版年 1994/7/10
面白度 ★★★
主人公 アメリカ人技術者のバートンとイギリス人武器商人のスウェールズ、アメリカ人美人ジャーナリストのカンバーウェルの三人。
事件 時は1935年、ムッソリーニのイタリア軍は、アフリカのエチオピアを侵略し始めていた。部族連合でイタリア軍に立ち向かうエチオピア軍は、古い武器でも必要としていた。三人は英軍の古い装甲車をバージョン・アップして売り込むことにしたが……。
背景 戦争冒険小説。前半が面白い。男二人と女一人というトリオは、傑作映画「冒険者たち」を思い出させてくれる。ただしいずれのキャラクターも多少ステレオタイプなのが弱点か。また当時の時代を考えれば無理からぬ点もあるが、白人第一主義が色濃く出ているのは興醒めだ。

邦題 『悪魔の参謀』上下
原作者 マレー・スミス
原題 The Devil's Juggler(1993)
訳者 広瀬順弘
出版社 文藝春秋
出版年 1994/8/1
面白度 ★★
主人公 はっきりした主人公はいないが、SISの南米局長デーヴィッド・ジャーディンとニューヨーク市警の殺人課刑事エディ・ルーコウか。
事件 ニューヨークのグランド・セントラル駅で若い女性の死体が見つかり、ルーコウが担当となって身元探しが始まった。一方ジャーデンは南米の麻薬組織に潜入させるスパイを訓練していた。さらにIRAは麻薬組織と契約を結ぼうとしていた。それらの行動はどう結びつくのか?
背景 前半がまどろっこしい。スパイを育てる話にしても、ルーコウの身元捜索にしても、結論はわかりきっているはずなのに進まない。誰が主役かわからないのも欠点だろう。後半スパイが組織に潜入してからは話がテンポよく進むが、この解決策は楽しめない。現実がそうだとしても。

邦題 『不自然な死』
原作者 ドロシー・L・セイヤーズ
原題 Unnatural Death(1927)
訳者 浅羽莢子
出版社 東京創元社
出版年 1994/11/18
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのピーター・ウィムジイ卿。シリーズの第3作。
事件 前二作と同様、この作品も冒頭に奇妙な謎が提出されている。癌に侵され、余命は数カ月と思われていた老嬢が突然亡くなったのだ。殺人だとしたら、どういう手段が使われたのか、何故急いで殺す必要があったのか、という謎である。
背景 ピーター卿はこの謎に関心を抱き、亡き老嬢を診ていた看護婦を訪問したりと、今だったらお節介として非難されるほど、積極的に事件にかかわっていく。このあたりが、いかにも戦前のミステリーという古さを感じさせるが、犯人は簡単に想像がつくのに、ハウダニットの興味で物語を引っ張っていく語り口は、やはりうまいものだ。欲をいえば、犯人にもう少し悪の魅力がほしかった。

邦題 『騎手ブレインの失われた栄光』
原作者 マーク・ダニエル
原題 Under Orders(1989)
訳者 山田久美子
出版社 新潮社
出版年 1994/6/1
面白度
主人公 騎手のジョージ・ブレイン。22歳でグランド・ナショナルを制す。美しい妻と二人の子供がいて、彼女とは相思相愛の間柄だったが……。
事件 14年後のブレインは酒と女と八百長に溺れ、かつての面影はまったくなかった。しかしそんな彼の前に駿馬が現れた。彼は再び騎手の血が騒ぐのを感じた。
背景 外見はフランシスの競馬スリラーに似ているが、実際は競馬小説といってよく、競馬スリラーとなるのは最後の百頁ぐらいからか。とてもフランシス作品のような迫力、面白さ、わかりやすさはない。期待していた競馬情報小説としても、情報量はたいしたものではなく、平凡だった。ダメ男の心境が多少わかるのが救いか。

邦題 『災いを秘めた酒』
原作者 ケイト・チャールズ
原題 A Drink of Deadly Wine(1991)
訳者 相原真理子
出版社 東京創元社
出版年 1994/1/21
面白度 ★★★
主人公 事務弁護士のデイヴィッド・ミドルトンブラウン。かつてはゲイ。容姿は良く、40歳前後。現在も独身だが、画家のルーシーに好意をもっている。
事件 英国国教会の神父として真面目に生活しているガブリエルのもとに、悪意の手紙が届いた。内容は、ガブリエルの過去の出来事を指摘して、聖職を辞職すべきというものであった。困った彼は、かつての恋人であるデイヴィッドに相談するが、村では変死事件が起き――。
背景 舞台が教会なので”クレリカル・ミステリー”と呼ばれているそうだ。脅迫者は誰か? という謎はチャチ。ミステリーとしては平板だが、恋愛小説としては面白い。デイヴィッドとルーシーの中年男女の恋愛、ガブリエル夫妻の愛などが、清潔感をもって描かれている。

邦題 『幸運の逆転』
原作者 エリザベス・チャップリン
原題 Hostage to Fortune(1992)
訳者 茅律子
出版社 早川書房
出版年 1994/10/31
面白度 ★★
主人公 サッカーくじで、日本円にして3億円もの大金を手にした専業主婦のスーザン・ベンサム(42歳)とその夫で事務弁護士のジェフ・ベンサム。
事件 二人は一時マスコミの寵児になるとともに、大金を使って高級自動車や新しい家を買うなど新生活を楽しんでいた。だが二人とも愛人が出来始めると妻は夫の自由を奪いだし、夫は完璧な殺人計画を思い付くが……。
背景 正統的な謎解き小説の書き手ジル・マゴーンが別名義で出版したサスペンス小説。発端と結末は独創性もありそこそこ楽しめるが、長い中盤は、中年男女のサスペンスのない生活が描かれているだけ。短編小説ネタを無理に長編化したような結果で、少し残念だ。

邦題 『兄の殺人者』
原作者 D・M・ディヴァイン
原題 my Brother's Killer(1961)
訳者 野中千恵子
出版社 社会思想社
出版年 1994/1/30
面白度 ★★★★
主人公 事務弁護士のサイモン・バーネット。妻とは別居中。兄が所長の事務所に勤める。
事件 その兄から、霧の夜に呼び出された。ところが事務所についてみると兄は死んでいた。拳銃自殺に偽装した殺人だった。警察の調査では兄は恐喝に手を出しており、やがてサイモンの昔の知人が逮捕された。兄と知人の名誉のため、サイモンは独自の調査を始めた。
背景 1961年コリンズ社の探偵小説コンクールに応募された作品。審査員の一人クリスティが絶賛したため(?)、受賞作ではないものの出版された。フーダニットのミステリーだが、クラシックな謎解き小説に比べると、圧倒的にサスペンスフルで、読みやすい。トリックやラストの意外性には十分な面白さがある。個人的にはディクタフォンが登場しているのが嬉しかった。

邦題 『五番目のコード』
原作者 D・M・ディヴァイン
原題 The Fifth Cord(1967)
訳者 野中千恵子
出版社 社会思想
出版年 1994/9/30
面白度 ★★★★
主人公 地方紙の記者ジェレミー・ビールド。探偵役だが、容疑者にもなる。
事件 地方都市で連続殺人が起きた。殺人者は8人を殺すと予告していたが、襲われた被害者の近くには、八つの取っ手(コード)がある棺の絵が描かれたカードが常に置かれていた。しかもカードの裏には番号が書いてあったのだ。
背景 本書は、一種のミッシング・リンクがテーマの伝統的なパズラーとはいえ、むしろサイコ・スリラー仕立てで、サスペンス小説顔負けの緊張感に溢れている。問題があるとすれば、フーダニットの形式に縛られるあまり、すべての登場人物の描写がどうしてもあいまいになることであろう。探偵役ぐらいは、読者が素直に感情移入できる人物に設定してほしかった。

邦題 『黄金の都(まち)』
原作者 レン・デイトン
原題 City of Gold(1992)
訳者 田中融二
出版社 光文社
出版年 1994/4/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『陰謀と死』
原作者 マイクル・ディブディン
原題 Cabal(1992)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1994/3/31
面白度 ★★
主人公 イタリア内務省刑事警察のアウレーリオ・ゼン副警察本部長。シリーズ第3弾。新しい恋人ターニャがいる。
事件 サン・ピエトロ寺院のドームから、若い公爵が墜落した。自殺か他殺か? ヴァチカン市国の要請でゼンが事件の担当になったが、暗に自殺であることを認めるように言われた。小役人のゼンは了承するが、事件の目撃者が謎の死をとげたりと――。
背景 ゼンは、今回は悪徳警官とはいわないまでも、圧力に弱くかなり堕落した人間に描かれている。これが少し残念。エンタテインメントなら、最後まで正義の人であってほしかった。恋人との関係は面白いが、肝心の事件そのものの面白さはイマイチ。

邦題 『消えゆく光』
原作者 マイクル・ディブディン
原題 The Dying of the Light(1993)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1994/9/30
面白度 ★★
主人公 夕まぐれ荘の住人で空想好きの老嬢ローズマリー・トラヴィスだが、事件の捜査をするのはスタンリー・ジャーヴィス警部。地元サッカー・チームの熱烈なファン。
事件 英国の老人ホームの一室。そこで探偵小説好きのローズマリーは、このホームには殺人鬼が潜んでいるはずだ、という妄想を楽しんでいた。ところが彼女の友達が死体となって見つかったらしい……というので、ともかくも警部が事件の捜査を始める。
背景 謎解き小説のパロディ形式で話が進む。軽いミステリーだな、と気楽に作品に入り込めるが、読み進んでもさっぱり笑えない。後半は警部が登場し、さあ今度は謎解きかと思うと、事件があったのかどうかわからない。このミステリアスな雰囲気を楽しめといわれても消化不良になりがち。

邦題 『マザーズボーイ』
原作者 バーナード・テイラー
原題 Mother's Boys(1988)
訳者 山田久美子
出版社 二見書房
出版年 1994/3/25
面白度 ★★★
主人公 学校の教師ファレルの長男ケスター。離婚した母を慕い、新しく継母になりそうな女性と対立する。残虐な性格である。
事件 ファレルは、性格異常な妻と離婚後、4人の子どもを育てながら、新しい恋人との結婚を熱望していた。だが元妻はファレル家に戻りたがり、長男もそれを望んだ。もちろん父親はその要求を拒否するが、ケスターは新しい恋人に復讐しようとするのだった。
背景 いわゆる”キレル”少年が主人公だが、物語はサイコ・スリラーといってよい。同題の映画の原作であるが、いかにも映画化しやすい内容。文章は迫力があって一気に読めるし、ショッキングな結末が用意されているものの、この後味の悪さにはマイリマシタ。

邦題 『最上の地』
原作者 サラ・デュナント
原題 Fatlands(1993)
訳者 小西敦子
出版社 講談社
出版年 1994/11/15
面白度 ★★★
主人公 私立探偵のハンナ・ウルフ。独身で、年齢は30歳過ぎ。上司は元警官のフランク。
事件 金曜の夜のフランクからの電話は、明日13歳の少女を学校まで迎えにいき、一日中面倒を見てほしい、というものであった。報酬がいいので引き受け、無事役目を終えると思った矢先、少女のいた車が爆破したのだ。ハンナは独力で調査を進めると、真の標的は少女の父親と判明したのだ。IRAなのか、動物愛護協会の過激派の仕業なのか?
背景 1993年CWAシルバー・ダガー賞受賞作であるとともに、ハンナの本邦初登場の作品。最近増えている女性の私立探偵小説で、やはりハンナの魅力で読ませる。危機におちいっても男性の助けなど求めない自立心に溢れている。多少思慮深さに欠ける弱点があるが。

邦題 『DC−3の積荷』上下
原作者 クレイグ・トーマス
原題 A Hooded Crow(1991)
訳者 田村源二
出版社 新潮社
出版年 1994/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『危険な選択』
原作者 マイケル・ドブズ
原題 The Touch of Innocents(1994)
訳者 布施由紀子
出版社 NHK出版
出版年 1994/12/20
面白度 ★★
主人公 米国の花形TVレポータのイジー・ディーン。二児の母で、夫を本国に残し、パリのヨーロッパ支局に赴任中。
事件 だが生活に疲れた彼女は、二人の子供を連れて英国のウェセックス地方に遊びにいった。ところが交通事故を起こして入院。数週間後、昏睡から覚めた彼女は、同乗の6ヶ月の娘は即死したと知らされた。しかしその話を信じず、ニ歳の長男をかかえながら、必死の捜索を始めたのだ。
背景 著者の特徴は、陰謀小説のような巧妙なプロットを作る才にあろう。もともと人物描写は類型的で、通俗的である。本作ではそのプロット作りが弱いので、残念ながら、ドブスの良さがほとんど出ていない。陰謀小説に適した政治状況も、国際紛争も少なくなったからであろうか。

邦題 『恐竜クライシス』
原作者 ハリー・A・ナイト
原題 Carnosaur(1984)
訳者 尾之上浩司
出版社 東京創元社
出版年 1994/11/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『オフ・マイナー』
原作者 ジョン・ハーヴェイ
原題 Off Minor(1992)
訳者 夏来健次
出版社 社会思想社
出版年 1994/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『第二の銃声』
原作者 アントニー・バークリー
原題 The Second Shot(1930)
訳者 西崎憲
出版社 国書刊行会
出版年 1994/11/25
面白度 ★★★
主人公 作家で迷(?)探偵のロジャー・シェリンガム。
事件 探偵小説作家の邸宅に作家たちを集めて殺人劇が催された。ところが劇で被害者役のプレイボーイが実際の死体になって見つかったのだ。パーティには彼の死を願う人物ばかりであった。特にピンチとなったピンカートンは、疑惑を晴らすため友人のシェリンガムに助力を求めた。
背景 「犯人の正体が明かされた後でも……」という序文が有名な作品。クリスティの『アクロイド殺害事件』のトリックの欠点を改善しようとして書かれたようにはみえず、むしろ序文の志を徹底出来なかった中途半端な作品という印象を受ける。この反省から(?)、その後の傑作『殺意』が生まれたのではないか? とはいえ、終盤の二転、三転するプロットはそれなりに楽しめる。

邦題 『ハルイン修道士の告白』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Confession of Brother Haluin(1988)
訳者 岡本浜江
出版社 社会思想社
出版年 1994/3/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズ15作目。
事件 シュルーズベリに珍しく大雪が降った1142年の12月。修道院の屋根から墜落して瀕死の重傷を負い、死を覚悟したハルイン修道士は院長に告白を申し出た。修道院に入って間もなく、カドフェルのところから薬草を盗んだが、その薬がもとで彼が愛していた娘が死んでしまったというのだ。その後奇跡的に回復したハルインが死んだ娘の墓に詣でる巡礼に出るが、意外な過去が――。
背景 道行きの描写が多いことと、主舞台がシュルーズベリを遠く離れた荘園であることがこれまでのシリーズ作品とは一味違う設定だが、過去の陰謀が誰にでも想像つくような単純なものというのがマイナス点。シリーズの他作品と比べると完成度は少し低いか。

邦題 『異端の徒弟』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Heretic's Apprentice(1989)
訳者 岡達子
出版社 社会思想社
出版年 1994/7/30
面白度 ★★★
主人公  お馴染みの修道士カドフェル。シリーズ16作目。
事件 聖地巡礼の途中で亡くなった商人の柩を商人の徒弟が修道院に運んできた。しかし修道院にいた大司教の部下は、その商人が異端者だと言いだした。幸い修士会でその疑いは張れたが、今度はその徒弟が異端者として告発されたのだ。そして商人の家の番頭が殺され……。
背景 前半は、異端問題が延々と続く。キリスト教に無知な私には、正直いってどうでもいいテーマなのだが、さすがにわかりやすく書いているので、本を放り出してしまうことはない。ミステリーとしては動機の意外性が面白い。後半は殺人も起こり、いつものような展開で安心できる。異端の論議が長いため、シリーズの中では最長の作品になっている。

邦題 『陶工の畑』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Potter's Field(1989)
訳者 大出健
出版社 社会思想社
出版年 1994/11/30
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズ17作目。
事件 1143年、ホーモンドの修道院とシュルーズベリの修道院で所有地の交換が行われた。そこは<陶工の畑>と呼ばれていたが、そこから白骨死体が見つかったのだ。カドフェルが調査を命じられたが、その土地は修道士のルアルドが借りていたもので、彼の妻は行方不明になっていたのだ。当然ルアルドに嫌疑はかかるが、偶々その妻が生きていることがわかり――。
背景 この作品のレベルも高い。特に導入部がうまく、土地交換から死体発見までがテンポよく語られている。白骨死体については法医学の知識は不用なので、作者も楽に書いている。被害者を巡って二転、三転する展開は常道だが、意外な犯人を用意しているラストはお見事!

邦題 『バビロンの青き門』
原作者 ポール・ピカリング
原題 The Blue Gate of Babylon(1989)
訳者 中川剛
出版社 文藝春秋
出版年 1994/3/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『嵐の眼』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Eye of the Storm(1992)
訳者 黒原敏行
出版社 早川書房
出版年 1994/2/15
面白度 ★★
主人公 元IRA闘士で、ソルボンヌ大学の教授であるマーティン・ブロスナン。対する悪役は国際テロリストのショーン・ディロン。
事件 湾岸戦争中のパリ。アラブの大富豪はディロンに接触し、サッチャー暗殺を依頼した。ディロンは訪仏したサッチャーの暗殺を試みるも失敗。このことを知ったフランスの情報部は、英国のファーガスン准将とともに、ブロスナンに犯人探しを頼んだ。彼はディロンを犯人と断言したが……。
背景 ヒギンズが手軽に書き飛ばしたという印象の作品。シーン描写が平凡で、迫力がない。かろうじてオール・キャストの出演とプロットの面白さで読ませている。なにか続編を書こうとするような結末の付け方にもガッカリ。著者の名前だけで結構売れるだろうが。

邦題 『神の拳(こぶし)』上下
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Fist of God(1994)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1994/6/1
面白度 ★★★
主人公 インド人の母とイギリス人の父との間に生まれたSAS少佐マイク・マーチン。少年時代をバグダッドで過したので完璧にアラビア語をあやつれる。
事件 サダム・フセインがクウェートに侵攻した後、イラクの電波は「神の拳がまもなく手に入る」といっていた。神の拳とはなにか? マーチンは調査のためにバグダッドに潜入した。さらに暗号名ジェリコなるスパイとの接触をはかろうとした。
背景 湾岸戦争を舞台にしたスパイ冒険小説。戦争後3年しかたっていないので、想像部分と事実との融合は必ずしもうまくいっていないが、情報小説の第一人者だけに、調査量の多さには驚かされる。ジェリコを炙り出す部分がフィクション部分ではもっとも面白かった。

邦題 『ペーパー・マネー』
原作者 ケン・フォレット
原題 Paper Money(1987)
訳者 日暮雅道
出版社 新潮社
出版年 1994/3/25
面白度 ★★
主人公 夕刊紙<イブニング・ポスト>の編集スタッフ。一人というわけではない。
事件 英国の閣僚を突然襲った美人局の恐喝を始めとして、石油採決権を巡る企業買収、破棄に回された古紙幣を狙った現金強奪など、今日もロンドンでは事件が続発していた。編集スタッフはそれぞれの事件の取材を続けるが、事件は意外な展開をみせた。
背景 著者が『針の眼』で大ブレークした直前に書かれた小品。一種の集団劇のサスペンス小説で、さまざまな事件が夕刊の紙面作りの過程で集約されていく。それなりのテクニックで書かれているのでスラスラ読めるが、それ以上のものではない。やはり主人公がいないと、物語に山場が感じられない。フォレットの筆力がかなりのものであるのは、納得できるが。

邦題 『巡礼たちが消えていく』
原作者 ジョン・フラー
原題 Flying to Nowhere(1983)
訳者 工藤政司
出版社 国書刊行会
出版年 1994/8/20
面白度 ★★
主人公 探偵役は法王庁から派遣された調査官ヴェーン。
事件 中世ウェールズの荒れ果てた島の修道院が舞台。そこには霊験あらたかな井戸があり 多くの巡礼が訪れていたが、次々に姿を消してしまったのだ。そこでヴェーンが調査のために乗り込んだが、その修道院の院長は不思議な研究に情熱を燃やしている人物だった。
背景 基本的にはミステリーではないが、中世の謎の修道院で起きた殺人(?)というプロットから、『薔薇の名前』を思い出すことと、著者の父親が詩人・作家で、ミステリーも書いているロイ・フラーなので、本リストに入れた。もちろん不明の巡礼者、怪しげな修道院長、調査官などミステリーとしての材料はすべて揃っている。謎が解かれない点が残念だが、ファンタジーではない。

邦題 『ゴースト・パラダイス』
原作者 テリー・プラチェット
原題 Johnny and the Dead(1993)
訳者 鴻巣友季子
出版社 講談社
出版年 1994/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『決着』
原作者 ディック・フランシス
原題 Decider(1993)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1994/11/15
面白度 ★★★
主人公 建築士のリー・モリス。6人の男の子をもつ。主として廃屋を改造して売るという商売をしている。母から貰ったストラットン・パーク競馬場の株を少し持っている。
事件 そのストラットン・パーク競馬場の持ち主ストラットン卿が亡くなった。ストラットン一族の間では、老朽化した競馬場を売るか再建するかで意見が対立していたのだ。競馬場の支配人と馬場取締委員からは、ストラットン家に行って競馬場の存続を図ってほしいと要望されたのだ。
背景 相変らず衰えを見せていない。驚いた。今回の主人公は久しぶりに子供を持つ父親。このため恋愛問題はほとんど出てこず、父と子供たちの絆がうまく描かれている。1/3を過ぎたところで競馬場が爆破されるが、これがサスペンスを盛り上げるうまい設定になっている。

邦題 『暗闇の薔薇』
原作者 クリスチアナ・ブランド
原題 The Rose in Darkness(1979)
訳者 高田恵子
出版社 東京創元社
出版年 1994/7/22
面白度 ★★★
主人公 チャールズワース警視正。『疑惑の霧』以来26年ぶりの登場。
事件 冒頭の人物表には「以上の9人のなかに、殺人の被害者と犯人がいる。この殺人には共謀はないものとする」とある。事件は、元映画女優サリーの屋敷に駐車中の車から死体が見つかったというもの。しかしサリーは、車の通行が不可能になったため、反対側からきた同じ車種のドライバーと車を交換しただけで、それ以上は知らないと主張した。何故車に死体があったのか?
背景 その謎解きは、さすがにベテラン作家らしくそつなくまとめてはいるものの、印象深いのはサリーを巡る<8人の親友>であろう。ゲイの衣装デザイナーやら太ることに一生懸命な女優などユニークな個性の持ち主ばかり。これはファルス・ミステリーとして楽しむべき作品か。

邦題 『フリーマントルの恐怖劇場』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 The Ghost Stories(1993)
訳者 山田順子
出版社 講談社
出版年 1994/11/10
面白度 ★★★
主人公 幽霊物語を12本集めた短編集。
事件 題名を列挙すると、「森」、「遊び友だち」、「ウェディング・ゲーム」、「村」、「インサイダー取引」、「ゾンビ」、「魂を探せ」、「愛情深い妻」、「ゴーストライター」、「洞窟」、「デッド・エンド」、「死体泥棒」となる。
背景 邦題は間違っている。幽霊が出てくる物語イコール恐怖のある物語ではないからだ。「インサイダー取引」にはユーモラスな幽霊も出てくるからだ。実際怖い短編は「森」と「遊び友だち」、「村」の3作ぐらいであろう。なかでも「村」はナチと幽霊を巧みに結び付けた佳作。「森」はまともすぎてあまり好きではない。幽霊が登場するミステリー的な作品が多いので、安心して読める。

邦題 『死体つき会社案内』
原作者 サイモン・ブレット
原題 Corporate Bodies(1991)
訳者 近藤麻理子
出版社 早川書房
出版年 1994/2/28
面白度 ★★
主人公 お馴染みの売れない俳優チャールズ・パリス。
事件 パリスには舞台はもとより映画やテレビからもお呼びがかからず、ついに会社案内のビデオに出演することになった。役はフォークリフトの運転手。簡単な役であったが、彼が撮影現場を離れた隙にフォークリフトが暴走し、会社の秘書が事故死した。パリスはその事故に疑問を抱き……。
背景 パリス物の面白さは、要約すれば、彼のユーモラスな言動と演劇・映画界という特殊な世界の内幕情報とにあるといってよい。この作品では彼の素人探偵ぶりは相変わらず楽しめるが、事件の舞台が普通の会社というのでは、パリスが巻き込まれる社内の葛藤など、多くの読者には日常茶飯事にしか感じないであろう。パリスには早く舞台に復帰してほしいものだ。

邦題 『ダイエット中の死体』
原作者 サイモン・ブレット
原題 Mrs Pargeter's Pound of Flesh(1992)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1994/8/31
面白度 ★★
主人公 夫の多額な遺産で優雅な老後生活を送っているメリタ・パージェター。シリーズ4作め
事件 パージェター夫人は高級な減量サロンに滞在することになった。というのも、亡夫のかつての部下が彼の経営する減量サロンに夫人を招待してくれたのを機会に、痩せたがっている友達をパージェター夫人が連れて行くことにしたからである。ところが、そのサロンでパージェター夫人は不穏な言葉を聞き、不自然な死体を見てしまった。好奇心旺盛な彼女は、このサロンでなにか怪しいことが行われていると直感したのだ。
背景 亡夫の部下を使って積極的に情報を集めるパージェター夫人の活躍はあい変らず読ませるし、友人との会話も笑いを誘うが、欠点はメイン・プロットというべき陰謀が貧弱なこと。プロットまでダイエットさせることはないのに。

邦題 『遊戯室』
原作者 フランセス・ヘガティ
原題 The Playroom(1991)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1994/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『グッドマン・イン・アフリカ』
原作者 ウィリアム・ボイド
原題 A Good Man in Africa(1981)
訳者 菊地よしみ
出版社 早川書房
出版年 1994/12/15
面白度 ★★★★
主人公 アフリカの架空の国キンジャンジャの州都ヌコングサンバにある高等副弁務官事務所の第一書記モーガン・リーフィー。34歳の独身。赴任して三年ほどになる。
事件 かつて英国領だったキンジャンジャで、近く総選挙が行なわれようとしていた。モーガンは酒と女に慰めを見出す鬱屈した生活を送っていたが、上司から英国の国益のために有力候補者を懐柔せよとの指令がくる。ところが候補者の妻と深い関係になったばかりに……。
背景 著者の第一作で、サマセット・モーム賞受賞作。純文畑の作家であるだけに人物造形はしっかりしているうえに、物語性は豊かで読みやすい。アフリカ新興国を舞台にした国際陰謀小説として大いに楽しめる。「”超越性”を欠いたグレアム・グリーン」という評にも納得。

邦題 『レッド・デス』上下
原作者 マックス・マーロウ
原題 The Red Death(1989)
訳者 厚木淳
出版社 東京創元社
出版年 1994/1/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『晩餐の誓い』
原作者 ウィリアム・マッキルヴァニー
原題 Strange Loyalties(1991)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1994/1/31
面白度 ★★★
主人公 グラスゴー警察のレイドロウ警部。シリーズ物の第三作。ジャンという愛人がいる。
事件 レイドロウの弟が自動車事故で亡くなった。理想の教師に燃え、幼い時から信頼していた弟が何故、酒びたりになり、自暴自棄になって死んだのか? 警部はその答を探すため休暇をとって単身調査を始めた。しかしかえって謎は深まるばかりだった。
背景 休暇をとって事件を調査を開始するという導入部は快調である。一匹狼の警部が私用で調査をするから、まさにイギリス版の私立探偵小説といってよい、語りも一人称一視点。主人公の生き方もたっぶり描かれている。中盤、麻薬がらみの犯罪を扱うあたりから面白さのパワーが落ちるのが残念。個人的には警察小説はハードボイルドより捜査小説に留まっていてほしい。

邦題 『女王陛下を救出せよ』
原作者 ポール・マン
原題 The Britannia Contract(1993)
訳者 山根和郎
出版社 二見書房
出版年 1994/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『バビロンの影』上下
原作者 デイヴィッド・メイスン
原題 Shadow Over Babylon(1993)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1994/8/15
面白度 ★★★
主人公 フセインを暗殺するためにイラクに潜入した暗殺チーム。リーダーは警備会社社長のエド・ハワード。その他射撃やアラブの専門家など4人。
事件 実在人物の暗殺といえば、ドゴール大統領を狙った『ジャッカルの日』が有名。ともに第一作だが、大きな違いは登場人物を存在感ある人間として描く技量に差のあること。残念ながら、本書の暗殺実行者らは、ジャッカルやルベル警視と比べると印象の薄い人物ばかりなのである。
背景 結末はミエミエではないか、といわれそうだが、細部にこだわることで、物語にリアリティを与えようとするこの種の小説の常套手段は、弾道学や偵察衛星を詳述している部分では十分に成功している。この点では『ジャッカルの日』と比べても遜色ないといえようか。

邦題 『ブルー・ムーン亭の秘密』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 Twice in a Blue Moon(1993)
訳者 近藤麻里子
出版社 早川書房
出版年 1994/11/15
面白度 ★★
主人公 ブルー・ムーン亭の経営者スーザン。27歳で独身。お馴染みのヘンリ・ティベット主任警視と妻のエミーは脇役として登場する。
事件 両親を事故で亡くし、身寄りのないスーザンは、大伯父の遺言でパブ<ブルー・ムーン亭>を相続することになった。潰れそうな亭を立て直したまではよかったが、スーザン自慢のキノコ料理を食べた客が中毒死したのだ。なんとマッシュルームが毒キノコとすり替えられていたのである。
背景 70歳を越えたモイーズが、若い女性を主人公にした一人称の珍しいミステリー。最近の威勢のいい女性探偵に比べると、生き方・行動とも古臭い。またスーザンの視点から書かれているからか、捜査に筆が費やされておらず、ヘンリが冴えない。モイーズの衰えを実感してしまった。

邦題 『灼熱の死闘』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Blood River(1989)
訳者 酒井昭伸
出版社 新潮社
出版年 1994/8/1
面白度 ★★★
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ナイト・マネージャー』上下
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 The Night Manager(1993)
訳者 村上博基
出版社 早川書房
出版年 1994/7/31
面白度 ★★★★
主人公 チューリッヒの名門ホテルのイギリス人ナイト・マネジャーのジョナサン・パイン。孤児で、訓練キャンプの出身者。北アイルランドの特殊部隊にもいたことがある。
事件 パインは、ある夜貿易商のローパーに遭遇した。ローパーは世界中に武器を売って巨利をむさぼる死の商人であったが、パインの愛した女性を破滅させた人物だった。イギリスの情報部はローパーをやっつけるために、パインをリクルートしようとする。
背景 ル・カレが、ソ連やアラブ人ではない人物を初めて悪役に設定した作品。この悪役は一歩間違えれば、スメルシュのような悪役になってしまうが、結構リアルに描いているのがカレの凄いところ。パインの人物造形もいい。平凡な素材を職人の腕で一級品に仕上げてしまったような作品。

邦題 『ただ一度の挑戦』
原作者 パトリック・ルエル
原題 The Only Game(1991)
訳者 羽田詩津子
出版社 早川書房
出版年 1994/12/15
面白度 ★★★
主人公 ロムチャーチ警察の警部ドッグ・シセロ。エリート士官として陸軍に入ったもののIRAの爆弾テロで恋人を失い、自らも顔に醜い火傷を負う。
事件 シセロ警部が担当することになった幼児誘拐事件は、IRAの行為であるという見方が有力になった。この誘拐が子供の父親を誘き出すために仕組まれたらしいとわかったからである。IRAに対して苦い記憶をもつ警部は、誘拐された子供の母親に心惹かれたこともあり、憎むべき仇敵に独断で捜査を進めるのだった。
背景 ルエル名義の作品はサスペンス豊かなものが多いが、本作も物語がどんどん展開していく面白い小説。伏線が後半に生きてきて意外な展開も納得できる。ネクラで負け犬と思われた主人公に(後半は魅力的な活躍をするが)、いまいち共感できないのが少し弱点か。

邦題 『分類項目:殺人』
原作者 サラ・レイシー
原題 File Under:Deceased(1992)
訳者 向井和美
出版社 福武書店
出版年 1994/11/11
面白度 ★★★★
主人公 女性税務調査官リーア。25歳で独身。自立した女性である。
事件 物語は、リーアが美術館の出口で突然倒れた男性を介抱するところから始まる。男はすぐに死亡したが、この事件直後から、リーアの部屋が荒されたり、彼女自身が襲われたりと、不思議な事件が続発しだしたのだ。何故か?
背景 本書の面白さは、なんといってもリーアの人間的な魅力にあろう。小生意気なところもあるが、ウイットに富んだ会話や積極的な行動力、弱者への思いやりなどは読者の共感を呼ぶに違いない。米国の女性探偵たちの生き方と似ているが、自ら謎解きに挑戦していく姿勢などは、ハードボイルドというより冒険小説の主人公そのもの。生みの親が英国人作家であるから、当然?!

邦題 『報復のコスト』
原作者 スティーヴン・レザー
原題 Pay Off(1987)
訳者 田中昌太郎
出版社 新潮社
出版年 1994/12/25
面白度 ★★★ 
主人公 企業コンサルタントの<私>。独身。ショーナというビジネス・パートナーがいる。
事件 <私>の父が自殺した。どうやらロンドンの金融界と麻薬ルートを支配する二人のマフィアが原因のようだった。<私>は、復讐のため犯罪スペシャリストを集めた報復チームを組織し、マフィアの首領を追いつめる作戦を開始するが……。
背景 元パラシュート兵や高級コールガールといった、いわくありげなプロを集める話が冒頭にある。これが面白い。やがて明らかになる復讐方法はコンゲーム風で、イギリス作家らしいユーモラスな語り口である。ところが第2部からはアクション小説に豹変し、残虐な場面はあるは、マンがチックな対決はあるはという展開。作風が前後半でガラリと変わるので戸惑ってしまう。

邦題 『破壊者ベンの誕生』
原作者 ドリス・レッシング
原題 The Fifth Child(1988)
訳者 上田和夫
出版社 新潮社
出版年 1994/9/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『夢の棘』
原作者 ピーター・ロビンスン
原題 The Hanging Valley(1989)
訳者 幸田敦子
出版社 東京創元社
出版年 1994/8/26
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『出撃!黄金奪取作戦』
原作者 パトリック・オブライアン
原題 Post Captain(1972)
訳者 高沢次郎
出版社 徳間書店
出版年 1994/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 

2003年早川書房より『勅任艦長への航海』下として出版。

邦題 『孤高の提督旗』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 Success to the Brave(193)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1994/6/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ワーテルロー』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Wateloo(1990)
訳者 高水香
出版社 光人社
出版年 1994/4/2
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『謀略の航海』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Devil(1992)
訳者 原佳代子
出版社 光人社
出版年 1994/10/13
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ロシア艦隊の猛追』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Halffyde to the Narrows(1977)
訳者 高岬沙世
出版社 早川書房
出版年 1994/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『偽装潜水母艦カイザーホフ』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron and the Kaiserhof(1984)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1994/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アドリア海襲撃指令』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 To Risks Unknown(1969)
訳者 高津幸枝
出版社 早川書房
出版年 1994/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『キール港の白い大砲』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 The White Guns(1989)
訳者 大森洋子
出版社 早川書房
出版年 1994/9/15
面白度  
主人公 

事件 


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