邦題 『チェルシー・テラスへの道』上下
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 As the Crow Flies(1991)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1991/6/15
面白度 ★★★
主人公 ロンドン下町の貧しい家に生まれたチャーリー・トランパー。
事件 チャーリーは祖父の手押し車で商売を始めた。夢は、高級商店街チェルシー・テラスの全店舗を買い取ることであった。やがて彼は幼馴染みと結婚し、彼の夢の実現に向けて走り出した。しかし宿敵ともいえる男の母親による妨害工作は執拗をきわめ……。
背景 著者の『アベルとケイン』の英国版といった内容。『アベルとケイン』が、対立する二人の出世人生を直球勝負で描いた大河小説というならば、本書は変化球を多投して出来あがった大河小説だ。対立が単純な構図ではなく、ひねってあるからだ。その分ミステリー的な面白さは増えているものの、物語の迫力は減ってしまった。

邦題 『白夜が明ける』上下
原作者 C・アームストロング
原題 White light(1988)
訳者 村上博樹
出版社 文藝春秋
出版年 1991/3/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ワシントン・スキャンダル』
原作者 イーヴリン・アンソニー
原題 The Avenue of the Dead(1981)
訳者 食野雅子
出版社 新潮社
出版年 1991/5/25
面白度 ★★★
主人公 英国情報部員のダビナ。シリーズ物の第ニ作。
事件 ダビナは亡命したKGB大佐ササノフと結婚した。しかしKGBはその裏切りを忘れなかった。二人の居場所を探し、ササノフを爆殺したのだ。ダビナは報復を決意した。そんなとき、学生時代にダビナの親友で、今ではアメリカ政府高官の妻になっている女性がワシントンの英国大使館に逃げ込み、夫がKBGのスパイだと告げたのだ。ダビナは早速アメリカに飛んだ。
背景 第一作『女性情報部員ダビナ』が好評だったのでシリーズ化されたような作品。シリーズ化の意識が強過ぎて、逆スパイの問題や相棒ロマックスとの恋愛などを、本作でははっきりさせないで終っている。とはいえダビナの健気な活躍はそれなりに楽しめる。

邦題 『証拠が問題』
原作者 ジェームズ・アンダーソン
原題 Additional Evidence(1988)
訳者 藤村裕美
出版社 東京創元社
出版年 1991/11/22
面白度 ★★★
主人公 叙述トリックに関係するので、特に書かないことにする。
事件 本書の著者はイギリス人ながら、本格謎解き小説(『血のついたエッグ・コージイ』)からユーモア・サスペンス小説(『殺意の団欒』)、ノヴェラリゼイション(『シャーロック・ホームズ殺人事件』など)まで、なんでも御座れのプロ作家。で、今回はどういうタイプの作品かというと、サスペンスと謎解きをミックスしたような構成のミステリー。若い女性を殺害した容疑で逮捕された夫を助けるために妻と被害者の兄(ロンドン警視庁の警部)とが共同で真相を探る内容で、これ以上の余計な情報は仕入れないほうが、より楽しめる作品である。
背景 テクニシャンではあるが、冗長部分も多く、いまいち切味が鈍いのが惜しいところ。

邦題 『運命の倒置法』
原作者 バーバラ・ヴァイン
原題 A Fatal Inversion(1987)
訳者 大村美根子
出版社 角川書店
出版年 1991/5/10
面白度 ★★★★
主人公 大叔父から遺贈されたカントリー・ハウスの持ち主であったアダム・ヴァーン・スミス。
事件 カントリー・ハウスの現在の持ち主は、愛犬の亡骸を埋葬しようとして、大人と赤ん坊の白骨死体を見つけた。一方アダムは、空港の人込みの中に、十年前の仲間の一人がいるのを知った。そしてアダムはあの忌まわしい事件を思い出すのだが……。
背景 レンデルがヴァイン名義で書いたミステリーの第二作。一作目と同じように、現在と過去が交錯しながら物語が展開していく。犯罪と犯人はわかっているのだが、被害者が誰で、どうして犯罪までに至ったのかがわからない、という謎の設定である。最初は物語に入りにくいが、そこを乗り越えてしまえば、徐々に謎が解かれていくレンデルの語り口に魅せられるだろう。

邦題 『鏡の荒野』
原作者 テッド・オールビュリー
原題 A Wilderness of Mirrors(1988)
訳者 峰岸久
出版社 東京創元社
出版年 1991/3/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『覚悟はいいかね、ボンド君』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 No Deals Mr.Bond(1987)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1991/2/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ニューヨーク油田地帯』上下
原作者 ピーター・カニンガム
原題 The Bear's Requiem(1989)
訳者 翔田朱美
出版社 講談社
出版年 1991/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『オイル・タンカー炎上す』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 A Thunder of Crude(1986)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1991/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『グッド・スパイ』
原作者 ジョン・グリフィス
原題 The Good Spy(1990)
訳者 平井イサク
出版社 講談社
出版年 1991/2/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『哀しき追跡者』
原作者 フィリップ・ケリガン
原題 Blood Libel(1989)
訳者 長野きよみ
出版社 早川書房
出版年 1991/6/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『謎めく孤島の警部』
原作者 バリー・コーク
原題 Unnatural Hazard(1989)
訳者 山本やよい
出版社 早川書房
出版年 1991/12/31
面白度 ★★
主人公 アンガス・ストローン警部。ゴルフはシングルの腕前で、そのうえ歴史小説を書けば第一作からベストセラーになるという恵まれた才能の持主だが、強盗に撃たれて片手が不自由なだけでなく、離婚の傷もまだ癒えていない。シリーズの第二弾。
事件 今回は、骨董品の競売場で再会した旧友から、彼が経営するスコットランドの離れ小島に招待されたところから話が始まる。喜んで招待に応じたものの、島へ行く途中で列車から突き落とされ、ホテルに着いたら意外な連続殺人事件に巻き込まれたりと、楽しみどころではない!
背景 この作品でも、多趣味だが陰のある中年男の行動をいささかユーモラスに描いている部分はそれなりに楽しめるが、骨董品に絡んだ謎の設定には無理があり、いただけない。

邦題 『セイレーンは死の歌をうたう』
原作者 サラ・コードウェル
原題 The Sirens sang of Murder(1989)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1991/9/15
面白度 ★★★
主人公 法曹学院のテイマー教授と若手弁護士たち。シリーズ第3弾。
事件 今回の事件の当事者は弁護士のカントリップ。事件は、税金対策のためチャンネル諸島に設置された信託財産の相続人の名前を知っている弁護士が溺死したというもの。彼しか名前を知らないので、受託人がカントリップを招いたというわけである。しかし税法に弱いカントリップは、テレックスをテイラー教授に送り、援助を求める。
背景 法律問題をプロットに巧妙に取り入れたミステリーが得意な著者の3作目。法律や経済がプロットの中心に置かれると、理系人間の私には、全体の骨格を理解するのが大変なのだが、この作品はすんなりと読めた。カントリップのラストの活躍も愉快だ。

邦題 『背徳の仮面』
原作者 ジョン・コーリー
原題 A Paper Mask(1987)
訳者 林克巳
出版社 早川書房
出版年 1991/7/31
面白度 ★★★
主人公 夢多き青年マシュー・ハリス。
事件 マシューはロンドンの病院でポーターとして働いていたが、事故死した友人の医師から身分証明書を盗み出し、偽医者になってブリストルの病院に就職したのだ。偽医者の毎日は失敗の連続であったが、ベテラン看護婦のサポートでなんとか実務をこなしていた。
背景 すこし変わったサスペンス小説。普通のミステリーと考えると、偽医者になる動機に説得力がないし、殺人を犯すほどの必然性も説明されていない。殺人を隠す努力もしていない。欠点であることは確かなのだが、偽医者には誰もがなれるし、それが新鮮なサスペンスを生み出していることがわかる。一種の青春小説や悪漢小説として楽しむことが出来る。

邦題 『ロセンデール家の嵐』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sea Lord(1989)
訳者 坂本憲一
出版社 早川書房
出版年 1991/9/30
面白度 ★★★
主人公 28代ストウィ伯爵のジョン・ロセンデール。だが4年前に伯爵家から逃げ出し、気ままなヨット暮らしを楽しんでいる。
事件 そのジョンが故国イングランドに帰ってきた。母が危篤という知らせを受けたからである。しかし彼を待っていたのは、一族の冷たい態度だけだった。7年前にゴッホの<ひまわり>を盗んだのはジョンと信じられていたからである。だが何者かがジョンの命を狙い始め……。
背景 著者の現代物第ニ作。主人公が貴族で、金に困っているとはいえ気ままな生活が可能という、典型的な英国風冒険小説である。ただし犯人探しが物語の大きな比重を占めているので、多少違和感をもってしまう。謎解きはたいしたことはないが、海のシーンはさすがに迫力がある。

邦題 『殺意のバックラッシュ』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 Backlash(1989)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1991/2/28
面白度 ★★★
主人公 ジャック・ストライカー警部補。『モンキー・パズル』に続く登場。
事件 ストライカーたちが勤務する田舎町で、警官だけを狙う連続殺人犯が現れた。被害者は警官だが、それ以上の関連性は見つからない。警察はパニックに陥りそうになっていたが、それを嘲笑うかのように、派遣されたFBI捜査官まで殺されたのだ。
背景 ミッシング・リンクの謎を扱った謎解き小説と警察小説、そしてゴズリング得意のロマンス小説をミックスさせたような作品。物語のテンポが早く、それなりに楽しめる。しかし謎解きは一応辻褄はあっているものの、コジツケすぎであまり感心しない。またロマンス部分もそれほどではなく、結局警察小説としての出来が一番良いということか。

邦題 『失踪』上下
原作者 リチャード・コックス
原題 An Agent of Influence(1988)
訳者 厚木淳
出版社 東京創元社
出版年 1991/11/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『チャレンジ』上下
原作者 ウォリック・コリンズ
原題 Challenge(1990)
訳者 野本征史
出版社 角川書店
出版年 1991/9/25
面白度 ★★
主人公 世界最大のヨットレース、「アメリカンズ・カップ」に参加するアメリカ・チームの舵手ジム・ショー。
事件 ”海のF1”と呼ばれる「アメリカンズ・カップ」が舞台となる海洋小説。アメリカとソ連が「至高の銀杯」をかけて激しく戦うという話で、ショーは少年時代から厳しいトレーニングを受けてアメリカ・チームの舵手になった。一方のソ連チームの主役は、エストニア出身の天才イワン・イリッチ。はたして勝敗は?
背景 ヨットレースのシーンが全体の約半分を占める。技術的な部分は、ヨット未経験の私にもそこそこ楽しめたが、小説としての面白さはあまり感じられない。

邦題 『悪夢のバカンス』上下
原作者 シャーリー・コンラン
原題 Savages(1987)
訳者 山本やよい
出版社 新潮社
出版年 1991/6/25
面白度 ★★★★
主人公 アメリカの鉱山会社の最高幹部たちの妻5人。
事件 バカンスのために彼女たちは、アラフラ海に浮かぶリゾート・アイランドを夫とともに訪れた。だがこの島でクーデターが発生し、彼女らの夫は全員射殺され、彼女らは未開のジャングルに逃げ込んだ。軍隊の追撃からは逃れたものの、そこは人喰いの風習がある原住民はいるし、自然の脅威もあるという大変な土地だったのだ。彼女らは、はたしてサバイバルできるのか?
背景 迫力十分な小説。冒険小説というより、サバイバルを主題にした情報小説的な面白さがある。主人公5人はほぼ平等に描かれていることも、冒険小説とは少し違うといえる。この作者の筆力には脱帽するが、ただ欲をいえば、ユーモアをもう少し入れてほしかった。

邦題 『大空の栄冠』
原作者 ジュリアン・J・サヴァリン
原題 Trophy(1989)
訳者 平田敬、P・コベット
出版社 新潮社
出版年 1991/8/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『襲撃指令』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 The Glory Boys(1976)
訳者 田中昌太郎
出版社 早川書房
出版年 1991/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『生還の代償』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 Home Run(1989)
訳者 田中昌太郎
出版社 新潮社
出版年 1991/11/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『デインジャラス・エイジ』
原作者 マーチン・シルヴェスター
原題 Dangerous Age(1986)
訳者 朝倉隆男
出版社 光文社
出版年 1991/6/20
面白度 ★★★
主人公 ロンドンのワイン業者ウイリアム・ウォーナー。少し退屈だが、気ままな生活が可能な中年男性。妻はいるが、女性にはかなりモテる。
事件 別荘で過ごしていたウォーナーは荒地で何者かに銃弾で狙われた。地の利を生かして相手を底無し沼に誘い込んで沈めた。しかし何故狙われたのか、その理由はわからなかった。だが、第ニ、第三の暗殺者が現れたのだ。
背景 巻き込まれ型の冒険小説。ウォーナーは趣味人だが、暴力には強い。ちょっとオフザケが多かったり、ワインを飲み過ぎるが、その程度の遊びは、一昔前の英国風冒険小説の主人公と考えれば、許されるだろう。主人公の性格が好きか嫌いかで、評価はかなり分かれるが。

邦題 『消えたモーターバイク』
原作者 ネヴィル・スティード
原題 Chipped(1988)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1991/11/30
面白度 ★★★★
主人公 アンティークな玩具屋を経営するピーター・マークリン。シリーズ物の第三作。
事件 ピーターの恋人が一年間の予定でアメリカに行っている間に、美人のサリーのたっての依頼で、ピーターは彼女の友達の私立探偵を見つけることになった。調べてみると失踪した探偵は3件の事件を捜査していることがわかった。どの事件が失踪に関係あるのか?
背景 三つの事件はそれほどうまく絡んでいるわけではなく、伏線も十分に生かされていないなど、プロットに無理も目立つが、前ニ作と同じ程度の出来で楽しめる。相変らずピーターのユーモア、生き方は心を豊かにしてくれるし、相棒カズとの友情も、恋人不在中のサリーとの恋愛(?)もうまく書かれている。冒険小説だが、男性作家の書いたコージー派ミステリーとも言える。

邦題 『零下の亡命山脈』上下
原作者 テレンス・ストロング
原題 The Last Mountain(1989)
訳者 田中昌太郎
出版社 二見書房
出版年 1991/6/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イラン密約空路』
原作者 ジョン・T・スミス
原題 The Fifth Freedom(1988)
訳者 戸田裕之
出版社 二見書房
出版年 1991/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『神々の秘境』上下
原作者 ウィンザー・チョールトン
原題 Rites of Sacrifice(1989)
訳者 伏見威蕃
出版社 二見書房
出版年 1991/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『スパイ・シンカー』
原作者 レン・デイトン
原題 Spy Sinker(1990)
訳者 田中融二
出版社 光文社
出版年 1991/9/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『オックスフォード運河の殺人』
原作者 コリン・デクスター
原題 The Wench Is Dead(1989)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1991/4/30
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのモース主任警部。シリーズの8作目。本作では胃潰瘍で緊急入院する。
事件 モースが百年以上前の殺人事件を解決するというもの。というのも、胃潰瘍から順調に回復しつつあったモースは、退屈しのぎに、入院患者の書いた『オックスフォード運河の殺人』(もちろん、デクスターの創作)という本を読み出した。それがモースのベッド・デテクティブの始まりだった。
背景 1989年CWAゴールド・ダガー賞受賞作。この過去の殺人事件を複雑にすると、ほとんど証拠が残っていない関係上、いかに優秀なモースの頭脳をもってしても、解決不可能になろう。そこで、謎の複雑さではなく、物語の構成やモースの魅力で読ませようとしているが、この狙いは成功といってよいだろう。いささか小粒なれど、スッキリとまとまっている。

邦題 『すべて灰色の猫』上下
原作者 クレイグ・トーマス
原題 All the Grey Cats(1988)
訳者 山本光伸
出版社 扶桑社
出版年 1991/6/27
面白度 ★★★
主人公 元SIS長官のケネス・オーブリー。歩くにも杖にすがる老人になっている。彼の法定被後見人ティム・ガーディナーが活躍する。
事件 プロットは単純。元MI5長官で今やKGBの中将であるバビントンと東ドイツ諜報部の重鎮ヴィンターバッハが共謀して、ネパールをソ連に合併しようとした計画を、それぞれの人間を知っているオーブリーとガーディナーが阻止しようとして対決する話。
背景 ベルリンの壁が崩壊する前に書かれているものの、この計画にリアリティが感じられないのが最大の欠点。マンガ・スパイなら許される設定だが、トーマスのように真面目な書き方をする作家には、足をひっぱる設定だ。ただしラストの飛行場の描写はさすがに迫力がある。

邦題 『ウォール・ゲーム』
原作者 マイケル・ドブズ
原題 Wall Games(1990)
訳者 野本征史
出版社 角川書店
出版年 1991/2/10
面白度 ★★★
主人公 ベルリンの壁を巡る国際陰謀小説で、さまざまな人物が登場するが、一人挙げるならCIAの任務でベルリンに赴任することになったハリー・ベンジャミンか。
事件 ハリーの父親はユダヤ人で、少年時代にはベルリンに住んでいたが、ベルリンについて語ることはなかった。したがってベルリンはハリーにとって興味深い街といってよいが、ハリーはここでカテリーネと知り合う。彼女は東から脱出した女性で、そのとき夫と子供は殺されたが……。
背景 著者が本書を書き始めたときにはベルリンの壁はあったが、書き終わってみれば壁がなくなっていたそうだ。現実に先を越されて損したフィクションの一冊といってよい。ただしラストは愛の物語にしているし、第一作に比べると文章も上達していて、結構楽しめる。

邦題 『最後に死すべき男』
原作者 マイケル・ドブズ
原題 Last Man to Die(1991)
訳者 伏見威蕃
出版社 角川書店
出版年 1991/12/25
面白度 ★★★
主人公 ペーター・ヘンケ。イギリスに抑留されるドイツ軍捕虜。
事件 1945年春、ナチス・ドイツの攻略についてチャーチルとアイゼンハワーは対立していた。そんなとき、イギリスに抑留されていたドイツ軍の捕虜が脱走した。ほとんどの捕虜はすぐに捕まったがヘンケだけは捕まらず、ベルリンにたどり着いた。ナチスは英雄としてヘンケを歓迎したが、実は戻らなければならない理由があったのだ。
背景 ポリティカル・スリラーや国際陰謀小説を書いていたドブズのナチス・ドイツ物。これも一種の国際陰謀小説と考えられる。ノンフィクションを意識した書き方で、チャーチルとアイゼンハワーの対立などは興味深いが、多くの人にはミステリー的な仕掛けは簡単にわかるのでは?

邦題 『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』
原作者 ジューン・トムスン
原題 The Secret Files of Sherlock Holmes(1990)
訳者 押田由起
出版社 東京創元社
出版年 1991/5/31
面白度 ★★★
主人公 ホームズ。ホームズ物語の中には、事件の概要に触れただけで、発表されてない事件簿(いわゆる<語られざる事件>)が何本もある。もっとも有名なものは、自宅に傘を取りに戻ったまま失踪したフィリモア氏の事件であろう。本書はその<語られざる事件>を扱った贋作集。
事件 冒頭には期待のフィリモア失踪事件が収録されているが、これは正直いってそれほどの出来ではない。その他の6本の短編も、謎解き小説や冒険小説としては平板である。
背景 この種の贋作は、いかに本物に似ているかで評価すべきなのであろうが、その点では水準を越えている。特に、ヴィクトリア朝後期の風俗描写はふんだんに盛り込まれていて、時代の香りは十分にかぐことができる。本国の作家ならではの強みであろう。

邦題 『天国を落ちた男』
原作者 ジャネット・ニール
原題 Death on Site(1989)
訳者 坂口玲子
出版社 早川書房
出版年 1991/6/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『誘拐のヴァカンス』
原作者 ティム・バークス
原題 Cara Massimina(1990)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1991/4/15
面白度 ★★★★
主人公 イタリア、ヴェローナの語学学校で英語を教える英国青年のモリス。ただしそれだけでは生活できないため、金持ちの子女に対しても個人授業をしている。
事件 学校が夏休みになると、教え子も休暇でいなくなり、モリスの収入は断たれてしまった。そのとき、以前から彼に想いを寄せていた女生徒の一人が彼の元へ家出してきたのだ。モリスはこれを好機と考え、身代金を入手しようと恋の逃避行にでるが……。
背景 心理サスペンス小説というよりは、一種の悪漢小説だ。モリスの人物造形はまずまず。女生徒が段々大胆になるのも面白い。問題はイタリア警察の捜査が雑で、モリスが身代金を簡単に入手できてしまうのではミステリー的興趣が増すことはない。

邦題 『暗い夜の記憶』
原作者 ロバート・バーナード
原題 Out of the Blackout(1985)
訳者 浅羽莢子
出版社 社会思想社
出版年 1991/3/30
面白度 ★★★★
主人公 サイモン・ソーン。1941年にイーズトン駅についた学童疎開列車に乗っていた、名簿に記載されていない謎の少年。
事件 結局サイモンは養子として育てられることになった。奨学金を得てオックスフォード大学へ進んだ彼は、デモに参加するためロンドンに行ったとき、偶然パディントン駅の近くで子供時代に住んでいた家を見つける。しかし悪夢に悩まされ始めたのだ。
背景 小品だが面白い。特にアイデンティティを求めてサイモンが活動するという前半が良い。1940年代や1960年代のロンドンの描写もリアリティを感じる。後半、自分が一緒に生活したであろう家族の家に住み込むあたりから、ミステリー的には単純な物語になるのが少し残念。

邦題 『ポーツマス港の罠』
原作者 C・クレイトン、N・ハインド
原題 The Khrushchev Objective(1987)
訳者 平田敬、P・コベット
出版社 新潮社
出版年 1991/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イギリス怪奇傑作集』
原作者 橋本槙矩編
原題 日本独自の編集(1991)
訳者 橋本槙矩・宮尾洋史
出版社 福武書店
出版年 1991/12/16
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『オービントン家の宝石』
原作者 マリアン・バブソン
原題 Bejewelled Death(1990)
訳者 白石朗
出版社 扶桑社
出版年 1991/5/28
面白度 ★★
主人公 アメリカの片田舎にある<オーピントン記念館>の副館長ステイシー・オーピントン。
事件 <オーピントン記念館>の宝石が、ロンドンの展覧会に出品することになった。しかし保険を掛けるお金がないため、ステイシーがハットボックスに宝石を隠して密かに運ぶことになった。ところが飛行機の中には、同じハットボックスを持っている乗客が5組もおり、ステイシーがロンドンのホテルに着いてハットボックスを開けると、宝石は消えていたのだ!
背景 典型的なコージー・ミステリー。最初の設定(ハットボックスが何個も飛行機の中にある)があまり気にならなければ、それなりに楽しめる。私はあまりに不自然なので気になってしまった。捜査に協力する子供二人のその世話役の男の言動が愉快だ。

邦題 『ジョン・ブルの誇り』
原作者 レイ・ハリスン
原題 French Ordinary Murder(1983)
訳者 高田恵子
出版社 東京創元社
出版年 1991/4/19
面白度 ★★
主人公 ロンドン市警察のブラッグ部長刑事とモートン巡査の二人。ブラッグは下層階級出身のたたきあげの中年男だが、モートンは貴族出身の若者である。
事件 物語の時代背景はヴィクトリア朝時代。この二人が、海運会社に勤める帳簿係の殺人事件を担当する。単なる追い剥ぎによる犯行のように見えたが……。
背景 二人の活躍する19世紀末は、クリッブ巡査部長とサッカレイ巡査コンビ(P・ラヴゼイ)の活躍時期とほぼ同じ。今より素朴な時代の経済事件が絡むだけに、事件のからくりは単純なうえに、物語も迫力不足。本作では、英国皇太子が地下鉄の開通式に出席したという当時のロンドン事情や、主人公たちの生活環境、考え方の違いから生じる摩擦などをのんびり楽しむべきだろう。

邦題 『下院議員の死』
原作者 レイ・ハリスン
原題 Death of an Honourable Member(1984)
訳者 高田恵子
出版社 東京創元社
出版年 1991/9/27
面白度 ★★★
主人公  ロンドン市警察のブラッグ部長刑事とモートン巡査の二人。シリーズ第ニ弾。
事件 シティ選出の下院議員が自宅の階段で転落死した。事故死として処理されたが、葬儀の当日、そのことに疑義を訴えた手紙が担当検死官のもとに届いたのだ。警察長は再調査をブラッグに命じ、ブラックは関係者への聞き込みを始めると、彼らは皆、何かを隠しているようだった。
背景 ここでいうロンドン市警察の”市”とはシティのことで、約1平方マイルのロンドンの中心部のこと。スコットランド・ヤードとは異なる。シリーズ第一作では、その特異性を説明するのに紙幅を費やし、事件はいたって単純だったが、第ニ作では、冒頭から事件の描写に徹していて、意外性のある結構面白い謎解き小説になっている。階級の異なる二人の会話も楽しい。

邦題 『死体が多すぎる』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 One Corpse Too Many(1979)
訳者 大出健
出版社 社会思想社
出版年 1991/1/30
面白度 ★★★
主人公 修道院のある町シュルーズベリに住む修道士カドフェル。シリーズ物の第2作。
事件 シュルーズベリでは、イングランドの王位を巡ってスティーブン王と女帝モードの支持者とで戦闘が行われたが、処刑死体を埋葬するために城を訪れたカドフェルが、念のために死体を数えたところ、処刑者数より一体多かったのだ。誰の死体で、誰が隠したのか?
背景 という設定でまず読者を物語に引き込み、その後の物語は、12世紀のイングランドの歴史を巧みに背景に利用して小気味よく展開していく。人生を知りつくしているカドフェルと溌剌とした若者たちとが織りなすドラマは、適度なサスペンスに溢れていて、謎解き小説より、冒険小説、時代小説として楽しめる。シリーズ物を順に出してくれる版元の読者サービスもうれしい。

邦題 『聖ペテロ祭の殺人』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 Saint Peter's Fair(1981)
訳者 大出健
出版社 社会思想
出版年 1991/9/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズの第4弾。
事件 1139年7月30日(つまり聖ペテロ祭の前夜祭の前日)、町の代表者達は院長に申し入れを行った。戦いで破壊された城壁を修理するために、修道院の収入となる祭の通行税の一部を譲ってほしいというもの。新任の院長は契約をたてに断ったが、町の若者達は納得しなかった。彼らは商人に直接交渉を始めたのだ。だが、これが町に混乱を引き起こし、殺人事件まで発生し――。
背景 なにげない風俗描写に伏線を張り、若い男女の恋愛を物語に絡ませて、さわやかな後味の結末で締めくくる著者の手腕は、毎度のことなれど感心する。なおシリーズ第3弾『修道士の頭巾』は、すでにポケミスで出版されている。

邦題 『死への婚礼』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Leper of Saint Girls(1981)
訳者 大出健
出版社 社会思想
出版年 1991/11/30
面白度 ★★★
主人公 修道士カドフェル。シリーズ第5弾。
事件 結婚式の当日、初老の花婿が死体となって見つかった。花嫁は18歳の広大な領地の相続人で、伯父夫婦による明らかに強制的な仕業の結果であった。そして容疑は、花嫁に恋していた花婿の従者にかかり、彼は施療院に逃げ込んだ。カドフェルは、花嫁の祖父が十字軍の英雄であったことから、事件の解明にとりかかった。
背景 極めてわかりやすいプロットで、典型的なフーダニット物。しかし犯人が途中からだいたいわかってしまうのが弱点。もちろん最後にひと捻りしているが、それもたいしたことはない。ただし施療院を物語に取り入れたアイディアは上手いものである。

邦題 『地獄の季節』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 A Season in Hell(1989)
訳者 田口俊樹訳
出版社 早川書房
出版年 1991/1/31
面白度 ★★
主人公 ニューヨーク在住の実業家サラ。
事件 サラの息子の死体がセーヌ河で見つかった。どうやら麻薬密輸組織に殺されたらしい。渡英したサラは、従弟のSAS中佐から、IRAのメンバーの死体からも、彼女の息子と同じ薬物が検出されたことを教わった。どうやら事件の背後には大掛かりな陰謀がありそうだ。サラは、妹を同じ組織に殺されたという元SASの若者とともに闘いを始めた。
背景 語り口はうまく、登場人物もそれなりに魅力的ではあるが、これほどご都合主義なミステリーも珍しい。主役たちの会話が電話の場合を含めて、常に高性能マイクロフォンで盗聴できてしまうというのだから、敵への先回りなど簡単にできてしまうし、サラは常に助かるのだ。

邦題 『ダンスホール・ロミオの回想』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Memoirs of a Dance-Hall Romeo(1989)
訳者 井坂清
出版社 早川書房
出版年 1991/5/31
面白度
主人公 作家志望の若者オリヴァー・ショー。
事件 1949年、ショーは除隊して故郷の田舎町へ帰ってきた。だが情熱を持てるものは、女たちと寝ることだけだった。しかし地元のダンスホールで出会う女たちとの経験をとおして、ショーは成長していく。やがて学校の先生なり、同僚や人妻との情事にふけるが……。
背景 冒険小説というより、自伝的な青春小説というのがふさわしい。7人の女性との交流をノスタルジックに、そしてポルノグラフィックに描いているというだけのもの。面白いのはさまざまなタイプの女性(アッケラカンとした女性、色情狂的な女性、女神のような女性など)が登場していることぐらい。ヒギンズの異色作なのは間違いないので、ヒギンズ・ファンなら読む必要があるが。

邦題 『復讐者の帰還』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Came the Dark Stranger(1962)
訳者 槙野香
出版社 二見書房
出版年 1991/9/25
面白度 ★★
主人公 朝鮮戦争に従軍中、北朝鮮に捕まったマーティン・シェイン。その後米軍の攻撃で頭に重傷を負い、記憶がなくなるものの、救出される。
事件 そのシェインが、階段から転落したために7年ぶりに記憶が戻ったのだ。自分が捕虜になったのは、仲間の一人が裏切ったからだ。可能性のある人物は3名。真犯人を突き止めて復讐するために、バーナムの町にやってきた。
背景 ヒギンズがパターソン名義で発表した初期の小品。一種の通俗ハードボイルド物だが、メインは誰が密告者かという謎解きで、冒険小説的要素はあまりない。謎解きは、まあ、そうだろうという人物が犯人という平凡な設定だが、語り口はさすがに往年のヒギンズを思わせるものがある。

邦題 『鏡の陰謀』
原作者 リチャード・ヒューゴー
原題 Conspiracy of Mirror(1989)
訳者 工藤政司
出版社 扶桑社
出版年 1991/8/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『闇の淵』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Under World(1988)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1991/3/31
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのダルジール警視とパスコー警部の他に、パスコーの妻エリーも活躍する。彼女は産業社会学を教え、フェミニズム小説を執筆している。
事件 ヨークシャーの炭坑町で起きた幼児連続殺人の犯人ではないかと疑われた男は結局、事故死した。そして容疑者の息子コリンは故郷に戻ってきて、父と同じく炭坑夫となった。しかし世間の偏見はあまりかわらなかった。そんな彼は、組合後援の研修会で講師のエリーと知り合う。進歩的な考えの持ち主エリーもコリンに惹かれるものを感じるが、また殺人事件が起きたのだ。
背景 事件の解決はほとんど犯人の独白で決まり、謎解きの面白さはない。しかしコリンとエリーが親しくなる過程はサスペンス豊かに描かれている。ラストの炭坑内の描写も迫力がある。

邦題 『13のダイヤモンド』
原作者 レジナルド・ヒル他
原題 A Suit of Diamonds(1990)
訳者 嵯峨静江他
出版社 早川書房
出版年 1991/11/30
面白度 ★★★★
主人公 1930年に創刊された英国コリンズ社の叢書クライム・クラブが60周年になった。そのダイヤモンド・ジュビーを記念して、この叢書で活躍する13人の作家の短編を集めた作品集。
事件 収録作品を列挙すると、「ぶらさがっている男」(R・バーナード)、「昼食をとる女たち」(G・バトラー)、「コリンズ氏を知っているか?」(S・コードウェル)、「犯人逮捕」(E・フェラーズ)、「ネメシス」(A・フレイザー)、「洋上の聖餐」(R・ヒル)、「溜池」(J・マルカム)、「すべてを持っていた男」(P・モイーズ)、「マムール・ザプトと鳩の家」(M・ピアス)、「消えたディーゼル」(M・リプリー)、「ダイヤと真珠」(M・ラッセル)、「瓜ふたつ」(E・ライト)
背景 ヒルの作品は独創的で、異色作。モイーズやコードウェルの作品も手慣れた佳品。

邦題 『愛されない女』
原作者 フランセス・ファイフィール
原題 A Question of Guilt(1988)
訳者 猪俣美江子
出版社 早川書房
出版年 1991/8/31
面白度 ★★★
主人公 追訴側の事務弁護士ヘレン・ウェスト。離婚経験者。同じ離婚者であるジェフリー・ベイリー警視と親しくなる。
事件 ロンドンで弁護士の妻が殺された。行きずりの犯行とも思われたが、捜査の結果、被害者を尾行していた私立探偵が犯行を自白した。ところがその男は、弁護士に密かな思いを寄せていた未亡人に依頼されたのだと主張した。ヘレンは、その女性の邪悪さに惹き付けられた。
背景 P・D・ジェイムズが絶賛したという新人の第一作。絶賛したのは彼女の描写力についてであろう。確かにスゴイ。ただしこの作品についていえば、余計なことまで描写している。もっと未亡人の特異な性格に絞って描写をした方がよかった。オリジナリティは感じるが。

邦題 『黒い霧の街』
原作者 マイク・フィリップ
原題 The Late Candidate(1990)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1991/10/15
面白度 ★★★
主人公 フリーの黒人ジャーナリストのサムソン・ディーン。現在は離婚して独身。
事件 ディーンの幼なじみで、いまロンドンの区議会議員をしている男が刺殺されるという事件が起こった。しかも容疑者として、母の友人の息子が逮捕されたというのだ。身近な人が巻き込まれた事件であるうえに、記事を書く必要もある。ディーンはこの事件に深く係わるようになるが、やがてその背後に、区役所内部の汚職が絡んでいることが明らかになってきた。
背景 導入部はいいのだが、ミステリーとしては中盤がだれる。あまり捜査をしないからである。また終盤まで犯人がわからないが、これも謎が複雑だからというのではなく、単に突発的な事件だからにすぎない。ロンドン黒人街の描写は結構興味深いものがあるが。

邦題 『騙し屋』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Deceiver(1991)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1991/9/20
面白度 ★★★
主人公 英国秘密情報機関SISのベテラン工作員のサム・マクレディ。騙し屋と呼ばれている。
事件 マクレディは世界各地で成果を挙げてきた。しかし冷戦は終わり、マクレディも引退を勧告された。だが聴聞会で現役続行を望み、成果を報告した。本作は成果の一つで、工作員を東ドイツに送ることになったが、その工作員が出発直前に殺人を起したために――、というもの。
背景 フォーサイスにとっては中編といった長さ。全4部作の第一作(原書は4部が一冊になっている)。うまいが、これまで重厚な長編を書いていただけに、中編だと安直な印象を受けてしまう。あえて悪口をいえば、冷戦終焉のため、これまで持っていたアイディアやプロットを閉店大売出しで一挙に放出したという感じである。

邦題 『売国奴の持参金』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Deceiver(1991)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1991/10/25
面白度 ★★★
主人公 騙し屋と呼ばれる英国秘密情報機関SISのベテラン工作員のサム・マクレディ。彼の成果の第ニ弾である。
事件 イギリス軍の演習に招待されたソ連軍将校の中から、アメリカへ亡命したいとの申し入れがあった。KGBの大佐である。CIAは彼を信用したが、マクレディには腑におちない点があった。亡命者の目的はなになのか?
背景 ”騙し屋”らしい話の設定である。このプロットはフリーマントルの『別れを告げにきた男』やその他にもいくつかあるので、そう意外性があるものではない。いかにもフォーサイスらしいリアルな語り口で無難な仕上がりになっているが、いまいち切れ味が鈍い。

邦題 『戦争の犠牲者』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Deceiver(1991)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1991/11/30
面白度 ★★
主人公 騙し屋と呼ばれる英国秘密情報機関工作員のサム・マクレディ。シリーズ第三弾。
事件 リビアのカダフィ大佐とIRAのテロリスト・グループは結託してロンドンを襲おうとしていた。そのことを知った英国情報部は、問題の対策をマクレディに任せた。マクレディは元SAS将校を反体制派の武器商人に仕立て上げ、リビアの武器輸送を未然に阻止しようとしたのだ。このゲームに相手はのってくるだろうか?
背景 訳者によれば、このシリーズはテレビ映画の原案として書かれたそうだが、なるほど、本作などはテレビ脚本のような作品。プロットはそれなりに考えられており破綻はないものの、小説としては、登場人物の肉付けが不足している。敵側の人物など、もっと面白く描けそうに思えるが。

邦題 『カリブの失楽園』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Deceiver(1991)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1991/12/25
面白度 ★★
主人公 騙し屋と呼ばれる英国秘密情報機関工作員のサム・マクレディ。シリーズ第四弾。
事件 舞台はカリブ海に浮かぶ英国領バークレー諸島。観光資源しかないこの島に、マクレディは休暇で訪れていたが、ここは英国からの独立を控えて、政治的には混乱が起きていた。そんなとき、以前麻薬捜査にしていた刑事が行方不明になる事件があった。また現職の総督が何者かに殺された。二つの事件は関係あるのか? マクレディも捜査を始める。
背景 カリブ海の小島が舞台だけに、相手はキューバのカストロと南米の麻薬組織。人口数万人の島なので、マクレディにとっては本気で捜査をすれば簡単に解決できてしまう。その意味では平板なミステリーだが、小島の存在がどういう意味をもつのか、という点では興味深い内容だ。

邦題 『ショックウェイブ』上下
原作者 コリン・フォーブス
原題 Shockwave(1990)
訳者 小西敦子
出版社 扶桑社
出版年 1991/7/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『大聖堂』上中下
原作者 ケン・フォレット
原題 The Pillars of theEarth(1989)
訳者 矢野浩三郎
出版社 新潮社
出版年 1991/11/25
面白度 ★★★
主人公 大ロマンス小説なのだが、強いて主人公を探せば、キングズブリッジの修道院院長のフィリップと建築職人のビルダー親子。
事件 舞台は12世紀のイングランド。国王が逝去し、内乱の危機が迫っていた。フィリップは新大聖堂を建てようと決心し、いつか大聖堂を建築したいと夢見ていたビルダー親子を雇った。しかし宿敵らの妨害で建築は思うように進まない。すでに40年以上の歳月が――。
背景 ミステリー的興味は最後の200頁ほどにしかない。残りの1600頁は単なるロマンス小説だが、筆力があるだけについつい読まされる。登場人物が極めて現代人的であることも一因だが、それでも12世紀のイギリスの歴史はかなり勉強できるオマケが付くから、うれしい。

邦題 『死の眠る森』
原作者 アントニイ・プライス
原題 Sion Crossing(1984)
訳者 米山菖子
出版社 扶桑社
出版年 1991/8/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『第四コーナー殺人事件』
原作者 フランカム&マグレガー
原題 Declared Dead(1988)
訳者 佐宗鈴夫
出版社 集英社
出版年 1991/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レッド・クリスタル』上下
原作者 クレア・フランシス
原題 Red Crystal(1985)
訳者 伊多波礼子
出版社 扶桑社
出版年 1991/1/31
面白度 ★★★
主人公 フォト・ジャーナリストを自称するテロリストのガブリエル・シュローダー。
事件 ベトナム戦争反対のデモをして拘留されたガブリエルは、その後フランスに渡り、カルチェ・ラタンの占拠に参加。さらにイタリアに出向きテロリストとして訓練を受け、ロンドンに戻ってきた。やがて爆弾テロを実行して警視総監夫人を殺すが、内偵していたロンドン警視庁の特別保安部の刑事に惹かれたために……。
背景 筆力があるので、シーン描写(特に戦闘シーンなど)は上手い。冒険小説作家といってよいが、本書の弱点は、主人公の性格設定に説得力を欠いていることだろう。あまり共感できない人物になっている。本来なら刑事を主人公にすべきだが、女性作家だからやはり無理なのだろう。

邦題 『標的』
原作者 ディック・フランシス
原題 Longshot(1990)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1991/11/15
面白度 ★★★★
主人公 ジョン・ケンドル。サヴァイヴァルの専門家で、作家。サヴァイヴァル教則本を6冊と小説1冊を書いている。現在は筆一本で生活できるよう耐えている。
事件 経済的に苦しいケンドルに、名高い調教師トレメインの伝記を書かないかという話が持ち込まれた。背に腹は代えられず、彼はトレメイン家に住み込んで執筆することになった。しかし関係者の中に裁判を受けている男がいるうえに、女性厩務員の遺体が一年振りに見つかったのだ。
背景 やはりケンドルの人物造形がすばらしい。危機に際しても冷静さ失わず、じっと耐える。その魅力を、冒頭に配した自動車事故でしっかりと読者にわからせてしまう技巧も冴えている。そのうえ今回は、フーダニットとしてもなかなか優れている。この結末も心暖まる。

邦題 『裏切り』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 Betrayals(1989)
訳者 飯島宏
出版社 新潮社
出版年 1991/7/25
面白度 ★★★
主人公 中東問題の専門家で大学講師のジャネット。夫を癌で亡くし、暗い生活を送っている。
事件 そんなジャネットが、あるパーティでシェリダンと出会った。ジャネットは立ち直り、二人は恋仲になるが、シェリダンがレバノンで誘拐されるという事件が起きたのだ。そのうえこの事件のため、シェリダンがCIAのスパイだったこともわかったのだ。だが人質解放交渉は難航をきわめたため、業を煮やしたジャネットはキプロスに飛び、単身で情報収集に励むが……。
背景 前半は、素人の女性が調査をするのではかばかしい成果がでない。そのあたりはサスペンス豊かなスパイ小説として楽しめる。しかし、いつまでも凡庸な女性が主人公では、感情移入もできない。しょせん個人は組織に対抗できないことを言いたいのであろうが、後半は不満多し。

邦題 『ブレッシントン海岸の死』
原作者 レオ・ブルース
原題 Our Jubilee Is Death(1959)
訳者 小林晋
出版社 レオ・ブルース・ファン・クラブ(機関誌Aunt Aurora Vo.5)
出版年 1990/12/
面白度  ★★
主人公 ニューミンスター・クィーンズ・スクールの上級歴史教師キャロラス・ディーン。素人探偵。原シリーズの6作目。
事件 女性犯罪小説家リリアンが海岸の砂に埋められ、首だけ出して死んでいた。発見者はディーンの従妹フェイ。彼女は容疑者の一人になったため、犯人を見つけてほしいとディーンは依頼されたのだ。ブレッシントン海岸を訪れたディーンは容疑者から話を聞くが、皆が嘘をついている?
背景 例によって少部数の機関誌に訳載された作品。すべて家内制手工業による発行にはまったく頭が下がる。ブルースの使うトリックは過去に似た例のものが多いが、本作はクリスティのXXXの亜流作品。発端の異常性が説得力をもって説明されていないので、ガッカリ。(なお本書はROM叢書Rとして2022/12/28に再版されている)

邦題 『手荷物にご用心』
原作者 サイモン・ブレッド
原題 Mrs Pargester's Package(1990)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1991/12/31
面白度 ★★
主人公 夫の遺産で優雅な生活をしているバージェター未亡人。シリーズの3作目。
事件 本書の舞台は初の外国。バージェター夫人は夫を亡くしたばかりの友人を慰めるために二人でギリシャを訪れたのだが、現地でその友人が自殺してしまったのだ。そこで、バージェター夫人は謎解きに乗り出したのだ。
背景 日本でも、高齢化社会は急速に到来しつつある。血湧き、肉躍るミステリーも結構だが、今後は老人向けのミステリーがもっと書かれてしかるべきであろう。バージェター夫人や彼女の亡夫の仲間たちは高齢者とはいえ社会的弱者ではないため、本書を老人向けミステリーといっては失礼になるかもしれしいが、イギリスならではのミステリーである。くつろいだ気分で楽しめる。

邦題 『泣き声は聞こえない』
原作者 シーリア・フレムリン
原題 With No Crying(1980)
訳者 相良和美
出版社 東京創元社
出版年 1991/12/27
面白度 ★★
主人公 15歳のミランダ。一度の経験で妊娠した。
事件 しかし母親の巧みな説得で中絶手術を受けてしまったのだ。ミランダはそのことで敗北感を感じ、家出してしまう。そして「スクワット」という自由に生きている集団生活グループに助けられる。ミランダは妊娠しているふりをするため、お腹に詰め物をしていたが、出産日が近づき……。
背景 実に久し振りのフレムリンである。第一作『夜明け前の時』以来、30年近い間隔をあけての翻訳。内容はドメスティック・スリラーといってよく、15歳のミランダが中絶より出産を望むという心理が、なんとなく納得させられる。やはり女性作家ならではの筆力だが、ミステリー的な捻りは、ある意味ミエミエ。読後感は悪くないものの、レンデルほどの迫力はない。

邦題 『暗殺! ゴルバチョフ』
原作者 アダム・ホール
原題 Quiler KGB(1989)
訳者 森下賢一
出版社 徳間書店
出版年 1991/6/15
面白度
主人公 英国情報部員のクィラー。シリーズ物の一冊。原著では13作目。
事件 東西ドイツ統一前夜、ソ連のゴルバチョフ書記長が東ベルリンを訪問することになった。だが反ゴルバチョフ派は殺し屋を雇い書記長を暗殺しようとした。クィラーはKBGと手を組んで、殺し屋を見つけ出そうとする。しかし情報を知る男たちが次々と殺されたのだ。
背景 要人暗殺というプロットはごく単純なもの。サスペンスが高まると思ったが、迫力不足だ。ドゴール大統領を狙う『ジャッカルの日』に似たプロットであるから、その何分の1ぐらいは期待したのだが、これが無残に打ち破られてしまった。ベットシーンもたわいない。男の世界を描くことに徹しようとした狙いはわかるが、成功しているとは言い難い。

邦題 『警部サマービルの戦争』
原作者 サラ・マイケルズ
原題 Summary Justice(1988)
訳者 平田敬、P・コベット
出版社 新潮社
出版年 1991/6/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ダブルイーグル殺人事件』
原作者 キース・マイルズ
原題 Double Eagle(1987)
訳者 小鷹信光
出版社 徳間書店
出版年 1991/1/15
面白度 ★★
主人公 かつて全英オープンを制したこともあるプロゴルファーのアラン・サクソン。
事件 アランは、アメリカの西海岸に完成した新コースの落成記念トーナメントに出場した。そこの13番は難攻不落のホールといわれていたが、アランの親友がそこでダブルイーグル(アルバトロス)を出し、一躍優勝候補に躍り出たのだ。だが、その夜彼はナイフで殺された。アランは容疑者の一人となるものの、積極的に犯人探しに乗り出した。
背景 シリーズ物の第ニ弾。ただしゴルフ・ミステリーといわれるほど、ゴルフがミステリーと密接な関係にあるわけでもない。フランシスのような独特の雰囲気はない。まあ作者が本当のゴルフのプロでないからであろう。舞台もアメリカだし、アメリカの軽ハードボイルド物といった雰囲気。

邦題 『黒い娘、白い娘』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 Black Girl White Girl(1989)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1991/6/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのヘンリ・ティベット主任警視。実に5年ぶりの登場である。
事件 舞台は、『死は海風に乗って』以来、4冊目となるカリブ海の小島タンピカ。今では小島といえども独立国になっている。その島に住む旧友が、ティベットに相談を持ちかけた。島が麻薬密輸の中継点になっているうえに、政府の要人も麻薬に関係しているようなので、捜査してほしい、というのだ。ティベットは、妻エミーを連れて、実業家に扮して秘密捜査に乗り出したが……。
背景 カリブ海を舞台にした既作品と同じく、謎解き小説というより冒険小説に近い。しかし主役二人はフルムーン適齢者だし、旧友も90歳に近い。エミーが誘拐されたりと、一応はサスペンスもあるものの、基本はコージーなミステリー。ゆったり気分で付き合ってこそ、楽しみも増大しよう。

邦題 『雪原封鎖網』
原作者 ブライアン・モリスン
原題 State of Resurrection(1988)
訳者 山根和郎
出版社 二見書房
出版年 1991/9/25
面白度 ★★★
主人公 英国人貿易商のピーター・メイソン。独身で、ポーランドに恋人がいる。
事件 ポーランドでの商談に失敗したメイソンに、奇妙な依頼があった。最近釈放された老科学者の回想録を入手してほしいというもの。脅しと法外な謝礼のためにメイスンはポーランドに飛んだ。そして科学者の家で、同国出身で南米で活躍しているはずのノーベル賞受賞者コスカ神父に出会ったのだ。メイソンとコスカは罠にはまるとは知らずに。
背景 崩壊少し前のポーランドが舞台という点が珍しい。ただし主人公が雪山ではなく、雪の町を逃げ回るのだから、訳題は誤解をまねく。話としては百頁ぐらいから面白くなるが、プロットを無理に複雑にしている印象を持ってしまう。主人公らを連帯が助けるところに時代が現れている。

邦題 『神の猟犬』
原作者 グローヴァー・ライト
原題 The Hound of Heaven(1984)
訳者 白石朗
出版社 東京創元社
出版年 1991/4/19
面白度 ★★
主人公 特にいない。強いて挙げれば、米軍特殊部隊のマイケルか。
事件 ベトナム戦争中、マイケルはベトコンの手から瀕死の神父を救った。そして十数年後、それ以来昏睡していた神父の生命維持装置が切られ、神父は聖人に列せられた。しかし9時間後、彼は甦ったのである。マイケルの運命も大きく変わることになったのだ。
背景 正直いってヘンな小説である。最初は戦争冒険小説なのだが、途中で奇跡が起こり、宗教小説のようになる。だが後半になるとローマ法王を巡る陰謀小説に変化する。また近未来を舞台にしているということから、ある意味ではSF的な話でもある。筆力はあるので、各シーンはそれなりにサスペンスはあるものの、核となる物語は空中分解してしまったような作品。

邦題 『殿下と7つの死体』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Bertie and the Seven Bodies(1990)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1991/3/15
面白度 ★★★
主人公 ヴィクトリア女王の皇太子アルバート・エドワード(愛称バーティ)。シリーズの第ニ作。
事件 時は1890年。バーティは豪邸に住む若き女主人から狩猟パーティの招待状を受け取った。妃を連れて乗り込んだまではよかったが、やがて招待された女優が、次の日には同じく招待者の一人が亡くなり、バーティは変な噂が流れるのを恐れて、真相究明に乗り出すことになる。
背景 この連続殺人に童謡が関係していると書けば、勘のいい読者はピンとくるかも知れないが、あの偉大な作品を、ラヴゼイがいかに自分流に作り変えているかが読みどころになっている。読者サービスが鼻につく部分もあるが、バーティの一人称で語られるユーモアたっぷりの語り口は滑らかで、心地よい楽しさを味わえる。

邦題 『ブリザードの死闘』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Avenge the Belgrano(1989)
訳者 酒井昭伸
出版社 新潮社
出版年 1991/2/25
面白度 ★★★
主人公 アルゼンチン巡洋艦の元乗組員を中心としたゲリラ部隊。
事件 1982年のフォークランド紛争で、アルゼンチン巡洋艦は、なんの警告も受けず英国原潜によって突然撃沈された。その原潜が今スコットランドの入江に停泊中だという情報を得たアルゼンチン人たちは、復讐心から原潜を破壊しようとゲリラ部隊を組織したのだ。彼らはスコットランドの高地に潜入するが――。
背景 山岳地帯における追跡劇が迫力十分な冒険小説。語り口のテンポがよく楽しめる。問題は類型的な人物・心理描写や安易なプロットにあろう。アルゼンチン人が復讐するのはかまわないが、計画にもう少し緻密さがほしい。また守るイギリス側も簡単に防御が破られている。

邦題 『名ばかりの天使』
原作者 マイク・リプリー
原題 Just Another Angel(1988)
訳者 鈴木啓子
出版社 早川書房
出版年 1991/1/31
面白度 ★★
主人公 ジャズ・トランペット奏者のフィッロイ・エンジェル。シリーズ物の第一作。
事件 エンジェルが仕事を終えて帰ろうとすると、毛皮を着た女がエンジェルの車に乗り込んできた。仕事をしていたパブに客としてきていた美女だったから気になってはいたのだ。そして家まで送って、その後は当然のなりゆきになったが、その後彼女から相談を受けた。友達が盗んだペンダントなどを取り戻してほしいと。簡単な仕事だと思われたが……。
背景 英国産のハードボイルドと思ったが、ソフトもソフト、ユーモア風俗ミステリーといった内容。エンジェルの人物造形はまあ面白い。そして導入部は快調だが、ペンダントを回収してからサスペンスが盛り上がらないのが弱点。事件も複雑なようで、実際には平板でガッカリ。

邦題 『影の巡礼者』
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 The Secret Pilgrim(1990)
訳者 村上博樹
出版社 早川書房
出版年 1991/12/15
面白度 ★★★
主人公 英国情報部新人研修所のチーフであるネッド。脇役はすでに引退していたジョージ・スマイリー。スマイリーはかつての上司で、研修最後の日の講演をスマイリーに頼んでいた。
事件 ただし本書の内容は、スマイリーの講演ではない。ネッドの新人時代から中年時代までに扱った、英国情報部の知られざるスパイ事件の年代記。主として短編11本からなる短編集に近いが、陰謀と紛争に身を捧げてきた人間の悲哀を巧みに語っている。
背景 ソ連崩壊後に書かれた作品。一種の短編集に近い構成なので、もはや不要となった冷戦時代用の短編を集めただけの在庫一掃敵な作品集と思っていたが、最後の短い的な2章を読むと、改めて長編小説作家としての技量に感心してしまった。

邦題 『栄光のポーツマス』
原作者 サム・ルウェリン
原題 Great Circle(1987)
訳者 高岬沙世
出版社 早川書房
出版年 1991/8/31
面白度 ★★
主人公 ヨット・レースへの参加者が主人公だが、イギリスのエド・コールが一番魅力的か。
事件 英国のポーツマスを出発し、喜望峰を回り、シドニー、ホーン岬を通過してポーツマスに戻る世界一周のヨットレース。この「ヨットマンのエベレスト」と呼ばれたレースには、英国、豪州、米国の優秀なヨットマン(ウーマン)が参加する。栄光は誰の手に?
背景 ハードカバー本なので、期待して読み出したが、私には期待はずれだった。三人称多視点で物語を描写するので、どうしても物語が小間切れになっている。参加者それぞれの人生模様も、エドを除いては平凡。もっと対象者を絞ってマッチレース的な面白さを描いてほしかった。架空の世界一周競争というアイディアだけがユニークな海洋冒険小説。

邦題 『私のはじめての事件』
原作者 アネット・ルーム
原題 A Real Shot in the Arm(1989)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1991/10/31
面白度 ★★★★
主人公 専業主婦から地元の新聞社の記者になったクリス・マーティン。
事件 子供は手が離れたこともあり、クリスは一念発起して記者になった。ところが早速取材先のホテルで男の死体を発見したのだ。男は教師で、麻薬を射たれていたらしい。記事にするべく調査をするうちに、クリスは事件に巻き込まれていく。
背景 読み出したときは、中年オバさんが素人探偵として活躍するコミカルな作品かと思ったが、むしろ私立探偵小説的な面白さを持つ作品であった。主人公の行動、生き方が実にイキイキと描かれている。これには驚いた。離婚歴ある記者との恋愛も興味深い。背景となる麻薬問題や環境問題の扱いも、きちんとしていて感心した。等身大の女性探偵の登場だ。

邦題 『ファインマン』
原作者 スティーヴン・レザー
原題 The Fireman(1987)
訳者 飛田野裕子
出版社 角川書店
出版年 1991/2/10
面白度 ★★
主人公 遊軍記者(ファイアマン)の”おれ”。
事件 香港で新聞記者をしていた妹が自殺したと知らされた。しかし妹の性格から自殺は考えられなかった。”おれ”はロンドンから香港へ飛んできた。そして妹の身辺を捜査すると、高級車を乗り回していた実態が浮かび上がってきた。裏になにかあるに違いない!
背景 ブリティッシュ・ハードボイルドという宣伝だが、ハードボイルド物というよりは冒険小説的雰囲気がある。やはりイギリス作家の宿命か。しかし最後は主人公の活躍なくして事件が解決されてしまうプロットはいただけない。これでは陰謀小説に仕立てるべきであろう。ただし1997年の香港返還に対する諸問題は物語の中でうまく処理されている。

邦題 『大統領専用機を爆破せよ』
原作者 ケネス・ロイス
原題 The President Is Dead(1988)
訳者 北澤知彦
出版社 徳間書店
出版年 1991/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『罪深き眺め』
原作者 ピーター・ロビンスン
原題 Gallows View(1987)
訳者 幸田敦子
出版社 東京創元社
出版年 1991/2/20
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁犯罪捜査部から、ヨークシャーのイーストヴェイル市警察署に転勤してきた首席警部アラン・バンクス。30代後半で妻と子供二人がいる。自ら転属した。
事件 のどかな田舎町でも事件は起きる。この秋には、金髪女性を狙う覗き魔事件や老人宅を狙う盗難事件が頻発していた。バンクス警部は、心理学者ジェニーの手を借りながらを捜査が進めたところ、新たに87歳の老嬢が他殺死体で見つかったのだ。窃盗事件と関係があるのか?
背景 著者は1950年英国のヨークシャー生まれ。20代半ばでカナダに移住して30代後半に本書を執筆したが、内容はヨークシャーが舞台の典型的な警察田園ミステリーなので、本リストに含めた。本作はシリーズ第一作で、謎解きは少ないものの風俗ミステリーとしては楽しめる。

邦題 『夏の記憶』
原作者 ピーター・ロビンスン
原題 A Delicated Man(1988)
訳者 幸田敦子
出版社 東京創元社
出版年 1991/6/28
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『まやかしの風景画』
原作者 ピーター・ワトスン
原題 Landscape of Lies(1989)
訳者 田中靖
出版社 早川書房
出版年 1991/12/31
面白度 ★★★
主人公 若き画廊経営者のマイケルと「まやかしの風景」という絵を持ちこんできたイザベル。
事件 マイケルにはイザベルが持ち込んだ中世画は、お世辞にも立派なものとは言えなかった。だが古文書から、その絵には、ヘンリー八世の修道院廃絶に伴ない、行方不明となった莫大な財宝の在りかが隠されていることがわかった。さらに、すでに宝を探している謎の人物がいるのだ。二人は図像・シンボルの意味を解き明かす旅に出るが……。
背景 典型的な宝捜しの冒険小説。それなりに面白いことは間違いないが、最大の欠点は、謎解きが専門的すぎて作者がこうだと言えば、ハイそうですね、となってしまうこと。推理を楽しむという感覚がもてないからである。私がキリスト教についてあまりに無知であることも一因だが。

邦題 『風よわが兄弟に急を告げよ』
原作者 ジョン・ウィリアムズ
原題 The Macedonian(1984)
訳者 田中航
出版社 至誠堂
出版年 1991/6/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『白昼の近接戦』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 Signal-Close Action!(1974)
訳者 高橋泰邦訳
出版社 早川書房
出版年 1991/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『スペインの財宝船』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 Stand into Danger(1980)
訳者 高沢次郎
出版社 早川書房
出版年 1991/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『絶望の要塞』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Siege(1987)
訳者 高水香
出版社 光人社
出版年 1991/6/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『奇跡の秘宝』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Rifles(1988)
訳者 高井千帆
出版社 光人社
出版年 1991/10/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『バルト海の猛き船長』
原作者 ロバート・チャロナー
原題 Into Battle!(1987)
訳者 大森洋子
出版社 早川書房
出版年 1991/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『遥かな真珠湾』
原作者 クリストファ・ニコール
原題  ()
訳者 高出直子
出版社 光人社
出版年 1991/5/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ルソン沖の決戦』
原作者 ハリー・ホームウッド
原題 Final Harbor(1980)
訳者 中原尚哉
出版社 東京創元社
出版年 1991/9/27
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『バレンツ海の密史』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron's Convoy(1982)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1991/7/31
面白度  
主人公 

事件 


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