邦題 『ドクター・フリゴの決断』
原作者 エリック・アンブラー
原題 Doctor Frigo(1974)
訳者 加島祥造・山根貞雄
出版社 早川書房
出版年 1982/11/15
面白度 ★★★
主人公 カリブ海に浮かぶフランス領の島にある病院に勤めるドクター・カスティリョ。冷淡な性格のため、フリゴ(冷凍肉)という仇名で呼ばれている。
事件 フリゴの父親は12年前に暗殺された。フリゴの母はそのことで彼に復讐を促していたが、彼はこの島で平和に暮らすことを愛していた。そんなとき、かつての父の仲間が療養のため島に滞在することになった。ところがフランス情報部からその男の動向を探るように頼まれたのだ。
背景 渋い、実に渋いスパイ小説。物語はスパイの後日談のように始まる。斬新な導入部といってよいが、手記の形で物語を進める展開は、この作者らしく凝っている。細部も巧みに書き込まれている。願わくばもう少しサスペンスがほしかったが、それが作者の特徴というべきか。

邦題 『スパイよさらば』
原作者 ジャック・ウィンチェスター
原題 Solitary Man(1980)
訳者 池央耿
出版社 文藝春秋
出版年 1982/7/25
面白度 ★★★★
主人公 初老のユヤダ人ハートマン。彼は大戦中、妻とともにナチの収容所で虐待され、妻は精神障害者にあるという痛ましい過去をもっていた。しかし戦後は、妻の薬代かせぎと彼自身の慎重な性格のなせるわざで、米ソの二重スパイとして活躍していた。
事件 ところがつい最近、妻が亡くなったのだ。彼は一大決心をしてスパイをやめようとするのだが……、という展開。
背景 フリーマントルがウィンチェスター名義で書いたスパイ小説。1999年にフリーマントル名で新潮社から再刊されている。『明日を望んだ男』のように、ナチを絡ませた暗く、重いスパイ小説だが、本書の方が主人公に共鳴できるし、救いもある。

邦題 『スミスにおまかせ』
原作者 P・G・ウッドハウス
原題 Leave It to Psmith(1923)
訳者 古賀正義
出版社 創土社
出版年 1982/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『そして死の鐘がなる』
原作者 キャサリーン・エアード
原題 His Burial Too(1973)
訳者 高橋豊
出版社 早川書房
出版年 1982/9/30
面白度 ★★★
主人公 ケルシャー州という架空の土地にあるベルバリー警察のスローン警部。
事件 田舎に住む会社経営者が失踪し、近くの教会の塔の中で死体となって発見された。ところが殺され方が異常であった。塔の中にあった大理石の石像が押し倒され、壊れた破片が死体の上に覆いかぶさっていたが、その大理石のために、塔から外に出るドアはすべて開かなくなっていたのである。つまり一種の密室状態で殺されていたのだ。スローン警部は凡人探偵に属するため、密室の謎には首をひねるばかりであったが……。
背景 本邦初登場となる女性作家の作品。全体の雰囲気が明るいこと、本格物志向であることから、<クリスティーの後継者>の資格はありそうだ。しかしクリスティーより物理学は強い!

邦題 『幽霊射手』(カー短編全集4)
原作者 J・D・カー
原題 The Door to Doom and Other Detectives(1980)
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1982/11/26
面白度 ★★★
主人公 著名なカー研究家ダグラス・グリーンが、これまで未収録であった短編やラジオ・ドラマを集めたアンソロジー。
事件 翻訳書は原書を二分冊しており、本書はその上巻にあたる。カーが21歳で書いたという処女短編「死者を飲むかのように……」、バンコランが探偵として活躍する4本の短編「山羊の影」、「第四の容疑者」、「正義の果て」、「四号車室の殺人」、そして1940年代にBBCのために書いたラジオ・ドラマ4本、さらにグリーンの長文の序から構成されている。表題の「幽霊射手」はラジオ・ドラマの一編で、人間の手で射たのではない矢で殺されるという事件を扱っている。
背景 推理小説は謎解き小説と考えているカーの原点がここにある。

邦題 『ベルリン二つの貌』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 The Garden of Weapons(1980)
訳者 後藤安彦
出版社 東京創元社
出版年 1982/11/26
面白度 ★★★★
主人公 英国海外情報局員、東ドイツ担当特殊情報源課長のハービー・クルーガー。1930年生れのドイツ人だが、第二次大戦中にベルリンを脱出し、最終的に英国海外情報局に勤務する。現在は東ドイツでのスパイ組織を束ねている。事件当時は50歳。
事件 クルーガーの宿敵、KGB将校の急死という情報が入ったが、ある日突然、その将校の副官が亡命してきた。クルーガーの訊問の結果、彼が作った東ドイツのスパイ組織に裏切り者がいることが明らかになったのだ。クルーガーは調査のためベルリンに向かうが……。
背景 ハービー・シリーズ三部作の第二弾。フリーマントルが得意とする英情報部とソ連KGBの化かし合いプロット。文庫700頁を越える大作を、緊張感を持ったまま描き切った力技が素晴らしい。

邦題 『標的の空』
原作者 ダンカン・カイル
原題 Flight into Fear(1972)
訳者 伊藤哲
出版社 早川書房
出版年 1982/4/30
面白度 ★★★★
主人公 空軍を退役後にパイロットとして独立したジョン・ショー。
事件 ジョンが受けた今回の仕事は、英国からサンフランシスコまで自動車部品を運び、帰りには軽飛行機を引き取ってくるというものだった。簡単な仕事であったが、サンフランシスコ到着後、理由はわからないまま中国人に監禁された。そしてからくも脱出したものの――。
背景 一種の巻き込まれ型冒険小説。この作者の手慣れた設定であるが、物語は山また山の連続といった展開で、サスペンスは最後まで高レベルを維持している。特に後半、軽飛行機で大西洋を横断中の冒険(複葉機との空中戦やガソリン・タンクからの水抜きなど)は圧巻で、多いに楽しめる。極東の島国の人間にとっては、横断に関する地理がちょっぴりわかりずらいのが残念。

邦題 『マハーラージャ殺し』
原作者 H・R・F・キーティング
原題 The Murder of the Maharajah(1980)
訳者 真野明裕
出版社 早川書房
出版年 1982/6/30
面白度 ★★★
主人公 1930年のインドを舞台にしている。事件の担当者はハワード警視。
事件 ボーポール藩王国大王(マハーラージャ)に、サプラの樹皮が献上された。これは湿らせると鉄のように硬くなるものであった。ところが何者かが大王の銃にサプラの樹皮を詰め込んでいたため、銃が暴発して大王は死んでしまったのだ。さっそくサプラのことを知っている容疑者が集められた。サプラに触るとオレンジ色のしみがつくので簡単に犯人がわかると思われたが、容疑者全員の手に、そのようなしみはひとつもなかった!
背景 1980年のCWAゴールド・ダガー賞受賞作。一応本格物であるが、ガチガチの謎解き小説ではない。最後の一行が興味深い。

邦題 『愚か者の街』
原作者 ダン・キャヴァナー
原題 Fiddle City(1981)
訳者 田村義進
出版社 早川書房
出版年 1982/6/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海の豹を撃沈せよ』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 The Judas Ship(1978)
訳者 三木鮎郎
出版社 早川書房
出版年 1982/3/31
面白度 ★★★
主人公 英国貨物船メイヤスター号の一等航海士バートン。
事件 ブラジル沖を航行する英国貨物船は突然ナチスの軍艦に襲われ、船長が亡くなった。生存者はバートンらを含めて十数名。バートンは代理船長として、半壊した船をなんとか操縦してアマゾン河口にたどり着いたが、その奥にはナチスの軍艦がいたのだ。
背景 小品だが、それなりにまとまっている。前半は海戦によって船倉が火災になるという話。ありふれた物語だが、後半逃げ込んだ先に敵がいたという設定は、気が利いている。しかもいかに脱出するかという興味はミステリー的な面白さを持っている。主人公のバートンは真面目な人間だが、イマイチ人間的魅力に欠けているのが惜しまれる。

邦題 『無頼船長トラップ』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 Trapp's War(1975)
訳者 三木鮎郎
出版社 早川書房
出版年 1982/11/30
面白度 ★★★★
主人公 エドワード・トラップ。オンボロ船カロン号の船長。第一次大戦には海軍予備少尉候補生として参戦。二年間ドイツの捕虜となる。以後は一匹狼の船乗りとなり、自分だけは、どんな危険なところでも絶対に生き残れる、という信念を持っている。
事件 1942年夏、トラップは相変わらず密輸稼業を続けていたが、地中海マルタ島の英国海軍の秘密作戦に参加することになった。カロン号を偽装船に改造し、ロンメル軍団への補給路を断とうというわけである。トラップは退役していなかったことと、お金に目がくらんで同意するが……。
背景 ちょっと毛色の変わった戦争冒険小説。トラップの魅力で読ませる。笑いも涙もある。ラストはどうなるかと思ったが、ちょっと安易か。

邦題 『燃える男』
原作者 A・J・クィネル
原題 Man on Fire(1980)
訳者 大熊栄
出版社 集英社
出版年 1982/8/25
面白度 ★★★★
主人公 クリーシィ。アメリカ人で、16歳で海兵隊に入り、朝鮮戦争で戦闘の才を自覚。フランスの外人部隊にもいた元傭兵。
事件 ミラノの実業家エレットは見かけほど金持ちではなかった。このため娘の護衛には、元傭兵ながら、今ではアル中のクリーシィしか雇えなかったのである。だが、今の彼では役目を果たせるはずがない。娘は簡単に誘拐・殺害され、クリーシィ自身も重傷を負った。しかし、事ここに至って彼の胸は初めて燃え上がり、復讐を誓うのであった。
背景 物語の設定は“死刑執行人”や”デス・マーチャント”物に近いが、心理描写はきめ細かく、リアリティにも富んでいて、荒唐無稽なアクション小説とは一線を画している。覆面作家の処女作。

邦題 『悪魔の骰子ゴシック短編集』
原作者 ド・クィンシー他(小池滋+富山太佳夫編)
原題 独自の編集
訳者 小池滋・富山太佳夫他
出版社 国書刊行会
出版年 1982/8/30
面白度 ★★★
主人公 ゴッシクの短編集。
事件 編者の狙いは、ゴシックが「だぶだぶ、ぶかぶかの怪獣」的事件中心の長編小説ばかりではないことを示すことであったそうだ。その意味では、”ゴシック”という言葉から一般に連想されることがそのまま描かれているような短編(バーボウルド夫人の「バートランド卿」)から、これがゴシック? という短編まで幅広く収録されている。表題作は、悪魔に身を売る話で、この種の話としては古典となっている? また有名なディケンズの「信号手」も入っている。個人的に好きな短編は、「狼人間」と「カンダヴィルの幽霊」だ。
背景 11本のうち9本が19世紀に書かれているから、19世紀イギリス短編傑作選に近いか。

邦題 『さらばグロヴナー広場』
原作者 フランシス・クリフォード
原題 The Grosvenor Square Goodbye(1974)
訳者 水野谷とおる
出版社 角川書店
出版年 1982/10/31
面白度 ★★★
主人公 アメリカ大使館の防衛駐在官ランダー。
事件 早朝のグロヴナー広場で銃声が響き、浮浪者が殺された。警察がすぐに現場検証をすると、広場に面したホテルの非常階段から銃弾が飛来してきたのがわかった。だが、犯人はすでにホテルの宿泊客を人質にしていたのだ。一方犯人のものと思われる名札が見つかったが、それはランダーのものだった。
背景 1974年のCWAシルヴァー・ダガー賞受賞作。一種のハイジャック物である。作者が得意としていたスパイ物とはちょっと異なるが、最後にはスパイ小説家らしい捻りが加えられている。中盤までのサスペンスはなかなかのものがある。

邦題 『船から消えた男』
原作者 F・W・クロフツ
原題 Man Overboard !(1936)
訳者 中山善之
出版社 東京創元社
出版年 1982/7/30
面白度 ★★★
主人公 フレンチ警部。久し振りの登場である。
事件 北アイルランドに住む技術者がガソリンを一時的に不燃性にする方法を発見したことから物語が始まる。非常に有望な発見ではあるものの、実用化には、まだ資金・人材とも不足していた。そこでパメラ(本編のヒロイン)は援助を約束し、この技術が大手の化学会社に売れそうになった。ところがその会社の調査員がロンドンへの帰途、船から姿を消し、他殺死体で発見されたのだ。しかもパメラの婚約者以外の関係者には、皆アリバイがあったのだ。
背景 犯人側のごくささいな失敗から、完全犯罪と思われたものが発覚していく、という得意のプロットになっている。クロフツ好きには安心して楽しめる。

邦題 『負け犬のブルース』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 Loser's Blues(1980)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1982/8/15
面白度 ★★★
主人公 ジョン・コサテリ。もとはクラッシック・ピアノの演奏者であったが、売れないこともあり、現在はジャズ・ピアニストに転向している。
事件 コサテリのかつての恋人が殺されていた。警察はコサテリを容疑者と考えていたが、その恋人を密かに熱愛している男も、コサテリの仕業と決めていた。そんなとき、コサテリは何者かに襲われ、大事な手を砕かれてしまったのだ。その男が関係しているのか?
背景 ゴズリングの3作目。この作者の狙いは、恋愛(男女のメロドラマ)と本格ミステリーをうまく結びつけようとすることらしい。これはある意味では至難の業であり、本作でもある程度は成功しているものの、意外な犯人の設定などには、無理が目についてしまう。

邦題 『空の悪魔SAM-7』
原作者 リチャード・コックス
原題 SAM7(1977)
訳者 関口幸男
出版社 早川書房
出版年 1982/6/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『見習い女探偵』
原作者 リザ・コディ
原題 Dupe(1980)
訳者 佐々田雅子
出版社 早川書房
出版年 1982/5/15
面白度 ★★★
主人公 ブライアリー調査事務所の調査員アンナ・リー。警察に数年勤めた後、この事務所に移ってきた。地味な独身女性で、20代後半と思われる。
事件 所長からの依頼事とは、交通事故死とされた女性の再調査であった。アンナにとっては初めての大きな仕事であったが、その女性と接触していた人たちを調べても疑問点が出てこなかった。だがアンナは、現像所に勤めていた男が自殺した現場にぶつかったことから……。
背景 『アリバイのA』のキンジーや『サマータイム・ブルース』のウォーショースキーといった米国の女性私立探偵が登場したのは1982年。アンナはそれより2年先輩にあたる。ただし後輩らに比べると魅力的な個性が認められないのが残念。1980年CWA賞新人賞受賞作。

邦題 『ケレイブ・ウィリアムズ』
原作者 ウィリアム・ゴドウィン
原題 The Adventures of Caleb Williams(1794)
訳者 岡照雄
出版社 国書刊行会
出版年 1982/7/30
面白度 ★★★
主人公 表題となっているケレイブ・ウィリアムズ。18歳で父を亡くす(母はその数年前に死亡)。模範的なジェントルマンであったフォークランドに孤児としてひきとられ、彼の秘書になる。勉強好きで、好奇心が旺盛。
事件 このウィリアム青年が、命の恩人であるフォークランドに一つの疑念を持って、つい彼の過去を調べた。だが逆に犯罪者にされてしまい、脱獄してアイルランドへ渡ろうとするが……。
背景 社会派ゴシック・ロマンスといえる小説。著者(『フランケンシュタイン』を書いたM・シェリーの父親)は、当時の支配階級の権力構造の実態を明らかにしようとする政治小説として本書を書いたようだが、ミステリー的興味で読んでも結構面白い。

邦題 『罪なき血』
原作者 P・D・ジェイムズ
原題 Innocent Blood(1980)
訳者 青木久恵
出版社 早川書房
出版年 1982/4/30
面白度 ★★★★
主人公 フィリッパ・ポルフリー。養女として大学教授の家庭で育てられる。18歳になったため、最初の出生証明書を入手し、自分が犯罪者の娘であることを知る。
事件 フィリッパの本当の両親は、子供殺しの犯人として捕まり、父は自殺、母は終身刑の身であったのだ。だが、この事実を知ったときは、母が仮出所を許される年になっていた。フィリッパはケンブリッジ大学での生活が始まるまで母と二人で暮そうとするが、母を狙う男が現れて……。
背景 ダルグリッシュ警視もコーデリアも登場しない、著者にとっては珍しい犯罪小説。じっくり書き込まれた小説で、ジワジワとサスペンスが盛り上がってくる。もちろんミステリー的趣向も中盤以降に用意されている。フィリッパの行動・心理に全面的には共感できないところもあるが。

邦題 『電子帆船ジェットウィンド』
原作者 ジェフリイ・ジェンキンス
原題 A Ravel of Waters(1981)
訳者 高永洋子
出版社 早川書房
出版年 1982/12/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ファルコン』
原作者 ナイジェル・スレイター
原題 Falcon(1979)
訳者 河合裕
出版社 東京創元社
出版年 1982/10/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『栄光の土曜日』
原作者 デイヴィッド・セラフィン
原題 Saturday of Glory(1979)
訳者 水野谷とおる
出版社 早川書房
出版年 1982/1/15
面白度 ★★★
主人公 スペインを舞台にした警察小説。ルイス・ベルナル警視とその部下が活躍する。
事件 マドリッドの路上に若いジャーナリストが墜落した。しかし死因は、墜落による衝撃ではなく、それ以前に頚動脈を切られたためであった。さらに奇妙なことには、密室状態の窓から放りだされているようであったことだ。そのうえジャーナリストの取材メモには、”栄光の土曜日”という言葉が残されていた。なにを意味するのか?
背景 長年スペインに住んでいたイギリス人が書いたもので、1979年のCWA最優秀新人賞を受賞している。マルティン・ベック物のような雰囲気が良い。警察小説のキャラクターはベルナル警視をはじめとして悪くはないのだが、被害者の描き方がぞんざいなのが惜しまれる。

邦題 『暗殺協定XPD』
原作者 レン・デイトン
原題 XPD(1981)
訳者 稲葉明雄
出版社 集英社
出版年 1982/2/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『昨日のスパイ』
原作者 レン・デイトン
原題 Yesterday's Spy(1975)
訳者 沢川進
出版社 早川書房
出版年 1982/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ジェリコ街の女』
原作者 コリン・デクスター
原題 The Dead of Jericho(1981)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1982/6/30
面白度 ★★★
主人公 モース主任警部。お馴染みのシリーズ物の5作目。
事件 あるパーティで、モースはジェリコ地区に住むアンに出会った。二人は意気投合し、アンの身の上話に花を咲かせたが、6ヶ月後、思い切ってアンの家をモースが訪ねてみると、アンは二階の部屋で首を吊って死んでいた。状況は自殺に見えたが、モースは納得できなかった。
背景 前作『死者たちの礼拝』に続いてCWAのシルバー・ダガー賞を受賞した作品。出だしはそこそこ面白いものの、謎の構成に無理が感じられ、それまでの作品に比べると評価を低くせざるをえない。ただし敢えて出世争いに精を出さず、アンとの恋も破れてしまうという中年独身男モースの心情はうまく描かれている。

邦題 『ロンドン大洪水』
原作者 リチャード・ドイル
原題 Deluge(1976)
訳者 小菅正夫
出版社 サンリオ
出版年 1982/5/15
面白度 ★★
主人公 パニック小説なので、高潮が主人公(?)なのだが、強いて登場人物の中の一人を選べば河川技師のデレク・トンプスン。
事件 アメリカ大統領がロンドンを訪問することになったその日、暴風と高潮がロンドンに迫っていた。そのうえ対策が遅れたこともあり、テームズ川の堤防は、次々と決壊していった。地下鉄の乗客は孤立し、発電所も爆発した。ロンドンはどうなるのか?
背景 典型的なパニック小説。ロンドンが水浸しになるというのは現実味のある設定といえなくもなく、結構読ませる。ただし物語はない。デレクの私生活にもっと筆を費やしてほしかった。パニック・シーンを繋ぎ合わせただけの小説。

邦題 『ササッサ谷の怪』
原作者 コナン・ドイル
原題 The Unknown Conan Doyle:Uncollected Stories(1982)
訳者 小池滋監訳
出版社 中央公論社
出版年 1982/11/30
面白度
主人公 コナン・ドイルの未紹介作品集を集めた短編集の第一巻(全部で三巻)。
事件 シャーロック・ホームズが登場する前の1879年から1883年の短編9本が収録されている。表題作の「ササッサ谷の怪」は、ケープタウンの植民地が舞台で若者がダイヤモンドを見つける話。その他、題名だけを列挙すると(内容はさっぱり忘れていて、これ以上のメモも残ってないので。トホホ)、「アメリカ人の話」、「デカ骨」、「わが家のダービー競馬」、「老兵の話」、「紳士ジョー」、「決勝の一発」、「スリル満点のクリスマス・イヴ」、「幽霊選び」。
背景 ドイルがストーリー・テラーであるたことはよくわかるし、ホームズ物語は冒険小説だという説もうなづけるものがあるが、でも習作的な作品が多い。

邦題 『またあの夜明けがくる』
原作者 ジョージ・ハーディング編
原題 Winter's Crime 9(1977)
訳者 中村能三他
出版社 早川書房
出版年 1982/1/31
面白度 ★★★★
主人公 <イギリス・ミステリ傑作選>の第5弾。
事件 表題作はP・ハイスミスの犯罪小説であるが、この作者の短編としてはそれほどの出来ではない。注目すべきは、C・デクスターの「エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる」であろう。盗聴装置が仕掛けられている独房から脱獄なるか、という不可能興味に溢れているうえに、ニ転、三転する終盤の物語展開も鮮やかで、これには脱帽してしまった。意外な(?)ひろい物が「ラッカーの大晦日」(J・ウェインライト)。署員全員から忌み嫌われているラッカー主任警視が(ドーヴァー警部の対抗馬としての資格は十分)、文字通り名推理を披露する話。
背景 英国産の短編集は女性上位になりがちであるが、このニ作品のおかげで、男性側の勝ち。

邦題 『誰にでもある弱み』
原作者 ジョージ・ハーディング編
原題 Winter's Crime 11(1979)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1982/2/28
面白度 ★★★
主人公 <イギリス・ミステリ傑作選>の第6弾。本国では年一冊のペースが、翻訳は月一冊。立て続けに読むとさすがに読書欲は減退するが(なにしろ地味な作品が多いので!)、日本には馴染みの少ない作家の作品が数多く収録されている(大家はジュリアン・シモンズのみ)。
事件 表題作は本邦初紹介の作家アントニイ・レジャーンの短編。有望な新進政治家が脅迫されて困っているのを、党のイメージダウンを恐れた老獪な政治家が、非合法すれすれの手段で強請屋に逆襲する話で、佳作。もっとも楽しめたのはアントニイ・プライスの「ブーディカ女王殺し」。ローマ時代を背景にした著者得意の歴史ミステリーで、謎の設定が極めてユニーク。
背景 プライスの長編は今のところ『隠された栄光』しか出ていないが、もっと紹介してほしい。

邦題 『蜜の味』
原作者 H・F・ハード
原題 A Taste for Honey(1941)
訳者 田口俊樹
出版社 早川書房
出版年 1982/9/30
面白度 ★★★
主人公 養蜂が趣味の老人。しかし本当は、あの人物なのだ。
事件 本編の語り手は、田舎で静かな生活を営んでいる中年男。ある日、蜂蜜を分けてもらって、マイクロフトと名乗る老人と知り合いになった。ところがその老人は、この近くに強力な毒液を持つ蜂を育てている養蜂家がいるはずだ、と言い出したのだ。そこで二人は調査を始め、その養蜂家が殺人鬼であることを突き止める。
背景 倒叙物的な展開であり、この平和な村で行なわれる老人と犯人との心理的戦いが、本編最大の見せ場になっている。一般にパロディには、原典の作風や文体をまねるものが多いが、本書は、同じパロディとはいえ、ほぼ独立した物語と考えてよいほどの独自の面白さがある。

邦題 『サハラの翼』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 Flyway(1978)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1982/12/15
面白度 ★★★
主人公 一応は警備保障会社の社長スタフォードだが、後半に登場する元アメリカ空軍のパイロット、バーンの方がカッコいい。
事件 1936年の飛行レースで行方不明になった飛行機があった。そのパイロットの息子が父を探しにサハラ砂漠に行ってしまった。スタフォードは息子の後を追うように頼まれたが、調査開始後、何者かに襲われ、裏に大きな謎があることを感じ取った。
背景 はっきりとした主役がいないのが弱点。飛行機を巡る謎の設定はいいのだが、それにまつわる人間関係の設定に無理がある作品。とはいえ、サハラ砂漠やそこで生活する人々、あるいは飛行機事故についての語り口は、わかりやすいうえに面白い。

邦題 『暗闇に落し穴』
原作者 フランク・パリッシュ
原題 Snare in the Dark(1981)
訳者 青木久恵
出版社 早川書房
出版年 1982/12/15
面白度 ★★★★
主人公 ダン・マレット。一流校を出てかつては銀行員であったが、今では密猟者として自由な生活をしている。シリーズ物の三作目。
事件 猟場番人が不在である日、ダンは森に罠を仕掛けに出かけた。ほぼ仕事が終ったと思ったとき、森に誰かがいることを察知した。そのとき銃を手にした猟場番人が懐中電灯で照らし出された。万事休止と思ったダンだが、その時、番人は石弓で首を射られて倒れたのだった。
背景 相変わらず、イギリスの田園地帯を舞台にしていることと、風変わりなダンの個性でもっている作品だが、今回は特に発端が素晴らしい。一気に物語に惹き込まれてしまう。その後は誰が犯人かという本格物になるため、サスペンスが減ってしまうが、これはこれで楽しい。

邦題 『修道士の頭巾』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 Monk's Head(1980)
訳者 岡本浜江
出版社 早川書房
出版年 1982/4/30
面白度 ★★★★
主人公 カドフェル修道士。シリーズ物の三作目だが、翻訳はこれが最初。
事件 時は1138年、自分の荘園を修道院に寄付して修道院内で生活していた荘園主が急死した。カドフェルが調べると、料理に毒が入っていたためと思われた。しかもその毒は、カドフェルが調合したトリカブト(別名「修道士の頭巾」)から作られたものだった。容疑は荘園主の息子にかかったが、息子の母は、かつてカドフェルが愛した女性だったこともあり、犯人探しに乗り出した。
背景 1980年のCWAシルヴァー・ダガー賞受賞作。そのために第三作だけがポケミスで翻訳されたと思われるが、これ一作だけでは本作のよさはわかりにくい。ぜひ社会思想社の文庫版で、第一作から読んでほしい。カドフェルの過去もよくわかる好編。

邦題 『真夜中の復讐者』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 In the Hour before Midnight(1969)
訳者 白石佑光
出版社 早川書房
出版年 1982/3/15
面白度 ★★
主人公 ステイシー・ワイアット。コンゴ共和国の元傭兵。祖父がマフィアの首領。
事件 エジプトの強制収容所に入っていたステイシーは、元の傭兵仲間に助け出された。そして彼らと共にする仕事とは、ステイシーの母の故郷であるシチリアで誘拐された娘を取り戻すというもの。4人は深夜、娘が捕まえられているはずの山賊の巣へ落下傘降下したが……。
背景 ヒギンズは『鷲は舞い降りた』で大化けした作家で、それ以前の作品はすべて小品といった感じである。本書も、それ以後を知ってしまった読者には小品という印象が拭い切れない。この作品でも後半の活劇にはそれなりの面白さはあるが、プロットそのものは単純だし、ステイシーの頭も単純なのにはガッカリ。

邦題 『ルチアノの幸運』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Luciano's Luck(1981)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1982/7/31
面白度 ★★★
主人公 マフィアの首領ラッキイ・ルチアノを含む5人の男女。
事件 1943年7月のシチリア島。連合軍の侵攻を前にして、ドイツ・イタリア枢軸軍は緊張していた。その中には、ケーニヒ少佐が指揮をとる親衛隊落下傘部隊もいた。一方、英米軍はまず潜入グループとして5人の男女を降下させたが、驚くことにその中には、アメリカの刑務所で服役中のはずのルチアノがいたのだ。
背景 史実によれば、アメリカ軍の迅速なパレルモ奪回の裏には、ルチアノの指示を受けたシチリア人マフィアの活躍があったそうだが、ヒギンズにかかると、ルチアノがシチリア島まで行ったことになってしまう。史実を少し変えて小説を書き上げてしまうヒギンズの得意技が生きている。

邦題 『社交好きの女』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 A Clubbable Woman(1970)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1982/3/15
面白度 ★★★
主人公 巨漢のダルジール警視とパスコー部長刑事。シリーズ一作目にしてヒルの処女作。原著ニ作目の『殺人のすすめ』の方が先に翻訳されてしまった。
事件 ラグビーの試合で頭を打って二階で寝ていた男の妻が階下で絞殺されていた。妻の過去をダルジールらが調べると、意外な人間関係、思いがけない動機が明らかになっていく。
背景 二作目以降のダルジール物とはかなり異なる地味な警察小説。ダルジールとパスコーの活躍は目立たないし、登場人物の多くが喜びを露骨に表さない英国人気質を持っているからである。そのうえ謎解き部分も少ないのでミステリーとしては不満はあるものの、ラストのラグビー場のシーンでは、よい小説を読んだという充実感が味わえるだろう。

邦題 『スパイの妻』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 The Spy's Wife(1980)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1982/10/15
面白度 ★★★★★
主人公 雑誌記者を夫に持つモリー。夫がスパイであることがわかったのだ。
事件 モリーは、9月のある朝、あわてて出勤して行く夫を、いさいさか不安げに見守っていた。そして30分後――。二人の男が来訪し、夫がソ連のスパイとして逃亡したと告げたのである。一瞬にしてモリーはスパイの妻という忌まわしき人間になったのだ。この事実をどのように受けとめ、いかに生きていくべきなのか?
背景 つまり、この作品は、スパイの逃亡で物語が終る通常のスパイ小説とは逆に、逃亡の時点から始まる構成になっている。そのうえ脇役にしかなりえないスパイの妻を主人公にして、彼女の生き方を巧みに描くという離れ業にも成功している。はっきり言って謎解き的興味は少ないが。

邦題 『帝王』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Emperor(1972-82)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1982/9/30
面白度 ★★★
主人公 著者の二冊目の短編集。
事件 著者初の短編集『シェパード』は中編3本を集めたものだから、厳密にいえば初めての短編集というべきか。いろいろなスタイルの短編が集められている。「よく喋る死体」、「アイルランドに蛇はいない」、「厄日」「免責特権」「完全な死」「悪魔の囁き」「ダブリンの銃声」「帝王」の8本が収録されている。ラストの「帝王」は一週間の休暇旅行をもらった中年の銀行員が、モーリシャスで”帝王”と呼ばれている巨大な魚を仕留めた結果、人生が……、という話。
背景 フォーサイスというと情報をたくさん集めた長編小説が得意で、切れ味勝負の短編は苦手ではないかと思っていたが、これは間違いだった。やはり小説のプロだけのことはある。

邦題 『レベッカへの鍵』
原作者 ケン・フォレット
原題 The Key to Rebecca(1980)
訳者 矢野浩三郎
出版社 集英社
出版年 1982/1/25
面白度 ★★★
主人公 ドイツのスパイ、アレックス・ヴォルフと彼と対決する英軍将校ウィリアム・ヴァンダム。
事件 1942年、アレックスはカイロに潜入した。彼は有名なベリー・ダンサーの協力を得て、情報をドイツに送り続ける。しかしそのことに気づいたウィリアムは彼を捕まえようと必死になるが……。フォレットの第一作『針の眼』と似たような、優秀なスパイと英国人の戦いを描いたもの。
背景 表題のレベッカとは、デュ・モーリアの『レベッカ』がコード・ブックとして利用されるだけで、それ以上の意味はない。機密を盗み出す過程が安易過ぎたりと、プロットがちょっとイイカゲンなのが残念だが、筆力は相当なもの。ロマンス場面はもとより、スパイの行動なども巧みに描かれていて、ミステリー作家というより、エンタテインメント作家と呼ぶ方がふさわしい。

邦題 『アステリスク秘密文書』
原作者 キャンベル・ブラック
原題 Asterisk Desting(1978)
訳者 関口幸男
出版社 角川書店
出版年 1982/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『反射』
原作者 ディック・フランシス
原題 Reflex(1980)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1982/2/28
面白度 ★★★★★
主人公 障害騎手のフィリップ・ノア。アマチュア写真家でもある。
事件 亡くなった競馬写真家の家に強盗が入り、室内は荒らされた。彼は他人から嫌われる写真も撮っていたので、彼の写真が関係しているのだろうか? 写真家の息子も騎手であることもあり、フィリップはこの謎を追うが、一方死にかけている祖母からは、遺産相続のため、フィリップの異父妹を探すよう頼まれた。
背景 この二つの事件は当初は併行して語られるが、無理なく交錯して一つの事件となっていく。この語り口はうまいものである。トリックは、写真の専門知識がないと理解しにくいが、しっかりと作られている。さらに主人公は、いつもながら魅力的というわけで、減点材料は見つからない。

邦題 『ダガーマン』
原作者 リチャード・H・フランシス
原題 Dagger Man(1980)
訳者 高橋豊
出版社 早川書房
出版年 1982/3/31
面白度
主人公 <ダガーマン>と呼ばれる殺人鬼ターナー。彼は自分を追い越した同僚と争いを起したため会社を馘になるとともに、同僚が妻とできていることを知って家を出てしまった。つまり仕事と家庭という二つの人生の対象が絶たれてしまい、第三の選択といえる、人々を規制のない死ヘと導く殺人者になることを選んだのだ。
事件 このような犯罪者の誕生は、それほど説得力はないなあと不安に思っていたら、その後の物語は犯人と被害者と捜査陣の行動をフラッシュバック的に描写するだけで、全体として一本にうまくつながっていない。
背景 確かにユニークな物語構成ではあるが、犯罪小説としてはさっぱり楽しめなかった。

邦題 『赤い拇指紋』
原作者 オースチン・フリーマン
原題 The Thumb Mark(1907)
訳者 吉野美恵子
出版社 東京創元社
出版年 1982/8/27
面白度 ★★
主人公 科学者探偵ソーンダイク博士。初登場となる作品。
事件 ストーリーは単純である。ダイアモンド盗難現場に落ちていた紙に血の指紋が付いており、この指紋の持ち主が逮捕された。すでに指紋の万人不同や生涯不変の事実は証明されていたから、容疑は決定的と思われたが、彼はあくまで無実を主張するのであった。そこでソーンダイク博士が弁護に乗り出し、血の指紋を詳しく調べると……。
背景 この謎が科学的に解明される部分が本書の狙いであり、当時の世態風俗の描写などは意外に少ない。現在の読者からみると、歴史的価値は高いものの、小説的な面白さはイマイチとなろう。指紋を扱った最初期の作品(英国では指紋が正式に利用されたのは1910年)として有名。

邦題 『呼びだされた男』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 The Inscrutable Charlie Muffin(1979)
訳者 稲葉明雄
出版社 新潮社
出版年 1982/11/25
面白度 ★★★
主人公 チャーリー・マフィン。お馴染みとなったシリーズ物の第三作。
事件 チャーリーが香港に出向いたのは、ロイド保険組合の要職にある親友に請われたためであった。最近契約したばかりの中国人所有の大型客船が火災を起こし、巨額の契約金の支払いを求められていた。犯人は中国の工作員というが、調査をして支払いを回避したいと頼まれたわけだった。ところがその犯人は公判中にあっさり毒殺されてしまった。
背景 例によって、一見した限りでは冴えない中年男であるチャーリーが、鋭い情報分析力を駆使して、苦境を乗り切るという話で、最後のひねりもあざやかである。不満を言えば、一連の犯罪がごく常識的なものにすぎず、我ら中年窓際族でも簡単に見抜けそうなものであることだろう。

邦題 『スターは罠にご用心』
原作者 サイモン・ブレット
原題 Star Trap(1976)
訳者 飯島宏
出版社 角川書店
出版年 1982/10/20
面白度 ★★★
主人公 売れない役者で、アル中のチャールズ・パリス。
事件 チャールズは久し振りに仕事を依頼された。喜ばしいことだが、役者としてではなく、素人探偵振りをかっての依頼だった。それは、どうも興行が妨害されているようで、すでにキャスト二人が不可解な事故にあっていたので、調査して欲しいというものであった。彼は一座にもぐりこみ、舞台稽古や地方巡業についていくが、やはり事件は起こったのだ。
背景 演劇界を舞台にした軽本格ミステリー。チャールズはたいした推理をするわけではなく、酒を飲んでいる方が多いくらいだが、イギリス演劇界の内幕については詳しく書かれていて楽しめる。謎が小粒というのは、しかたがないか。

邦題 『マイアミ沖殺人事件』
原作者 デニス・ホイートリー&ジョー・リンクス
原題 Murder Off Miami(1936)
訳者 土屋政雄
出版社 中央公論社
出版年 1982/10/20
面白度 ★★★
主人公 読者のあなた! 物語の中の探偵はシュワッブ警部補。
事件 豪華ヨットの船内で乗客の一人が消えた。石鹸会社の社長であり、その他9人の乗客がいた。当初社長は自殺と思われたが、絨毯に死体を引っ張った跡があり、血痕まで見つかったのだ。他殺は明らかで、乗客のほとんどにアリバイはなかった。犯人は誰か?
背景 本物の現場写真、供述書、紙マッチの燃えさし、毛髪といった実物付きのミステリー。犯人は誰か?だけを追求していけば、必然的にこのようなゲームに似た形式の本になるのであろう。謎が解けたら、あなたは名探偵の仲間入りというわけである。謎解きはそれほど難しいわけではないが、証拠をいちいち考えながら読むのはシンドクなった。

邦題 『ミグ戦闘機突入せよ』
原作者 アダム・ホール
原題 The Sinkiang Executive(1978)
訳者 朝河伸英
出版社 早川書房
出版年 1982/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『愛の輪舞』
原作者 ビクトリア・ホルト
原題 The Shadow of the Lynx(1971)
訳者 小尾芙佐
出版社 角川書店
出版年 1982/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『クーラー』
原作者 ジョージ・マークスタイン
原題 The Cooler(1974)
訳者 宇野輝雄
出版社 角川書店
出版年 1982/1/25
面白度 ★★
主人公 <クーラー>という秘密施設に収容されたローチ大尉とクレア。
事件 二人とも優秀な工作員であったが、ローチ大尉は売春婦に残虐行為をしたため、クレアは訓練中に突然同僚に重傷を負わせたため、この施設に送られてきたのだ。そう、<クーラー>とは、ストレスなどによってスパイとして不適合とみなされた人物を収容する所だったのだ。そして殺人も起きたのである。
背景 <クーラー>の存在という事実は興味深いが、これを背景にしてノルマンディー上陸作戦の成否を左右するエビソードがついている。ただしこの部分は、『史上最大の作戦』というノンフィクションに詳しく書かれているそうなので、そう高い評価はできない。

邦題 『スネーク・ダンサー』
原作者 ジェイムズ・マクルーア
原題 Snake(1975)
訳者 森慎一
出版社 早川書房
出版年 1982/3/31
面白度 ★★★
主人公 南アフリカ連邦の架空都市トレッカーズブルグにある警察殺人課の白人クレイマー警部補とバンツー族出身の部下ゾンディ刑事のコンビ。原著ではシリーズ四作目だが、邦訳は『スティーム・ピッグ』(原著の一作目)に続く第ニ弾。
事件 蛇使いの美人ダンサーが絞殺された。一方二人は奇妙な連続強盗事件の捜査にも乗り出しており、二つの事件解決を迫られていた。
背景 このシリーズが異色たるゆえんは、南アフリカに住む人々の風俗・生活が適確に、時にはユーモアをもって描写されていて、それが自然と人種差別政策の批判になっていることだ。本作では二つの事件がうまく結合していないという弱点が目立つが。

邦題 『英国人の血』
原作者 J・マクルーア
原題 The Blood of an Englishman(1980)
訳者 斉藤数衛
出版社 早川書房
出版年 1982/11/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『裏切りの国』
原作者 ギャビン・ライアン
原題 Judas Country(1975)
訳者 石田善彦
出版社 早川書房
出版年 1982/1/31
面白度 ★★★
主人公 パイロットのロイ・ケイス。臨時雇いとしてロンドンからベイルートへシャンペンを運ぶ仕事に従事している。
事件 この仕事中、不運なことに会社が倒産し、着陸していたキプロス島で飛行機は差し押さえられた。そのうえシャンペンと思っていた積荷が、実は軽機関銃であったのだ。どんな陰謀か?
背景 というように発端はスパイ小説風だが、中盤になると獅子王リチャードの剣探しという冒険小説的な物語展開となる。終盤、ケイスの操縦する飛行機が嵐に出会う場面は迫力満点。ライアルの近作の主人公は、保安コンサルトや軍人であるが、初期の作品にはパイロットが多い。ライアルの世界には、やはり飛行機がよく似合う。

邦題 『イギリスの老男爵』
原作者 クレアラ・リーヴ
原題 The Old English Baron(1777)
訳者 井出弘之
出版社 国書刊行会
出版年 1982/10/30
面白度 ★★
主人公 城主の若様エドモンド。彼は亡きラヴェル卿の息子だったことがわかる。
事件 15世紀の中葉、サー・ハークレーという騎士が英国に帰ってきた。少年の頃はラヴェル卿と親友だったので、亡きラヴェル卿の息子に会うことを楽しみにしていたのだ。ところが彼の城館に行ってみると、城主は変わっており、息子のラヴェル卿も亡くなり、その妻も行方不明ということであった。しかしハークレーは不思議な夢を見て、謎があると感じたのだ。
背景 ゴシック・ロマンスの古典。『オトラント城』と『イタリアの惨劇』を結ぶ線のちょうど中間に位置するような作品。つまり『オトラント城』ほど超自然的なものは含まれていないが、『イタリアの惨劇』ほど読みやすくは書かれていない。中途半端な印象を持ってしまう。

邦題 『ノルマンディー偽装作戦』
原作者 ジャイムズ・リーサー
原題 The Unknown Warrior(1980)
訳者 伊藤哲
出版社 早川書房
出版年 1982/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ジェット・レース』
原作者 ジェイムズ・ブルーム・リン
原題 Jet Race(1978)
訳者 石川好美
出版社 早川書房
出版年 1982/5/31
面白度
主人公 集団劇なので特にいない。レースに参加したパイロットと乗組員全員。
事件 優れた航空機設計者だったトッド卿は、自ら操縦した飛行機を着陸させた直後、操縦席でなくなった。死後に発表された遺言は意表をついたもので、「ビジネス機として設計された双発のジェット機による世界一周レースを開催せよ」とあった。そして卿の設計した飛行機を含む9機が参加に名乗りをあげ、1976年4月5日の朝、競技が開始したのだ。
背景 ジェット機の世界一周レースという、日本ではちょっと考えられない世界を舞台にした小説。どんな航空冒険小説かと期待が大きかっただけに、一読してガッカリ。世界一周レースの割にはサスペンスは不足している。異色のプロットを生かしきれなかったようだ。

邦題 『わが目の悪魔』
原作者 ルース・レンデル
原題 A Demon in My View(1976)
訳者 深町眞理子
出版社 角川書店
出版年 1982/6/20
面白度 ★★★★
主人公 異常性格者に関する論文を書いているアントニー・ジョンソンと独身中年のアーサー・ジョンソン(実は性格異常者)。
事件 舞台はロンドン市ケンボーン・ヴェール自治区にある三階建ての安アパート。住民はアーサーを含む四人であったが、新たにアントニーが加わった。そしてある時、A・ジョンソン宛の手紙をアーサーが間違って開封したため……。
背景 一つの空間に多くの人生を盛り込み、互いに無関係なはずの彼らの人生が、ささいな誤解から交錯していく。小説のパターンとしては平凡なものだが、二人のジョンソンの行動・心理が強い説得力をもって描かれている。CWAの1976年ゴールド・ダガー賞受賞作。

邦題 『謀略結社マトリックス』
原作者 フランク・ロス
原題 The 65th Tape(1979)
訳者 池央耿
出版社 早川書房
出版年 1982/6/15
面白度 ★★★
主人公 国家安全保障諮問委員会の主催者ガーフィールドや委員のフレッチャー。
事件 上院議員やCIAの幹部といった各界の要人が参加している秘密結社<マトリックス>。その参加者の一人が死の直前、この結社がケネディ兄弟の暗殺に関係していることを暴露した。そして証拠は、ニクソン大統領時代の盗聴テープにあるというのだ。テープの消滅をはかる<マトリックス>と、これを武器にする国家安全保障諮問委員会との戦いが始まった。
背景 国を乗っ取ろうとする秘密結社の暗躍を描いた作品は、少し前にラドラムの『マタレーズ暗殺集団』が出ている。面白い点は、ニクソン元大統領(善玉として大活躍!)といった実在の人物を巧みにプロットに盛り込んでいること。いかにもありそうな話になっている。

邦題 『バードウォッチング』
原作者 ヒラリイ・ワトスン編
原題 Winter's Crimes 12(1980)
訳者 森慎一
出版社 早川書房
出版年 1982/11/30
面白度 ★★★
主人公 書下ろしの英国ミステリー短編を集めた短編集の第5弾。
事件 これまでと同様に、実力のある中堅作家の短編が数多く集められている(全部で12本)。表題のD・ウィリアムズの短編は、少年の趣味であるバードウォッチから密会情報を得た女教師が関係する医師を強請るが……という展開。私が好きなJ・ウェインライトの「子供嫌い」は、空き巣に入った男が子供の置き忘れたスケートボードで転倒・骨折し、”子供は嫌いだ”というユーモラスな話。またC・デイルの「犯罪博物館」は犯罪好きな小説家が殺される話でオチがいい。
背景 全体的に地味ながら、意地の悪い印象を与える短編が多いが、よくも悪くも、それがイギリス・ミステリーの特徴か。

邦題 『栄光への航海』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 To Glory We Steer(1968)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1982/4/30
面白度 ★★★
主人公 ボライソー。26歳。ファラロープ号の艦長に任命された。
事件 ファラロープ号は32門搭載のフリゲート艦で、船齢も若い。装備には何一つ不満のない立派な艦である。しかし問題は乗組員にあった。前任の艦長に反乱を起こしそうになるなど、規律が大いに乱れていたのだ。ボライソーは内務に問題を残したままで、新しい任地、西インド諸島に向かわざるをえなかった。
背景 日本版ボライソー・シリーズは原則として編年順に訳出されている。したがって本書はシリーズ四作目になるが、本国版シリーズでは第一作目、つまりボライソーが初めてこの世に登場した記念すべき作品。ホーンブロアー物の単なる物まねではない工夫がある。

邦題 『スペイン戦艦を強奪せよ』
原作者 アダム・ハーディ
原題 Fox 6:Blood for Breakfarst(1973)
訳者 高橋泰邦・高沢次郎
出版社 三崎書房
出版年 1982/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『眼下の敵 ラミジ艦長物語11』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Ramage's Diamond()
訳者 田中航
出版社 至誠堂
出版年 1982/1/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『密命の結末 ラミジ艦長物語12』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Ramage's Mutiny(1977)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1982/3/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『鬼哭啾々 ラミジ艦長物語13』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Ramage and the Rebels(1978)
訳者 田中清太郎
出版社 至誠堂
出版年 1982/6/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『総督の陰謀 ラミジ艦長物語14』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Ramage and the Rebels(1978)
訳者 田中清太郎
出版社 至誠堂
出版年 1982/8/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海に沈めた秘密 ラミジ艦長物語15』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 The Ramage Touch(1979)
訳者 窪田鎮夫・出光宏
出版社 至誠堂
出版年 1982/11/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 


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