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1974年8月
「たった」は副詞か連体詞か
『言語生活』275号 筑摩書房 pp.91-93
【内容】のちに、評価的とりたて副詞と位置づけられることになる「たった」という副詞の 特殊な性格を、学校文法の範囲内で解説したもの。


1976年8月
「もし線路に降りるときは」という言い方
『言語生活』299号 筑摩書房 pp.84-85
【内容】「ときは」という形が、どういう条件の下で、「もし」と呼応するだけの<条件表現性>を獲得するか、について解説したもの。


1977年9月
限定副詞の機能
松村明教授退官記念会編『国語学と国語史』 明治書院 pp.969-986
【内容】従来の副詞の分類には収まらないものとして、一つの下位類を設定すべきことを提唱し、簡潔に記述したもの。のちに「とりたて副詞」と改称。


1977年
品詞の下位区分
岩淵悦太郎・藤原宏編『表記・文法指導事典』 第一法規 pp.222-227
【内容】文法指導事典の「参考資料」として、教育上有用と考えられる「品詞の下位区分」について、具体例を挙げて解説したもの


1980年
副詞
国語学会編『国語学大辞典』 東京堂 pp.744-746
【内容】副詞に関する、専門事典としての解説


1980年
疑問詞
国語学会編『国語学大辞典』 東京堂 pp.216-217
【内容】疑問詞に関する、専門事典としての解説


1982年3月
叙法副詞の意味と機能──その記述方法をもとめて──
国立国語研究所『研究報告集3』 秀英出版 pp.45-92
【内容】「陳述副詞」の中核をしめる「叙法副詞」という新しい下位類を設定するための方法論的考察。共時態に潜在する通時的推移相(ベクトル性)を厳密に記述する方法を探求したもので、その過程で「意義素論」の批判、「内省方法」の限界の指摘、などをおこなうこととなった。


1983年10月
程度副詞をめぐって
渡辺実編『副用語の研究』 明治書院 pp.176-198
【内容】従来大きく異なった扱いを受けてきた程度副詞の複雑な性格を具体的に解きほぐし、品詞分類における厳密な位置づけを試みたもの。機械的な「二分法」の 分析方法としての限界を指摘することとなった。


1985年6月
日本語の文の時間表現
『言語生活』403号 筑摩書房 pp.48-56
【内容】述語動詞のテンス・アスペクト形式と、時(時期と時間量)の副詞とによって表される文の時間性(temporality)について、文の叙法性(modality)を機軸において、簡潔に解説したもの。当時 はやりかけていた時間論理(tense logic)に基づく分析の限界を指摘するねらいもあった。


1985年9月
副詞──日本語文法の焦点──
『言語生活』406号 筑摩書房 pp.30-31
【内容】副詞研究への誘い


1988年9月
外国語学習と日本語教育
『月刊言語』17-9 大修館 pp.36-39
【内容】「標準的平均的西洋語」だけではなく、アジアの諸言語との対照の視点や、広く類型論的視座が、日本語教育およびその基礎としての日本語学に必要であることの提言。


1988年
諸家の日本語文法論
金田一春彦・柴田武・林 大 編『日本語百科大事典』 大修館 pp.132-151
【内容】近代日本の代表的な文法学説の解説。この種の事典で、佐久間鼎・三尾砂・三上章を項目として取り上げた最初のものかもしれない。


1989年3月
現代日本語の文の叙法性 序章
『東京外国語大学論集』39 pp.13-33
【内容】従来の通説 イェスペルセン流の叙法研究の限界(一面性)を乗り越えて、日本語のように、形態的には膠着的で 機能的には階層(重層)的な言語の「叙法組織」を、厳密に記述・分析するための手だてを探る方法論序説。


1989年5月
文法──記号がないことの意味──
『月刊言語』18-5 大修館 pp.46-47
【内容】マークされていない形が、文法的な「(欠如的)対立」をなして範疇的な意味をになう場合と、対立しないで「不定」の場合とについて、二三の例で解説したもの。トゥルベツコイ−ヤーコブソン流の「対立」理論の、日本における俗流化・低俗化に対する批判をこめた。


1993年5月
日本語学史──文法を中心に──(第11章)
工藤浩・小林賢次・真田信治・鈴木泰・田中穂積・土佐哲・仁田義雄・畠弘巳・林史典・村木新次郎・山梨正明『日本語要説』 ひつじ書房 pp.289-313
【内容】文字との出会いから昭和期までの、日本文法研究史。かなりはっきりと自分の歴史観で一貫させようと努めた。


1996年11月
「どうしても」考
鈴木泰・角田太作編『日本語文法の諸問題』 ひつじ書房 pp.163-192
【内容】比較的に成立が新しく、現に句的形態を保っている副詞「どうしても」を取り上げて、文の中での諸用法を記述しながら、語における多義・多機能の定着のしかたの一端を探ろうとしたもの。後半で、語彙的な意味と文法的な機能との相関関係についても、多少の一般化を試みた。


1997年10月
評価成分をめぐって
川端善明・仁田義雄編『日本語文法 体系と方法』 ひつじ書房 pp.55-72
【内容】「あいにく・奇しくも・さすが(φ/に/は)/ 珍しく・驚いたことに・妙なもので」のような、後続する文内容に対する評価をあらわす語句を、一つの文の成分(部分)として立てうることの提唱。


2000年6月
「副詞と 文の陳述的なタイプ」(第3章)
森山卓郎・仁田義雄・工藤浩『日本語の文法 3 モダリティ』 岩波書店 pp.161-234
【内容】いちおう20世紀の締めくくりとして企画されたもので、「モーダル」な副詞を含む陳述的な副詞を中心に、副詞と述語との関係に関わる構文論的な研究を、主として方法論の面に重点を置いて総括し、次世代に引き継ごうとしたもの。1980年代後半以降の日本文法学界の 俗流化したサロン的風潮への 根底的な批判もこめた。


2005年1月
[書評] 渡辺 実 著『国語意味論 ─ 関連論文集』(塙書房)
日本語学会『日本語の研究』第1巻1号(『国語学』通巻220号) 武蔵野書院 pp.91-96
【内容】世に渡辺構文論とも称される『国語構文論』(1971)の著者の、以後の仕事を集成した意味論関連の論文集の書評。20世紀後半の国語文法学の主流を形づくった研究方法、一言で言ってしまえば<機能主義>に、なかば内在的な批判を加えて、21世紀の日本語文法学へ 橋わたしを しようとしたもの。


2005年8月
文の機能と 叙法性
東大『国語と国文学』82-8 至文堂 pp.01-15
【内容】文の <内−外><主−客>という ふたつの 軸を うごく 内的構文論と 外的連文論の 二重の 機能(はたらき)の なかで 叙法性(modality)の 性格を 位置づける ことを こころみた もの。


2010年3月
こと-ばの かた-ちの こと
須田淳一・新居田純野編『日本語形態の諸問題』ひつじ書房 pp.27-36
【内容】「ことば」の コト(koto)と 「かたち」の カタ(kata)とが 母音交替の かたちである ことに 注目し、ことばの かたちの ことを ふかく かんがえてきた 大学者に まなびながら、いままで 副詞や「かざし」を めぐって あれこれ かんがえてきた ことを のべた もの。大学の 最終講義に むけての ひとつの 準備でもあった。


2010年12月
「情態副詞」の 設定と「存在詞」の 存立
斎藤倫明・大木一夫【編】『山田文法の現代的意義』ひつじ書房 pp.171-180
【内容】冨士谷成章の「かざし」と 山田孝雄の「副詞」との ちがいを あきらかにし、山田の「情態副詞」が 「存在詞」を 重視する あまりの 体系内矛盾である ことを 指摘し、おおきくは「かざし」論に もどるべき こと、ちいさくは「様相副詞(仮称)」を たてるべき ことを 提唱。執筆時 大学教員 定年退職を 機に、ついに 「ハキダメからの 逆襲」の ひぶたを きる ことにした。


2014年07月
副詞〜あゆひ抄
日本語文法学会編『日本語文法事典』大修館書店
【内容】専門事典としての 解説 にすぎないが、執筆が 2008年初夏 脳幹出血で たおれる 直前だった。たしかに いつ しんでも いい ような 遺言の ような かきかたを している ような 気も する。

【刊行後の 付記】「同一項目 複数執筆」という、この 事典の あたらしい こころみは、社会化されぬ エゴ学者の 私案の 併記、というか 公平めいて ことなかれ的な 我執の よせなべと なりかねない 感じだ。現代読者の 読書力に 期待できる、ってか。



   「形式名詞」「吸着語」と 「つなぎ・むすび」
─── 松下大三郎と 佐久間鼎と 奥田靖雄とを つなぐ もの ───
シンポ実行委員会編『奥田靖雄没後10年シンポジウム(記録)』(言語学研究会 未刊)
【内容】奥田靖雄(没後10年)を めぐる 討論会(symposium)の はずだったが、じっさいは 奥田にかかわる 自分の 関心事を 各自 ばらばらに 告白した という 感じで、みのりの ある 討論には ならなかった。わたしは、奥田の おもいのこした こと いいのこした ことを、<名詞の 文法(化)> に かかわる ことに ポイントを しぼって 代弁した つもり。基本は 通じあわなかった もよう。「シンポジウム 討論」においては、なるべく パネリストどうしの 討論に もちこもうと 努力したが、むりだった らしい。2015年1月校正時 補記の やや いらついた 発言には ご海容を いただきたい。


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