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日本語構文論 入門 2002年度 レジュメ


<おことわり と おねがい>
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目  次

   プロローグ <文法>をもつということ───人間言語の基本特性
   第一章 語と文───「文」の予備的観察として
   第二章 形式と意味と機能
   第三章 文の 階層性
   第四章 単語の結合性と 連語の意味的構造──文の意味的構造の前段階として──
   第五章 文の意味・機能的構造───意味と機能との総合としての「文の部分(成分)」
   第六章 文の構造的なタイプ──「基本文型」───
   第七章 文の陳述性
   第八章 文の構造・陳述的なタイプ (試案)


0)プロローグ <文法>をもつということ───人間言語の基本特性
        「分節性」をもつことの意味───動物言語との比較を通して
               [参考:アクメジアン他『新言語学概説』(環翆堂)など]

0-1 ミツバチのダンス:Karl von Frischの観察
    円形ダンスround dance (巣の近く) 
      花のにおい
    8の字ダンス・尻振りダンス (近いと∞型、遠いと鎌型)
      花のにおい、方向(太陽と餌場との角度)、距離(ダンスの速さ)

0-2 サル(霊長類)の観察
    ベルベットモンキー(Struhsaker):36の音声単位(うち、ことなった反応は22)
    ニホンザル(伊谷純一郎):37種(叫ぶ、吠える、ささやく、呼ぶ) 

0-3 チンパンジーやゴリラの言語習得実験
    Kellogg 夫妻とGua :生後10か月以降、息子と一緒に育てる。
       1才4カ月で約 100語を<理解>。ただし、語順・組合せは不可。 
         ex. 「ドアをたたけ」──×─→「ドアをあけろ」
           「箱をあけろ」 ──×─→「箱をたたけ」
           「澄んだ 水が 濁った」と「濁った 水が 澄んだ」のちがい
    Heyes 夫妻とViki:6年間で4語を<発音・発声>。
    Gardner 夫妻とWashoe:<手話>で34語(22か月)。五才では 132語を操る。
        しかも、10語になってからは、組合せも可能になったという。
    Premack 夫妻とSarah :色つきプラスチック片を用いる。
               異同・否定・疑問も習得。語順も、という。
    Rumbaugh等とLana:コンピュータの記号つきボタンで、Yerkish 語を習得。


第一章 語と文───「文」の予備的観察として

1-0 「二重分節性」  [参考:Andre Martinet『一般言語学要理』(岩波書店)]
  第一次分節:表意単位     記号素moneme(単語や付属辞・接辞)
  第二次分節:表音単位     音 素phoneme(単音やアクセント)
   ⇒「有限の手段を用いて、無限の思想が表現できる」[W. von Humboldt]

ここから、言語(記号)の基本的な単位として、「語」と「文」が取り出される。
 ・語:言語の基本単位        現実世界の「指示物referent」に対応
 ・文:言語活動の最小単位      話し手の思惟・判断(≒出来事)に対応
     [より厳密には、言語作品(=言語活動の所産)の最小単位]

 #語の二側面:一般化された意味でreferentを指示    (語彙的な側面)
        他の語や発話場面との<関係>を表示    (文法的な側面)
 #語の「意味」:抽象活動の産物      cf. 写真:個別の 物や出来事を表示
     物事を<区別し(distinctiveな)> <まとめあげる(integrativeな)>機能
     物事の<一側面> 観点を変えれば <クラス(類)>を表現  
     生活に必要な限りでの類別(区分と統合) ⇒ 専門語や修辞(レトリック)の必要性

 #命題の二側面:指示作用 referentiation    [参照:John Searle『発話行為』]
  (≒文)    陳述作用 predication     (述定作用とも訳される)

1-1 一語文(独立語文)と二語文(述語文)    [Karl Bühler『言語理論』(クロノス)]
 ・一語文:発話の現場にしばられて、<いま・ここ・私>のことしか あらわせない。
      発話の意味は、共実践的sympraktisch。しいて分ければ、
       ワンワン!  キャッ、ゴキブリ!  発見・確認
       ゥマンマ!  オーイ、お茶!    欲求・命令[欠如=否定の萌芽]
       ママー!   中村クーン!     よびかけ [「名詞の命令法」]
       ゥン(mmm)?  エッ? ハアー?   疑念(問い返し) [疑問兆候]

 ・二語文:できごとを[モ ノ───サ マ]に分析し、
      ものごとを[テーマ───レーマ]に分割して、表現する。<構造性>
      現場以外のできごと・ものごとを表しうる。 [転移用法displaced speech]
      そのため、叙法性・時間性・人称性などの、<陳述性>が分化する。

1-2 文の二側面      [従来の諸学説との おおよその対応。精密には 違いも大きい] 
  @ <構造性>:名づけ的  事柄的  客体的   客観的  対象的 な側面
  A <陳述性>:のべ方的  陳述的  主体的   主観的  作用的 な側面
          (奥田靖雄 南不二男 時枝誠記 松下大三郎 森重敏) 
            鈴木 重幸   渡辺 実 金田一春彦

    \ @ (機能)│ 主語       述語 │ 主語  補語   述語
   A \  (意味)│ モノ(対象〜主体) 動き │ 主体 客体(対象) 動作
   ────────┼────────────┼─────────────────
     叙述法・肯定│ 水が  流れている。  │ 男が 水を  流している。
         否定│ 水は  流れていない。 │ 男は 水を  流していない。
         推量│    〃   だろう。│      〃     だろう。
     疑問法   │ 水は 流れている(の)か?│ 男は 水を  流している(の)か?
     命令法   │(水よ) 流れろ。    │(男よ) 水を  流せ。
      …    │    …       │      … 
     とりたて  │ 水まで 流れている。  │ 男が 水まで 流している。
      …    │    …       │      …      

【補説】文は、伝え合い(communication)の機能を果たす言語活動の場における最小の単位である。極端な例をあげれば、「これは何?」と聞かれたのに対して「絵。」と答えた場合、あるいは、なにか思いついたように「絵!」と叫んだ場合、それは、1音=1語=1文である。言語場の中で、それは立派に言語活動の単位として機能している。伝え合いの単位であるために、文は、必ず <話し手> が <聞き手> に対して、 <何を> 伝えるかの面と、 <いかに> 伝えるかの面とをもつ。独白ないし思考活動は、内面化された(自らを聞き手とする)「伝え合い」だと、ここではひとまず、みなしておく。一語文では、形態的に未分化だが、通常の文では、ことがらを写しとり描きだす <構造的な面> と、話し手が聞き手にどのように伝えるかという <陳述的な面> とに、分けて考えることが出来る。もっとも、この二つの面が、表現形式の面で 常に 分節的(segmental)に分離できるとは限らないが、表現内容の面では、相対的に独立した二側面として 分けられると考える。
 文法論としての文論は、個々の言語活動としての側面は切り捨てる。たとえば、「きのう、ぼくは君をずっと待っていたんだよ」という文(発話)を扱うとして、その文(発話)の表わす、時間と空間に定位された一回一回の場面的な指示(「きのう」「ぼく」「きみ」が何を指すかなど)や、話し手のその場限りの感情的な態度や発話の意図(親しみか、詰りか、皮肉か、恨み言か、など)は、理解や観察の対象ではもちろんあるが、分析の対象としては取り上げない。慎重に ときには いとおしみつつ 切り捨てる(捨象する)。しかし、

  一人称シテ主題 + 二人称ウケテ + 過去 の 行為 の 説明と告知
   ぼく(が)は     きみを     きのう 待っていた んだ よ

と、図式化できるような、文の意味と機能の <型(pattern)> は、文法論の分析対象であり、そうした文の型の中に一般化して やきつけられた <話し手性> = <主体性(subjectivity)> という機能の刻印は、具体的な場から抽象したとしても なお、文から消え去りはしない。文論の分析対象となる。
 A.H.Gardiner(1951)や E.Benveniste(1964)など 古典的な著作も力説しているように、文はたしかに、言語(language, langue)の単位ではなく、言語活動(speech)あるいは(談)話(discours)の単位である、のかもしれない。また現に、語彙と文法という言語の手段によって構成される文(発話)は、現象的には 多種多様であり、量的には 無限の拡がりをもつが、しかし、体系性を もたないわけではない。現象的に 無限に多様な文(発話)は、 <陳述的なタイプ> として、 <構造的なシェーマ> として抽象され 類型・図式化されて、有限の <型> として 体系化されている。文は、まさに言語活動=伝え合いの単位として機能するために、言語の <構成体の型> として、間主体的・社会的に作り出され、慣習的・制度的に存在させられるのである。いわば、アクチュアルな言語活動を支えるポテンシャルなエネルギーとして、それは 存在する。言語体系としての語彙と文法は、F. de Saussureが考えたように「言語活動の外に」「人間の脳裏に」存在するのではなく、具体的な言語活動の 中に 内在し、その中で 多少の変容を受けながらも、しなやかに したたかに 生きつづける。
 私たち 言語研究者が、言語活動の所産としての 具体的な言語作品群の中に、言語の諸法則を 探り出し、一般化を試みなければならない理由は、まずは、ここに ある。

[工藤浩1989「現代日本語の文の叙法性 序章」(の訂補版)より]

1-3 文の階層性
 ・山田孝雄1936の「語排列上の遠心性」(p.1034)  [下の図a 参照]
 ・時枝誠記1941の「入れ子」型構文(p.316)     [下の図b 参照]
 ・阪倉篤義1966『語構成の研究』(p.155-6)の 図式 [下の図c 参照]
 ・南不二男1993の「四段階」モデル        [例は工藤 作成]

  「ねぇ[きっと 太郎は{きのう (花子に ふられ)た}のだろう]ね」
          (~~~~)      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄A
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄B
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄C
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄D





第二章 形式と意味と機能
2-1 文法的な形式───「文法的な手つづき(grammatical processes)」
[参照:E. Sapir(1921)『言語』第4章 、A.A.レフォルマツキー(1953)『言語学入門』(露文)]

┌───────────────────────────────┐
│A 語レベル (形つくり form formation)            │
│ a.総合的な形 synthetical form               │
│  1.屈折 inflection         (融合 fusion)    │
│  2.膠着 agglutination       (接辞づけ affixation)│
│  3.内部修正 internal modification (母音・子音交替)   │
│  4.アクセント変異 accentual differences         │
│  5.くりかえし(反復) reduplication            │
│ b.分析的な形 analytical form    (迂言的 periphrastic)│
│                               │
│B 文レベル                          │
│  1.語順 word order         (位置 position)   │
│  2.イントネーション intonation              │
│                               │
│C 補充法 suppletion                     │
└───────────────────────────────┘


◆屈折(融合)と膠着 [A.A.レフォルマツキー(1953) §46 pp.210-4より]
       │ 屈折(融合)  │  膠着
 ──────┼────────┼────────
   接辞  │ 重義的#   │  単義的    #「多義的」とは別
       │ 非標準的   │  標準的
   語幹  │ 音変化あり  │  音変化なし  cf. 日本語動詞の音便語幹
       │ 非独立    │  独立       五段活用 と 一段活用
   結合  │ 他辞の挿入不可│  他辞の挿入可
       │ 同化あり   │  機械的    cf.「連濁」

       │    ロシア語      │カザフ語 │ 日本語
 ──────┼────┼────┼────┼─────┼─────────
  性    │ 女性 │ 男性 │ 中性 │  ─  │  ─
 ──────┼────┼────┼────┼─────┼─────────
 単数・主格 │ pil-a │ stol  │ slov-o │ara    │ のこぎり-が
    与格 │ pil'-e │ stol-u │ slov-u │ara-ga  │ のこぎり-に
 複数・主格 │ pil-y │ stol-y │ slov-a │ara-lar  │ のこぎり-ども
    与格 │ pil-am │ stol-am│ slov-am│ara-lar-ga│ のこぎり-ども-に

◆母音交替
・現代英語:古代英語で生産的であったものの残存(不規則変化)
 man[man]   foot[fut]   tooth[tu:θ]  mouse[maus]
 men[men]   feet[fi:t]  teeth[ti:θ]  mice [mais]
 sing──sang──sung──song

・日本語:古代語の方がやはり生産的
 「四段(五段)活用」「二段活用」
    kak-a-ba(仮定)    kak-i(中止)    kak-u(終止)    kak-e(命令)
    kak-e-ba(確定)                  [kak-oo(勧誘)]
    ok-i(起き:中止)    ok-u(起く:終止)

(以下、語彙的 ないし 語彙・文法的)
 sake(酒)──saka-ya(酒屋)
 ki(木)──ko-dati(木立)
 tuki(月)──tuku-yo(月夜)                    
 karasu(枯らす)──korosu(殺す)  waka(若)──woko(尾篭[=愚か])
 tamaru(溜まる)──tomaru(止まる)
 nog-areru(逃れる)──nig-eru(逃げる)──ma-nug-areru(免れる)
 ma-buta(瞼)──me(目)──mi-ru(見る)
 ta-na-gokoro(掌)──te(手)──to-ru(取る)
 ガタガタ──ゴトゴト   カラカラ──コロコロ

◆子音交替
 close:v. n.[klouz]  a.[klous]  /  house: n.[-s] v.[-z]
 build──built  lend──lent spend──spent

 タマ(玉)──ダマ(小麦粉のダマ)     カラ(殻)──ガラ(石炭・鶏肉のガラ)
 立て役者──ダテ(伊達)めがね      ガニ股(<蟹股)        
 トントン──ドンドン      きらきら──ぎらぎら etc.の オノマトペ
 sabisii──samisii(淋しい) kemuri──keburi(煙) samurai──saburai(侍)
 doku──noku(退く)  野良猫・のらくら──ドラ猫・ドラ息子(道楽息子)/はなはだ
 ame(雨)──ko-s-ame(小雨) inu(往ぬ)──s-inu(死ぬ) ueru(植)──s-ueru(据)

◆アクセント変異
 record: n.['--] v.[-'-]  present: n.['--] v.[-'-]
 cлoва:単・生['--] 複・主[-'-]

 っぱい(数詞)───いっぱい(副詞)
 ややま(山の複数)───やまやまだ
 ながれ(名詞)───なれ(動詞の連用形)

◆くりかえし
 マレー語:「人」 orang(sing.)──orang-orang(pl.)
 日本語 :    人 (中立)───人々(複数)
          休み(中止)───休み休み(継続)
          
◆分析
 英語の助動詞・前置詞:CAN:He can / Can he come here./? ON:on the (big/large) box
 中国語:「了 la 」 雨去了。 / 「的 de 」 先生的話
 日本語
  補助動詞:〜シテ(は・ばかり)いる、
  後置詞 :〜ニ(*は・ばかり)ついて(は・ばかり)  #前置詞より独立性が低い

◆語順
 澄んだ 水が 濁った     うまい 酒は たかい  
 濁った 水が 澄んだ     たかい 酒は うまい  

◆イントネーション
 行く?───行く。───行く!   いい?───いい。

◆補充法
 英語:go──went──gone     good──better──best
       <wend(≒turn 進む・行く)。[いま自らの過去形は wend-ed]

 日本語の否定体:行か−ない・ず・ぬ・(行きませ)ん [・行くな]
               [<yukanzu<yuk-ani-su]

 普通体の命令形:行く  ──行こう   ──行け   ──行くな
 丁寧体の命令形:行きます──行きましょう──(行きませ)──(行きますな)
                (尊敬体出身)  行きなさい  (行きなさるな)
     (依頼形──他行自利態の尊敬体出身)  行って下さい 行かないで下さい

★異なった文法的な手つづきによる類義表現例
    文法を    研究する/*質問する
    文法のことを ?研究する/ 質問する   #語のカテゴリカルな意味変容
    文法について 研究する/ 質問する

    (私が)    行く。
    (私が)    行こう。         #屈折(語尾変化・母音交替)
    (私が)    行く つもりだ/だった。  #迂言的〜語彙・文法的

    ゴールめざして 走っている。
    ゴールめざして 走りつづける。     #複合動詞という語形成手段
    ゴールめざして 走りつづけている。   #両者連接可能 ⇒ 異なる階層

    悪い友達に    影響される。     #派生動詞という語形成手段
    悪い友達に/の  影響を 受ける。   #「機能動詞」表現ともいう

2-2 文法的な意味と機能
◆ヴォイス
     ・猟師が/ 熊を 殺し(てい)た───熊が/ 猟師に 殺され(てい)
 <意味> 動作主  対象 動作       対象  動作主 動作
                      (状態主  相手   受身状態)
 <形態> ガ格   ヲ格          ガ格  ニ格
機<成分> 主語   補語 述語       主語  補語  述語
能<題述> テーマ   レーマ        テーマ  レーマ
 <情報> (既知)  未   知       (既知) 未    知 
    #最後の<情報>は、段落ないし文章の中でしか 最終的には決まらない。
    ex)吾輩は猫である。名前はまだ無い。 / 木曾路はすべて山の中である。

     ・生徒が 本を 読んだ ─── 先生が 生徒に 本を 読ませた
      動作主 対象 動作      (原因) 動作主 対象 動作
                     使役主 使役相手    使役
      ガ格  ヲ格         ガ格  ニ格  ヲ格
      主語  補語 述語      主語  補語  補語  述語

◆<陳述関係>predicative, nexus  と  <規定関係>attributive, junction
   ・犬が   走っている ─── 走っている   犬(を 見た)
    動作主   動作       動作    動作主
    ガ格             連体形
    主語    述語       連体語   被連体語

   ・走っている(動作)─┐    
    かわいい (性質)─┼─犬   #意味関係は、三者で異なるが、
    わたしの (所有)─┘      機能関係は、<規定> 一つで十分だろう。

◆主題化
   ・私は あのパンを 食べた ───あのパンは/なら 私が 食べた
    動作主 対象   動作       対象   動作主 動作
    ゼロ格 ヲ格            ゼロ格   ガ格
    主語  補語            補語    主語
    テーマ   レーマ         テーマ   レーマ

◆主格(ガ格) と 主語とを 区別する必要性
    その件は、私の方で処理しておきます。  cf. 私が自分で処理しておきます。
    このことは、私から先方に知らせておきます。
    気象庁では、今年の夏は猛暑になると見ています。
    先生には、お変わりなく お健やかにお過しのことと拝察いたします。
    人生とは、いったい何なのだろうか。

■整理■
意味:状況(現実)のどの側面を 指示/反映するかという、記号と状況との関係(表示)
    語彙的な意味───素材的意味:もの(実体)、こと(動態)、さま(静態)etc.
    文法的な意味─┬─統語的意味:格・ヴォイス/やりもらい・敬称(尊・譲) etc.
           └─陳述的意味:ムード・テンス/アスペクト・とりたてetc.
#深層格〜意味役割(semantic role):動作主、経験者、道具、対象、源泉etc.

機能:全体(の環境)のなかで、部分としての要素が果たす役割
1)文の部分の機能:
    文の題−述(係−結)への二分割:テーマ(主題〜主部)・レーマ(解説〜述部)
    叙述の中核たる述語との関係:主語(述べられ)・補語(補い)/状況語(取巻き)
    叙述の要素としての体言用言との関係(二次的):連体(規定)語・(連用)修飾語

◆主語───「主題(は)」と「主格(が)」、「既知」と「未知」の対立を統合する<場>
      (題目・有題)  (無題)   (前提)   (焦点)

     <既知が先行> │ <未知が先行>  │
    ────────┼─────────┼───────────────
    かれは 社長だ。│ かれが 社長だ。│ 措定=包摂判断
(松下) 既知  未知  │ 未知  既知  │ 個(種)=主語≦類=述語
(三上) 主題  解説  │ 主格  叙述? │
    主語  述語  │ 主語  述語  │
    ────────┼─────────┼───────────────
    社長は かれだ。│ 社長が かれだ。│ 指定=一致判断(認定)
    既知  未知  │ 未知  既知  │ 類=主語≡個(種)=述語
    主題  解説  │ 主格  叙述? │ cf. 〜デアルノ(は/が)
    主語  述語  │ 主語  述語  │ ⇒「ひっくり返し文」(分裂文)

 情報関係において一致する「かれが 社長だ」と「社長は かれだ」との 対角線上に対する二例の相異を説明するために、先行し述語と対立する成分としての「主語」が、「主題」「主格」のレベルの別を越えて、それらに共通し それらを統一するもの(場所)として、必要になる。少なくとも あった方が便利である。
【「かれが」の方は主格補語と言えても、「社長は」の方は 主格補語とは言えない(「無格主題」だと 三上は言う)。「先行」という位置特性による規定は、二語だけの名詞文では有効だが、三語以上の文では より複雑な規定が必要になる。】

 もちろん、措定=包摂判断として共通する 上欄の「かれは 社長だ」と「かれが 社長だ」との相異を説明するために、「主題(構造面)≒既知(情報面)≒前提(論理面)」「主格(構造面)≒未知(情報面)≒焦点(論理面)」などの区別も必要である。松下や三上らの用語が不要だと言っているのではない。念のため。
【補:松下大三郎の用語は、じつは「既定−未定」であるが、最近の「既知−未知」と 概念としての相異はない。】

2)文全体の機能:全体としての段落の中での、部分としての文の役割
       cf.複文:全体としての複文の中での、部分としての従属節と主節との関係

    ・道行く人が傘をさしている。雨が降ってきたらしい/ようだ。 <根拠と推定>
    ・頭がズキズキする。酒を飲み過ぎたのだ(ろう)。  <記述と 説明(的推量)>

    ・その夜は金沢のホテルに泊まった翌日、能登に向かった。 <連鎖・連なり>
     その夜は金沢のホテルに泊まっていた夜中に地震があった。<共存・出会い>

    ・ここには、三人しかいない。だから麻雀ができない。   <否定(性)の照応>
     *ここには、三人だけいる。だから麻雀ができない
   cf. ここにいるのは三人だけだ。だから麻雀ができない

■参考■
◆「格のヒエラルヒー(階層)」

   が > を > に > と > へ / で(にて) / から まで
    「が(主)を(対)に(与)」:文法的な(名詞)格 内的限定格 voiceに関与
    「と(相手〜仲間)」  :二面的性格をもち中間的位置を占める 分水嶺 #
    「へ で から まで」:意味的な(副詞)格 外的限定格 時・空に関与

    #相互的(reciprocal)な voice性(「〜し合う」「結婚する」etc.)に関与して、
     <相手>格という 義務的・文法的な格を表わすとともに、
     <仲間>(と一緒に)という 任意的・副詞的な意味・用法をももつ。


    ・猟師が 鉄砲で  熊を  打った。 弓矢で  鹿を 射た。 <行為の手段>
     猟師が 鉄砲を (熊めがけて) 打った。 弓矢/弓/矢を 射た。 <操作の対象>
     (猟師の) 鉄砲が  熊を  打った。 (毒)矢が 鹿を 射た。 <現象の主体>

◆名詞の「格」関係と 名詞の「カテゴリカル(範疇的)な意味」との 相関関係
    ・運転手が トラックに荷物をたくさん積んでいた。 <人の動作の進行態>の文
          トラックが荷物をたくさん積んでいた。 <物の変化の結果態>の文

    ・このバケツ[場所]から 水が もれている。  「水」の<現象記述>の文
     このバケツ[実体]が/は  もれている。「バケツ」の<状態記述>の文


2-3 体言・用言複合体───接辞・助辞の承接

      <文中の補語>            <文末の述語>
   親類と知人と−に−だけ−は−ね  教え−ておい−てもらい−たい−のだ
   百人−くらい−に−まで−は−さ  達し−てい−た−んだ−そうだ−よ

<体言複合体>  cf. 曲用(declension):印欧語では 格で 屈折         
  ┌────────────────────────────────┐
  | 名詞(動詞)−準体−並列 −格−とりたて2−とりたて1−もちかけ|
  |       とりたて2                    |
  └────────────────────────────────┘
    親類−と 知人−と   −に−だけ   −は    −ね
    百人   −くらい   −に−まで   −は    −さ
    食べる  −の     −に−だけ   −は    −よ (困らなくなったよ)
    着る-だけ-や 食べる-だけ−に      −も    −ですね (困っています)
    大きい  −の−ばかり −で      −は    −だな (困るなあ)

    のんびりと         −ばかり  −は    −ですね
    美しく           −さえ   −も    −ね


<用言複合体>  cf. 活用(conjugation):印欧語では 人称と数で 屈折      
  ┌─────────────────────────────────┐
  |動詞−ボイス−アスペクト−ムードB−テンス−ムードA−もちかけ  |
  |     やりもらい   みとめ方                |
  └─────────────────────────────────┘
   教え−ておい−てもらい −たい  −Φ  −のだ
   達し−てい            −た  −んだ−そうだ−よ
   叱ら−れ  −てい   −なかっ −た  −らしい  −ね
   行か−せ−られ   −たく−なかっ−た  −のだろう −さ
   遊ば-せ-てやっ-ている-ことができ-なければならなかっ−た−そうな−のだ−よ−ね

   過ごし−て(は)い−られ  −ない      −んです  −よ
   見え               −た  −のです  −よ


第三章 文の 階層性

3-1 南不二男1964「述語文の構造」(『国語研究』18『日本の言語学 文法T』再録)
  ────1974『現代日本語の構造』(第四章 文の構造)
  ────1993『現代日本語文法の輪郭』

・述語の要素(助動詞的部分)
         │−せる│−たい −ない −た −ます│−だろう (-う・-まい)
  ───────┼───┼──────────────┼─────────
  A段階−ながら│ + │ −   −   −  − │  −  (− −) 
  B段階−の で│ + │ +   +   +  + │  −  (− −) 
  C段階−か ら│ + │ +   +   +  + │  +  (+ +) 

・文中の成分をも含めた包摂関係
  A 兄は、[たばこを スパスパ 吸い]ながら、テレビを見ていた。
    母は、[弟に 肩を 叩いてもらい]ながら、テレビを見ていた。
    父は、[玄関から 居間の方へ 歩き]ながら、母に話しかけていた。

  B [雨が 降っている]ので、(私は)外に出られない。
    [きのう よく眠っておいた]ので、きょうは気分がいい。
    [家で ちゃんと勉強して来た]ので、教室でまごつかないですむ。
    [酒は飲んでも たばこは吸わない]ので、肺ガンの心配はない。

  C [たぶん 彼は もうすぐ来るでしょう]から、もう少し待ちましょう。
    [選手は 走りおわると足をもみます]が、これは、血行を良くし、
     疲労回復を早めるために行なうのです。

・従属節どうしの包摂関係
  A [(手をつない)でa 歩き]ながらa 歌を歌いました。
    cf. (危ない所にさしかかっ)たらb、[(手をつない)でa 歩き]なさい。
      (焦げる恐れがあります)からc、[(かきまぜ)ながらa 煮]ましょう。

  B [(キャラメルをなめ)ながらa 走る]とb 舌をかみますよ。
    [(月末になれ)ばb 新製品が入荷致します]のでb それまでお待ちください。

  C [(彼がすすめる)のでb 行ってみました]けれどc 、それほどでもなかったよ。
    cf.[(彼がすすめる)からc 行ってみた]のにb 、それほどでもなかったよ。

参考:三上 章1953『現代語法序説』第4章        同1955『現代語法新説』第10章
   寝坊したために遅刻した回数は、少ない。病気ノために<単式>連体に収まる
  ?寝坊したの で遅刻した回数は、少ない。病気ナので <軟式>中 間 的
  ??寝坊したか ら、遅刻した回数は少ない。病気ダから <硬式>連体に収まらず

3-2 文の四段階と文法的カテゴリー(南理論に、部分的修正と 例の増補とを加える)

[A段階] 語彙文法的な(ことがら的な)性格が強い
      <修飾句>:ながら1(並行) つつ て1(状態)

 イ「述語の要素」
   ヴォイス: 受身:(ら)れる  使役:(さ)せる 
   やりもらい:してやる(あげる) してもらう(いただく)  してくれる(くださる)
   もくろみ:してみる  してみせる
   尊  敬:仕手尊敬:お〜になる  受手尊敬(いわゆる謙譲):お〜する

 ロ「文中の成分」
   格関係(斜格):を・に・と・へ・で(手段)・から・まで  
   状態・程度量の副詞(句):ゆっくり・ややetc. / Aそうに・Nのようにetc.

 ※ 主格(ガ)、場所格(デ)、時間名詞(ex. きょう 正午に)は、B段階。
  ただし、主文の主語と<全体と部分>の関係にあるものは、A段階に現われうる。
     主格:「(選手が)足音も高く行進する」「(柿が)枝もたわわに実る」
        「台風19号は、勢力が次第に衰えながら、東方海上に去りました」
     デ格:「彼はボールを手の上でくるくると回しながら、その様子を話した」
        「彼女は、こどもを隣の部屋で遊ばながら、仕事をした」
     時間:「(若い頃は)ガードマンをしながら、昼間大学に通っていた」

[B段階] 述語性<認定性>が強まる  ※主文のモダリティに制限のあるもの、あり。
  (B1) <条件節〜契機・継起節>:ば なら / と たら / て2(継起)
  (B2) <因果節>:ので のに / ながら2(逆接)  て3(原因)
(B1〜B2)<連体節>:形式名詞「の・こと」etc. / 実質名詞 [連体内部は複雑]

 イ「述語の要素」
  ていねいさ:します ※連体節・条件節には、現われないことが多い
  テ ン ス:した  ※B1には現れず。連体節では <相対的テンス>が普通
  アスペクト:している / してある  してしまう / しておく
  みとめかた:しない(せぬ・せん)
  可能・能力:することができる  しうる  -eru(書けるetc.)
  願望(ねがい):したい  してほしい  してもらいたい
  意図(つもり):するつもり-だ(で いる)  する気-だ(が ある)
  必要・義務:しなければならない       すべきだ
    (不可避):しないわけにはいかない  せざるをえない
  適切・勧め:したら/すると/すれば いい   した/する方が いい
  許容・許可:してもいい  したってかまわない
 (不許可~不適切):してはならない  してはいけない  したらいけない
  推定〜様態:らしい  ようだ  しそうだ  / 様子だ  見込みだ
  確 か さ:にちがいない  かもしれない  / はずだ 
  伝   聞:ダそうだ / という−ことだ(話だ)     ※B2か。条件・連体なし

 ロ「文中の成分」
  主格の「が」  ※選択指定の「が」はD? cf. 彼社長だ。 / 彼社長なので、………。
  状況語:空間のデ格(部屋で げたの上で)  時間のΦ格(夜 夕食のあと)
  とりたて:こそ さえ しか / は(対比) ※「手も/だけ/ばかり 振りながら」は Aか?
  陳述成分:否定(けっして ちっとも) 希望〜当為(どうしても ぜひ)  
       推定・たしかさ(どうやら ひょっとしたら)
       評価・感情(さいわい あいにく / じつに とにかく やっぱり)

[C段階] modalな性格が相当こまかく決まってくる。    <自分>の段階
     <因果〜並列節>:から / けれど が / し

 イ「述語の要素」
  推量:するだろう 
  説明:するのだ / するわけだ(解説〜意味づけ)
  回顧:したものだ
  当為:するものだ  ※「することだ」はDか? (*こういう場合は 〜することだから)

 ロ「文中の成分」
  主題の「は」 / いわゆる詠嘆の「も」(イチローも すごい活躍ぶりだが、…)
  陳述成分:推量(たぶん) 説明(じつは 道理で)etc.

[D段階]  <相手>の段階   ※複文内に収めるのは、引用の「と」のみ。

 イ「述語の要素」
  決意・勧誘:しよう  す(る)まい
  命令・禁止:しろ  してください  するな
  疑問・質問:するか  するでしょうか
  叙述の種々相:わ ぞ / とも / ダこと ダもの(もん)
  (後略形から)  ダって したらナァ しなくっちゃ −かもネ etc.

 ロ「文中の成分」
  呼びかけ(おーい! 田中くん!)
  もちかけ(感動詞 さあ・陳述副詞 どうぞ / 間投助詞 ね ・間投詞 あのう )

<立体図>
        太郎       花子       写真   見       (素材)
                    に        を   せ(る)     A
          (が)  特に     は  全く         ない     B
    多分    は                        だろう  C
 ねえ   ね    ね   ね     ね   ね    ね        よ D
────────────────────────────────────────
「ねえ 多分ね 太郎はね 特にね 花子にはね 全くね 写真をね 見せないだろうよ」


第四章 単語の結合性と 連語の意味的構造──文の意味的構造の前段階として──

4-1 単語の結合性valency
 伝統文法でいう<格支配 government>は、主格(直格)以外の 斜格oblique caseを問題にするのがふつうだが、「結合価文法」でいう<結合価 valence>は、主格も含めて考える。
 例)「与える」は、
    伝統的文法式:「に格の名詞」と「を格の名詞」を「(格)支配する」。
    結合価文法式:三価動詞 [Xが Yに Zを ___]

 「連語論」における<連語 word group>という捉え方は、(一次的には)主格を除いて考えるが、格成分以外にも、付加的な(非必須の)副詞的成分との結合も扱う。
 例) 名詞を格と動詞との連語:皿をまわす / となりに皿をまわす
   副詞と動詞との連語:ゆっくり走る / たくさん食べる  / しばらくいる
   形容詞と名詞との連語:赤い花 / 悲しい人 / *多い人(→多くの人)

 行為・出来事や状態・性質が成り立つために 必須の(義務的obligatoryな)要素を、
    <補語complement/対象語=目的語object>または<行為項actant>と呼び、
 その他の付加的(随意的facultative)な要素を
    <修飾語modifier/副詞類adverbial>または<状況項circonstant>と呼んで、
区別する。ただし、その境界は一線で区切れるような 簡単なものではない(事態成立のための「必要性の程度」の問題で、連続体。ただし、直線的ではなく 段階的であろう)。

 伝統文法における<自動詞−他動詞>も、動詞の結合性の一部 重要な一部を占める。
    例)大槻文彦1897『広日本文典』(pp.65-70)
     人が紙をもやす(単対他動)   子供が壁にボールを当てる(複対他動)
       紙がもえる(無対自動)      壁にボールが当たる(有対自動)

<参考文献>
結合価文法:ヘルビヒ・ブッシャ(在間 進 訳)『現代ドイツ文法』(三修社)
依存関係文法:テニエール L.Tesniere(1959) Elements de syntaxe structurale. Paris.
動詞連語論:言語学研究会編『日本語文法・連語論(資料編)』(むぎ書房)
自動詞他動詞:須賀一好・早津恵美子編『動詞の自他』(日本語研究資料集8 ひつじ書房)

4-2 連語(語結合 collocation)の構造と 単語の語彙的(範疇的)な意味
●類義語を例にして
     太郎が 花子を  愛している。  (にくむ うらむ このむ すく)
     太郎が 花子に  ほれている。  (あこがれる みとれる あきれる)
     太郎は 花子が/を 好きだ。    (こわい ほしい こいしい/したい)

     [男]が [女]を     めとる
     [女]が [男(の家)]に  とつぐ
     [人]が [人]と     結婚する

     花子が ベランダに 洗濯ものを ほす。    <設置>
     花子が (ストーブで) 洗濯ものを かわかす。  <変化>

●多義語を例にして
     太郎が お皿を となりの人に まわす。    <移動>
     太郎が お皿を (竹の棒で)  まわす。    <変化>

     太郎が 花子に 英語を 教える。 ≒伝える・知らせる  <情報移動>
     太郎が 花子を  Φ   教える。 ≒育てる・大きくする <人の変化>

     このお菓子は 非常に あまい。            <味覚的性質>
     おばあさんは まごに あまい。  ≒厳しい・やさしい <対人的態度>

     太郎が 二階に 荷物を あげる。       <空間的移動>
     太郎が 花子に 花束を あげる。 ≒与える  <所有権移動>

     先生が 質問に こたえる。     (連 語:自由な複数の単語の組合せ)
     寒さが 骨身に こたえる。≒つらい (慣用句:上の例とはレベルが異なる)

◆「格」の意味と 名詞のカテゴリカルな意味との 相関関係──形式と内容との関係
     手段:<モノ名詞> げたで なぐる
     場所:<場所名詞> にわで あそぶ  cf.げたのうえで ノミが はねる
     原因:<コト名詞> 台風で 倒れる   げたのことで けんかになる
     様子:<状態名詞> 大声で さけぶ   げたばきで  出かける
       [内容の範疇] ⇒ [形式的意味]    [形式的意味] ⇒ [内容の範疇変化]

◆連語の構造と 現実の事態との 異次元性──言語の意味と 指示物(referent)との関係
     壁に ぺんきを ぬる     (付着)
     壁を ぺんきで ぬる     (変化)

     釣った魚で 刺身を つくる  (生産)
     釣った魚を 刺身に つくる  (変化)

     (財布のことで) 部屋の中を さがす    (状況−所格的)      
     (部屋のなかで) 財布を   さがす    (対象−対格的)

▼つけたり:語彙的な結合性と文法的な結合性

    ┌───┬───┬──┐  ┌─────┬───┬──┐
    │帽子を│かぶる│  │  │ジュースを│のむ │  │
    │くつを│はく │ぬぐ│  │ごはんを │たべる│はく│
    │洋服を│きる │  │  │いい空気を│すう │  │
    └───┴───┴──┘  └─────┴───┴──┘

第五章 文の意味・機能的構造───意味と機能との総合としての「文の部分(成分)」

   述語:なにかについて述べる部分 全体を統括して言い定める部分
        動作 変化  状態 特性  もの(の種類)
         動 詞    形容詞    名詞+だ

   主語:述べられる対象(中心的題材)をさしだす部分 (主格補語とも)
        ものごと ことがら 場所 時間 etc.
        名詞(名詞句) 用言の名詞化(−の ことetc.)

   補語:述語が表わす動作や状態が成立するために必要な ものや場所を表わして
       述語を補う部分(補足語complement、また対象語・目的語objectとも)
                    
   修飾語:述語が表わす動作や状態を、(任意的に)さらに詳しくする部分
        状態の副詞句 程度の副詞句  数量 頻度 (時間量)

        ・太郎は 花子と 結婚した。    (補語)
         太郎は 花子と 出かけた。    (修飾語)

        ・太郎は 大阪から 来た。     (補語)
         太郎は 心から お礼を言った。  (修飾語)

        ・ご飯を 丼で いっぱい 食べた。  (修飾語)
         ご飯を 茶碗に 一杯 食べた。   (修飾語 やや補語寄り)
         残りの 一杯を とっておく。   (補語)
         
   状況語:主語・補語・述語で表わされる出来事が生じる舞台・背景を表わす部分
          時間(時点・期間) 空間(で格) 原因

        ・きのう雨の中を運動場で 遊んだ。    (状況語)
         教室から 運動場に 出た。         (補語)
         飛行機を 新聞紙で 作った。        (補語)
         しばしば みんなで 大声で 話した。    (修飾語)

        ・むかしは 私も よく釣りをした(ものだ)。   動詞文
              このあたりも 静かだった。     形容詞文
              この辺は 一面の畑だった。     名詞文

        ・うちでは あの人は 仕事をしない。       動詞文
              あの子は おとなしい。       形容詞文
              田中さんは 大変な愛妻家だ。    名詞文

   連体語:体言(名詞・代名詞・数詞)に係って、その特徴を詳しく記述・説明したり、
       他の同類の物事と区別するために限定したりする部分 (規定語とも)

        ・白い雪赤い血で 染まった。        (装飾的)
         白いチョーク赤いチョークを 使う。    (限定的)
        ・大きなワシ小さなミソサザイに 負けた。  (装飾的)
         大きなワシ小さなワシを いじめた。    (限定的)

        ・きれいな花が咲いた。          (性質的)
         隣の家の花が咲いた。          (関係的 モノ的)
         去年知人からもらった花が咲いた。    (関係的 デキゴト的)

        ・彼からきのう聞いた話は、面白かった。  (内的 対象規定)
         彼がきのう失敗した(という) 話を聞いた。 (外的 内容規定)
         さんまを焼く(時の)においがする。    (外的 結果〜関係)

   独立語:一文ともなり得る独立性を持った部分で、後続の出来事から意味的には
       遊離している。(広義には、後続の三種をも 含んでいう)
         感動(まあ おや) 応答(はい いえ) 呼び掛け(田中君!)

    接続語:前後の文や語の関係を表わして、両者をつなげる部分 
         だから しかし なぜなら それにもかかわらず / AまたはB

    陳述語:述語の表わすのべかた(陳述・叙法)をさらに詳しくしたり、
        後続の出来事に対する話し手の評価的な態度を表わす部分
         たぶん(推量) どうやら(推定) どうぞ(依頼) もし(仮定)
         じつは(説明) 〜によると(情報源・伝聞)
         やっぱり(予想) さすが(評判)  とにかく 所詮 (はしょり)
         あいにく(コト評価) 親切にも(ヒト評価) たかが(モノ評価)

    題目語:話題・テーマを意味関係は明示せずに(独立語的に)提示する部分 
         会場は、下の地図をご覧ください。
         筆記用具は、黒か青のペンまたはボールペンを使用すること。

    (提示語)  八月十五日この日を私は、決して忘れない。
         飲む、打つ、買うこれが やくざな遊び人のやることだ。


<主語 問題例>
    ・私には、先生の話が ますます 分からなくなった。     cf. 私は
     気象庁では、今年の梅雨は ながびきそうだと 言っています。cf. 気象庁は

    ・この作品は、光太郎が 智恵子のために 書いた(のです)。 
   cf. この作品は、      〃        ものです。(複文の主語)

    ・日本酒は 米から 作ります。ビールは 麦から 作ります。   <不定人称文>
     (日本人は) 魚は 生で食べますが、豚肉は 加熱して食べます。 <一般人称文>

    ・きょうは、女房の誕生日だ。 / きょう、女房の誕生日なんだ。
     夕びえのする京都は もう火桶がほしいほどの 寒さである。

    ・「ぼくは、カツ丼だ。」「私は、天ぷらそばね。」    cf. 三上章
     「カツ丼が、こっちで、天ぷらそばは、そっちだ。」 「端折り(はしょり)の文」


第六章 文の構造的なタイプ──「基本文型」───
 a)山田孝雄1936『日本文法学概論』
   ・喚体の句:<連体 + 体言の呼格>
      感動───面白の景色や。 妙なる笛の音よ。
      希望───あはれ知りたる人もがな。 
   ・述体の句:<主格 + 賓格+述格(陳述)>
      叙述─┬─説明──松は 緑なり。 月 清し。 鳥 なく。
         └─疑問──何ものをか 得たる。
      命令───喜んでこれを受けよ。 人の悪をいふことなかれ。

 b)松下大三郎1930『改撰標準日本文法』
   ・思惟断句─┬─有題的──今宵は 十五夜なり。 
         └─無題的──花 咲きたり。
   ・直観断句─┬─概念的──君よ。
         └─直観的──ああ! 否。

 c)佐久間鼎1941『日本語の特質』──「いいたて文」の分類
    いいたて文─┬─物語り文…………………………動 詞文:〜が どうする/した
          └─品定め文─┬─性状規定文……形容詞文:〜は どんなだ
                 └─判断措定文……名 詞文:〜は なにかだ
【補注】
・動詞文も、具体性・個別性が、抽象化・一般化されれば、超時となる。
     100度で ふっとうする(ものだ)。     超時 品定め文
     cf. お湯 台所で ふっとうしている。      現在 物語り文
    あの子は、感心によく働きます。(=働き者です)    超時 品定め文
    酒は米から作り、ビールは麦から作ります。      不定人称文⇒品定め文

・名詞文・形容詞文も、「一時的な状態」を表わすものは、テンスを持つ。
 その際、過去形は、状態=存在動詞「ある」の助けをかりて(半ば動詞文化して)作られる。
    その日は 暗い夜だった(であった)。 寒かった(くあった)。
    かれは、まだ 小学生だった/だ
    雪 白くて 美しい <ものだ>。  超時 品定め文:雪の<性質> 
    雪 白くて まぶしい<ことだ>。  現在 物語り文:私の<知覚> 

    
 d)三尾砂『国語法文章論』──「場」との関連における 文の四分類  
 ・現象文:場の文     [〜が 動詞]     梅が咲いている。
 ・判断文:場を含む文   [課題は 解決だ]   これは 梅だ。
                      [あれは]梅が咲いているのだ
       (転位の判断文) [解決が 課題だ]   これが 梅だ。

 ・未展開文:場を指向する文(≒一語文)       あっ、梅だ。【時間ですよ!】
 ・分節文:場と相補う文 (省略文)  [これはなんだ?]梅だ。

   #有題の文:判断文 分節文【=三上の「略題」。 転位文=三上の「陰題」】
    無題の文:現象文 未展開文

 e)三上章1958「基本文型論」(『国語教育のための国語講座』 『三上章論文集』所収)
 *抽象から具体への四つの段階で、基本型を立てる
   第一段 コトの類型     <後掲>
   第二段 題述関係      有題・略題・無題(陰題)
   第三段 伝達様式 (ムード)  平叙・疑問・命令・感嘆
   第四段 丁寧さ (スタイル)  普通・丁寧・御丁寧

・第一段 コトの類型
 主として物語り文に使われる型
  1)甲型 Aガ ドウコウスル(シタ)コト     私が野心をもっていること
    乙型 Aニ Bガ ドウコウスル(シタ)コト  私に野心があること
 主として品定め文に使われる型
  2)甲型 Aガ ドウコウデアル(アッタ)コト   Xが大きい/寂しいこと
    乙型 Aニ Bガ ドウコウデアル(アッタ)コト 私にXがうれしい/寂しいこと
  3)型  Aガ Bデアル(アッタ)コト      彼が犯人であること

   ・存在文(位格型)         cf)普通型(報告型・ルポ型) (主格型)
     東京には、高層ビルが たくさん ある/林立している。
     東京には、空が ない (と智恵子は言う)。
     東京には、公園が 少ない。

   ・操作型(料理型):一般的操作 主体が<一般人称>で表現されない(消去)
     かまぼこは、サメやキスの肉で作る。  かまぼこヲ 作るコト
     ツグミは、ふつうかすみ網で捕ります。 つぐみヲ 捕るコト
     大根は、葉を捨てます。        大根ノ 葉を捨てるコト


第七章 文の陳述性

7-1 陳述性・のべかた predicativity (предикативность)
 単語や単語の組合せが、言語活動の最小単位である「文」として成り立つために持たされる、話し手の立場から取り結ばれる文法的諸特性を、総称して「陳述性」と呼ぶ。

陳述性」のカテゴリーのもとには、次のような下位カテゴリーが考えられる。
    <カテゴリー>       : 代表的な形式(表現手段)
 a) 叙法性・かたりかた modality :ムード語形 分析形式 叙法副詞 イントネーション
   肯否性・みとめかた(polarity) :「ない・ん/φ」 否定副詞 応答詞(イイエ)
   待遇性・ていねいさ(politeness):「ます・です/φ」 「お−」
   対人性・もちかけ方(phatics) :終助詞(ヨ・ゾ) 間投助詞(ネ) 間投詞(アノウ)
   評価性・ねぶみ evaluativity :副詞句(アイニク・困ッタコトニ・タッタ) 助動詞(-ニスギナイ)
    感情性・きもち emotivity :感動詞(イヤハヤ・モウ) プロミネンス 特殊拍(スッゴク・マアルイ)

 b) 時間性・とき temporality    :「した・している/φ」 時間副詞(カツテ・モウ)
  cf.ダイクシス deixis[これ自体は pragmatics の用語](三上章の「境遇性」)
    人称性・やくわりpersonality:人称代名詞     *題述関係にからむ 
    空間性・なわばりspaciality :指示詞「こそあど」 *語彙的手つづき

 c) 題述関係・係結び theme-rheme:係助詞「は/が/φ」 語順  cf.ヴォイス
   対照性・とりたて(focusing) :副助詞(ダケ サエ) 副詞(タダ トクニ)  プロミネンス

 陳述性の中でもっとも中核的なものは、a) 叙法性であろう。
 叙法性の種類によって、b)時間性も分化し、c)題述(ないし主述)関係も分化する。
  たとえば、命令文では、テンスは分化せず、主述関係も十分には分化しない。

<参考・比較>
主体性 subjectivity」
    時枝誠記(1955)『国語学原論 続篇』
    Benveniste, Emile(1966)『一般言語学の諸問題』 第V部 言語における人間
    Lyons, John(1977) Semantics II. 16.1. Speech-acts pp.739-
    ─────(1995) Linguistic Semantics. Ch.10 The subjectivity of utterance
    Yaguello, Marina ed.(1994) Subjecthood and Subjectivity. Ophrys.
    Stein, Dieter & Writht. Susan ed.(1995) Subjectivity and subjectivisation. Cambridge

言語表現における「主体性」の現われ
  ・「沈黙」や「間(ま)」──記号がないことのもつ意味        [cf. unmarked form]
  ・「口調」や「語り口」 / 「表情」や「姿勢」── langue/parole, verbal/nonverbal
  ・単語の使用法:比喩(直喩 隠喩 換喩 提喩) 婉曲 誇張 皮肉 etc.
  ・陳述的(modal)な形式 [時枝の「辞」]の使用

7-2 叙法性・かたりかた modality
<従来の主要学説>
  H.Sweet (1891) A New English Grammar.Introduction "mood" の項(邦訳あり)
   主語と述語との間の 種々に区別される諸関係を表わす文法形態  cf.山田の「陳述」
  O.Jespersen (1924)The Philosophy of Grammar.  "mood"の項(邦訳あり)
   文の内容に対する話し手の心的態度(心の構え attitudes of the mind) cf.時枝の「辞」
  V.V.Vinogradov(1955)「文のシンタクスにおける基本的な諸問題」(露文)
   発話内容と現実とのさまざまな諸関係を表わす文法的形式     cf.奥田の「モダリティ」

このうち、Jespersen の定義が、最も単純明快であり、また基本的だとは思われるが、それを修正・精密化した通説──文の内容に対する 発話時の 話し手の心的態度──では、
  ex)彼は 行き−たく−ない−よう−でし−
といった、過去形をとりうる「たい」「ようだ」/「ない」のようなものが、モダリティから除外されることになるようであるが、それでよいのだろうか。
 また「です」はどうだろうか? ── 「でした」と過去形になるからといって、過去における聞き手に対する「ていねい」の態度ではなく、発話時の「ていねい」の態度であろう。

<この講義での考え方> ─── 研究の出発点として、あいまいでも、対象を広めにとる。
  話し手の立場から定められる、文のことがら的な内容と、場面(現実および聞き手)との
  関わり合い(関係〜関連づけ)についての文法的な表現。
・ ポイントは、言語場における必須の四契機である、話し手・聞き手・素材世界・言語内容
 という 四者間の <関係表示> である、ということ。

・叙法性は、<主体面と客体面との総合>として あるいは 相即として 存在する、と考える。
 客体的なことがらの側面から言えば、文の <ありかた> つまり存在の「様式 mode, mood」
 主体的な話し手の側面から言えば、文の <語りかた> つまり話し手の「態度・気分mood」

@助詞「か」の意味構造における、主体的な<疑問>性 と 客体的な<不定>性との統一
 文末の終止用法「あした来られますか?」において <疑問性> が卓越し、文中の体言化用法「どこか遠くへ行きたい」において <不定性> が卓越し、そしてその中間の「どこからか、笛の音が聞こえてくる」のような挿入句的な(間接疑問の)場合に、両性格はほぼ拮抗する。
A助動詞「ようだ」における、客体的な<様態>性 と 主体的な<推定>性との統一
 「まるで山のようなゴミ」「たとえば次のように」などの「連体」や「連用」の「修飾語」用法においては ことがらの<様態〜比喩性>や<例示性> の面が表立っており、「どうやらまちがったようだ」のような「終止」の「述語」用法において 主体的な<推定性> が表面化することになるが、「だいぶ疲れているようだ/ように見える」のように、<様態性>と<推定性> がほぼ拮抗する場合も多いし、「副詞はまるでハキダメのようだ」のように、<様態性>ないし<比喩性> の叙述にとどまることもあって、複雑である。

<注>三上章や寺村秀夫のいう「コトとムード」、Ch. Fillmoreのいう "PropositionとModality"のような、文の二大別のカテゴリーとしての「ムード」や「モダリティ」は、テンスや題述関係も含められるようだから、ここでの「陳述性」に近い。

7-3 述語の形態的構造───ムード・モダリティを中心に───
 <屈折語形> ───もっとも狭義の「ムード語形」
   kak-u       oki-ru     k-u-ru     叙述法
     -e         -ro      -o-i      命令法
     -oo        -yoo      -o-yoo     勧誘法

 <膠着的な手つづきの「助動詞」>
    動 詞─┐┌─ス ル─┐┌─(φ)だろう らしい みたいだ
    形容詞─┼┤ (シテイル/イタ)├┼─(ダ)そうだ
    名 詞─┘└─シ タ─┘└─(ナ)のだ  (ノ)ようだ
         
 <文法的な「派生用言」「複合用言」>
    書か−ない
    書き−そうだ  −たい  −たがる  −ます
    起き−やすい  −にくい  /  −がちだ  −がたい

 <分析的な手つづきの「補助動詞」「形式語」>
    −と 思う(思われる) 見える(見られる) 言う(言われる) 聞く
    −に ちがいない  きまっている  すぎない  ほかならない
    −かも しれない(わからない)  cf. 終助詞化「かしら」(←か知らん)
    しても いい   しては いけない   しなければ ならない
    はずだ わけだ ことだ ものだ つもりだ / 見込みだ 様子だ 気だetc.
    ことが できる  ことに する  ことが ある 
      必要が ある  おそれが ある  可能性が ある  ふしが ある
      公算が 大きい  見込みは 小さい  / ことは 必至だ etc.

 一般に、上のものほど文法−形態化されており、下のものほど語彙性が高く文法性が低い。最後の二行など、「形態論的形式」どころか、文レベルでも「文法的」形式と見なせるか、議論の余地があるだろう。これは、<文法化grammaticalization>の度合いの問題であって、実際には連綿として連なっていて、一線で区切ることは出来ないだろう。
 このほか「終助詞」「間投助詞」と呼ばれる小詞 particle もあって、主として聞き手への「もちかけ」方を示す。以上の諸形式は、互いに組合せて用いることができる。

 <相互承接>の面で、他のカテゴリーも含めて図式化して見ると、おおよそ、次のようになる。
    ┌─────────────────────────────────┐
    │ヴォイス−アスペクト−客体的M/認め方−テンス−主体的M−もちかけ│
    └─────────────────────────────────┘
例)読ま−せ−られ−て い  −たく(は)−なかっ −た  −のだ  −ね
  怒ら−れ   −て い  −なく−てもよかっ −た  −のだろう−よ
  行か−せ   −て しまう−コトガデキ−ナケレバナラナカッ−た−のだ-ソウダ−よ


第八章 文の構造・陳述的なタイプ (試案)

8-0 基底の三分類

 ※叙法性を基軸にすえて、時間性と主語の人称性との分化を、分類の基準とする

 a)独立語文───テンス・人称、分化せず <ここ・いま・わたし>
   「感 嘆 文」:キャッ、ゴキブリ!(発見)  オーイ、お茶!(欲求)
   「疑問兆候」:ウン?  エッ?  はあ?!
   「応 答 文」:はい ええ うん / いいえ いや / もちろん なるほど
   「よびかけ」:田中さん!  おにいちゃん! (cf. 弟よ!)
          もしもし、ベンチでささやく おふたりさん!
          さきほど婦人服売場で、スーツをお買い求めになったお客様!

   *擬似独立語文:おとうさんの うそつき!   おにいちゃんの いじわる!
    号令・掲示etc.:出発!  起立! 礼! / 禁煙  静粛

 b)意欲文───テンス・人称に、制限あり
     ※通常、主語なし文。 [よびかけの独立語 + 動作述語]が基本構造
   ・命令〜依頼文(二人称):ポチ、来い!  田中さん、こちらに来てください。
              cf. 田中君、おしゃべりはやめましょう。
   ・勧誘文(一・二人称) :さあ、行こう。 田中さん、一緒に行きましょう。
     決意文(一人称)  :(ぼくが)行こう。 
              cf.「ぼくたちも 行こう」という文の両義性

   *擬似意欲文:「貧乏人は 麦を 食え」と蔵相が発言した。
          「タバコの吸い殻は 吸い殻入れに 捨てましょう」

 c)述語文───テンス・人称、ともに基本的に制限なし
   ・叙述文(いわゆる「平叙文」)
     無題文〜物語り文〜現象文(「が」)───テンス・アスペクトが主に分化
        しとしとと 雨が 降りつづいている/いた。
        寒い夜だった。暗かった。 / 無性にひとが恋しかった。
     有題文〜品定め文〜判断文(「は」)───叙法性が主に分化。時間性は様々。
        人間というものは、悲しい動物である。嫉妬深い上に、ずる賢い。
        あいつも俺も、嫉妬心から言い争ったにすぎないのかもしれなかった。
        あいつだって、今頃は後悔していることだろう。
   ・疑問文
     一次的疑問文───質問文・念押し文(確認文)・試問文・問い返し文etc.
     二次的疑問文───熟考的疑問文・感嘆的疑問文・依頼的疑問文・反語etc.

   *擬似述語文(感覚・感情表出):嬉しい! 淋しいなあ。 痛い! 寒いよ。
         (指示・指令など):さっさと並ぶ(んだ)! 明日は 十時に集合(のこと)
      希望文(願望・希求など):行きたい。来てほしい。 助かりますように!

【注】<枝分れtree式>に示せるのは、ここまでだろう。
   以下は、<網の目network状>もしくは<行列matrix式>に 入り組んだものと思われる。


8-1 叙述文の叙法形式 一覧

A 基本的(主体的)叙法性───「叙述の様式」

  ※テンスを持った出来事を受ける。自らはテンスが、無いか または 変容する。

 a)捉えかた−認識のしかた            [cf. epistemic modality]
     断定⇔推量:するφ⇔するだろう / と思う(思ワレル) -ノデハナイ(ダロウ)カ
        伝聞:そうだ / という(話だ)  と聞く  (んだ)って
        推論:はずだ / ということになる といっていい(?) cf.必然
  a' たしかさ−確信度:にちがいない  かもしれない  かしら (だろうか)
  a" 見なしかた−推定:らしい / と見える    [cf. evidentials]
          様態:ようだ  みたいだ     [cf. c 兆候「しそうだ」]

 b)説きかた−説明のしかた
     記述⇔説明:するφ⇔するのだ
        解説:わけだ     

B 副次的(客体的)叙法性───「出来事の様相」
  ※用言語基に接尾。連体形を受けるものも、テンスの対立は、無いか 中和する。
   派生用言・用言複合体として自らがテンスを持つ。ただし、現在か 超時 が多い。

 c)ありかた−出来事の存在のしかた(Sein)  [cf. alethic〜dynamic modality]
        兆候:しそうだ        [cf. a" 様態「ようだ」]
        傾向:しがちだ  しかねない  なりやすい  なりにくい
           しないともかぎらない することもあるcf.シテシマウ(不本意・無意図)
        可能:することができる  しうる  −られる  -eru
       ?必然:するφ  デなければならない

 d)なしかた(然るべしさ)−行為の当為Sollen(規範)的なありかた[cf.deontic modality]
        許容:しても/タッテ いい  しても かまわない(へいきだ)
       不許容:しては ならない  しては/タラ いけない(だめだ)
       不適切:すると いけない  したら/テハ いけない(まずい)
        適切:すれば いい  したら いい  すると いい
        適当:した/スル方が いい  / (勧告)する/シタが いい
        必要=否定の不許容:しなければ ならない  しなく-ては いけない
       (不可避) 否定の不可能:せざるを えない  しない-わけには いかない
        当然:す(ル)べきだ  / (道理)するものだ  することだ
                  [cf. 回想:したものだ  したことだった]

 e)のぞみかた−情意のありかた           [cf. intentionality]
        願望:したい  したがる
        希求:して ほしい  して もらいたい(いただきたい)
        意図:するつもりだ  する気だ   cf. してしまう(不本意・無意図)
        企図:して みる  して みせる  して やる  / して おく

  e') 感情性 評価:−に限る −にすぎない するまでもない するにおよばない
  (emotivity) 程度:Vされて(Aしくて)ならない  Aしくてたまらない


8-2 モダリティ形式とテンスとの関係
 基本的モダリティ自身は、テンスの対立を持たない(発話時=現在の態度だから)。
その点、「しろ」「しよう」「スル/シタか」「スル/シタだろう」は、問題がない。

8-2-1 伝聞の「−そうだった」は、
 ?さっき聞いた話では、田中さん、きのうのパーティには来なかったそうでしたよ。
cf.. さっき聞いた話では、──────────────ということ(話)でしたよ。
のような例があってよさそうに思えるが、実際には、非常に少ない。

grep:[うくすつぬむるぐぶただい]そう(だっ|であっ|でし)た
## 上のgrepをかけたのち、「かわいそう」と様態の「−いそう」を、排除。
【形態】
■そうであった■        24例
▼そうでした▼          7例
★そうだった★          2例

【時代・ジャンル】
昭和テクスト          22例【立原7、周五郎5、井伏3、聖子3、宮本輝3、三浦哲郎1】
翻訳テクスト           1例【佐々木直次郎訳『ウィリアム・ウィルスン』】
大正テクスト           1例【藤村『破戒』(明治39年)】
明治テクスト           9例【漱石8、鴎外1】
毎日新聞             0例

【述語の性質】
●名詞文・のだ文・形容詞文   13例
†動詞過去形文          1例
‡動詞現在形文          8例(うち直叙形4例。すべて 習慣〜反復)
▲否定形文            1例

【比較】grep:[うくすつぬむるぐぶただい]そうだ[^っ]
★そうだ★          3334例


8-2-2 説明の「−のだった」は、

    「-のだった」          【参照】「-のだ」        比率
【スル接続】
のだった      2252例       のだ      24492例     0.0919#
のであった     1913例       のである     8023例     0.2384★

のでした       598例       のです     10755例     0.0556
のでありました     7例       のであります   162例     0.0432
ので御座いました    3例       ので御座います  107例     0.0280
ので御座りました    1例       ので御座ります   4例     0.25(★)
のでございました   ナシ       のでございます   2例     ───

【シタ接続】
のだった      1433例       のだ      12489例     0.1147#
のであった     1085例       のである     8322例     0.1304#

のでした       290例       のです      5411例     0.0536
のでありました     3例       のであります    84例     0.0357
のでございました   12例       のでございます  417例     0.0288
ので御座いました    2例       ので御座います   43例     0.0465
ので御座りました   ナシ       ので御座ります   7例     ───

総計        7599例               70318例     0.1081#


【参考】検索のしかた──文字列検索(grep)と「正規表現」
●注意 以下の「正規表現」の論理記号
    [  ] [あいうえお]  :一文字ずつの論理和
    ( | ) (かきく|けこ)  :二文字以上の論理和
    [^ ] [^たちつてと]  :排除
などは、すべて「半角(1バイト)文字」を使用。

●「正規表現」の具体例
▼「スルのだ」
grep:[うくすつぬむるぐぶいな]のだ[^ろっ]
#同一段落内に残存する「ものだ」「のだろう」「のだった」も、全置換で排除済み。

▼「シタのでゴザイました」
grep:[ただ]ので(ござい|御座い|御座り)ました

●補注:正規表現は、意味機能の違いに かかわらない、表記や活用の差を一括することに限り、文体差や 前接テンスの違いや 動詞と形容詞との区別 などを見るためには、別個に集めて 意味機能的な分析をした上で、あとで(必要なら)合併する方がよい。
 つまり、文字列の違いが、意味や機能の違いに関係がありそうな場合は、正規表現で一括しない方がいい、ということである。

  どこからともなく、かぐわしい花のかおりが、ただよって来るのでした。
  怪人二十面相は、そう言うやいなや、煙のように消え去ったのであった。
のような、物語り(説き語り)文体における<回顧的描写>に多く見られるが、
  太郎はそう言って、大きなため息をもらすのであった。
  花子はこの一言が聞きたくて、わざわざここまで、やって来たのであった。
のような、叙情的な回顧・詠嘆調を伴うものも多く、また、会話や 心中文(「描出話法」)では、
  こんなことになるのなら、ぼくが行くのだった。
   cf. そうと知っていたら、ぼくも行った(のに)。
のような、反実仮想的な、後悔口調のものも少なくない。

8-2-3 解説の「−わけだった」は、さほど多くない。中に「そういうわけだった」「〜したことが〜した訳(=理由)だった」のような原義が生きているものも、少なくない。
grep:わけ(だっ|であっ|でし|でありまし|でございまし)た
★わけだった★         77例
◆わけでした◆         14例
▼わけであった▼        38例
▲わけでありました▲      1例
▲わけでございました▲     1例

grep:[^通翻]訳(だっ|であっ|でし|でありまし|でございまし)た
★訳だった★          9例
◆訳でした◆          5例
▼訳であった▼         7例

8-2-4 推論の「はずだった」は、反事実的用法が目立つ。
「スルはずだった」と「シタはずだった」では、用法が異なるだろう。
 ちなみに、否定の形も、「〜ないはずだ」、「〜はずが/は ない」(?〜はずではない)、「〜はずではなかった」「〜はずが/は なかった」などのように、特異である。

grep:[うくすつぬむるぐぶいなの](はず|筈)(だっ|であっ|でし|でありまし|でございまし)た
★はずだった★        545例
★筈だった★          97例
◆はずでした◆         12例
◆筈でした◆          8例
▼はずであった▼        71例
▼筈であった▼         70例
▲筈でありました▲       1例
▲はずでございました▲     2例
▲筈でございました▲      1例

grep:[ただ](はず|筈)(だっ|であっ|でし|でありまし|でございまし)た
★はずだった★         59例
★筈だった★          6例
◆はずでした◆         3例
◆筈でした◆          5例
▼はずであった▼        6例
▼筈であった▼         3例
▲筈でございました▲      1例

8-2-5 <確信度>の「−にちがいない」「−かもしれない」や、<推定・様態>の「−らしい」「−ようだ」などのタ形は、量的には使用頻度の多少、質的には意味用法のかたより──たとえば、まともなテンスか、反実仮想か、視点の二重性か──等の点で、異なりを示しつつも連続的に連なっているだろう。
★に違いなかった★         197例【うち、用言接続は、 73例】
★にちがいなかった★        115例【うち、用言接続は、 43例】
★かもしれなかった★        183例【うち、用言接続は、 62例】
★かも知れなかった★        126例【うち、用言接続は、 62例】
★らしかった★           1215例【うち、用言接続は、855例】

grep:[^憎珍晴誇ばず]らしかった
## このgrepでは「可愛らしかった」「かわいらしかった」「憎たらしかった」etc.は、排除していない。手作業で排除済み。また、言うまでもなく、接尾辞の「らしかった」も排除していない。逆に「翌日は(快)晴らしかった」「心の愛憎らしかった」etc.が排除されているおそれがある。

** ここで言う用言接続とは、上記のgrepファイルに、さらに次のようなgrepをかけたのち、「そうらしかった」「やつらしかった」etc.を、手作業で排除したもの。(「らしかった」については用例が多く、十分時間がかけられなかったので、見落しがあるかもしれない。)
grep:[うくすつぬむるぐぶただい]★らしかった★

8-2-6 <願望・希求>の「したい」「してほしい」等や、<当為>の「すべきだ」「すればいい」「してもいい」等も、タ形を持つが、<反実仮想性>を持った例が多い。
願望
  前々から、あなたと一緒に行きたかったのです。    (実現した前からの願望)
  ぼくだって、あの時、行きたかったのに。       (実現しなかった過去の願望)
  あしたの遠足、ぼくも行きたかったなあ。       (実現し得ない現在の願望)
希求
  明子は、民夫に来てほしかったのです。
  父には、もう少し、長生きしてほしかった。
当然 と 必要
  彼は、きのう行くべきでした。(しかし、行かなかった)
 ?彼は、きのう行くべきでした。(だから、無理をして行きました)

  彼は、その時勉強しなければならなかったのだ。(しかし、遊んでしまった)
  彼は、その時勉強しなければならなかったのだ。(だから、友達のさそいを断った)

【補】<間接的心理描写文>とでもいうべき文脈(いわゆる心中文)においては、次のような例も、少数ながら見られる。
国盗り物語17.txt(637): (義昭は、かんちがいしている)とおもわざるをえない。▼信長にすれば▼、天下の武家から尊崇されている義昭の「血」こそ尊重す★べきであった★。だからこそ苦心惨澹のあげくこの上洛を遂げ、義昭をしてその「血」にふさわしい征夷大将軍職につけたのである。■リアル≒べきものであった

錦繍.txt(175):  ▼私は▼由加子との関係がそんなに長くつづくとは思っていませんでしたし、どちらかと言えば、早く清算しなければならぬと考えていたくらいです。だがもう一方では、由加子という女に対する未練も根強く抱きつづけていました。「きょうは、あの男につき合ってやるのか」と私は言いました。由加子は何も答えませんでした。由加子はそうするつもりなのだと私は気づきました。何もかも由加子の自由である★べきでした★。私にそれを邪魔する権利などない。けれども、嫉妬という感情は不思議なものです。私は「清乃家」で待っているからと、いつにない怒りを含んだ口調で言うと、がちゃんと電話を切り、社の車を帰させてから、タクシーを拾って嵐山まで行きました。

適切
  当時は、ただ勉強さえしていればよかった。    (○ −ばそれでよかった)
  あの当時しっかり勉強しておけばよかった。    (× −ばそれでよかった)

「−ばよかった」    472例
■非リアル(後悔的)■  396例    ★ばよかった★
■リアル■        71例    ◆ばよかった◆ 【リアル+不実行 を含む】
■疑問詞疑問文■     5例    ▼ばよかった▼

許容
  昔は、自転車を乗り入れて(も)よかった。       過去の習慣的な許容事項
  きのうの会は、行かなくて(も)よかったんだよ。    昨日の他の(選択)可能性

「してもよかった。」grep:[てで]もよかった。
「してもよかった。」 総数     84例
cf.「してもいい。」 総数    523例
     †比率:過去形/現在形=0.161
【自由用法】 cf.「評価と当為──「−てよかった」と「−てもよかった」を例に──」
動詞肯定体            22例
否定体               6例
体言でもよかった          5例
【判断用法】           22例【「と言ってもよかった」etc.】
【疑問詞関係】          29例【「どうでもよかった」etc.】
† 自由用法のみにおける、過去形/現在形の比率は、33/340=0.097

8-2-7 可能の「することができる」「読める」等は、過去形では、原義の「出で来る」や 自発性・自動詞性が生きていて、<期待される事柄の実現>を表わすことが多い。
  長い間、列に並んでいたおかげで、やっと切符を手に入れることができた。
  電車が混んでいたので心配だったが、なんとか座席にすわれた。
  きのう早く寝たので、けさは6時に、ちゃんと起きられた。

ただし、次は、過去の可能(状態)の用法
  彼は若い頃は、この川を泳いで渡ることができた。  <過去の能力可能>
  昔は、この川もきれいだったので、子供たちが泳げた。<過去の状況可能>

<参考>「できる」発生:「足におできが出来る」(<「出で来(る)」)
            「刷り上がったばかりの新聞が出来てきた」
         実現:「ああ、やっと(作品が)出来た」
            「ああ、私にも、(そうすることが)できたらなあ」
         可能:「私は、〜することができる」

     「折れる・知れる・読めるetc.」:自動詞⇒可能動詞
     「−(ら)れる [起きられるetc.]」:自発態⇒可能態
        「台風で 木の枝が 折れた」
        「僕にも 木の枝が 折れた」
        「ぼくは 木の枝が 折れる」
       (?)「ぼくは 木の枝を 折れる」
       cf.「ぼくは 木の枝を 折れる ように/人に なりたい」

  ※歴史的には、否定文で、<期待される事柄の非実現>⇒<不可能>が先行。
   平安期の「-(ら)る」は、可能の意味では、否定体しか確実な例はないとされている。


分類別案の 素描

<構造・陳述的なタイプ> としての「意欲文」は、揚棄し、
「述語文(二語文)の下位体系」の ひとつとして、<認識系> と <行為系> との 対立と統合 を見る。

補記:両者の対立の裏に、評価(いい/まずい)や 感情(うれしい/こまる)の 系列(評情系)が、両者を媒介するものとして ひそんでいる、とも考えうる。

【マトリックス】    [前後のテンス(「ダブルテンス」)の形と意味による]

   前部テンス │ 後部テンス │ 形  式  例
   ──────┼───────┼──────────────────────
     −   │   −   │ しろ  しよう
     −   │  (+)  │ したい  すべきだ
     −   │   +   │ しそうだ  してみる
   ──────┼───────┼──────────────────────
     +   │   −   │ か  だろう 
     +   │  (+)  │ のだ そうだ はずだ / にちがいない
     +   │   +    │ らしい ようだ(様子だ 模様だ)/かもしれない 


【図式】
   ┌───────┬────────────────────────┐
   |       |±+ 副次的(客体的)〜 基本的(主体的) ±−|
   ├───────┼────────────────────────┤
   |  内的 意志性|  してみる しようとする したい  しよう  |
   |<行為系>−±|−+  しなければならない  すべきだ   −−|
   |  外的 成行性|  しがちだ しそうだ ことができる      |
   ├───────┼────────────────────────┤
   |  外的 状況性|  様子だ ようだ らしい はずだ  そうだ  |
   |<認識系>+±|++かもしれない  にちがいない  だろう か+−|
   |  内的 説明性|    といっていい  わけだ のだ      |
   └───────┴────────────────────────┘

 左右の配置は、承接順序という形式にも基づくが、「複合体」としての意味と機能も考慮されており、連続体である。その位置は、おおよその目安(概念図)と見てほしい。
 <認識系>と<行為系>とのそれぞれに、中核的なものを はさんで、内的なものと 外的なものとを 配置しようとする。そのあたりの詰めが、いまだに つめきれていない。どこかに無理があるような予感もある。あちらを立てれば こちらが立たず………
 その程度のものと 心得て、見ていただきたい。

はじめ | データ | しごと | ノート | ながれ