はじめ | データ | しごと | ノート | ながれ


品詞の下位区分

名詞
  ─┬実質名詞 ─┬─ 狭義名詞…………水・楽しさ
   │(本名詞) ├─ 時の名詞…………きょう・朝
   │      ├─ 数  詞…………1つ・3本
   │      └─ 代 名 詞…………これ,ぼく
   └形式名詞………………………………こと、とき

 形式名詞とは、実質的・自立的な意味がうすれて、常に具体的な意味を補充する連体修飾語を伴って用いられる名詞。
(例)わたしの言いたかったことは,‥‥‥
   寝坊したため(に),遅刻した。
上の「こと」のように名詞句を作ったり,「ため」のように条件句を作ったりして,文法的に大切な働きをする。助詞の「の」「から」などと比較すべき面をもっている。(なお,「ことは重大だ」「ためにする批判」の場合は本名詞としての用法。両者の別は相対的である)
 時の名詞(時詞とも),数詞(数量名詞とも)を,他の一般の名詞から区別するのは,意味の特殊性にもよる(小中学生にはこれも大事だ)が,文法の面でも,
  きのう,遠足に行きました。
  りんごをひとつ食べました。
のように,格助詞をつけずに単独で副言的に用いられるという特殊性をもつからである。これを名詞の副詞用法という。副詞へ転成したものとしないのは,「きのう…」「残りのひとつ…」のように,格助詞をつけたり連体修飾語を伴ったりする名詞の性格を保っているからである。なお,時や数量の意味を表す名詞の中には,「日曜日」「午前」や「1位」「2番目」(順序を数えるもの)のように副詞用法をもたないものもあるので注意。また,「1冊・2本・3回」の「冊・本・回」などを助数詞と呼び,数えるものごとの種類によって使いわける。(助数詞は単語ではなく接尾語だから,品詞の一つではない)
 代名詞は、ものごとや人などを話し手との関係から指し示す名詞である。代名詞はさらに人(称)代名詞と指示代名詞とに細分される。代名詞という名称は,英語のpronounの訳語であるが,その名に引かれて,「名詞の代わりをするもの」と教えるのは、便宜な面もあるけれども,正確ではない。特に,英語を勉強している中学生には,英語の pronoun と日本語の代名詞との違い(中でも人代名詞)をはっきり教えないと混乱してしまう。

      自称(一人称)  対称(二人称)  他称(三人称)  不定称
 人 単  ぼく・私    きみ      かれ      だれ
 称 数  おれ      あなた     かの女     どなた
 代
 名 複  ぼくたち    きみたち    かれら     どちら
 詞 数  われわれ    あなたがた   かの女たち   どいつ
   (注1)

         近称(コ)  中称(ソ)  遠称(ア)  不定称(ド)
 指 も  の  これ    それ    あれ    どれ
 示 ことがら  こいつ   そいつ   あいつ   どいつ
 代 場  所  ここ    そこ    あそ(す)こ どこ
 名       こちら   そちら   あちら   どちら
 詞 方  向  こっち   そっち   あっち   どっち
   <参考>
 連体詞     この    その    あの    どの
   (注2)    こんな   そんな   あんな   どんな
 副 詞     こう    そう    ああ    どう

   (注1) 日本語の名詞は、一般に、単数複数の区別がないが、
     人代名詞には(不定称を除いて)、単複の区別が生じているのに注意したい。
   (注2)「こんな・そんな……」の品詞は、形容動詞(の語幹)とする説も有力である。

 以上のはか,「東京」(地名)「ベートーベン」(人名)などの固有名詞,「大きさ」「くさみ」「およぎ」などの抽象名詞を区別することができる。(「大きさ」などが状態や動作を表していても,形容詞や動詞ではなく《抽象》名詞であることは,活用するか格助詞がつくかという文法的な違いに基づいて教えるべきである)

動詞 活用の仕方による区分と,意味用法による区分とがある。
(1)活用の仕方(種顆)による区分
        〔見分け方〕〔例〕
  五 段 活 用 ika−nai(行)話す,立つ,etc.
  上一段 活用 mi−nai(見)起きる,落ちる,etc.
  下一段 活用 ne−nai(寝)受ける,持てる,etc.
  カ行変格活用       「来る」一語
  サ行変格活用       「する」一語(注)
  (注)ただし「勉強する」など複合サ変動詞は多数ある。

(2)意味用法による区分
  @自動詞と他動詞
    水が流れる-eru      (xが)水を流す -su
    物が落ちる-iru         物を落とす-osu
    値が上がる-aru         値を上げる-eru
    家が建つ -u           家を建てる-eru
    戸がひらく(同形)        戸がひらく

  以上は語形に対応のある例だが,もちろん対応のないものもある。
    自動詞一行く 来る 死ぬ ある 咲く
    他動詞一訪ねる   殺す もつ 裂く
(注)「空を飛ぶ」「人ごみの中を行く」など<空間十を+移動を表す動詞>の型の場合は「を」をとっても自動詞。なお,こうした“例外"があるからといって自他の区別が教えられないとするのは偏狭である。むしろ逆に,自他にとどまらず「誰々に何々を貸す」「誰々から何々を借りる」「誰々に会う」「どこからどこまで(へ)行く」など,(名称はともかく)どのような格と結びつくかを考えさせ、その型を整理させることが重要である。
  A可能動詞
「読む」に対する「読める」のように,五段活用の動詞を同じ行の下一段活用にかえると,可能(または自発)の意味をもった動詞となる。可能という状態性の意味を帯びるため,形容詞と同様に命令形をもたない。また「読める」のように他動詞から派生したものは、
    本を読む─┬─本が読める(a)
         └─本を読める(b)
(a)のように自動詞化するのが基本である。(b)式の言い方も,「彼が英語の本を読めるとは知らなかった」のような文型でほ正当な表現としなければなるまい。
  なお,「見れる」「来れる」「着れる」など 五段活用以外の活用に対応するものも,いくつかは次第に有力な言い方になりつつある。これも助動詞「(ら)れる」をつけた表現が受身・尊敬・可能と多義的である弱点をカバーする意味をもっているようであり,あまり保守的な態度をとらない方がよいかと思われる。
  B補助動詞
  他の語(文節)について,助動詞のように種々の文法的意味をそえるもの。形式的には1文節をなす。
 ・吾輩は猫である。
 ・大きくはございません。   (指定)
   cf.大きくはない。     〔補助形容詞〕
 ・話している。        (継続)
 ・落ちている。        (結果)
 ・置いてある。        (状態)
 ・食べてしまう。       (終結)
 ・晴れていく。        (遠のき)
 ・曇ってくる。        (近づき)
 ・買ってやる(あげる)───┐
 ・買ってくれる(くださる)─┼─ (やりもらい)
 ・買ってもらう(いただく)─┘
 ・読んでみる。         (試み)
 ・読んでおく。         (準備)

 以上が代表的な例だが、中には「話してる」「食べちゃう」「読んどく」など、単語性を失って接尾語化するものがある。補助動詞は歴史的には,意味用法と形式とにくい違いのある過渡的な存在なのである。

  C敬語動詞
 (例)尊敬  おっしゃる ── 言う
        いらっしゃる―─ 行く、くる、いる
        めしあがる ―― 食べる
    謙譲  いただく  ―― もらう
        さしあげる ―― やる(あげる)


副詞
    副詞―┬―属性の副詞―┬―状態の副詞
       │       └―程度の副詞
       └―叙述の副詞(=呼応の副詞)

 (1)状態の副詞
   意味的にはさまざまなものがあるが,主として動詞(文節)にかかって,その動作作用の仕方やありようを修飾するもの。
  ・形象的なもの(擬声語や擬態語)――きらきら にっこり ガタガタ バタンと
  ・様子,性質など――ゆっくり しんみり のんびり きょとんと
  ・数量――すっかり たくさん いっぱい
  ・時――しばらく 時々 もう まだ
  ・意志・態度など――わざと あくまで 思い切って やたらに むりやり
  ・注釈的なもの――やっぱり あいにく どうせ さすがに 特に 少なくとも

 (2) 程度の副詞
   状態性の意味をもつ語(主として形容詞 形容動詞)にかかって,その程度を限定するもの
  (例)最も 非常に だいぶ 相当 すこし ちょっと もっと 一層
   修飾の相手は,要するに程度的な幅をもった状態性の語であればよい。したがって
   (副詞)もっとゆっくり
   (名詞)ごく少量の水 わずか二人 ずっと昔 もっと奥
のような特異な用法ももつ。

 (3) 呼応の副詞
   述語の叙述の仕方を明確にするもので、一定の表現形式(主として助詞 助動詞)と呼応する。
   述語は用言文節に限らず「たぶん彼だろう」のように名詞文節でもよい。
  ・打ち消し: けっして ちっとも めったに
  ・推  量: きっと たぶん おそらく
  ・打消推量: まさか よもや
  ・願  望: ぜひ どうか どうぞ
  ・疑  問: なぜ どうして いったい
  ・比  況: まるで さも あたかも
  ・条  件: もし 万一 たとえ いくら

連休詞 語例もたいして多くないので、ふつう語形による区分が行われている。  これは語源的な説明にもほぼそのまま使える点で便利である。
  ・「――の」の形:もとは格助詞「の」
     この あの,例の,ほんの (わが)
  ・「――た」の形:もとは助動詞「た」の連体形
     たいした 大それた とんだ
  ・「――な」の形:形容動詞連体形の変形(またはそれへの類推)
     大きな 小さな いろんな おかしな
  ・「――る」の形:もとは動詞(+助動詞)の連体形
     或る 去る 明くる あらゆる いわゆる

接続詞
 (1)用法上の区介区分
   ・単語を接続      および またここ ないし
   ・文や節を接続     そのうえ しかし,etC・
 (2)意味上の区分
   ・順接 だから したがって すると
   ・逆接 しかし だが でも けれども
   ・並列 そして それから 次に および
   ・累加 しかも そのうえ かつ おまけに
   ・選択 あるいは それとも または
   ・補説 ただし もっとも なぜなら
   ・転換 さて ところで ときに
   ・要約 つまり すなわち いいかえれば

感動詞
 ・感動 ああ おや まあ あれ
 ・呼びかけ おい やい ねえ もし
 ・応答 ほい うん いいえ いや
 ・かけ声 よいしょ ほいきた それ
 ・あいさつ おはよう こんにちは さようなら

助動詞
(1)接続による区分
  @名詞その他種々の語につくもの
    山だ です らしい ようだ(みたいだ)
  A用言にのみつくもの
   (ア)未然形に
        −れる・られる せる・させる ない・ん う・よう(まい)
   (イ)連用形に
        −ます た たい そうだ(朕態)
   (ウ) 終止形に
        −そうだ(伝聞) まい

(2)活用型による区分
   @下一段型 れる・られる せる・させる
   A形容詞型 ない・たい・らしい
   B形容動詞型 だ そうだ ようだ(みたいだ)
   C不規則型 ます です た ん
   D無変化型 う よう まい

(3)意味による区分
   @受身・尊敬・可能・自発 れる・られる
   A使役 せる・させる
   B打ち消し ない・ん ―――┐
   C推量 らしい(う・よう)―┴─まい
   D比況・様態 ようだ みたいだ そうだ
   E伝聞 そうだ
   F意志 う よう
   G断定 だ です
   H丁寧 ます です
   I過去 完了 た
   J希望 たい(たがる)

助詞

(1)格助詞
  体言またほそれに相当する語句(例「大きいの」)について,その語句が文中の他の語句とどんな関係に立つかを示す助詞。
  が を に へ と で から より の

(2)接続助詞
  活用する語について,その前後の句の表す事柄の関係を示す助詞。
  ば と ても ので から のに が けれど(も) て ながら たり(ものの ところで)

(3)副助詞
  種々の語について,量の限定や評価など話し手の語句の取り上げ方を(文外の語句との関係において)表す助詞。
  だけ ばかり ほど くらい まで など なり か やら

(4)係助詞
  種々の語について,その語句の取り上げ方を限定しながら,述語の叙述の仕方に一定の拘束を与える助詞。
  は も こそ しか さえ でも(ほか きり)

(5)終助詞
  文末の述語について,その叙述の性質に関する意味を表す助詞。な(禁止) な・なあ(詠嘆)
  か かな よ か わ の(とも こと もの かしら)

(6)間投助詞
  文中(文末も含めて)の文節末にさしはさんで,語調を整えたり聞き手に念押ししたりする助詞。
  ね な さ (だな ですね)

 以上の6分類は山田文法に基づくものであるが,一般の学校文法では多くの場合,上の副助詞と係助詞とをあわせて広義の副助詞(または限定助詞)とし,終助詞と間投助詞とをあわせて広義の終助詞(または感動助詞)とする4分類が行われている。
 なお・用法の違いに重きをおくならば,さらに次の二つの助詞を立てることがある(ただし、それだけ2つ以上の下位区分にまたがるものが多くなるが)。

(7)並立助詞
  対等の関係に立つ種々の語について,ひとまとまりに結びつける助詞。
  と や だの なり とか に(梅にうぐいす)

(8)準体助詞
  種々の語句について、それを体言化する助詞。(副助詞と大きく重なる)
  の(大きいのを) まで(行くまでが大変) から(着いてからも大変) ばかり(遊ぶばかりが能じゃない) だけ ほど くらい

<付 1> 助動詞相当語句代表例一覧
 あしたは晴れるにちがいない
 あるいは曇りかもしれない
 相当つかれたと見える
 彼は来てくれると思う
 行かなければならない
 行ってはいけない(ならない)
 行った方がいい
 ただまねをしたにすぎない
 彼は行くはずだ
 昔はよく遊んだものだ
 男らしくあきらめるものだ
 男らしくあきらめることだ
 だるいわけだ。こんなに熱がある。
 どうしたの? だるいのです
 台風○○号は東シナ海を北上しつつある
 これからでかけるところだ
 いや着いたところ(ばかり)だ
 行ったことがある
 行きたくてたまらない

<付 2> 複合助詞(相当語句)代表例一覧
(1)格助詞的
  〜において・〜における 〜によって・〜による 〜に対して・〜に対する 〜に関して・〜に関する  〜について 〜にとって 〜として 〜をもって  〜をめぐって  〜をして
(2)接続助詞的
  〜やいなや 〜が早いか 〜かと思うと  〜スルそばから 〜シクあげく 〜のみならず  〜ばかりか 〜からには 〜だけあって 〜にもかかわらず
(3)副助詞的
  〜とは 〜と言えば 〜といえども 〜ときたら  〜どころか
(4)終助詞的
  困るじゃないか  早く来てくれないかな いっしょに行かないか


(工藤 浩)



はじめ | データ | しごと | ノート | ながれ