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連体詞

 副体詞ともいい、連体修飾の機能にのみ働く単語類をさす品詞。近代に生じたと考えられる語が多く研究史も浅いため、この品詞の性格づけも所属語の範囲も、研究者や辞書により異なりが大きい。一般に認められているものを、成立事情を物語る <語構成> の別によって示せば、(1)「―の」の形:この その あの どの / 例の ほんの ずぶの / わが、(2)「―な」の形:大きな 小さな おかしな いろんな / こんな そんな あんな どんな / おなじ、(3)「―る」の形:ある とある さる あくる きたる / あらゆる いわゆる、(4)「―た」の形:たいした とんだ 大それた、(5) その他、漢語に接頭辞的につくが、独立のアクセントをもつもの:昨(九日) 明(十一日) 翌(十二日) 故(田中太郎氏) / 各(参加者) 本(学会) 当(懇談会)、など。連体法専用に固定しつつある新しい連体詞を積極的に認めようとする立場では、(1') として「「平の(刑事) 一片の(通知) ひとかどの(人物) / 花の(係長) 雪の(肌) 鉄の(意志)」などにも広げることができるだろうし、(6)形容詞系活用旧連体形の残存「来るべき(世界)・恐るべき(力)・驚くべき(速さ)・あるまじき(行為)」などの慣用語法的なものも候補になるだろう。逆に、意味機能の面で純化しようとする立場では、コソアド系のものは、各品詞に分属させる前に「指示詞」(という品詞)に一括し「これ」は名詞形式「その そんな」は連体形式「ああ あんなに」は連用形式などとパラダイム(語形変化)的に扱うべきであり、「大きな いろんな」などは形容詞の連体形の変異形、「こんな(だ) おなじ(だ)」などはナ形容詞語幹の特殊な連体用法(cf. こんなもの/こんななのを)と扱うべきだ、という説もある。また「おかしな」など属性修飾的なものをはずし「ある いわゆる 故」など名詞の取り上げ方を決定・限定するような(determinative)ものに限るべきではないかという説もある。
【参考文献】
 松下大三郎(1930)『標準日本口語法』(中文館)
 三宅 武郎(1934)「音声口語法」(『国語科学講座』明治書院)
 湯沢幸吉郎(1953)『口語法精説』(明治書院)
 森 重  敏(1959)『日本文法通論』(風間書房)
 鈴木 重幸(1972)『日本語文法・形態論』(むぎ書房)

(工 藤 浩)



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