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大東亜文化協会編『日本語の根本問題』(増進社出版部)



昭和十八年二月五日 印刷
昭和十八年二月十日 発行
出文協承認あ三七〇三八九(二千部)

定 価  二   円
(B6版 本文270ページ)



表 紙  目 次


第一篇 言語学上よりみたる日本語    中 野  徹

第二篇 日本語の歴史と発展の原理    新屋敷幸繁
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【注】本の「扉」と (のちに示す)目次では、「篇」は「編」、「みたる」は「見たる」に なっている。
   本文 および 奇数ページ欄外の「柱」は、表紙と おなじである。

 ちなみに、第一篇の 中野 徹 は、和語(やまとことば)を ほぼ一貫して ──「一つ・場合・力」など 少数の例外をのぞいて ── かながきに している。ただし、まえがきや あとがきに 相当する部分だけは、この原則に あわない。文体・内容ともに 別人の筆とも思われないので、清書(整書) ないし 編集(用字校正)の担当者が、別人であった、と考えるべきなのかもしれない。



 大東亜戦争勃発して既に一年を経過した。言ふ迄もなく、戦争の最後的勝利を得るには、先づ戦闘の総体に於て優勢であると共に、経済戦、文化戦に於ても亦指導的立場を獲得しなければならぬ。大東亜共栄圏の確立てふ遠大なる目的に奉仕する今次の聖戦は、勇壮無比なる帝国陸海空軍に依つて、既に戦闘に於ける圧倒的勝利が保証されるに到つた。斯くして大東亜文化の発展すべき現実的基礎が築かれ、日本語の問題も新なる国家的要請に即応して再検討されるべき秋が来た。日本語は日本民族の息吹であると言はれてゐる。然り! だが、此の事を余りにも機械的に解釈しては却つて消極的になつて了ふであらう。今や日本語は独り日本民族のみの国語ではない。其れは廣く共栄圏内に再生の喜びを以つて新しき発足の地盤を与へられた幾多の諸民族にも共有されねばならぬ。実に日本語は大東亜語として発展せんとしてゐるのであり、又当然さうあるべきである。本協会は斯くの如き日本語の理念を闡明すると同時に、日本語を国語学と言語学との両側面から正しく研究して其の成果を公にし、以つて現下の必要に応へんとした。故に本書は二篇に分かたれ、第一篇を『言語学上より見たる日本語』と題して中野徹氏に、第二篇を『日本語の歴史と発展の原理』と題して新屋敷幸繁氏に、それぞれ執筆を依頼したのである。第一篇に於ては、新しき言語理論に立脚して言語一般に再検討を加へながら日本語の根本問題を出来るだけ平易に解明して貰ふことにした。
 第二篇は、新屋敷氏の国学体系より日本語の本質を史的に考察して戴いたのである。両氏はそれぞれ論述の立場を異にしてはゐるが、其の言語観──国語観に於ては当然前述の現実的要請に応へて究極的に一致したものである事は、一読されたならば自明であらう。日本語の根本問題は今後も益々研究されなければならないであらう。然し本書は現段階に於て其の最も本質的と思はれるものを取上げて一応の正しき解決に成功し、以つて将来の研究に有益なる示唆を与へ得たと信じてゐる。

昭和十七年十二月              大東亜文化協会

    



目  次


第 一 編 言語学上より見たる日本語
  一、あたらしき言語学の建設……………………………………………二
  二、言語社会学派の誤謬…………………………………………………九
  三、言語哲学と言語心理学……………………………………………一六
  四、国語学と言語学および方言研究…………………………………二三
  五、言語内容と言語形式(T)…………………………………………三四
  六、言語内容と言語形式(U)…………………………………………四三
  七、言語の論理性………………………………………………………五四
  八、日本語の論理性……………………………………………………六三
  九、国語【口語の誤】と文語…………………………………………七二
  十、日常会話……………………………………………………………八三
 十一、音声について………………………………………………………九三
 十二、大東亜語としての日本語………………………………………一〇五

第 二 編 日本語の歴史と発展の原理
  一、日本語史の起点…………………………………………………一一六
  二、南島語と漢語……………………………………………………一一八
  三、日本語の出発……………………………………………………一二〇
  四、漢字に対する日本語原理………………………………………一二四
  五、記紀の日本語史に於ける位置…………………………………一二六
  六、日本語論…………………………………………………………一三〇
  七、日本祖語の性格…………………………………………………一三八
  八、万葉集の示す日本語理念………………………………………一四四
  九、漢詩文と日本語史………………………………………………一五五
  十、平安朝和歌の本質と語史的地位………………………………一六九
 十一、物語と日本語史…………………………………………………一七八
 十二、候ことば…………………………………………………………一九六
 十三、ます言葉・です言葉・だ調の起源……………………………二二三
 十四、日本語の構成力…………………………………………………二三四
 十五、日本語の発展……………………………………………………二五二




(巻末の広告 ── 執筆者推定の てがかりとして)

大東亜文化協会著作目録


第一輯『大東亜文化の建設──文化の世界性──』(白揚社)

   執筆者 中野徹、新屋敷幸繁、山元都星雄、木口浩一、菅汀流夫、須賀寒生、中村光


第二輯『科学と技術』(白揚社)

   執筆者 中野徹、新屋敷幸繁、大河内雄一郎、板垣正亮、山元都星雄、
       前田龍之助、菅汀流夫、樋口健、須賀寒生


第三輯『哲学と歴史』(白揚社)

   執筆者 大河内雄一郎、新屋敷幸繁、中野徹、山元都星雄、木口浩一、
       菅汀流夫、樋口健、須賀寒生


近 刊 予 告


第四輯(近刊)『日本の古典』(白揚社)

   執筆者 大河内雄一郎、新屋敷幸繁、山元都星雄


(近刊)『日本の芸術』(増進社)

   執筆者 山元都星雄、新屋敷幸繁、中野徹、須賀照夫


    付記──大東亜文化協会に用事のある方、又は、会員たらんと希望する方は左記に申込まれたし。

                        東京市世田ケ谷区玉川等々力町二ノ四三一
                                 大 東 亜 文 化 協 会


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