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かざし抄の こと ―― かざしの こと (その2) ――

2009/03/08   くどう ひろし


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1)『かざし抄』の なぞ

・なぜ 『あゆひ抄』より さきか。
  明和4年=1767  成章(1738〜1779) 30歳。
  「道をまなばむ人、まづこれ(三のくらゐ)をあきらめよ。」(『挿頭題』師説末尾)
・なぜ 「四具」の 最初か。
    個別・具体 ⇒ 一般・抽象
    国学の 特徴 歌語【意味ではなく、はたらき(機能)】

・なぜ 五十音順か。
    漢語学(実兄 皆川淇園)
    音通(音韻相通) 五十音図の同行または同段の音の転換。

    『日本紀通證』(谷川士清)
    『語意(考)』(賀茂 真淵 明和六年(1769)完成か)
    『雅言集覧』    イロハ順
    『俚言集覧』    五十音図の横列順【1900年(明治33) 井上頼圀(よりくに)
              ・近藤瓶城(みかき)が増補、五十音順に改編した「(増補)
              俚言集覧」三冊が刊行され流布】

2)『かざし抄』見出し項目 分類としては、

  「のべかた(叙法)」の <え かならず げに よも> の たぐい、
  「とりたて(対比)」の <ことに たとへば まして> の たぐい、
  「かかわり(関係)」の <ともに また まづ おのづから> の たぐい、
  「ほど〜ねぶみ(程度〜評価)」の <あまり いと うたて よし> の たぐい、
  「なげき(間投)」の <あはれ いさ いで> の たぐい、
  「とき(時間)」の <いま つねに まだ> の たぐい、
  「さししめし(指示)」の <かく ここら さ しか いく いつ なに> の たぐい
といった、興味ぶかい 語群に ほぼ かぎられる。
「接続・陳述・評価〜程度・指示など、なんらかの点で話し手に関与するもの」と まとめられる と かんがえたのである。(工藤浩『日本語要説』第11章「日本語学史」)

・研究史家 竹岡正夫は、「挿頭の各条の語の掲げ方を見ると、それらの語は、ほとんどが文相当句、あるいは独立の文節、連用修飾節、連体修飾文節の形であって、文から直接抽出されたものである。」と それなりに ただしく 指摘する とともに、「要するに『かざし抄』においては「単語」意識はなお確立していなかったと言わざるをえないのである。この単語意識は後の『稿本あゆひ抄』の中で次第に形成・確立されていく。つまり『かざし抄』では「単語」の 意識は大体伝統的歌学と同じ水準にあったといえるのである。」と いうのは、また、「十分精選せらるべき余地を存せるなり」(山田孝雄『日本文法論』)と いい、「種々のものを含み」「最も雑駁だ」と 明治の 再発見者が 評した(『国語学史要』)のも、「雑然とした観」が ある と 現代の 常識人が 感想を いう(古田東朔『国語学史』)のも、現行の 単語意識や 品詞別を 絶対の 是とする 偏見に すぎない。

・富士谷成章の めざした ものは、まさに「かざし」で あって、「副詞」では ない。歌語(語句)の はたらきであって、語(単語)の 意味などではない。

・「ただに」の 箇所に「「ただ」の二例に同じ 「に」文字添ひたるにて、全く挿頭ならぬ詞となれり。是も『ナンノ事ナシニ』と里すべし」と あるのを みよ。
 これを 形動(ナ形容詞)に 転成したか いなかと かんがえ、賛否を 表明している 竹岡正夫は、ピントが ぼけている と いうべきだろう。松尾捨治郎(校註)は「形式的の語でなく、或る観念を有するやうになつた意」と まだ ましに とらえた うえで 反対しているのである。(cf. 「たぶん」と「多分に」「格別」と「格別に」/「大変」と「大変に」)

3)こうなった そもそもは 明治の 山田孝雄が「情態副詞」を 副詞にした ことに ある。【その 理由については 山田文法批判として 別稿を 用意する(日本語学外史の 一部)が、そこには 孔(ありな)・存在詞(英語・独語の be・sein動詞)を 動詞から 独立させて 一品詞にした 山田文法の 根幹が 介在している。ex) Love is over.】

・「かざし」と「副詞」(工藤浩『いがぐり』50号)は、別と かんがえた 方が いい。
 「かざし」の 本質は particle(小詞) なのだ。かざしと 副詞を 混同する ことこそ、近代の 通弊だ と かんがえる べきなのだろう。情態副詞か 形容詞連用形か、なまえは、どうでも いい。森重の いうとおり 連続した 面も あるだろう。要するに 記述する ことの 方が 大事だ。そうすれば、おのづと 氷解する 問題点も あるだろう。それまで いきて いられそうも ないのが つらい とも いえるし、たのしい とも いえるのだ。

                           いいたい こと いってらぁ!
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