■ローマ字教育の指針 ローマ字文の書き方

< 資料室 < トップ

■このページは、「文部省(著). ローマ字教育の指針 ローマ字文の書き方. [出版地不明], [出版社不明], 1949, 28p+付録1p. (ja, B6横書き)」を全文転記したものです。■最後の注意がきを無視しないでください。

—以下は転記部分—

[表紙(図書館で補修のために交換したもののようにみえる)]


[1枚め: おもて・うらとも白紙 (図書館で補修のために交換、または追加したもののようにみえる)]


[2枚めおもて]

ローマ字教育の指針
ローマ字文の書き方

昭和24年2月

文部省


[2枚めうら: 白紙]


[p.1]

はしがき

  1. この冊子は小学校・中学校におけるローマ字教育担当者の参考に資するため、昭和22年2月28日に文部省から発表された「ローマ字教育の指針」と「ローマ字文の書き方」とを印刷に付したものである。

  2. 「ローマ字文の書き方」の「I つづり方」の項は一つのつづり方を基として解説されているが、この冊子では「ローマ字文の書き方」の末尾に、標準式(ヘボン式)・日本式のつづり方についての補注を添えた。これは、ローマ字の教科書として、それらのつづり方によるものも編集されているからである。また、この冊子では、さきに発表されたものの用例の誤植を訂正した。

  3. 「ローマ字教育の指針」・「ローマ字文の書き方」は、現行の各科指導要領などと同様に一つの試案である。

    なお、ローマ字文のつづり方およびローマ字教育の方法、その他については、目下、ローマ字調査会において研究・審議がすすめられている。


[p.2-9]

ローマ字教育の指針

第1 ローマ字教育の必要と方針

  1. ローマ字は現在世界の多くの国家で、その国語を書きあらわすために使われている。従ってローマ字は世界共通の文字であり、これが相互の理解を進め、国際社会をうち立てる上に役立っていることはいうまでもない。

    わが国でも、これまで国民の一部では国語をローマ字で書き表し、国語および国情を世界各国民に理解させるのに役立たせて来たが、これからさらに新しく国際社会の一員として更生するためには、国民一般がローマ字で自由に国語を読み書きする能力および習慣を持つことが必要である。ここにローマ字教育を行う理由の第一がある。

  2. ローマ字は、本来言語をうつすのにすぐれた機能を持つばかりでなく、書写・印刷等の実際において、能率の高い文字組織である。わが国民一般がローマ字で国語を書き表わし、ローマ字で多くの文献が印刷される社会習慣ができれば、社会生活の能率はいちじるしく高められ、一般国民の文化水準も高められるはずであって、このことが早く一般化することは、わが国の再建に望ましいことである。これが国民一般にローマ字教育を行う理由の第二である。

  3. ローマ字は、国民一般に国語の特質・構造に関する正確な知識およびこれを自由に使う能力を得させるのに役立つことが多い。漢字・かなにもそれぞれ有利な特質があるが、またローマ字には単音文字として独自の機能がある。ローマ字を使用することによって、わが国民の国語能力および国語教養は、いちじるしく高められる。これが国民一般にローマ字教育を行う理由の第三である。

    ローマ字教育を行う必要と理由は、他にも考えられるが、その重要な点は、およそ右の三つに要約されよう。そうして、なるべく速やかに国民一般がその利益を得るためには、国民学校の児童にこれを学ばせる必要がある。

  4. ところで国民学校でローマ字教育を行う上には、どういう方針をとるべきか。

    国民学校の児童は、ローマによる国語の読み書きを習得することによって、国語の音韻についての自覚、国語の構造ならびに機能上の特質についての理解を深めることができ、また成人社会における表記形式と同じ表記形式を速やかに身につけ、文字組織のやさしから、多くの語を習得する便宜を受ける。

    それ故にローマ字教育は、かな漢字まじり文による国語教育と併行して行われるが、その眼目は、国語教育の徹底・充実ということに求められるべきである。ここに国民学校におけるローマ字教育の基本方針がある。

  5. 右の根本方針に関連して留意すべきことは、かなおよび漢字による国語教育との関係である。かなを専用にするか、漢字を一部存するか、全部廃するか、ローマ字を専用にするか等の問題は、今にわかに定められるべきことではなく、学術上の研究、国民一般の習慣・感情、国民一般の使用した上での経験等の各種の問題を考え合わせた上で、他日国民一般の総意により、自発的に決定されるべきである。すなわち、ローマ字教育の方針・目的は、かな漢字まじり文による国語教育の存在を一方に認めながら、ローマ字による教育の独自の効果をあげることに専念し、国民の国語能力・国語知識を高めることにある。

  6. なお、ローマ字が英語その他の外国語に用いられているために、英語その他の外国語を授ける前提として、ローマ字による国語の読み書きを教えようという考え方もあるが、これは、まったく誤りであって、ローマ字教育はあくまでも国語教育のために行われるものとして考えなければならない。

第2 教材

教材の選択および配列にあたっては、次の諸点に留意する。(転記者の注釈: 2段めのリストの記号は、原典ではまるかっこつきアラビア数字)

  1. 国語のローマ字による表記法を訓練する。

    1. 学習の初期にあたっては、児童生活における基本的な表現形式をローマ字書きで示し、その読み方・書き方に習熟させる。

    2. ローマ字のあらゆる場合の表記のし方を自然に順を追って提出し、無理のないように習得させる。(よう音・つまる音・はねる音の表記、句読点の使用法、節のまとめ方などには特に注意する。

  2. 標準語または標準的語表現を用いる。

    表音文字であるローマ字の特質にもとづき、教材は、つとめて標準語または標準語的な発音語法により、正しい国語の教育に役立たせる。

  3. 語学的の興味をおのずと持たせるように配意する。

    1. 動詞・形容詞の活用、その他の語法的事象を理解させる。

    2. 韻文教材では、韻律の表現について理解させる。

  4. 教材はなるべく児童の生活から生まれたものを選び、教科書に親しみをおぼえさせると共に、読解力の増進をはかる。そのためには生活童話・詩・日記・観察記録なども適当であろう。

第3 指導法

  1. かな漢字まじり文による国語教育との関連

    1. 国語教育の指導には、音声言語と文字言語との両方面があり、国語教育の目的は、主として日常の国語を習得させ、その理解力と発表力とを養うにある。国語教育の一部として新たにローマ字教育を採用するのも、この目的をなしとげて一層の効果をあげ、あわせて国語の純化に役立たせようとするにある。ローマ字教育を行うにあたっては、常に国語意識に注意し、その現実に即して指導法を立案すべきである。

    2. ローマ字が単音文字であるという特質を生かし、その表音性の適切な指導に、国語の音韻の有機的な構成を明らかにし、国語教育の一面である音声言語の訓練に役立たせなければならない。

    3. ローマ字教育を原則として、第4学年から行うとすると、この期間の児童は、第3学年までの国語教育によって、初等科における漢字の過半数と、ひらがな・かたかなをおぼえ、かな漢字まじり文の理解・表現にも一応習熟し、初歩的ながら国語意識をもち、基本的な言語力・文字力が身についているから、この事実に注意して現実にかなったローマ字教育を行い、さらに高次の国語訓練をなすべきである。

    4. ローマ字は表音文字であるから、ローマ字教育によって生きた言語生活に直接結びついた音声化ができ、音の上から国語意識を明確にすることができる。またローマ字文は、分ち書きで書かれるから、単語意識をはっきりもたせ、国語構造に自覚を与えるなど、文法的訓練にも役立ち、形の上から国語意識を明確にすることができる。かように文節がはっきりすることによって、文章構造の意識と思想の筋道がはっきりする。すなわち、ローマ字教育は、以上のような点で、国語意識を明確にし、したがって、文体意識をも明確にするものであるから、ローマ字で文章を書くことにより、従来のかな漢字まじり文の表現形式にかかわることなく、耳で聞いただけで意味のよくわかる文章を書くようになり、新しい文体の成立が可能になる。かような点にも十分留意して指導すべきである。
  2. ローマ字文の読み方の指導

    1. ローマ字は単音文字であるために、とかく音声表現的な方面に教授者の注意が向けられやすく、したがってローマ字で書かれた語がその意味に結びつかないきらいがある。ローマ字で書かれたものを読む筋道は、視覚的な語表象が、語の音表象を呼び起こし、それがなかだちになって語の意味がわかるという順序である。つまり、ローマ字で書かれた文なり語なりを見て、すぐに意味がわかるようにすることが、ローマ字文の読み方教授の目標であり、ここに第一義的な重点が置かれなければならない。

    2. ローマ字で書かれた語を音節や単音に分解して教えることは、児童がまだ習わない単語でも、自身で読み書きすることができるようにするための必要な手段ではあるが、それは児童がローマ字に慣れてくるに従って、自然にできてくる語形と語形とを比べ合わせる力に相応して、会得できるように指導すべきである。これには同じ語形や共通した部分をもつ語形をくり返して使用することが必要である。

    3. ローマ字を教えるについては、音声言語から直接に与える方法と、かなをなかだちにする方法とが考えられるが、ローマ字の特質の一つは表音性にあり、また表記されたものを音声化するにも特色があるから、音声言語から直接にはいる方が、ローマ字の特質にもかない、国語を純正にするためにも、効果がある。ただ、あまりこまかい所に注意しすぎると、いつまでも拾い読みの段階に止まりやすいので、その点にも気をつけなければならない。かなをなかだちとする方法は、児童の既得知識を利用するために、音節的にローマ字を教えるには役立つが、それではかなの表記法にとらわれて、ローマ字文に習熟しないおそれがあり、また、かなづかいの制約が直接にローマ字にかかることにもなるから、かなをなかだちとせず、音声言語から直接に教える方法をとる方が適当である。

  3. 文字および文章の書き方

    1. ローマ字には、印刷体と筆記体とがあり、両者は相当に字形がちがうから、児童にとって、はじめはその理解が困難であり、混乱を生じやすい。それでまず印刷体の読み書きを一通りのみこませてから筆記体にかかった方がよい。

    2. ローマ字で文章を書く場合、思うことを正しく、早く、美しく文字に表現することができるようにしなければならない。書こうと思う語をすぐそのまま文字に表現し、しかもそれが社会的約束からはずれたものでないようにすべきである。書こうとする語形が、文字に書かれる前に頭に浮かんでいるくらいになれば申し分がない。音に頼って書くことは、慣れていない語を組み立てる時には必要であるが、音にたよらずに語を文字にうつせるまでにすることが必要である。それ故、特別な努力を払わないでも、ローマ字で書くことができるようになるまで習熟させなければならない。

    3. ローマ字で文章を書く場合、従来のかな漢字まじり文の文体にかかわることなく、ローマ字文としての新しい文体を作り出すように指導すべきである。ローマ字としては、だらだらと長く続いた文章は意味がとりにくい。また、耳なれない漢語や同音異義語などの使用も、避けなければならない。ローマ字文としては、簡潔で、すなおな、意味のよく通るものが、最も望ましい。ローマ字文の作文指導にあたっては、そういう新しい文体の創造にも心がける必要がある。


[p.10-22]

ローマ字文の書き方

I つづり方

  1. 直音
     a    i    u    e    o
    ア イ(ヰ) ウ エ(ヱ)オ(ヲ)
    
    ka   ki   ku   ke   ko       ga   gi   gu   ge   go
    カ   キ   ク   ケ   コ       ガ   ギ   グ   ゲ   ゴ
    
    sa   si   su   se   so       za   zi   zu   ze   zo
    サ   シ   ス   セ   ソ       ザ ジ(ヂ) ズ(ヅ)ゼ   ゾ
    
    ta   ti   tu   te   to       da             de   do
    タ   チ   ツ   テ   ト       ダ             デ   ド
    
    na   ni   nu   ne   no
    ナ   ニ   ヌ   ネ   ノ
    
    ha   hi   hu   he   ho       ba   bi   bu   be   bo
    ハ   ヒ   フ   ヘ   ホ       バ   ビ   ブ   ベ   ボ
    
    ma   mi   mu   me   mo       pa   pi   pu   pe   po
    マ   ミ   ム   メ   モ       パ   ピ   プ   ペ   ポ
    
    ya        yu        yo
    ヤ        ユ        ヨ
    
    ra   ri   ru   re   ro
    ラ   リ   ル   レ   ロ
    
    wa
  2. よう音 (拗音)
    kya      kyu       kyo       gya       gyu       gyo
    キャ     キュ      キョ      ギャ      ギュ      ギョ
    
    sya      syu       syo       zya       zyu       zyo
    シャ     シュ      ショ   ジャ(ヂャ)ジュ(ヂュ)ジョ(ヂョ)
    
    tya      tyu       tyo
    チャ     チュ      チョ
    
    nya      nyu       nyo
    ニャ     ニュ      ニョ
    
    hya      hyu       hyo       bya       byo       byo
    ヒャ     ヒュ      ヒョ      ビャ      ビュ      ビョ
    
    mya      myu       myo       pya       pyu       pyo
    ミャ     ミュ      ミョ      ピャ      ピュ      ピョ
    
    rya      ryu       ryo
    リャ     リュ      リョ

    〔備考 1〕 以上は、現代語で標準的と認められる音を、ローマ字で書きあらわす場合と、かなで書きあらわす場合とを対応して示したものである。

    〔備考 2〕 次のようなつづり方も必要に応じて習わせる。

    shi(シ), chi(チ), tsu(ツ), fu(フ), ji(ジ,ヂ), sha(シャ), shu(シュ), sho(ショ), cha(チャ), chu(チュ), cho(チョ), ja(ジャ,ヂャ), ju(ジュ,ヂュ), jo(ジョ,ヂョ), di(ヂ), du(ヅ), dya(ヂャ), dyu(ヂュ), dyo(ヂョ), wo(ヲ, 助詞「を」にかぎる), kwa(クヮ), gwa(グヮ)〔補注参照〕

    〔備考 3〕 特殊な音の書きあらわし方については自由とする。

  3. いわゆる長母音はその文字の上にやまがた「^」をつけてあらわすか、または母音字を重ねてあらわす。ただし「ていねい」「命令」などの「エイ」は ei とする。

    obâsan おばあさん nêsan ねえさん Tôkyô 東京 ryôri 料理 kûki 空気 tyûi 注意 ôkii, ookii 大きい tiisai 小さい teinei ていねい meirei 命令

  4. はねる音はすべて n であらわす。

    sannin 三人 sinbun 新聞 denpô 電報 kantoku 監督 tenki 天気

    〔注意〕 はねる音をあらわす n の次にすぐ母音字または y が続く場合には、n のあとに切るしるし「'」を入れる。

    gen'in 原因 kin'yôbi 金曜日

  5. つまる音は、次に来る子音字を重ねてあらわす。

    Nippon 日本 gakkô 学校 kitte 切手 zassi 雑誌 ossyaru おっしゃる syuppatu 出発 tyotto ちょっと

    また、次のような場合には、アポストロフ「'」を使って示す。

    "A'" to sakebu. 「あっ」とさけぶ。

  6. 文の最初の単語や固有名詞やその他必要のある場合には、その語頭にに大文字をもちいる。

    Kyô wa kin'yôbi desu. きょうは金曜日です。 Tôkyô 東京 Huzisan 富士山

    〔付記 1〕 外来語は国語音のつづり方に従って書く。

    inki インキ naihu ナイフ tabako たばこ ranpu ランプ

    〔付記 2〕 外国語 (地名・人名を含む) のローマ字つづりは、原則として原語に従って書く。ただし日本語風に呼びならわした地名・人名は外来語なみにあつかう。

II 分ち書きのし方

  1. 原則として単語はそれぞれ一続きに書き、他の単語から離して書く。

    Suzusii kaze ga soyosoyo huku.
    涼しい風がそよそよ吹く。

    Kyô wa watakusi no tanzyôbi desu.
    きょうは私の誕生日です。

    Kare wa eigo mo deki, sono ue Huransugo mo zyôzu da.
    彼は英語もでき、その上フランス語も上手だ。

    Iya, sonna kimoti wa nai.
    いや、そんな気持はない。

    〔注意 1〕 いわゆる形容動詞と認められる語は、「だ」をはなして書く。

    kirei da きれいだ zyôzu da じょうずだ

    〔注意 2〕 複合語で一語としてまだ十分に熟していないものにはつなぎ「-」を入れる。

    rigai-kankei 利害関係 hanasi-tuzukeru 話し続ける

    ただし、一語として十分に熟したものには「-」を用いない。

    hinoki ひのき amagasa あまがさ

    〔注意 3〕 接頭語・接尾語は続けて書く。

    otera massakini まっ先に anatagata あなたがた ronriteki 論理 dorodarake どろだらけ

    ただし、接尾語で上の語に続けて書くと、意味のまぎれやすい場合には、離して書く。

    Hanako San 花子さん Tarô Kun 太郎君 Itô Zirô Sama 井藤次郎様

    〔注意 4〕 固有名詞は次のように書く。

    Nippon Ginkô 日本銀行 Sumidagawa すみだ川 Sakurazima 櫻島 Tôkyôwan 東京湾 Tôkyô-to 東京都 Tiba-ken 千葉県

  2. 助動詞は続けて書くのを原則とする。

    kikaseru 聞かせる misaseruさせる yorokobareru 喜ばれる tasukerareru 助けられる kakanai 書かない tabeyô 食べよう ikitai いきたい hanasimasu 話します okita 起き moratta もらっ yonda 読ん mimaiまい ikunai 行くまい

    〔注意 1〕 助動詞「う」は接続する動詞・助動詞などによって、それぞれの行のオ段長音となる。

    kakô 書こ sasô 差そ utô 打と utaô 歌お yomô 読も urô 売ろ kogô こご yobô 呼ぼ
    desyô でしょ masyô ましょ

    〔注意 2〕 助動詞「そうだ」「ようだ」は sô dayô da のように、それぞれ「だ」を離して書く。

    〔注意 3〕 助動詞「そうだ」は様子・有様などの意味を表わすものは、「そう」を前の語に続けて書くが、伝え聞く意味をあらわすものは前の語から離して書く。(次項参照)

    arisô da 有りそうだ aru sô da 有るそうだ suzusisô da 涼しそうだ suzusii sô da 涼しいそうだ

  3. 助動詞のうちで「だ」「です」「らしい」「ようだ」および伝え聞く意味をあらわす場合の「そうだ」などは、離して書く。

    Are wa Huzisan da.
    あれは富士山

    Huzisan wa utukusii yama desu.
    富士山は美しい山です

    Mô minna kaetta yô da.
    もうみんな帰ったようだ

    Kon'ya wa ame ga huru rasii.
    今夜は雨が降るらしい

    Kono hon wa Yamada Kun no rasii.
    この本は山田君のらしい

    Asoko wa taihen atui sô da.
    あそこはたいへん暑いそうだ

    〔注意〕 接尾語の「らしい」は続けて書く。

    Ano otoko wa itu made tattemo kodomorasii, ne.
    あの男はいつまでたっても子供らしいね。

  4. 助詞は、離して書くのを原則とする。

    Kore wa watakusi no hon desu.
    これ本です。

    Koko wa, natu wa suzusii si, huyu wa atatakai.
    ここ、夏涼しい、冬あたたかい。

    Kare wa, natu demo huyu demo zyôbu da.
    、夏でもでもじょうぶだ。

    Tenki ga kuzureru na to omowaseru no ga kono kumo da.
    天気くずれる思わせるこの雲だ。

    〔注意 1〕 助詞「は」「も」が助詞「に」「で」に重なった場合には続けて書く。

    Ue niwa ue ga aru.
    上がある。

    Dare nimo dekinai.
    だれできない。

    Tegami dewa osoku naru.
    手紙おそくなる。

    Kiku dake demo yoi.
    聞くだけよい。

    〔注意 2〕 接続の「と」は続けて書く。

    Haru ni naruto, tubame ga kuru.
    春になる、つばめが来る。

    〔注意 3〕 禁止の「な」は続けて書く。

    Ikuna, yo. 行くよ。

  5. 用言に付く助詞のうちで「ば」「ても」(「でも」)「て」(「で」)「ながら」「たり」(「だり」)などは続けて書く。

    Yomeba wakaru.
    読め分る。

    Mitemo wakarumai.
    ても分かるまい。

    Kusuri o nondemo naoranakatta.
    くすりをのんでもなおらなかった。

    Dôzo mite kudasai.
    どうぞ見下さい。

    Ugokanaide kudasai.
    動かない下さい。

    Nakinagara utatta.
    泣きながら歌った。

    Kodomotati ga detari haittari site asonde iru.
    子供達が出たり入ったり遊んいる。

    Tondari hanetari suru.
    とんだりはねたりする。

III 符号の使い方

  1. ローマ字文の中に用いる符号の主なものは、次のとおりである。

    .
    とめ
    ,
    くぎり(コンマ)
    ;
    おおくぎり(セミコロン)
    :
    ふたつてん(コロン)
    ?
    といのしるし
    !
    つよめるしるし
    ( )
    かっこ
    〔 〕
    かくがっこ
    “ ”
    引用のしるし
    ‘ ’
    ひとえの引用のしるし
    ぼう
    -
    つなぎ
    '
    きるしるし(アポストロフ)
    ^
    やまがた
  2. .」は文の終りに用いる。

    Kyô wa ii tenki desu.
    きょうはいいてんきです。

    〔注意〕 「.」は、また略語を示す場合にも用いる。

    N.H.K (Nippon Hôsô Kyôkai)
    日本放送協会

  3. ,」は、一つの文の中で、語句の切れ目に用いる。

    Hai, sô desu. はい、そうです。

    Amari tenki ga ii node, dekakete ikimasita.
    天気がいいので、でかけていきました。

  4. ;」は「,」よりも大きな区分を示す場合に用いる。

    Watakusi, anata, anokata; kore, sore, are; koko, soko, asoko nado wa mina daimesi desu.
    私、あなた、あの方; これ、それ、あれ; ここ、そこ、あそこなどはみな代名詞です。

  5. :」は、「;」で示す区分より意味の連絡のいっそう少ない区分を示す場合に用いる。

    Kotowaza niom iu : Saru mo ki kara otiru.
    ことわざにもいう: さるも気から落ちる。

  6. ?」は問いや疑いの文の終わりに用いる。

    Kore wa anata no desu ka?
    これはあなたのですか。

    Are wa nan darô?
    あれはなんだろう。

  7. !」は、感動や命令の意味を特に強くあらわす必要のある場合に用いる。

    Mâ, kirei da koto!
    まあ、きれいだこと。

    Hanako San, hayaku irassyai!
    花子さん、早くいらっしゃい。

  8. ( )」「〔 〕」は、説明のための語句や補いの語句をそえる場合などに用いる。

    Sensyû no nitiyôbi (3-gatu 17-niti), watakusi wa Yokohama e ikimasita.
    先週の日曜日 (三月十七日)、わたくしは横浜へ行きました。

    Kare wa sairen 〔no oto〕 ni bikkuri sita.
    彼はサイレン〔の音〕にびっくりした。

  9. “ ”」は、語句を引用する場合や人のいうことばをそのままうつす場合などに用いる。

    “Masao San, uguisu ga naite imasu, yo,” to itte, nêsan wa mado o akemasita.
    「正男さん、うぐいすがないていますよ」といって、姉さんは窓をあけました。

    Seisyo niwa, “Kami wa ai nari,” to aru.
    聖書には、「神は愛なり」とある。

    〔注意〕 引用文の中にさらに語句を引用する場合に、「‘ ’」を用いることがある。

  10. 」は、説明の語句をそえる場合などに用いる。

    Itiban atarasii yôhuku — kono aida tukutta bakari no o kite dekaketa.
    いちばん新しい洋服 — この間つくったばかりのを着てでかけた。

  11. -」は、複合語で、 まだ一語として十分に熟していない場合や、一語が二行にまたがる時に、その語が次の行に続くことを示す場合などに用いる。

    rigai-kankei 利害関係

    hanasi-tuzukeru 話し続ける

    Mukasi, mukasi, aru tokoro ni ozii-
    san to obâsan ga arimasita.

    むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがありました。

    〔注意〕 一語で二行にまたがる場合に、一つの音節の中途やはねる音の前では切らない、また、つまる音はかならず重なった字の間で切る。なお、切る場合は意味のとりやすいようにあつかう。

  12. '」は、はねる音 n とその次に来る母音字または y とを切り離す必要のある場合に用いる。(I.4. 注意参照)

  13. ^」は、母音字の上に付けて、その母音が長音であることを示す場合に用いる。(I.3. 参照)

[p.23-28]

補注

標準式(ヘボン式)のつづり方、その他

1. 直音

 a    i    u    e    o   
ア イ(ヰ) ウ エ(ヱ)オ(ヲ)

ka   ki   ku   ke   ko       ga   gi   gu   ge   go
カ   キ   ク   ケ   コ       ガ   ギ   グ   ゲ   ゴ

sa  shi   su   se   so       za   ji   zu   ze   zo
サ   シ   ス   セ   ソ       ザ   ジ   ズ   ゼ   ゾ

ta  chi  tsu   te   to       da             de   do
タ   チ   ツ   テ   ト       ダ             デ   ド

na   ni   nu   ne   no
ナ   ニ   ヌ   ネ   ノ

ha   hi   fu   he   ho       ba   bi   bu   be   bo
ハ   ヒ   フ   ヘ   ホ       バ   ビ   ブ   ベ   ボ

ma   mi   mu   me   mo       pa   pi   pu   pe   po
マ   ミ   ム   メ   モ       パ   ピ   プ   ペ   ポ

ya        yu        yo
ヤ        ユ        ヨ

ra   ri   ru   re   ro
ラ   リ   ル   レ   ロ

wa

2. よう音 (拗音)

kya      kyu       kyo       gya       gyu       gyo
キャ     キュ      キョ      ギャ      ギュ      ギョ

sha      shu       sho        ja        ju        jo
シャ     シュ      ショ    ジャ(ヂャ)ジュ(ヂュ)ジョ(ヂョ)

cha      chu       cho
チャ     チュ      チョ

nya      nyu       nyo
ニャ     ニュ      ニョ

hya      hyu       hyo       bya       byo       byo
ヒャ     ヒュ      ヒョ      ビャ      ビュ      ビョ

mya      myu       myo       pya       pyu       pyo
ミャ     ミュ      ミョ      ピャ      ピュ      ピョ

rya      ryu       ryo
リャ     リュ      リョ

3. いわゆる長母音はその文字の上に「¯」または「^」をつけてあらわすか、または母音字を重ねてあらわす。ただし「ていねい」「命令」などの「エイ」は ei とする。

obāsan おばあさん nēsan ねえさん ryōri 料理 kūki 空気 chiisai 小さい teinei ていねい

4. はねる音は n であらわす。ただし、mbp の前では m を用いる。

sannin 三人 kantoku 監督 temmongaku 天文学 shimbun 新聞 dempō 電報

〔注意〕 はねる音をあらわす n の次にすぐ母音字または y が続く場合には、n のあとにきるしるし「'」を入れる。

gen'in 原因 kin'yōbi 金曜日

5. つまる音は、次に来る子音字を重ねてあらわす。ただし、sh および ts の前では、shts を重ねずに st のみを重ねてあらわす。また、つぎに ch が続く場合には c を重ねずに t を用いる。

Nippon 日本 gakkō 学校 issō 一層 zasshi 雑誌 ossharu おっしゃる kitte 切手 yottsu 四つ matchi マッチ

また、次のような場合には、アポストロフ「'」を使って示す。

"A'" to sakebu. 「あっ」とさけぶ。

日本式のつづり方、その他

1. 直音

 a    i    u    e    o
ア イ(ヰ) ウ エ(ヱ)オ(ヲ)

ka   ki   ku   ke   ko       ga   gi   gu   ge   go
カ   キ   ク   ケ   コ       ガ   ギ   グ   ゲ   ゴ

sa   si   su   se   so       za   zi   zu   ze   zo
サ   シ   ス   セ   ソ       ザ   ジ   ズ   ゼ   ゾ

ta   ti   tu   te   to       da   di   du   de   do
タ   チ   ツ   テ   ト       ダ   ヂ   ヅ   デ   ド

na   ni   nu   ne   no
ナ   ニ   ヌ   ネ   ノ

ha   hi   hu   he   ho       ba   bi   bu   be   bo
ハ   ヒ   フ   ヘ   ホ       バ   ビ   ブ   ベ   ボ

ma   mi   mu   me   mo       pa   pi   pu   pe   po
マ   ミ   ム   メ   モ       パ   ピ   プ   ペ   ポ

ya        yu        yo
ヤ        ユ        ヨ

ra   ri   ru   re   ro
ラ   リ   ル   レ   ロ

wa                  wo
ワ                  ヲ(助詞の場合だけ)

2. よう音 (拗音)

kya      kyu       kyo      kwa     gya       gyu       gyo      gwa
キャ     キュ      キョ     クヮ    ギャ      ギュ      ギョ     グヮ

sya      syu       syo       zya       zyu       zyo
シャ     シュ      ショ      ジャ      ジュ      ジョ

tya      tyu       tyo       dya       dyu       dyo
チャ     チュ      チョ      ヂャ      ヂュ      ヂョ

nya      nyu       nyo
ニャ     ニュ      ニョ

hya      hyu       hyo       bya       byo       byo
ヒャ     ヒュ      ヒョ      ビャ      ビュ      ビョ

mya      myu       myo       pya       pyu       pyo
ミャ     ミュ      ミョ      ピャ      ピュ      ピョ

rya      ryu       ryo
リャ     リュ      リョ

3. いわゆる長母音はその文字の上に「^」をつけてあらわすか、または母音字を重ねてあらわす。ただし「ていねい」「命令」などの「エイ」は ei とする。

Obâsan おばあさん Nêsan ねえさん Tôkyô 東京 Kûki 空気 Tyûi 注意 ôkii, ookii 大きい tiisai 小さい Meirei 命令

4. はねる音はすべて n であらわす。

Kantoku 監督 Sinbun 新聞 Denpô 電報

〔注意〕 はねる音をあらわす n の次にすぐ母音字または y が続く場合には、n のあとにきるしるし「'」を入れる。

Gen'in 原因 Kin'yôbi 金曜日

5. つまる音は、次に来る子音字を重ねてあらわす。

Nippon 日本 Gakkô 学校 Kitte 切手 Zassi 雑誌 ossyaru おっしゃる Syuppatu 出発 tyotto ちょっと

また、次のような場合には、アポストロフ「'」を使って示す。

"A'" to sakebu. 「あっ」とさけぶ。

6. 文の最初の単語、固有名詞、および普通名詞、その他必要のある場合には、その語頭にに大文字をもちいる。

Kyô wa Kin'yôbi desu. きょうは金曜日です。 Tôkyô 東京 Kodomo こども

〔注意〕 元来は普通名詞であっても、他の役めをしているものには、その語頭に大文字を用いない。

Benkyô suru koto ga taisetu da.
勉強することがたいせつだ。


付録

国民学校におけるローマ字教育実施要綱

—昭 22. 2. 28 次官通達 —

昭和22年度から、国民学校において、事情のゆるすかぎり、児童にローマ字による国語の読み方・書き方を授けることとする。

昭和22年度に各国民学校において、ローマ字教育を行うには、次の各項による。

  1. 各国民学校において、ローマ字教育を行うかどうかは、その学校の教育上の責任者が、その学校の事情を考慮してこれを決定する。ローマ字教育を行う場合には原則として第4学年以上の各学年に行う。ただし、さらに下学年からローマ字教育を行い得るような学校では第3学年から行うことができる。

  2. 授業時数は、1年を通じて40時間以上とし、国語あるいは自由研究の時間のうちで行う。

  3. 教授の方針、方法、その他については文部省でローマ字教育の指針を編修し、配布することとする。

  4. 教科書は文部省編修のものを使用することを原則とする。

  5. 国民学校において授けるローマ字文の書き方は別冊「ローマ字文の書き方」による。

  6. ローマ字教育に関する教師の訓練については、本年度から適当の処置を講ずることとする。

(備考)
  1. この要項における国民学校とは、来年度から新学制が実施される場合には、小学校および新制中学校をさすものである。
  2. 昭和23年度からの実施案については、昭和22年度における実施の成果を基礎とし、さらに研究の上、決定する。

脚注

〔注〕 備考の (2) に関しては、この冊子のはしがきにも述べたように、目下、ローマ字調査会で研究・審議中であり、その結論が得られるまではこの実施要項に準じてローマ字教育が行われている。


[白紙1ページ(「付録」のうら)]


[白紙1枚(図書館で補修のために交換、または追加したもののようにみえる)]


[奥付: なし]


[裏表紙(図書館で補修のために交換したもののようにみえる)]

—転記部分は以上—

転記者の注釈

  1. 句読点のうちかたは、転記者のうつしまちがいをのぞけば位置は原典のとおりですが、読点としてもちいられているとおもわれるコンマ(,)は読点(、)にかきかえました。
  2. 漢字・ひらがな・カタカナのつかいわけと、おなじよみかたの漢字のつかいわけは、転記者のうつしまちがいをのぞけば原典のとおりですが、旧字体の漢字は、常用漢字の字体や現在一般にもちいられているとおもわれる字体のおなじ意味とおもわれる漢字にかきかえました。
  3. おくりがなのおくりかたは、転記者のうつしまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  4. 促音で発音されるとおもわれる<>(HIRAGANA LETTER TU)は、転記者のかきまちがいをのぞけば、ちいさい<>である<>(HIRAGANA LETTER SMALL TU)にかきかえました。
  5. 原典にある、段落の先頭の全角1文字分の空白は、転記者のかきまちがいをのぞいて、省略しました。
  6. ひとつの単語のなかの空白は、転記者のかきまちがいをのぞいて省略しました。(例: <注 意>は<注意>としました。)
  7. 平仮名繰返し記号(ゝ)は、転記者のかきまちがいをのぞけば、相応のかなにあらためました。(例: <行いつゝ>は<行いつつ>としました。)
  8. 以下のものは、ソフトウェアの仕様や設定、ハードウェアの表示域の幅など、この文書をご覧になる環境に依存します。かならずしも原典どおりにはなりません。
    1. 段落内の改行位置
    2. 文字と文字のあいだの間隔
    3. 行と行のあいだの間隔
    4. 段落と段落のあいだの間隔
    5. 文字の字体やおおきさ
    6. 太字・下線・斜体など、文字の装飾のぐあい
    7. そのほかいろいろ
  9. 上記のほかは、できるだけ原典に忠実に転記していますが、原典との、この文書をご覧になるかたにとって意味があるちがいがないことを保証するものではありません。ご心配のむきは原典を参照してください。
  10. 原典は紙に印刷された文書であり、上記の転記部分は、それを転記者(この文書の著者)が機械可読形式でHTML(Hyper Text Markup Language)をもちいてコンピューターに入力したものです。
  11. この文書は、インターネット上の著者のウェブ・サイトのなかの、著者の著作物、の理解をたすけるための参考資料、としての目的で原典を引用したものであり、それ以外の目的でもちいられるべきものではなく、原典が意図している目的でもちいられるべきでもありません。

版:
第1.1.7版
発行日:
2001年1月1日
最終更新日:
2023年5月27日
著者:
海津知緒
発行者:
海津知緒 (大阪府)

KAIZU≡‥≡HARUO