■英国規格(BS 4812 : 1972)—要約

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■以下は、日本語のローマ字表記方式の英国規格である、BS 4812 : 1972, "SPECIFICATION FOR THE ROMANIZATION OF JAPANESE", BRITISH STANDARDS INSTITUTION, 1972の要約です。最後の「注意がき」を無視しないでください。■原典をご覧になりたいかたは、BSI Knowledgeから購入してください。

BS 4812 : 1972の要約

1. 概要

  1. 日本語のかきことばのローマ字表記方式である。
  2. 使用者は、現代および歴史的な表記形式での日本語についての詳細な知識をもっていることが必要である。
  3. カナ文字からラテン文字への変換規則のみ。漢字をふくむ日本語の文章のローマ字化の正確性は、漢字をカナ文字に変換するときの正書法とこの規格の整合性に依存する。
  4. 「修正ヘボン式」(modified Hepburn system)としてしられている方式に、<ん><ン>をつねに<n>でかく例外と、外来語の表記につかわれるカナのローマ字表記を追加したもの。
  5. 現代仮名遣いが既知であり、その結果、漢字あるいは漢字かなまじりでかかれた単語のただしいよみかたも既知であるとする。ふりがながある場合はそれを尊重する。
  6. 使用者は、形態素境界の存在を認識できるものとする。長母音(long vowel)をふくむ音節をあらわす連続するカナ文字のあいだに形態素境界がある場合は長母音としない。たとえば<><><>の3つの連続するカナ文字列が、《格子》を意味する場合は<kōshi>になるが、《子牛》を意味する場合は<koushi>になる。(辞書の見出し語では、形態素境界はドットやハイフンなどであらわされるのが慣例である。) 動詞の基本形につく語尾<u>は、つねに形態素としてあつかわれる。例: omoutounuu ただし、古典の助動詞「候(そうろう)」は例外で、<sōrō>とする(<sōrou>ではない)。
  7. 大文字化とわかちがきに関する有用なてびきが以下の文献に含まれている:
    Cataloging Rules of the American Library Association and the Library of Congress: Additions and Changes, 1949-1958. Washington, D.C.: Library of Congress, 1959, pp 48-56: 'Manual of romanization, capitalization, punctuation, and word division for Chinese, Japanese, and Korean'
  8. 音節としての<n>(SYLLABIC N)(カナの<>または<>)におなじ単語内の母音字または<y>がつづく場合は、アポストロフィーでくぎる。例: <kan'ō>(観桜)、<kin'yū>(金融) ; しかし、<kanō>(可能)、<kinyū>(記入)は、<n>が音節のはじまりであり音節の一部なので、このようにかく。
  9. おなじ単語内で、音節としての<n>に<b>、<m>、<p>がつづく場合も、<m>ではなく<n>でかく。(研究社の新和英大辞典1954年版で導入された「修正ヘボン式」のこの例外は、おもに、規則にしたがって単一の単語としてかかれる、一定の体系的に形成された複合語における音節としての<n>の、異常で一貫性のないあつかいを回避するために採用されている。例: Shinmatsu(清末)、shuppanbu(出版部))
  10. こがきの<><>、あるいはそのようにかくことのできる文字は、二重子音として、あとにつづく子音字をかさねてかく。例: gakkōkuppuku ただし、2文字でひとくみのローマ字<sh>、<ch>、<ts>はそれぞれ<ssh>、<tch>、<tts>になる。例: nesshinhatchakufuttsuri
  11. 長母音は、マクロンをつかって<ō>のようにかく。ただし、/イ/の長母音をのぞく(表3の注を参照)。

2. カナ対ローマ字対応表

表1. 単純な1文字のカナ
H=hiragana; K=katakana; R=romanization
No. H  K  R
No. H  K  R
No. H  K  R
No. H  K  R
No. H  K  R
 1. あ ア a
 6. か カ ka
11. さ サ sa
16. た タ ta
21. な ナ na
26. は ハ ha(注1)
31. ま マ ma
36. や ヤ ya
41. ら ラ ra
44. わ ワ wa
 2. い イ i
 7. き キ ki
12. し シ shi
17. ち チ chi
22. に ニ ni
27. ひ ヒ hi
32. み ミ mi

40. り リ ri
    ゐ ヰ i(注4)
 3. う ウ u
 8. く ク ku
13. す ス su
18. つ ツ tsu
23. ぬ ヌ nu
28. ふ フ fu
33. む ム mu
37. ゆ ユ yu
41. る ル ru
 4. え エ e
 9. け ケ ke
14. せ セ se
19. て テ te
24. ね ネ ne
29. へ ヘ he(注2)
34. め メ me

42. れ レ re
    ゑ ヱ e(注4)
 5. お オ o
10. こ コ ko
15. そ ソ so
20. と ト to
25. の ノ no
30. ほ ホ ho
35. も モ mo
38. よ ヨ yo
43. ろ ロ ro
45. を ヲ o(注3)
46. ん ン n
47. が ガ ga
52. ざ ザ za
57. だ ダ da
62. ば バ ba
67. ぱ パ pa
48. ぎ ギ gi
53. じ ジ ji
58. ぢ ヂ ji
63. び ビ bi
68. ぴ ピ pi
49. ぐ グ gu
54. ず ズ zu
59. づ ヅ zu
64. ぶ ブ bu
69. ぷ プ pu
50. げ ゲ ge
55. ぜ ゼ ze
60. で デ de
65. べ ベ be
70. ぺ ペ pe
51. ご ゴ go
56. ぞ ゾ zo
61. ど ド do
66. ぼ ボ bo
71. ぽ ポ po

注:
  1. 助詞の<><>は発音どおりに<wa>とかく。
  2. 助詞の<><>は発音どおりに<e>とかく。
  3. <><>は現代仮名遣いでは助詞としてのみつかわれ、発音どおりに<o>とかく。外来語の表記につかわれる<>は<wo>とかく(表4参照)。
  4. <><>は現代仮名遣いではつかわれず、外来語の表記にのみつかわれる(表4参照)。
表2. 口蓋化した音節をあらわす2文字でひとくみのカナ
No. H   K   R
No. H   K   R
No. H   K   R
 1. きゃ キャ kya
 4. しゃ シャ sha
 7. ちゃ チャ cha
10. にゃ ニャ nya
13. ひゃ ヒャ hya
16. みゃ ミャ mya
19. りゃ リャ rya
 2. きゅ キュ kyu
 5. しゅ シュ shu
 8. ちゅ チュ chu
11. にゅ ニュ nyu
14. ひゅ ヒュ hyu
17. みゅ ミュ myu
20. りゅ リュ ryu
 3. きょ キョ kyo
 6. しょ ショ sho
 9. ちょ チョ cho
12. にょ ニョ nyo
15. ひょ ヒョ hyo
18. みょ ミョ myo
21. りょ リョ ryo
22. ぎゃ ギャ gya
25. じゃ ジャ ja
28. ぢゃ ヂャ ja
31. びゃ ビャ bya
34. ぴゃ ピャ pya
23. ぎゅ ギュ gyu
26. じゅ ジュ ju
29. ぢゅ ヂュ ju
32. びゅ ビュ byu
35. ぴゅ ピュ pyu
24. ぎょ ギョ gyo
27. じょ ジョ jo
30. ぢょ ヂョ jo
33. びょ ビョ byo
36. ぴょ ピョ pyo

表3. 長母音をふくむ、2文字または3文字でひとくみのカナ
No. H   R
No. H   R
No. H   R
No. H   R
 1. うう ū
 3. くう 
 5. すう 
 7. つう tsū
 9. ぬう 
11. ふう 
13. むう 
15. ゆう 
17. るう 
 2. おう ō
 4. こう 
 6. そう 
 8. とう 
10. のう 
12. ほう 
14. もう 
16. よう 
18. ろう 

 1. きゅう kyū
 3. しゅう shū
 5. ちゅう chū
 7. にゅう nyū
 9. ひゅう hyū
11. みゅう myū

13. りゅう ryū

 2. きょう kyō
 4. しょう shō
 6. ちょう chō
 8. にょう nyō
10. ひょう hyō
12. みょう myō

14. りょう ryō
19. ぐう 
21. ずう 
23. づう 
25. ぶう 
27. ぷう 
20. ごう 
22. ぞう 
24. どう 
26. ぼう 
28. ぽう 
15. ぎゅう gyū
17. じゅう 
19. ぢゅう 
21. びゅう byū
23. ぴゅう pyū
16. ぎょう gyō
18. じょう 
20. ぢょう 
22. びょう byō
24. ぴょう pyō
注:
  1. <><><><><><><><>あるいは母音をあらわすほかのカナを追加するか長音記号(<>)で表現される、表3にない長母音も、母音字のうえにマクロン( ¯ )をつけてかく。ただし、/イ/の長母音は<ii>とかく。
    例:     ああ   ā
    ほの  honō
    り  kōri
    またべ matabē
    ほし  hosii
    さい chiisai
      カーバイド kābaido
    ビール   bīru
    メーデー  Mē Dē
  2. 表3にあるつづりでも、<あ><う><え><お>のまえに「形態素境界」(複合語の境界や、活用語の語幹と語尾の境界など)がある場合には、それぞれ<a><u><e><o>とかく。
    例:     こうし(子牛)  kousi
    こうし(格子)  kōsi
    ながあめ(長雨) nagaame
      おもう(思う) omou
    とう(問う)  tou
    ぬう(縫う)  nuu
表4. 外来語の表記にのみつかわれるカナ
No. K   R
No. K   R
No. K   R
No. K   R
No. K   R

 2. ウァ wa


 8. クァ kwa
12. クヮ kwa


15. ツァ tsa






25. ファ fa

30. フャ fya



 3. ウィ wi


 9. クィ kwi



16. ツィ tsi

20. ティ ti




26. フィ fi




35. ヰ  wi


 6. ウュ wyu






19. ツュ tsyu

21. テュ tyu
22. トゥ tu




31. フュ fyu


 1. イェ ye
 4. ウェ we

 7. キェ kye
10. クェ kwe

13. シェ she
14. チェ che
17. ツェ tse




23. ニェ nye
24. ヒェ hye
27. フェ fe
29. フィェ fye

33. ミェ mye
34. リェ rye
36. ヱ  we

 5. ウォ wo


11. クォ kwo



18. ツォ tso






28. フォ fo

32. フョ fyo


37. ヲ  wo(注1)

39. ヴァ va

44. ヴャ vya


50. グァ gwa
54. グヮ gwa







62. ワ゛ va

40. ヴィ vi


47. ヴ vi

51. グィ gwi




58. ディ di



63. ヰ゛ vi
38. ヴ  vu


45. ヴュ vyu








59. デュ dyu
60. ドゥ du



41. ヴェ ve
43. ヴィェ vye


49. ギェ gye
52. グェ gwe



57. ジェ je



61. ビェ bye
64. ヱ゛ ve
66. ピェ pye

42. ヴォ vo

46. ヴョ vyo
48. ヴ vo

53. グォ gwo

55. ゲォ geo
56. ゲョ geyo





65. ヲ゛ vo
注:
  1. 外来語の表記につかわれる<ヲ><wo>とかく。助詞の<を><o>とかく(表1の注3参照)。
  2. この表は網羅的ではなく拡大する可能性があるが、日本の文部省によって現在認可されているくみあわせ、および廃止された特異なカナ文字つづりがふくまれている。
  3. この表にないものは、この表のつづりから類推してかくか、表1にしたがって1文字ずつローマ字にする。 (この注釈の後半(取消線部分)はANSIにはあるがBSにはない。)
  4. これらのつづりに長音記号()がつづいた場合の長母音は、最後の母音字のうえにマクロン(¯ )をつけてかく。(例: ゲォー geō)
  5. 子音をふくむカナ文字のまえにあるこがきのは、二重子音の規定にしたがってかく。例: バッハ Bahha (Bachのこと)。
  6. 原文のカタカナの<ア><イ><ウ><エ><オ><ヤ><ユ><ヨ><ワ>は、そうはかかれていても、辞書のつづり、あるいは発音にしたがって、じっさいはこがき(小書き)の<ァ><ィ><ゥ><ェ><ォ><ャ><ュ><ョ><ヮ>と解釈すべきことがある。(例: <コミユニテイ>のローマ字表記は<komiyunitei>ではなく<komyuniti>とする。) (この注釈はANSIにはあるがBSにはない。)

注意がき

  1. この文書は、インターネット上の著者のウェブ・サイトのなかの、著者の著作物、の理解をたすけるための参考資料、としての目的で著者が原典を要約したものであり、それ以外の目的でもちいられるべきものではなく、原典が意図している目的でもちいられるべきでもありません。
  2. この文書は、著者による原典の解釈にもとづいて記述されたものであり、その解釈は、この文書の読者による原典の解釈との、読者にとって意味のあるちがいがないものを保証するものではありません。ご心配のむきは、かならず原典をご参照ください。
  3. 章・節・項のくみたてや書式などは、原典とはことなります。

変更記録

第1.1版 (2000年5月29日)
新規作成。
第1.2版 (2024年3月6日)
第2.1版 (2024年3月21日)
第2.1.1版 (2024年3月22日)
第2.2版 (2024年3月24日)
ISO3602と平仄をとるかたちで修正

版:
第2.2版
発行日:
2024年3月24日
最終更新日:
2024年3月24日
著者:
海津知緒
発行者:
海津知緒 (大阪府)

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