■ローマ字による学術用語の書き表し方—引用

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■以下は、「文部省, 日本言語学会, 日本英語学会(著). 学術用語集 言語学編. 東京都, 日本学術振興会(発行), 1997年, 438ページ. (ja, B6よこがき)」から転記したものです。最後の「転記者の注釈」を無視しないでください。

—以下転記部分—

4. ローマ字による学術用語の書き表し方

昭和49年1月
文部省大学学術局情報図書館課

この書き表し方は、文部省編集の「学術用語集」に記載する用語の読み方を示すローマ字書きについて規定する。

1. 用語のローマ字書きは、「ローマ字のつづり方」(昭和29年12月9日内閣告示第1号)の第1表に掲げたつづり方による。

2. はねる音「ン」は、すべて n と書く。

例1.
電気 denki
天文学 tenmongaku
円板 enban
ポンプ ponpu

3. はねる音を表す n と次に来る母音字又は y とを切り離す必要がある場合には、n の後に切るしるし「'」を入れる。

     
例2.
電圧 den'atu
肝油 kan'yu

4. つまる音は、最初の子音字を重ねて表す。

例3.
接触 sessyoku

5. 長音は、母音の上に「^」を付けて表す。

例4.
ケーブル kêburu

ただし、i の長音は、ii と表記する。このため、i の長音の場合と i を重ねた音の場合との区別がつかないことも起こる。

   
例5.
シールドケーブル siirudo-kêburu
委員会 iinkai

6. 固有名詞は、語頭を大文字で書く。

例6.
学術用語審査基準 Gakuzyutu-yôgo-sinsa-kizyun

7. 特殊音の書き表し方は、次のようにする。

例7.
ディ(di) ディジタル計算機 diziitaru-keisanki
デュ(dyu) デユーイ十進分類法 Dyûi-zyussin-bunruihô
ファ(fa) ファクター fakutâ
フィ(fi) フィルム firumu
フェ(fe) フェノール fenôru
フュ(fyu) ディフューザー difyûzâ
クィ(kwi) スクィーザー sukwiizâ
シェ(sye) ロシェル塩 Rosyeru-en
ティ(t'i) コーティング kôt'ingu
トゥ(t'u) サンクトゥス sankut'usu
チェ(tye) チェーン tyên
ツェ(twe) コンツェルン kontwerun
ウィ(wi) ウィンチ winti
ウォ(wo) ウォーム歯車 wômu-haguruma
ジェ(zye) ジェットエンジン zyetto-enzin

注:ローマ字書きには firumubaffâ のような合字の活字体を使わない。

8. 外国の地名・人名などの固有名詞のローマ字書きは、用語の仮名書きを基準としてつづる。

9. 漢語・国語だけで構成されている語は、次のように書く。

9.1 単語は、一続きに書くことを原則とする。

例8.
酢酸 sakusan
合金 gôkin

9.2 複合語は、それぞれの成分語が3音節以上であるときは、つなぎ「-」を入れて書くことを原則とする。

例9.
絶縁破壊 zetuen-hakai
促進老化試験法 sokusin-rôka-sikenhô

ただし、連濁する場合には、つなぎ「-」を入れず続けて書く。

例10.
切断といし車 setudan-toisiguruma

9.3 複合語における2音節以下の成分語は、その前後の成分語と続けて書くことを原則とする。

例11.
加色法 kasyokuhô
過充電 kazyûden

ただし、特に意味をはっきりさせる必要がある場合、漢字を音読する語と訓読する語とが混じる場合及び漢字2字から成るような成分語の場合には、2音節までのものでも、つなぎ「-」を入れて書く。

例12.
はちの巣放熱器 hati-no-su-hônetuki
非電解質 hi-denkaisitu
例13.
管配置 kuda-haiti

注: kanhaiti と読むのであれば、つなぎ「-」は不要である。

例14.
硬質磁器 kôsitu-ziki

9.4 助詞は、他の語から離して書く。

例15.
重力の加速度 zyûryoku no kasokudo

10. 外国語(原語の発音に従った語)は、大文字・小文字の使い方、つなぎ「-」の使い方、分かち書きなどは原語に従って書くのを原則とする。

例16.
methyl ethyl ketone メチルエチルケトン metiru-etiru-keton
Edison dynamo エジソンダイナモ Ezison-dainamo

ただし、原語が1語であっても、そのままではつづり方が長くて読みにくさを感ずるものには、つなぎ「-」を入れて差し支えない。

例17.
dichlorodifluoromethane ジクロロジフルオロメタン zikuroro-zihuruoro-metan

注: 外来語もこれに準じて書く。

11. 漢語・国語と外国語・外来語とが複合した言葉は、漢語・国語の部分については9の原則により、外国語・外来語の部分については10の原則によって書き、またその間にはつなぎ「-」を入れて書くのを原則とする。

例18.
吸収ピペット kyûsyû-pipetto
ジアゾ化促進剤 ziazo-ka-sokusinzai

12. A, B, C, ..., X, Y, Z などのローマ字は、その文字をイタリック体で示す。

例19.
I形鋼 I-gatakô
J形グルーブ J-gata-gurûbu
L形シリンダー L-gata-sirindâ
m次高調波 m-zi-kôtyôha
SN比 SN-hi
T定規 T-zyôgi
U字管 U-zi-kan
Vベルト V一beruto
W形機関 W-gata-kikan
X線 X-sen
Y継手 Y-tugite

注: 「AE剤【セメント】」(air-entraining agent)のローマ字書きで、AEを普通の活字書体(ローマン体)で組めば[a-e]と発音し、イタリック体では組めば[ei-i:](転記者の注釈: U+02D0 Modifier Letter Triangular Colonはコロンで代用してある)と発音する約束である。

13. α, β, γ, … などのギリシア文字は、そのまま用いて書く。

例20.
α線 α-sen
β線 β-sen
λ形二重分離 λ-gata-nizyû-bunri

【参考】「ローマ字のつづり方」(昭和29年12月9日内閣告示第1号)の第1表

第1表 〔( )は重出を示す。〕

a

i u e o


ka ki ku ke ko kya kyu kyo
sa si su se so sya syu syo
ta ti tu te to tya tyu tyo
na ni nu ne no nya nyu nyo
ha hi hu he ho hya hyu hyo
ma mi mu me mo mya myu myo
ya (i) yu (e) yo


ra ri ru re ro rya ryu ryo
wa (i) (u) (e) (o)


ga gi gu ge go gya gyu gyo
za zi zu ze zo zya zyu zyo
da (zi) (zu) de do (zya) (zyu) (zyo)
ba bi bu be bo

bya

byu byo
pa pi pu pe po pya pyu pyo

—転記部分は以上—

転記者の注釈

  1. 原典は紙に印刷された文書であり、上記の転記部分は、それを転記者(この文書の著者)が機械可読形式でHTMLをもちいてコンピューターに入力したものです。マークアップのしかたは、転記者の解釈によるものです。
  2. 句読点のうちかたは、コンマ()を読点()に変更した以外は、著者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  3. 漢字・ひらがな・カタカナのつかいわけと、おなじよみかたの漢字のつかいわけは、著者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
  4. おくりがなのおくりかたは、著者のかきまちがいをのぞけば原典のとおりです。
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  6. 原典では、一部たてがきの部分があります。
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    7. 太字・下線・斜体など、文字の装飾のぐあい
    8. そのほかいろいろ
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  9. この文書は、インターネット上の著者のウェブ・サイトのなかの、著者の著作物、の理解をたすけるための参考資料、としての目的で原典を引用したものであり、それ以外の目的でもちいられるべきものではなく、原典が意図している目的でもちいられるべきでもありません。

版:
第1.1.2版
発行日:
2003年2月5日
最終更新日:
2023年5月27日
著者:
海津知緒
発行者:
海津知緒 (大阪府)

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