■以下は、
1. (社)日本ローマ字会 事務局(著). 「99式」−よくある質問への回答(1). Roomazi Sekai. Syadan-Houzin Nippon Roomazikai. 1999年11月, No.679, pp.17-18. (ja).
2. (社)日本ローマ字会 事務局(著). 「99式」−よくある質問への回答(2). Roomazi Sekai. Syadan-Houzin Nippon Roomazikai. 1999年12月, No.680, pp.9-10. (ja).
からの引用です。最後の「注意がき」を無視しないでください。
事務局名になっていますが、書いたのは筆者(海津知緒)です。内容は、当時、日本のローマ字社の理事長をしておられた柴田武(しばた・たけし)先生が、京都の事務局にこられて海津とはなしあったときのやりとりを中心にまとめたものです。誌面のページ数の関係で、2回にわけて掲載されています。
(社)日本ローマ字会 事務局(著). 「99式」−よくある質問への回答(1). Roomazi Sekai. Syadan-Houzin Nippon Roomazikai. 1999年11月, No.679, pp.17-18. (ja). からの引用です。
質問 1.
「99式」は「正書法」ではなく「翻字法」としてのローマ字表記とのことですが、これは、ローマ字表記を「正書法」にしようといういままでのローマ字運動とは矛盾するものではないでしょうか。
回答
いいえ、矛盾するものではありません。
ローマ字表記を正書法としようといういままでのローマ字運動は、つぎの3つの要素があるとおもいます。
- 日本語の表記につかわれる文字を、学習や機械処理のコストがたかい漢字を廃止し、国際的に通用しやすくするためにローマ字にする。(日本語表記の文字改革)
- 日本語の表記と発音との関係が1対1になるようにして、ただしく発音された音声を耳できいたとおりにかけばただしいつづりになり、ただしいつづりでかかれたものを規則どおりによめばただしい発音になるようにする。(日本語の表記法改革)
- 同音異義語、同綴意義語を整理し、日本語を、メディア依存性のない、わかりやすくつかいやすいものにする。(日本語の言語改革)
いままでのローマ字運動は、この3つを同時に実現しようとし、そのためのローマ字表記法をかんがえてきました。
しかし、2の表記法改革と3の言語改革は一朝一夕にできるものではありません。また、表記法改革と言語改革がなされなくても、ローマ字の文字としての便利さ、生産性のたかさ、国際性のたかさなどはかわるものではありません。表記法改革と言語改革が文字改革の前提条件になるわけでもありません。まず文字改革だけをやり、そのあとで表記法改革をやることも可能です。
いままでの日本語のローマ字表記方式では、
- 長音の表記の問題
- 字上符のついたローマ字のあつかいにくさ
- なにが長音か(とくにエ列長音)が明確でない
- 外来語の表記の問題
- 外来語の表記の不統一
- 外来語の表記と発音の関係の不統一
- わかちがきの問題
- 実用的なわかちがきの規則がない
という問題があり、文字改革すらできていない状況でした。
「99式」は、この状況から、まずは文字改革を確実にできるようにするための方式であり、ローマ字運動を一歩進めるためのものです。
質問 2.
「カナにしたがったローマ字つづり」とありますが、この「カナ」は現代仮名遣いのことでしょうか。それとも歴史的仮名遣いや、デタラメな仮名遣いもふくむものでしょうか。仮名遣いがかわれば、「99式」もかわるのでしょうか。回答
「99式」はカナ文字をローマ字に変換する規則であって、もとのカナ文字列がどのような規則でかかれているかはといません。「99式」は、日本語表記の文字改革を確実におこなえるようにするためのもので、日本語のただしいつづりや、ただしい日本語をさだめるものではありません。
したがって、仮名遣いがかわっても「99式」を変更する必要はありません。ただし、つぎの2つの場合は変更の必要があるとおもいます。
- 「99式」では対象となっていない、あたらしいカナ文字がつかわれだしたとき。
- 「99式」ではかけない、ちいさくかくカナをともなった2文字以上でひとくみのカナ文字列がつかわれだしたとき。
2については、ちいさいカナ文字を単独でローマ字に変換する規則をつくる必要があるとおもいます。建設的なご意見を期待します。
質問 3.
ふりがなはもともと漢字にふるカナのことで、カナや長音記号にはふつう「ふりがな」をつけません。「ブレーメン」に「ぶれーめん」とふってある幼児むけ絵本もあります。「長音記号を直前の母音字でかく」ということを「ふりがな方式」とするのはおかしくありませんか。
回答
長音記号(ー)に、長音記号以外のなにがしかのひらがなをふるとしたら、「あ」「い」「う」「え」「お」のどれかであり、それをローマ字でかけば、結果的に「直前の母音字でかく」ということになります。
この、幼児むけの絵本で、たとえば「ブレーメン」というカタカナのそばにちいさくふられている「ぶれえめん」というひらがなを何とよべばいいか、「ふりがな」のほかに適切なことばがあればそれにあらためるべきだとおもいますが、いまのところほかに適切なことばがみつからないので、「ふりがな」としています。
(社)日本ローマ字会 事務局(著). 「99式」ーよくある質問への回答(2). Roomazi Sekai. Syadan-Houzin Nippon Roomazikai. 1999年12月, No.680, pp.9-10. (ja). からの引用です。
質問 4.
長音記号を直前の母音字でかくと、ローマ字文からもとのカナ文字文に正確にもどらないことになります。「roo」は、「ろお」にも「ろー」にも変換することができます。これでは、翻字(transliteration)とはいえないのではないでしょうか。
回答
たしかにそのとおりだとおもいます。カナ文字列への逆変換のための長音記号のローマ字表記をさだめる必要があるとおもいます。建設的なご意見を期待します。
質問 5.
日本式や英米標準では「kwa」は「クヮ」のローマ字表記とされています。「99式」では「クヮ」の表記がさだめられていないようですが、どうなっているのですか。
回答
おっしゃるとおり、問題だとおもいます。建設的なご意見を期待します。
質問 6.
「今日は(こんにちは)」(あいさつのことば)や、「今はの時(いまはのとき)」の「は」は「99式」ではどうかきますか。
回答
「今日は!」の「は」を助詞の「は」と解釈するかたは、自分のこのみにしたがって「Konniti ha!」と「Konniti wa!」のどちらかでかくことになります。
「今日は!」の「は」を助詞の「は」とはかんがえず、「今日は」でひとつのあいさつのことばだと解釈するかたは、「Konnitiha!」とかくことになります。もちろん、原文が「今日わ!」とか「こんにちわ!」とかのようにかかれていたら、「Konnitiwa!」になります。
「今はの時」も同様に、「は」を助詞の「は」と解釈するかたは、自分のこのみにしたがって「ima ha no toki」と「ima wa no toki」のどちらかでかくことになります。
「今はの時」の「は」を助詞の「は」とはかんがえずに、「今は」で《臨終》などの意味をあらわすひとつのことばだと解釈するかたは、<imaha no toki>とかくことになります。もちろん、原文が「今わの時」とか「いまわのとき」とかのようにかかれていたら、<imawa no toki>になります。
質問 7.
促音の「っ」が語末にきたときは、「99式」のローマ字ではどうかきますか?
回答
その点についてはまだ決められておらず、要検討課題です。建設的なご意見を期待します。
質問 8.
「囲う(かこ・う)」と「書こう(か・こう)」のように、カナでかくとおなじつづりになってしまう語でも、日本式やISO3602では「kakou」と「kakô」のように、ローマ字ではかきわけられていました。しかし、「99式」ではどちらも「kakou」になってしまい、区別がつきません。このことに対する対策はないのですか。
回答
今後の検討課題だとおもいます。建設的なご意見を期待します。