The biography of Gou Yuehua

07-04/14

4.うのみは禁物

 後に世界選手権で優勝した後、日本卓球協会専務理事の荻村伊知郎先生に「あなたは、あまり体格に恵まれていないが、それをどう補ったのか」と聞かれたことがある。

 確かに標準的な選手として私の体格は不合格だろう。

 かつて将来性がないと言われた位だ。しかし、それはあくまでも人の見方だと思った。試合に負けると、郭躍華はどうのこうのと風当たりが強く、プライドを傷つけられることもあったが、人が何を言っても、私はそう思わないのだ。いつも「私はまだ期待に応えられる」と思っていた。

 背が低いというハンデを持っている私にとって、コートは余計広く感じられ、常に走ったり、飛びつかなければならない。まして私のようなタイプだと絶えず大きく移動しながら打たないと駄目だった。そのお陰で、私は他人よりも優れたフットワークを身につけることが出来た。

 一人の優秀な選手の技術は、ただ何かの必要で覚えたものでもなければ、単なる条件と環境の変化によって生まれたものでもない。

 自ら何かを編み出そうと言う積極性や、主導性、創意が、高いレベルの競争で勝利を収める為の前提条件なのだ。

 第35回世界選手権大会で男子シングルスの決勝戦を途中で放棄せざるをえなかったことに私は大きなショックを受けた。

 私は股や足のばねを自慢にしていた。ところが最も自信のあった所に問題が起き、取り返しのつかないことになってしまった。経験や自信は当てにならないとつくづく考えさせられた。

郭躍華自伝07***新しい技術の誕生***

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