３．失敗も一種の資本

　中国卓球チームという栄えある伝統を持つグループの中で数多くの一流選手が生まれ育ったが、その一人一人の過程を見ると、順風満帆に歩んできた者はいない。

　成功と失敗の天秤は絶えずドラマチックな変化を続けている。

　「失敗も一種の資本となり、又、模索しながら働き、そして最大の努力をしたあなたの経験の積み重ねでもある。だから、ちょっとしたことで元気をなくし、自分に属すべき財産を捨てる理由はない」

　李富栄監督はつくづくと自分の感想を語っていた。その頃、私達二人の間の話題は３５回世界大会のことでもちきりだったし、チーム全体も同じような雰囲気に包まれていた。

　もう言い訳は無用で、私達の前には自分の手でチャンピョンを奪い返すという道しかないのだった。とにかく全国各界の人々から力を借りて、チャンピョンを奪い返さなければならない。圧力が掛かってくるのは決して悪いことではない。

　圧力をどう見るべきか、又どうやって圧力の中から抜け出して、圧力を原動力に変え、主導権を握るようにしたら良いのか、今では差し迫った問題となってきている。認識と気持、士気、心に受けたショックなどとは別の問題で、気持ちを整理し、精神的に立ち直るまで時間が掛かるのは仕方が無いが、技術、戦術、タイプ、戦型、応変能力、体力などの問題は今まで自信があったものも、無かったものも、全部最初からやり直さなければならなかった。