The biography of Gou Yuehua

06-04/14

4.バーミンガム大会◆

 激戦を胸に張り詰めた空気に包まれたバーミンガム。第34回世界卓球選手権大会に出場する選手達は一刻も惜しんで、技に磨きをかけ、血湧き踊るような張り切り方を見せている。

 一方、世界各国からやって来たファン達は、争うように宝くじを買っている。地元の商人は待っていたとばかり、大量の宝くじを売り出して、金を儲けようとしている。宝くじの表にはそれぞれ1人の優秀選手の名前とその値段が書かれてあった。

 例えばある選手の値段は1対6だとすると、この選手が優勝した場合、1ポンドで買った宝くじで6ポンド貰えることになる。

 切符売り場の前の看板には、ベントソン、ヨニエル、クランパー、シュルベック、ガーガリー、高島、河野らの外国の優秀選手と中國選手の写真、そして、それぞれの値段が書いてあり、私の値段は1対2で一番安い。つまり、私が優勝する可能性が一番大きいと商人は予想しているわけだ。

 このことを知った私は思わずほくそえんだ。私は「最後の笑いこそ本当の笑いだ」という言葉を忘れていたのだ。

 熱戦の火蓋が切られた。団体戦では私の調子が良かった。予選リーグからハンガリーに当り、徐寅生団長は「ストレートで勝って欲しい。士気を高め、良いコートマナーを見せよう」と指示したが、私は「大丈夫、この間のヨーロッパ遠征で勝ったばかりじゃないか」と思い、相手を見くびっていた。そんな気持ちで出場した私は、まだ訳の分らないうちに、ヨニエルとガーガリーに続けて負け、2点取られてしまった。しかし、結果的には5対3で勝ったために、銘記しておかなければならない教訓がうやむやになってしまった。

 男子シングルスはバーミンガムの商人が望む通りの結果だった。私は最後まで笑えなかったが、初出場にしては世界2位というのは決して恥ずかしくない成績だと思った。人間が自慢するのは、自分の目指した最大の目標が達成された時よりも何も得られていない時の方が多いのではないのだろうか。中國の人々が望んでいるのは世界チャンピョンであって、そのために頑張らなければならないのに、個人の損得にこだわり、1人よがりに「恥ずかしくない」と自慢するのは何だろう。

郭躍華自伝06***痛恨の肉離れ***

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