２．啓蒙の先生−湯重�R

　あとで知ったのだが、この背の高い男の人が厦門市少年体育学校で卓球を教えている湯重�R先生だった。その日の午後、湯重�R先生は私を市の少年宮の卓球館へ連れていってくれた。道すがら、あまりのうれしさに胸がときめくのをどうすることも出来なかった。

　「体育学校には優秀な先生もいるし、ちゃんとしたいい卓球台もある。そこに入ったら、もう木べらなんか使わなくていい。一人一人に、ブルー、赤、黄色のラケットが配られ、そのラケットを使えば、相手がさわりもしないような不思議なサーブが出せる。」という兄の言葉が思い出された。

　学校チームさえ羨しくてたまらない当時の私には、体育学校に入るなんて、まるで夢のような話だった。又これで色のついたラケットをもらって兄を負かそうというのも夢ではなくなったと思った。

　私は湯先生に気に入られたらしい。体育学校の普通クラスの生徒になり、これで目的なしにやっていた。卓球が終ると同時に、兄建華とけんかすることなどもなくなったわけだ。

　ある日作文の時間に一冊の絵本を読んだあと「自分の言葉でストーリーを書きなさい」と先生に言われた。私は兄と自分のことも入れて、一生懸命に書き先生にほめられた。そして兄のいる五年の教室でもこの作文を読み上げた。この日の授業が終ってから私達兄弟は又仲よくなった。二人は手をとり合って並木道を家に帰り、首につけてあった赤いネッカチーフは風にはためいて、一段とあざやかさを増していた。