１．コーチとの出会い

　１９６４年、風もさわやかなある夏の日、学校の特製の低いコートの前に、はだしでボールを夢中に打っている二人の姿があった。

　この日、高学年の生徒はピクニックに出かけたし、低学年の生徒もみなどこかへ行ったのでコートを独占して心ゆくまで楽しめるチャンスがとうとうやってきたのだった。ちょうど夢中でやっている最中に、校長先生と体育の先生が背の高い男の人をつれて来た。

　その男の人はそばで私達のゲームを興味深げに見ていた。それを意識して、うまいところを見せようと思った。ところが、かえって集中できなくなり、打つボールもままならず、力強くスマッシュしたつもりがボールはふわふわと浮いてしまう。あまりの口惜しさに顔が真赤になってしまった。するとそばで見ていた男の人は笑いながら「君が打っているのは日本式ループドライブだね」と福建省の方言で皮肉を言った。