1−B2
新学年になって2日目。
今日も新入生の入学式があるため授業は無く、クラス委員などを決めたあとは入学式の後片づけをして午前中で終わるスケジュールだった。
ただし、運悪く入学式会場の清掃の分担となり、昼過ぎまで引き留められてしまったため、少々不満を溜め込んでしまったわたしは、同じ班だったクラスメイトの何人かと共に駅前のファーストフードで遅めの昼食を摂って、愚痴を言い合った。
彼──山脇君の姿を見かけたのは、その後、駅前でみんなと別れたすぐ後のことだった。
昨日は丸1日寝て過ごしていた彼も、今日はそんなことは無かったのように普通に過ごしていた。
昨日の印象が強かったせいか、逆にあまりに普通で拍子抜けしていたのだけど、しかしそれもこのシーンを目撃する前までのことだった。
まだ制服姿の彼は駅前のロータリーに止まっていた派手な青色のオープンカーの助手席に乗り込んだのだけれど、その車を運転していたのが二十代前半くらいのものすごい美人だった。
そして二人の様子は結構親しげで、興味本位でどういう関係なのかが気になってしまったわたしは、思わずその車の近くの柱の影から様子をうかがってしまう。
とその時、私は後ろから軽く肩を叩かれ、振り返るとそこにはわたしと同じく制服姿の橡さんがいた。
「!?」
とっさにのぞき見をしていたことを誤魔化そうとしてあたふたするわたしだったが、橡さんが待ったをかける。
「大声を出さないで。二人に気づかれるじゃない。」
そう言われて、再び車の方に目を向けると、オープンカーはウインカーを点滅させて発進しようとしている。
そして「追うわよ。」という橡さんに手を引かれるままに、近くの乗り場からタクシーに乗り込むことになってしまった。
「運転手さん、あの青いオープンカーについて行ってください。」
わたしがことの展開に付いていけない間にも車は走り出し、車はロータリーを出て幹線道に合流する。
ようやく落ち着いたところで、わたしがことの次第を問いたげな視線を向けると、
「言っとくけど、タクシー代、割り勘だからね。まあ、市外に出ることはないはずだから、せいぜい2〜3千円てとこだと思うけど。」
と、彼女はわたしの意図を誤解した回答を返す。
いや確かにタクシー代は心配なんだけど、それ以前にこれは一体何事なのかということの方が知りたいのだ。
橡さんはどういう意図でもって2人を尾行しようというのか。
そしてあの2人との関係は。
そういうことを聞きたいのだけれど、今の橡さんは妙なオーラをまとっている感じで、とても聞ける雰囲気ではなかった。
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