主人公は騎手で、双子の妹がいます。そして、何と二人の間にはテレパシーが存在するのです。と言っても
オカルトチックな話ではなくて、時々相手の考えていることが予想できて、かなりの確率で的中するといった程度です。
しかし、これはかなり深い、精神的な結び付きだと思います。二人は異性なのです。この兄妹のうちのどちらかを好きになったら、
その相手は残りのもう一人の存在を意識せずにはいられないでしょう。年頃の若者が、肉親に対する愛情と恋人に対する愛情を
使い分けなければならない、それに慣れるまで少しの期間を要する……なんてことを連想しました。
【ラストシーン】 「私たちが来たのは」 王女が言った。「姪のダニエルが何としても行かねばならない、と言ったからなの」
半ば詫びるように説明した。「私がアイスフォールの昼食会から家に帰ると」 王女が私に言った。「ダニエルが歩道で待ってたの。
あなたが大変な危険にさらされていて、ニューマーケットの妹さんの家にいる、と言うの。どうしてわかったのか知らないが、
絶対に間違いない。ただちに行かなければならない、と言ったの」(中略)
「彼女は私たちと同じね、そうじゃない?」
「何とも言えないな」 私が言った。「彼女の考えていることがわかったためしがないんだ」
「今日のことがあった後は、わかるかもしれないわ」 と言うと、親しみのこもった口ぶりでダニエルに言った、
「何か考えてみて。兄が当てられるかどうか」 「いいわ」 沈黙が続いた。
私の頭には、テレパシイというのは不確定なもので、ごくたまにしか作用しないものだ、という考えしかなかった。
私が、王女を見、ボビイとホリイを見ると、みなの顔に、この瞬間が私たちみんなの将来にとって重要な意味を持つかのような
希望、期待、理解の表情が一様に浮かんでいた。私はダニエルの顔を見て微笑した。間違いない、と確信した。
「ほこりよけのカバー」 私が言った。