魔王さまと僕
魔界──
空の中の見えない亀裂から僕らは違う時空へ入った。身体が痺れるほどの寒さから、急に暖かな空気へと変わり、僕は閉じていた目を開いた。眼下には濃い緑のジャングル。濃厚な原始の匂い。
ただ空の色だけは僕らの世界と同じ青。
いつものように洞窟へ行くものと思っていたのに、ラキエは見知らぬ別な場所へ降り立った。
森の中、一本の高い針葉樹を中心に開けた場所がある。いや、折れた木々がごろごろとあるからむりやり拓いたのかもしれない。
「俺さまが目をつけた木だ。さっきのヤツにも負けてないだろ」
ラキエは自慢げにいいながら抱えていた僕の身体を地面に下ろした。
「へえ………」
僕は大きく姿のいい木を感心して見あげた。確かにもみの木にも似ている。
「待ってろ、仕上げがある」
「しあげ?」
ラキエはごそごそと懐をさぐり、ギラギラと輝く宝石をいくつもとり出した。それを無造作に僕に押しつける。
「ちょっと持ってろ」
僕の手の上にてんこもりにされた青や赤の宝石。どうするつもりだろう?
ラキエはまた別な石を取り出した。それをぐしゃりと簡単に握りつぶす。砕く前はただの黒っぽい石だったのが、粉々になった途端、チカチカ青白く光り出した。
「ほら、それ寄越せ」
「え。うん」
ラキエは光る石を載せた手のひらを差し出した。その上に宝石を渡す。
「アシュ、ちょっとこの木から離れていろ」
「?」
訳がわからないが言うとおりにラキエからも木からも少し離れてみる。
「ちょっとだぞ、見えるところにいろよ」
「うん、大丈夫だよ」
魔界は人間には危険だと言って、ラキエは僕がそばから離れるのを許さない。実際、ちょっと離れただけで、今までにも何度か襲われたことがあるので、これは過保護とは言わない。
ラキエは僕がとどまった位置に納得したのか、羽根をはばたかせて空中に浮かんだ。
さっきまで見上げていた木を上から見下ろして手の中のものをばらばらと撒き散らす。巻き終えたと同時にラキエは冷却魔法を放った。
色とりどりの宝石と、輝く青い光りを降り注がれた木は、そのままそれらを身にまとった姿で凍りついた。
「………」
僕は息を呑んでその美しい光景を見つめた。まるでガラス細工のクリスマスツリーだ。青白い光は氷の下でそのままチカチカと明滅を繰り返す。
ラキエは地上に降り立つと、僕の隣にきて自分の仕上げを確かめているようだった。
「こんなもんだろ」
「すごい」
僕は呆然と木を見上げながら呟いた。
「こんなことできちゃうんだ」
「あ、俺さまをなんだと思ってやがる」
見くびるなよ、と言いながら、ラキエは少し自慢げだ。
「すごくきれいだ………」
ラキエはこれを僕に見せるために、周りの木々を倒し、宝石を集め、光る石を用意してくれたのか。
すごく、嬉しい。
僕はラキエの手をぎゅっと握った。僕のこの感情は彼に伝わっているだろうか。
輝く木からラキエに視線を移す。自分のしたことに得意げな顔がかわいい。
僕はラキエに顔を寄せて頬にキスした。
「ありがとう、ラキエ」
「礼なら場所が違うだろ」
ラキエはくすぐったそうな顔で答えた。
「場所が違う? どこか教えてくれるかい?」
僕はくすくす笑ってラキエの首に両腕を回すと顔を近づけた。
「ここかい?」
首筋にキス。そのままぎゅっと抱きしめる。
「そうやってとぼけてろ」
「君は……ボクの感情がわかるんだろ?」
耳元で囁いてやる。
「僕が今何を考えているかなんて」
ラキエの耳たぶを軽く噛んでひっぱってやる。ぴったりと身体を寄せ、彼の足に自分の足を触れさせる。
「そうだな………」
ラキエは僕の身体に腕を回し、背中から腰までをゆっくりと撫でた。
「続きをしようぜ、アシュ」
「………」
僕もラキエの背中に回した手でしっかりと確かな筋肉に覆われた身体を撫でた。細いのに張り詰めて力強いラキエの身体。野生の美しさを備えたしなやかな身体。
すべらかな首筋に執拗なキスをする。ラキエの匂いが立ち昇る。それだけで身体が熱くなってクラクラする。ラキエがしっかり立ってなければよろけるくらい。
「腹がへってんのか?」
ラキエがくすりと笑う。
「でも食われるのはお前だ、アシュ」
そう言いながら羽織っていたマントをばさりと地面に落とす。僕はラキエの目を見ながら、これからの期待でうっとりしてしまう。
ラキエは僕の顔を指先でとらえ、口づけてきた。差し込まれる舌にからめる。ラキエは舌もひんやりと冷たい。
「………ん」
からませた舌をきつく吸い上げられる。僕は彼の背に回した腕に力をいれて抱きしめた。
ラキエは背中に回した手をシャツの中にしのばせてきた。いつものことだけどその手も氷のようにひんやり冷たくて、身震いする。
ラキエはそんな僕の様子に軽く笑うと素肌に掌を押し当てて撫でまわした。そうしているうちに彼の手も少しずつ温まってくる。
以前ラキエが「冷たさに反応してビクついていた体が別な理由で震えだすのがいい」と言っていた。それって水風呂にはいっててお風呂を炊きはじめ、水がじんわりお湯に変わってくるのがいいって、なにかそんなこといってた漫画があったなあ。
僕も自分の体温でラキエの手や身体が温まってくるのが好きだ。体温を………思いと一緒に分け与えてあげているようで。
ラキエはぎゅっと抱きついている僕の身体と自分の身体の間に手を差し込んできた。服の上からぎゅっと握られる。
「もう一回、立ったままイクか?」
「え………、あ、えっと」
そんなこと聞かれるとは思わなかった。アレを僕が気に入ったとでも思ったのだろうか。もう立ってられないっていうのに。
「足が冷たいからやだな」
僕は小さく笑って答えた。もう靴下は泥だらけだ。こちらは雪こそ降ってないが、湿った地面の上では指先の冷えはおさまらない。
「そうか」
ラキエは今気づいたような顔をした。ラキエに腰を抱いていた手を離されると、力を失った僕の足は持ち主を支えきれなくて、くたくたと毛皮の上に崩れてしまう。
ラキエはそんな僕に視線をあわせ、しゃがみこんだ。
「すぐに暖めてやる」
軽く唇をあわせながら、ラキエは僕のベルトに手をかけた。当然抱きしめてくれると思っていた僕の手を軽く押し戻し、さっさとズボンを下ろしてしまう。
「わ」
靴下も脱がせて投げ捨てると、足の裏を捉えて足をすくいあげられた。
「や、ちょ、ちょっと」
バランスを崩して倒れこんだ僕を見て「いい眺めだな」などと笑っている。下半身だけをはがされた恥ずかしい格好がいやで足をばたつかせた。
「なに言ってんだよ!」
「暴れるな」
掴んでない方の足を小脇に抱えられてしまう。どうするのかと思っていたら、手にした足の甲にラキエは唇を落とした。
「な、なにを」
いつも冷たいラキエの唇に熱を感じる。それほど僕の足の方が冷えていたのだ。でも。
「だめだよ、ラキエ、汚れてるんだから!」
僕は慌てて言った。ほとんどラキエに抱えられていたとは言え、この地で湿った泥の中に立った僕の足は、靴下を通してたって泥まみれだ。
ラキエは僕の言葉を無視して汚れている足指を口に含んだ。
「ラキエ!」
ちゅっと吸ってから口を離し、汚れを含んだ唾液を地面に吐き捨てた。
「これで問題ない」
「ラキ………」
汚れているのに。冷えた鉄のように冷たいのに。
ラキエは再び指をくわえ、爪先に舌を這わせた。五本の指をそうやって清めて暖めると、足の甲を舌でなぞり、くるぶしにキスをし、軽く歯を立てる。
足先がじんじんと痺れてくる。
ラキエの舌が、柔らかな唇が、熱い息が、足の先だっていうのに感じやすい場所のようにゾクゾクさせる。
「………少しは暖まったか?」
「う、うん、うん………」
僕は胸がつまりうなずくことしかできなかった。こんなにラキエに大事にされているのだと今更ながら知る。
「そうか、じゃあ次はこっちか」
ラキエは脇に挟んで固定していた僕の片足を手で撫でた。
「もういいよ、充分暖まったよ」
僕は足をそっと引いた。
「それよりもっと………他の場所を暖めて」
顔を赤らめて呟いた僕の言葉にラキエは嬉しそうに笑った。
膝から太ももまでところどころにキスをしながらラキエの唇は上にのぼってきた。僕はその優しい愛撫に口に拳を押し当てて耐えた。
下だけを脱がされた恥ずかしい格好で、膝を折り曲げられラキエに全て見せて。
そんなことを考えると恥ずかしくてたまらないのに、それがイイ。
ラキエは足のつけねまで辿りつくと、その柔らかな内側をキツク吸い上げた。
「………っ」
そのキスは痛みを覚えるほどで、でもラキエがその跡を指でなぞると、じん、と熱くなる。
「声、がまんするな」
「だ、だって………」
「聞きたいんだから、聞かせろ」
僕はひじで身体を支えると少し上半身を起こした。
「………君も脱いだらそうするよ」
僕がそう言うと、ラキエはものも言わずに身体を起こし、手早く身につけていたものを脱ぎ始めた。それを見ながら僕もシャツを脱ぐ。一部だけ着ているより、二人で裸になった方が恥ずかしくない。
ラキエはもともとそんなに着こんでいないのですぐに全裸になった。
「これで文句はないな」
「うん」
僕は手を伸ばして彼の胸に触れた。僕は彼の身体が好きだ。強靭でしなやかな獣のよう。内に秘めた力がなめらかな肌を通して感じられる。
「君はきれいだな、魔王さま。すごくきれいだ」
「そうか」
ラキエの反応は鈍い。美しさより強さに重きを置く種族だ。容姿を誉められてもなんとも思わないのだろう。
僕はラキエがおとなしくしているのをいいことに、胸から腹部へと指を滑らせた。肌のなめらかさが気持ちいい。
「お前もきれいだ」
ラキエの金色の視線が僕の全身をなめる。それだけで動悸がする。ラキエが見ているのは僕の身体ではないことは知っている。だって、彼に比べれば、僕なんて貧弱でか弱い生き物にしか見えないだろう。
「君が見ているものは僕にはわからないからね」
僕は苦笑しながら指を膝立ちしているラキエの足の間に触れさせた。ちらっと上目で彼を見て、止める様子がないようなので、指を絡めていく。ちゃんと弾力を返してくれるのが嬉しい。ゆっくりと手を動かし始めた。
「他の所も、いろいろ気に入ってるぞ」
ラキエは僕の髪をそっと撫でた。
「魔王の俺さまに向かって怒るわ手はあげるわ好き放題やってくれる」
マジメくさって言う悪魔に、僕は思わず笑った。
「ニンゲンのことを教えようと必死で、めんどくさいことも多いが飽きないな」
指が降りて頬をくすぐる。その指を捕まえてキス。
「僕も君といると退屈しないよ。まあつきあうのは命がけだけどね」
ラキエは指を預けたまま囁いた。
「俺が好き、だろ? アシュ」
「………好きだよ。命がけでも………それでも惜しくないくらい………」
僕はそう囁き返すと手の中のラキエに口づけた。
「アシュ………」
ラキエの指が再び僕の髪を撫でる。
「俺の方がもっと好きだぞ」
根拠もないのにどこか自信満々な態度におかしくなる。僕は口の中のラキエを強く吸い上げた。ラキエの指がぴくん、と僕の髪の中で震える。そのまま頭を掴まれて顔を離された。
「だから」
「ア………」
まだ中途だったのに、と、不満気に見上げた僕にラキエは薄く笑った。
「早くお前に入れさせろよ、アシュ」
「エロ悪魔」
笑うしかない、悪魔の辞書には遠慮という文字はないのだろう、まあ悪魔が辞書を持っていればの話だが。
「いいよ、僕の中、君でいっぱいにしてくれよ」
僕はラキエの首に両腕を回した。
「ずっと待ってたんだ………」
ラキエが僕を抱きしめ、キスをしてくれる。唇を合わせながらゆっくりと上体を倒す。柔らかなマントの上に横たわると、喉から胸元までキスが伝った。
僕もラキエの頭を抱きしめ、耳や頬にキスを返した。
ラキエは僕の身体の線を手のひらで何度もなぞる。まるで形を確かめるみたいに。
そんなふうにやさしい愛撫に、僕のは立ちあがり、すぐに濡れ出してくる。ラキエはその中心に手をやり、軽く擦った。
足に自分が濡らしたラキエのものが当たる。その感覚に背筋がぞくぞくする。もう愛撫は充分だ。早く…欲しい。
「もう寒くないよな?」
僕の震えを感じてラキエは意地悪く笑う。
「うん、もう………」
その震えの原因もわかっているくせにと僕は彼を軽く睨んだ。
ラキエはにじみ出た体液で濡れた指を後ろに当てがう。
そこへの刺激を予期して目を閉じた。
「俺もお前に早くいれたい」
言いながら指を進める。
「うん………はや、く………んっ」
「慣らしなんかすっとばして、傷つけたって今すぐいれたい」
奥まで入れてグルリと動かす。
僕は目を上げた。ラキエの顔にいつもの薄笑いはなく、真剣だった。馬鹿な悪魔だ、そんなこと、悪魔のくせに人間の許可をとらなきゃいけないと思っているのか。
「………いいよ、あとで治してくれるんだろ………だったら………」
僕はツリーに視線を向けながら囁いた。
正直に言えば慣らされずに入れられるのは痛い。痛いのはいやだが実際自分もすぐに欲しい。
ラキエの愛の結晶のようなツリーを見ていれば、その痛みも我慢できるかもしれない。
「だからいいよ………」と言いかけてはっとする。
今ツリーの光の中で何かが動いた。
「ラキエ!」
「なんだ、やっぱり怖くなったのか?」
ラキエは少し残念そうな顔で言った。
「ち、ちがう。今ツリーの中になにか………いた」
僕はラキエにしがみついた。
「何かって、そんな気配はなかったぞ」
ちょっかい出して来たり覗いたりしようとする悪魔にはラキエはいつも充分気をつけていた筈だ、だけど。
「で、でもなにか動いた」
僕はラキエの身体で自分を隠そうとした。魔界では人間の体ははるかにもろい。
ラキエは半信半疑な風ながらもツリーの方へ目を向けた。
「隠れているなら出て来い!」
いいところで中断されてかなり不機嫌のようだ。地を這うような低い声。
その声に応えるように、ツリーがちらちらと光って何か小さな物が出てくた。羽根の生えた小さな妖精のようだ。
「本当にいやがったか」
ラキエは軽く舌打ちした。今までビリビリと僕が感じるほどの怒気を放っていたのが、ふっと霧散する。
身体を寄せてきた僕を片手で抱きしめながら
「お前ら、まだ早いだろ、向こうに行ってろ」と呼びかけた。
え? と僕はラキエの顔を見あげた。
ラキエの言葉に反応するように、鈴のような音が起こる。どうやら妖精たちが出しているらしい。
「ラキエ、知り合いなのか?」
僕は驚いて身を起こした。ラキエと妖精なんて、イメージがあわない。
「ああ、まあな」
僕の問いに答えてまた妖精の方を向く。彼らがまた鈴の音を立てたからだ。
「俺さまが嘘なんかつくか。拾うのはもうちょっと後でまとめてにしろって言ってるだけだろ」
その声に鈴の音がより大きくなった。
「どういうこと?」
「あの石、終わったらくれてやるって約束なんだがな。探させたから」
「それで………とりにきたってわけ?」
あまりの音のうるささにラキエは顔をしかめた。妖精に向かって
「うるさい! 好きにさせてやるから静かにしてやがれ!」
とたんにピタリと音がやんだ。
「というわけだ」
ラキエは僕を振り向いた。と、いうわけと言われたって……。
ラキエの勢いにいったんちりじりになった妖精たちが、また舞い戻ってきている。僕は彼らが頭上で静かに旋廻しているのを見あげた。
「あの………ってことはあの子たち、ここに………その、いる、わけ?」
「どうせ石集めに夢中だから気にスルな」
「や、やだよ!」
ラキエの知り合いに見られるなんて!
ラキエは引こうとする僕の体をなだめるように撫でながら、中に入ったままの指を動かした。
「あ、や、やだって………」
僕は身体をくねらしてはかない抵抗をした。
「や、やめて。ね、場所を移ろう」
「ここまできて我慢できるか」
そう言って腰を押し付ける。ラキエのものが熱く、硬くなっているのが僕の腰に触れた。
「お前が触れてこうしたんだ。責任とれ」
「だって、ここじゃいやだよ、みんな見てるよ」
「見てない」
「う、うそ………ああっ」
指がいいところを刺激した。あわてて両手で口を塞ぐ。
声に反応してこちらを向いている妖精もいる。なのにラキエはかまわず同じ場所を刺激し続けた。
「う、い、いや………ぅ、」
食いしばった唇にラキエの舌が触れた。
「気になるなら目を閉じてろよ、慣らし無しでいれるのはやめといてやるから」
親切めいた口調で言うけど、どっちもいやだ!
「そ、そうじゃなくて………い、いやっ」
逃げようとする僕を自分の身体で押さえつけ、ラキエは入れた指で中を擦り、広げて行く。
妖精たちがこっちを見ているのがはっきり意識できる。
かあっと身体も頭も熱くなっていった。
「い、いやだ………っ、ああっ」
恥ずかしいのにその羞恥が快感に輪をかける。
嫌だと言っていても、もうどうしようもないほど感じてしまう。そしてラキエにはそれはすべて知られてしまうのだ。
もう彼の指が入っている場所がどろどろに溶けているような感じ。身体が崩れそうだ。
「恥ずかしいのか?」
ラキエが金色の目を細めて笑う。
「すごくイイぞ、その感情」
ラキエの方も羞恥にもだえる僕の様子に刺激されたらしい、今にも舌なめずりするような表情で僕を見ながら指を抜いた。
「いまさら……やめるつもりはない」
「あ、うう………っ」
抜けた指を追って中がうごめくのがわかった。ラキエの形を欲している。彼の熱を重さを肉を快感を。
指を抜いた刺激で痙攣している入り口に、ラキエは自分のものを押し当てた。
「あ」
その感触に僕は震える、期待と羞恥。
「アシュ、声を押さえるなよ」
ラキエは早口でささやくと中へと一気に突き入れた。
「ヤ、ああああっ!」
僕はラキエにしがみついてのけぞった。
「ああっ、あっ、あうっ」
ラキエに揺すられるまま声が出てしまう。もう目を閉じて何も見ない。羞恥もどこかへ吹き飛んだ。僕は今ラキエの腕の中だ。それ以外なにも信じない。
「いい声だ」
ラキエは嬉しそうに言って僕の腰を自分の方へ引き寄せた。
「うあ………っ」
「アシュ……ッ、もっと奥まで入って……感じさせたい」
「ひ、あ、………あっ」
揺すられて身体がマントの外へはみ出しそう。
ずり上がってしまう身体が地面にこすれて傷つく前に、ラキエが抱き上げてくれた。しっかりと胸に抱きしめられる。
「あ………いい………」
「ああ」
ラキエもため息まじりにつぶやく。
「お前の身体が熱くなる。それにあわせて俺の体温も上がる。溶け合うようだ……気持ちいい」
「あ、う、うん……」
ラキエの体温と自分の体温がまじりあうのが……いい。中に埋めこまれる感覚も、そこから全身に広がる快感も。いつもラキエがはいると裂かれそうになるイメージがある。その恐怖を快感が塗りつぶしていく。それが……イイ。
「ラキ………ッ………」
「く…っ──」
「────あぁああ………──!」
僕の身体が痙攣を起こしたようにぶるぶるっと震える。
「……ん、」
ラキエが気持ちよさそうな声を出した。今の僕の振動が、まだ中にいるラキエにどんなふうに感じさせたのだろう。
快感は長く続いた。
「…………」
ラキエはふうっと息をつきながら、まだ震えている僕の身体を抱きしめてくれた。
しっかりと抱えられてラキエの首にしがみついていた力が抜ける。僕はラキエの腕と胸にもたれた。身体がひくんひくんと痙攣しているのがとめられない。
ラキエは僕の耳や髪に口づける。きっともう一回したいとかやりたいとかいれたいとか考えているのだろう。僕としてはできればこのまま眠りに落ちたい。
「こっちのクリスマスもよかっただろ、アシュ」
ラキエが耳元で囁いた。
「ツリーの下でセックスするのがクリスマスだなんて思ってないよね………」
なんとかそう答えると、ラキエはちょっと目を上げて考えるような顔をした。
「………あっちでは上だったな、ツリーの」
ぎょっとした。まさか上に浮かんでもう一回なんて……
「ちょっとまって、ラキエ」
だがラキエは無邪気な笑みで僕を見つめて言っただけだった。
「どっちもいつもと違ってて良かったよな、来年も両方でやろうな、アシュ」
ちゅっと唇にキスがくる。僕はラキエの髪に指を絡めて毒づいた。
「か、身体がもたないよ、このエロ悪魔………!」
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